(身体中が…割れるように痛い…で…も…こんな所で倒れ…る訳には…)

前へ、前へ進もうとする歩みは遅い。
闇のカニが彼女へ容赦無くぶつかる。
それに対して鳴いて対抗する力も彼女には残っていなかった。

吹き飛ばされ、痛む身体をさらに激しくぶつける。ゴロゴロと転がり、岩に身体を打ち付けてようやく止まる。

(ぐっ…！！)

体を流れる自身を維持するための光こそ流失していないが、もう、痛みの感覚も麻痺してしまうほどに彼女は憔悴していた。

時間をかけて立ち上がり、所々にある壊れた灯篭に力の入らない手にキャンドルを持って火をつける。

(ここには、暗黒竜はいない…から…)

なんとか残った少ない羽をな全快させながら進んだ。

(あぁ…あと少し…)

捨てられた地の最終エリアまで這いずりながらも着く事が出来た。

(此処を開ければ…)

扉を開ける仕掛けに火をつける。
パァっと光が上がる。

その時、有り得ないことが起こった。
無数の暗黒竜が、その光に反応し、久しぶりのエサだと言わんばかりに迫ってきた。

ここ最近、使命のために降りてくる星の子が減ったために暗黒竜は光に飢えていたのだ。

青色のサーチライトを光らせ、隅々まで探して星の子を喰らってやろうとやって来る暗黒竜。

彼女はその光景に愕然としてしまい、腰が抜けてしまった。

(あ…あぁ………！)

幾分もかからず、暗黒竜の一体が彼女を見つける
サーチライトが赤く光り、獲物を見定める。

彼女は必死に立ち上がり、よろめきながら後ずさる。

唸り声をあげながら迫ってくる暗黒竜

彼女はせめてもの抵抗をしようと、さらにあとずさろうとした途端に後ろ向きに倒れてしまった。

幸か不幸か、その影響で、彼女は暗黒竜に捕らわれ、喰われることなく吹き飛ばされた。
捨てられた地の出口の方向、書庫の入口の方へ。

ガコン！と重い音が響き、重厚な鉄の扉が閉まる。

その時既に、彼女の意識は無かった。