勝ちより価値有る物

観客席であろう場所にノリノリで応援するアフロの精霊がいたり、堂々と立っていたと思ったら何故か急斜面を滑り落ちていって、勢いが止まらずリンクを何周も回ってしまう面白い精霊もいたり、個性あふれるメンツが多かった。


像の周りと祭壇にあるロウソクに火をつけて、祈りを捧げる。


irisはまたもや胸の内に炎を抱いて立っていた。
祭壇に向かって歩く。
空は満点の星空だ。
気配を感じて後ろを振り向くと、スラリとした精霊が後ろからサッと登場する。一人かと思ったが、二人が縦に綺麗に並んでいたようだ。
積極的ながらも堂々と洗練された動きに圧倒される。
二人はアクロバティックな動きで彼女の前へ降り立つ。
そして女性らしい大精霊がirisの炎をこっちに渡してくださいと言わんばかりに恭しく膝をついて手を差し出した。
それを遮って手を差し出す男性大精霊。
女性も負けじと手を出す。
ヒョイっと男性の方の大精霊がirisの胸の炎をパドルのようなもので掬い上げる。彼女は炎を彼から取ろうとちょっかいをかける。彼はそれを上へ放った。側から見ると喧嘩しているようにも見えるが、そうではないだろう。二人は純粋に勝負を楽しんでいるのだ。

お前には渡さん!とでも言うように、彼は遠くに炎を投げた。そしてそれを丁寧にパドルでキャッチする。
それを見て彼女は飛びかかるが上手く躱されてしまう。動きを読まれているのだろうか。

irisの方に炎が飛んでくる。タイミングを見てirisはトスをする。
それを男性大精霊が空高く打ち上げた。



この二人は互いを支え合って、民を導いて来たのだろう。勝ち負け、名誉より大切な、絆というものを改めて実感した。

『峡谷の大精霊様、かっこよかった!私もああいうかっこいい仮面つけてみたいなぁ!』

「精霊たちはそれぞれ素敵な仮面をつけているものね。irisならなんでも似合うわよ。」

『エヘヘ、ありがとう!そういえばsirutoは他の仮面はつけないの?』

「私はこれだけしかつけないわ。」

『そうなんだ…何か特別なものなの?思い出…とか。』

「ええ、そうね。ヒビが入ろうともずっとこれをつけているのには理由があるわ。」

『理由…。』

「そう。あとね、このヒビは、暗黒竜にやられたのよ。」

『あんこくりゅう?』

「ここの先のエリアにいる闇の生物よ。」

『何それ怖そう…。』

「ええ、その認識は間違ってないわ。」

『詳しく教えてくれる?』

「ええ。もちろん。ちょうど話そうと思っていたのよ。長くなるけれども聞いてくれる?」
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