勝ちより価値有る物

出走すると、またもや歓声に包まれる。
これは光のかけらを取りながら滑る競技だ。

このレースは、滑り降りる時間と光のかけらの個数を総合して競い合っていたのだと思われる。
早く滑っても、光の個数が極端に少ないといけないし、逆にたくさん取っても遅いと意味がないのだ。

速さと光を取る個数の綿密な計算が要るのだろう。ルートも毎回試行錯誤していたのだろう。互いを称え、切磋琢磨する精霊たちの姿が脳裏に浮かぶ。

あぁ、この競技が盛んな時にやってみたかったものだ、とsirutoは思った。
それほど、このレースは毎回毎回心躍るものだった。

風を全身で感じ取り、自身の心赴くままに滑る。本気で楽しむsirutoの姿はまごうことなきレーサーだった。

初めの場所は飛び降りながら角度を調整し、着地と同時に光を取る。
そこから先は直線的に滑り降りる。

次のエリアに差し掛かると
氷の加速を使い、光を効率的に集める。

そのままトンネル状になっている所をくぐり、なるべく平らなところを選んで身体が加速で浮き上がらないように調整する。

蛇行するように、しかし最短距離で進む。

しかもsirutoはレースに夢中になりながらも途中にいる光の子をirisに確実に救出させる。さすがは星の子。本分を忘れてはいない。

インコーナーを攻めるように滑り、直線に入り、闘技場が見えるところに出た。上から見おろすことができるのでとても綺麗だ。雲が光を浴びて赤くグラデーションになっている。闘技場も装飾が黄金色こがねいろに輝いている。ど真ん中にいた光の子をまたもや滑りながら救出し、一気に降りる。

左右の仕掛けから眩い光が溢れる。祝福されているようだ。
そうしてたどり着いたスケートリンクの中に光のカケラが降りてくる。
少し地面から浮いているものもあるので、タイミングよくジャンプして取得する。
全て集め終わると、真ん中のステージに招集され、キャンドルが渡される。

滑り終えたレーサーを讃える花火が上がったのち、大きな赤い扉が開く。
祈りの間へ続く道がひらけた。
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