崩れた均衡

何事もなくそのエリアを回り、神殿前に着いた。
武器や盾がそのままになっているが、ここは尚更数が多い。柵もある。敵の侵入を防ぐためであろうか。

『…………?』

何か喧騒が聞こえる気がする。視界がモノクロになって…?
武器のぶつかる音、叫び声、そして…

「…ris…!iris!!」

はっと顔を上げる。sirutoの顔が目の前にあった。
あれ?私…?

「急にぐったりと寄りかかったからびっくりしたわ!どうしたの?」

『うん、実は…あれ、なんだっけ…どうしよう、忘れちゃった!』

「忘れた?」

今しがた見たはずなのに、その記憶は急速にぼんやりしていく。思い出そうとすればするほど後継は霞んでいく。とてももどかしかった。

『大丈夫、きっと疲れちゃっただけ。』

「そう、なら良いんだけれども…。さぁ、ここの扉を開けましょう。」

『うん!』



ここの仕掛けをつけると以前、暗黒竜が襲ってきた。今回も素早く中に入らなくてはいけないだろう。
事前に分かっているので、慌てなければ大丈夫だ。

「iris、開いたらすぐに入るわよ。」

『わかった。』

そうして仕掛けに火を灯す。光の柱が上がる。
案の定暗黒竜が光に反応して現れた。サーチライトを光らせながら迫ってくる。

(早く開いて…!!)

sirutoは門の前で心の中で叫んだ。
irisと繋いだ手を強く握ってしまう。
サーチライトが目前に迫ったときにちょうど潜れる隙間が開く。

「いくわよ!」

『うん!』

さっと門を潜り抜け、奥へと走っていった。

神殿に着いた。

「やっと、ついた…。」

『怖かったぁ…。』

緊張の糸が切れ、へなへなと二人で座り込む。

「iris、よく頑張ったわね。」

座り込んだままirisの頭を撫でる。

『siruto、連れてきてくれてありがとう。』

無事にここまで来れたことを喜んだ。


よく頑張ったねと言わんばかりに光の子がいる。
救出し、祭壇に火を灯し、瞑想をする。



大きな戦士のような大精霊が上から降ってきた。
ドスンと音を立てて着地した大精霊は、勇ましい雰囲気だ。
敵に向けて攻撃するように、武器をつきだし、盾で弾き、トドメとばかりに勢いよく武器を振り下ろす。

なにせ全てにおいて大きいので風圧がすごい。

しかし、戦いで傷ついていたのか、倒れ伏してしまった。
このままでは危険だろう。

irisは胸の内の炎を、大精霊が手にしていた武器にそっと灯す。

大精霊はそれを横に持ち、天に捧げるように立てた。




書庫へと続く扉が開いた。
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