陽だまりの中で

二人は雲海広がる三棟の鐘が置かれている所に来た。
雲スレスレを飛ぶと雲が頬を撫で、とても心地よい。

精霊たちが、ツボを運んだり、舟を作ったりする様子を追体験し、光の子を救い上げた。
全ての鐘の祭壇の闇を祓う。

(ここは光が沢山あるけれども、二人で手を繋ぐと羽の回復が早くて助かるわ。)

羽を回復させるために雲に近づく必要が無いのがとてもメリットだ。

このままマンタに乗って大神殿へ直行してもいいが、せっかく心地よいところなのだ。

「iris、ここでしばらく自由に飛んでみる?」

『やったぁ!』

sirutoはirisの飛行訓練も兼ねて、手をひく主導権をirisに任せることにした。しばらく自由気ままに飛ぶのもいいだろう。

誰かに手を引っ張ってもらうのは久しぶりだ。
………久しぶり、ねぇ。

『わあぁ!見てください!生き物が沢山!』

irisの声で現実に引き戻される。

「えぇ、ほんとね!」

ん…?全員こっちに向かってきてない!?
大量の鳥やらマンタやらがこちらに猛スピードで突っ込んでくる!
思考が一瞬止まってしまった。

「うわっ!」

我にかえり、身構えて!と言おうとしたが間に合わなかった。
生き物たちが突っ込んでくる際の風圧で、手が離れて吹き飛ばされるsiruto。
なんとか体勢を整え、irisを探す。

(もしかして…あの中に!)

後を追うようにして見てみるともみくちゃになっているirisが見えた。気流に押し止められて出られないのだろう。

(生半可な飛行じゃあまた弾き出される…それなら…)

sirutoは近くの鐘の棟がある坂のてっぺんまで登る。そこから斜面を滑り降り、加速をつけて飛ぶ。
更にそこから羽ばたきながら回転をつける。

「iris!!!」

彼女の名を叫びながら突っ込む。irisはなんとかsirutoの腕を掴むことができたようだ。羽ばたくと、光のチカラが増幅し、一回の動作であり得ないほどのスピードがつく。
irisはしっかり掴まることができているようだ。ものすごい風圧に耐えている。
回転しながら螺旋状に上昇飛行し、速度を落とすことで、奥にある大神殿のある陸の壁に衝突せずに済んだ。

陸の上に着くと、sirutoとirisは鯉がいる池のそばのベンチに座った。
大量の光のチカラを浴びたせいで少しクラクラする。

光のチカラは、あるに越したことはないが、浴びすぎるとエネルギー過多で少し疲れるのだ。

「どうしてこうなったのかしら…」

『わかりません…』

「まあ、悩んでも仕方ないわ。大神殿の上にある光の子を救出して、草原の大神殿に祈りを捧げましょう。」

『わぁ、そんなところにもいるんですね!行きましょう!』

「あぁ、あと、そんなにかしこまって丁寧に話す必要はないのよ?」

『本当に!?』

「ふふ、これからもよろしくね!」

『うん!』
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