勝ちより価値有る物

sirutoが立ち上がって伸びをする。
準備運動も兼ねて、心を落ち着かせているようだ。
しばらく目を瞑って深呼吸をする。
不安が込み上げてくる胸の内を鎮める。
十分に落ち着いたので、irisに呼びかけた。

「さぁ、行きましょう。」

『うん。分かった。』

ここから先は危険なエリアだ。気を引き締めていかなければならない。
夕陽が、sirutoの横顔を照らす。
決意を決めたキリッとした表情。
頼もしいなぁとirisは思った。

「ああ、そういえば、捨てられた地では、回復が不可欠だから、おんぶでいくわよ。」

『分かった。どうやって回復するの?』

「光に大きく呼びかけるのもいいけれども、それだと疲れちゃう。だから今まで集めた白いキャンドルを使うのよ。」

『これ?』

irisがキャンドルを出してみる。赤いキャンドルの何倍も大きく、両手でもつぐらいの大きさだ。

「そうね、それよ。」

これは光のカケラを集めて練り上げたものなので、光のチカラの回復効果が高いのだ。しかも、出すだけでは減らないので実質無限回復だ。

「光に大きく呼びかけるのは、闇のカニがいるところでお願いするわ。」

『分かった!』

「ありがとう。助かるわ。」

説明が終わったので、sirutoはirisをおぶった。そして、祭壇の奥の扉を抜けて、雲海めがけて滑り降りていった。
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