あの日の約束

墓地に差し掛かった。

眼前に見えるは黒煙をあげる赤い塊。
ただでさえ危険な捨てられた地の中でも厄介な場所に落ちたようだ。

{…………やるしか……ないよね。}

【ええ。toura様、回復をお願いいたします。】

etioはtouraをおぶった。

暗黒竜のターゲットの軌道を予測しながら焼くのは困難を極めた。

幾度となく見つかり、慌てて物陰に隠れる。
その間せっかく焼いた闇が付近の石の闇のチカラを吸って再生してしまう。
このままではずっといたちごっこである。

{ああっ、もどかしい!}

暗黒竜が通る際、遮蔽物を隔てて闇が再生する様をただ見ることしか出来ない事実に焦りの感情を露わにするtoura。

【焦っては行けません。助けは見込めないのです。それに少しずつですが進んでいます。】

焦って暗黒竜に見つかり、光を喰われでもしたらそれこそ意味が無い。
touraを嗜めつつ、やりきれない気持ちを抑えるetio。
これは闇との我慢比べだ。



しかし、この勝負はtouraが先に音を上げてしまった。



根元まですっかり焼ききらないと再生する闇にしびれを切らし、暗黒竜が過ぎ去りかけた際、辺りを確認せずに飛び出したtoura。

運の悪いことにそこに後続の暗黒竜が差し掛かった。

数多の同胞星の子を屠ってきた冷たい蒼き光が紅に染る。

{あっ……うそ……!}

【toura様!】

{etio来ないでー!}

二人が巻き込まれたとなればそれそこ手の施しようが無くなる。

etioは悲痛な面持ちでそこに踏みとどまる。

touraは必死に暗黒竜の方を見ながら後ろに飛んだ。

しかし、その先にもう一体、先程過ぎ去った暗黒竜が居る事を彼女は忘れていた。

後ろから迫る光の気配に暗黒竜は振り返り、touraを目ざとく見つける。


touraは悲鳴をあげ耳を手で塞ぎ、地面に墜落する。

身を引きちぎられるような衝撃なのだろうな、と耳から入る音を完全に排除し身を縮こませながら死を覚悟するtoura。



その時、頭上を何者かの影が素早く通り過ぎ暗黒竜のサーチライトに入った。



その者の持つより強力な光に暗黒竜は釘付けだ。

再度照準を合わせ、耳をつんざく咆哮と共に続けざまに突進する二体の暗黒竜。


その者は、一体目を難なく避けた。

通り過ぎる際の暴風に煽られ、一瞬体勢が崩れる。

しかし直ぐに持ち直しもう一体をまたもや横に回転して避ける。

無駄がない華麗な避け方だ。

【…………美しい。】

etioは思わずそう呟いたあと、touraをほったらかしにしている事に気がついて急いで彼女の元に駆け寄ろうとした。

「touraさん、大丈夫ですか?」

【siruto!】

振り向いた先にはsirutoが居た。
どうやらtouraを介抱していたようだ。

{大丈夫、ありがとう!}

touraは安堵の笑みを浮かべてそう答えた。
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