あの日の約束

そのままcralsは帰ろうとしてはたと足を止めた。

《あ、楽園の闇の記憶取ってきたんやったわ。》

{あっぶない!見るの忘れるところだったね!}

touraがほっと胸を撫で下ろす。

【原石をこちらに。】

etioが差し出した手にcralsは原石を乗せた。

映像が流れる。
やはり写りが悪い……。

するといきなりetioが表情ひとつ変えず機材を拳でぶっ叩いた。

ものすごい音がしたが、etioの手は大丈夫なのだろうか……?

【はい。綺麗に映りましたね。】

《………………ああ。》

こんな荒療治で直ることにも驚きであるし、固いものをあんな勢いで叩いて平然としているetioもおかしいのでどこから突っ込んでいいのか分からないcralsはそれだけ言って黙ることにした。

鮮明になった映像を眺める…………。

〝明るい導に両翼広げ
気づいた時には片道飛行
信頼は無慈悲な手綱に代わり
冷たい壁に優しき羽はうなだれて〟

いつもの詩だ。

たくさんのマンタが飛んでいた。
映像が青みがかっていて判別がつかないが、光に向かって進んでいるのだろうか。

etioはその光に違和感を覚えた。

【……これは…!】

そう呟いた刹那、その光が闇に変わり、マンタが闇に吸い込まれてしまった。
あの光は罠だったのだろうか。

一匹のみならず、何体も、何体も………………。

touraはその光景にヒュっと息を飲んだ。
etioがそっとtouraの見開いた目を手で覆う。

映像が終わった。

cralsは固まっているしtouraは半泣き。散々たる状態だ。

《光……光の生物が……。》

cralsがうわ言のようにつぶやく。
過去にこんな残酷なことがまだまだあるのだろうか。それを思うと胸が押しつぶされる。

光をこよなく愛するcralsやこういった残酷なことが苦手なtouraにはきつい光景だろう。

【しばらく書庫の二階で休んでいきませんか?】

etioがそう提案する。

《ああ、そうさせてもらうわ……。》

一同は茫然自失のまま装置を起動させ二階へと上がって行った。
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