崩れた均衡
次のエリアに入ったが、まだ行っていないところがあるので、左に飛び、難破船があるエリアに向かう。
巨大な土管に生えている闇を焼きつつ、光の呼び声で迫ってくる闇のカニを退ける。
『これは何に使っていたんだろう…』
「おそらく何かに使うための、抽出した光の力を運ぶためじゃないかしら…。この土管、神殿まで繋がっているのよ?」
『蝕む闇を焼くと、光が出るもんね。』
「そうね。」
難所を抜けたことで、少し会話する余裕が生まれた。
だが、まだ油断はできない。ここは闇のカニが多数生息する。気を抜くと突き飛ばされ、羽のチカラを喰らわれる。ましてや突き飛ばされた後に暗黒竜に見つかりなどしたらそれこそおしまいである。
土管からおり、磯の辺りに佇んでいる光の子を救出し、難破船のそばにいる精霊の魂を解放する。
小舟でこの地を脱出しようと試みたのだろうか。敬礼して見送る精霊だ。
難破船の下に行き、沢山のツボが転がっているところに居た光の子を救出しようとした。
しかし、トラブルはつきものだ。降り立った瞬間、闇のカニが大量に迫ってきたのだ。カニが光に飢えて迫ってきている恐怖と足場が悪い閉鎖的空間のせいでirisは転けてツボの山から落ちてしまった。
「iris!!」
『痛っ!』
sirutoが慌てて光の呼び声を上げる。
しかし何せ数が数なのでひっくり返しても次から次へと迫ってくるカニ。埒が開かないので、一旦ここを離れようとし、近くの隙間から外に飛び出そうとした。
背筋が凍った。
暗黒竜の存在を忘れていた。
見つかりこそしなかったが、目の前にいた。
すんでのところで方向を変え、船体の割れ目から外へ出る。
方向を変え、船体の横の穴から入り、光の子を救出した。
冷や汗が止まらない。冷静な判断を失うところだった
やはり、常に気を張っておかねばならない。
あとは壁の上の出っ張りにいる光の子で終わりだ。
くるりと引き返し、土管を伝い、神殿前のエリアに戻った。
かつて戦場となったところを二人は飛び回る。
敵襲を知らせる役目の精霊を解放する。
飛びながらsirutoは考えを巡らせていた。
暗黒竜において、何か引っかかることがある。そして、彼女はある仮説にいきつく。
暗黒竜は精霊たちの文明の、負の産物のような気がする。
以前は注意を払って暗黒竜の音を聞くようなことはしていなかったので分からなかったが、暗黒竜が通り過ぎる時に生物から出るにはあり得ない音がしたからだ。
金属音だ。
精霊たちは、何かと戦っていたのかもしれない。「何か」はわからないが、その中で、文明をより高度なものにしようとした結果、禁忌を犯したのかもしれない。生物でありながら、生物で無いもの…。そして、それを制御しきることができなかった……………。
考えただけで震えが止まらない。
暗黒竜は全身を闇で覆っている。しかし、本当はもっとおぞましい姿であったのだろうか。真実は、伝承の中で塗り変わっていく。精霊たちは、制御の効かない暗黒竜が同胞を喰らう姿を恐れ、闇に覆われた姿で記憶し、後世へ語り継いだのかもしれない。そして、星の子。私たちが体験しているのはあくまで過去の追憶。現実であって、現実でないものだ。そして何よりも先ほど暗黒竜に触れてしまった時に、実体がなかった。その経験が、sirutoの仮説をより確実なものにした。
私たちは、こういった記憶も紡ぐ必要がある。二度と、同じ過ちを繰り返さないためにも。
(おっといけない…ここはまだ危険なエリア。集中しないと…)
sirutoはそう自分に言い聞かせて神殿へ向かった。
巨大な土管に生えている闇を焼きつつ、光の呼び声で迫ってくる闇のカニを退ける。
『これは何に使っていたんだろう…』
「おそらく何かに使うための、抽出した光の力を運ぶためじゃないかしら…。この土管、神殿まで繋がっているのよ?」
『蝕む闇を焼くと、光が出るもんね。』
「そうね。」
難所を抜けたことで、少し会話する余裕が生まれた。
だが、まだ油断はできない。ここは闇のカニが多数生息する。気を抜くと突き飛ばされ、羽のチカラを喰らわれる。ましてや突き飛ばされた後に暗黒竜に見つかりなどしたらそれこそおしまいである。
土管からおり、磯の辺りに佇んでいる光の子を救出し、難破船のそばにいる精霊の魂を解放する。
小舟でこの地を脱出しようと試みたのだろうか。敬礼して見送る精霊だ。
難破船の下に行き、沢山のツボが転がっているところに居た光の子を救出しようとした。
しかし、トラブルはつきものだ。降り立った瞬間、闇のカニが大量に迫ってきたのだ。カニが光に飢えて迫ってきている恐怖と足場が悪い閉鎖的空間のせいでirisは転けてツボの山から落ちてしまった。
「iris!!」
『痛っ!』
sirutoが慌てて光の呼び声を上げる。
しかし何せ数が数なのでひっくり返しても次から次へと迫ってくるカニ。埒が開かないので、一旦ここを離れようとし、近くの隙間から外に飛び出そうとした。
背筋が凍った。
暗黒竜の存在を忘れていた。
見つかりこそしなかったが、目の前にいた。
すんでのところで方向を変え、船体の割れ目から外へ出る。
方向を変え、船体の横の穴から入り、光の子を救出した。
冷や汗が止まらない。冷静な判断を失うところだった
やはり、常に気を張っておかねばならない。
あとは壁の上の出っ張りにいる光の子で終わりだ。
くるりと引き返し、土管を伝い、神殿前のエリアに戻った。
かつて戦場となったところを二人は飛び回る。
敵襲を知らせる役目の精霊を解放する。
飛びながらsirutoは考えを巡らせていた。
暗黒竜において、何か引っかかることがある。そして、彼女はある仮説にいきつく。
暗黒竜は精霊たちの文明の、負の産物のような気がする。
以前は注意を払って暗黒竜の音を聞くようなことはしていなかったので分からなかったが、暗黒竜が通り過ぎる時に生物から出るにはあり得ない音がしたからだ。
金属音だ。
精霊たちは、何かと戦っていたのかもしれない。「何か」はわからないが、その中で、文明をより高度なものにしようとした結果、禁忌を犯したのかもしれない。生物でありながら、生物で無いもの…。そして、それを制御しきることができなかった……………。
考えただけで震えが止まらない。
暗黒竜は全身を闇で覆っている。しかし、本当はもっとおぞましい姿であったのだろうか。真実は、伝承の中で塗り変わっていく。精霊たちは、制御の効かない暗黒竜が同胞を喰らう姿を恐れ、闇に覆われた姿で記憶し、後世へ語り継いだのかもしれない。そして、星の子。私たちが体験しているのはあくまで過去の追憶。現実であって、現実でないものだ。そして何よりも先ほど暗黒竜に触れてしまった時に、実体がなかった。その経験が、sirutoの仮説をより確実なものにした。
私たちは、こういった記憶も紡ぐ必要がある。二度と、同じ過ちを繰り返さないためにも。
(おっといけない…ここはまだ危険なエリア。集中しないと…)
sirutoはそう自分に言い聞かせて神殿へ向かった。