あの日の約束

雨の音が聞こえる。

目を開けると、そこは雨林であった。

《あれ……さっきまで……。》

そう思いふと前を見ると、ぼんやりと半透明な、精霊のようなものが見えた。

しかしそれは精霊ではなかった。

raimuが、昔のcralsに傘を差し出している所だった。

《どうしてここが……?》

近づいて触れてみると、その場面が鮮明に流れ出す。

~・~・~・~・~・~・~

[やはりずっと当たってると冷えますねぇ。]

そいつraimuは傘を差し出しながら、いきなり目の前に現れた。

《……………なんの用ですか。》

当時のcralsは目線だけを動かして睨むように見る。

[お友達になりに来ました!]

満面の笑みで答えるそいつraimu

《は?》

なにか言おうと口を開こうとするとそいつraimuは立て続けに言葉を紡ぐ。

[昔から貴方の事は知っていました。]


昔の俺。


個性、というものを出すのに躊躇していた時の話だろう。
目の前のそいつraimuは話をやめない。

[あの時の貴方は笑っている割には何だか悲しそうでした。今も別の意味で悲しいのでしょうが。]

言いたいことは分かるが、ふわふわとして掴み所がない。

[私は今の貴方の方が素敵だと思いますよ。だから、お友達になりたいです。]

随分と友達になりたい、という主張が強い。

会ったばかりで友達になるのも気が引けるので、少し話してみようと思い、cralsは立ち上がった。

~・~・~・~・~・~・~

記憶が終わる。


気の迷い。
やはり、取り繕った自分の方が良かったのではないか、個性などと言うものは全て捨ててしまえばいいのではないかと思った負の感情が、確かにこの時、消え失せたのを覚えている。

これは……。


{……ls!crals!}

はっと目が覚める。ここはホーム。心配そうなtouraがcralsを見下ろしていた。

{どうしちゃったの?戻ってきたはいいけどずーっと倒れたままだったから心配しちゃったよ……。}

《……ああ、なぜか昔の記憶を見とった……。なんなんやあれは……。》

{記憶の窓…。}

touraはそうぽつりと呟いた。

《ん?なんや?なんか言うたか?》

cralsはtouraが何か呟いた内容を聴き逃したので聞き返したが、touraは首を振って

{ううん、なんでもない。}

と答えた。
それからtouraはしゅんと下を向いて

{…………さっきはごめんなさい。}

と言った。

touraは心底落ち込んだ顔だ。
自分勝手に飛んでいって、何が起こるか分からない危険な所に突っ込んだのだ。
おかげでcralsまで巻き込みかけた。

《etioにも謝るんやで?きっと今ごろ気が気でなくて休めとらんから。》

{……うん。}

《これからは興味だけで行くんやないぞ?これは遊びちゃうんよ。あんたはetioにとって大事な人なんやから。軽率に動いちゃダメやで?》

{うん……謝ってくる。}

touraはこくりと頷いた。

《少し休んでから行くわ。その時にこの記憶みせてな!etioにもお大事にって伝えといてなー。》

{分かった!ありがとう!}

そう言ってcralsはツリーハウスに寝に行った。
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