流星の四重奏

とうとう本番の日がやってきた。用意された衣装に身を包み、出番を待つ四人の間には緊張が走っていた。
座長がそんなガチガチの四人を気遣って、頑張っていたのはわかっているよ。ミスなんか気にしないで目一杯楽しんで、と優しい言葉をかける。
その言葉のおかげもあり、緊張が少しほぐれる。
慎み深い踊り手の目を見張るような素晴らしい踊りが終わり、劇作家が音源を切る。
ついに締めの演奏の番が来た。

《よし、みんないくで》

「ええ。」

『頑張る!』

[落ち着いていこう。]

そう言ってみんなは舞台に上がった。
観客も声援をあげている。
sirutoとraimuは譜面通り堅実に。irisとcralsはアレンジを入れて楽しんでいた。
最後の方には緊張も忘れ、笑顔で全ての演奏を終える。
多少の譜面ミスはあったものの、気が付かない程度のもので、大きな事故なく終えられたことに皆安堵した。



しかし、困ったことが発生した。演目が予定より早く進み過ぎてしまったのだ。
チケットに書かれた時間より十分ほど早いのだ。このまま終わってしまうのは非常にまずい。
劇作家が舞台裏で慌てているのが見えた。
観客がざわざわといぶかしみだす。
表にある演目は全て終わった。時間だけがある状態だ。
舞台裏に引くこともできずただオロオロする音楽家。



するとその時、cralsが動いた。素早く楽屋に駆け戻り、予備のエレキギターを持って、慎み深い踊り手に何かを囁いて舞台に戻ってきた。
そして声を張り上げ皆に語りかけた。

《皆さん!本日は夢見の劇場にお越しいただきありがとうございます!次の演目ですが、なんと我々からのサプライズです!劇場一体となって、楽しみましょう!》

舞台にいる皆はポカンとしている。

cralsがソロでエレキギターを弾き始める。
聞いたことのある旋律に、全員我にかえる。踊り手の踊るこの楽団のメインソングだ。

慎み深い踊り手が舞台袖からしずしずと出て来て舞い始めた。
しばらくソロでcralsが演奏し、サビの盛り上がる部分で皆が参入した。
crals音楽家がエレキギターを弾きながら、踊り手とステップを交互に踏む。その踊りにirisが参加した。
sirutoとraimuも旋律にアレンジをしながら奏でる。
観客席は沸きに沸き、皆立ち上がって声援を送ったり、飛び跳ねたりしている。

演目は大成功に終わった。
興奮冷めやらぬまま楽しげに帰っていく精霊達。それを見送った後、座長はcralsに抱きついた。
ありがとう!君の機転のおかげだ!と言って褒め倒す。
cralsは照れくさそうな笑みを浮かべ、

《これはみんなの協力あってこそや。俺一人じゃできんかった。》

と言い、演目の成功を祝う言葉を述べた。
その謙虚な態度に座長の褒めがヒートアップする。

終わらなさそうな座長のcralsへの褒めの言葉を尻目に他の団員が三人に話しかけてきた。
皆嬉しそうだ。
しばらくして、解放されたcralsと、存分に褒め終わった座長が混ざり、皆で改めて演目の成功と、それぞれの良かったところを夜がふけるまで語らった。

皆の笑い声が墨染めの空に明るく木霊した。
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