流星の四重奏

siruto、iris、raimu、cralsは夢見の劇場を訪れようとしていた。
以前、ここの精霊たちの演劇の手伝いをして、ここの面々が普段どのようなことをしているのか、興味が湧いたからだ。

「急に押しかけて大丈夫なの?」

《君たちならいつでも大歓迎!って座長さんがいっとったで?》

[まぁ、忙しそうなら顔を出しただけで帰るなりできるから大丈夫だよ。]

『いってみなくちゃわからないよね!』

和気藹々と話しながら歩くと、あっという間に到着する。

小高いところに出るので、劇場が一望できる。
団員たちが固まって何やら話し合っているのが見えた。

[忙しそうだね。]

その時、座長が顔をあげた。
邪魔をしては悪いと話しているsiruto達を見つけるや否や手招きをした。

「あら、呼んでいますね。」

《なんかあったんやろうか。》

突っ立っていても始まらないので、とりあえず降りることにした。

団員たちの側までかけ寄る。

『どうかしたんですか?』

irisが聞いた。
座長は経緯を話し始めた。

要約すると、のんびり屋の音楽家と共に楽器を奏でるメンツが不足しているらしい。
楽器が弾ける精霊との予定がことごとく合わないそうだ。
これは由々しき事態だ。
人員を割り振らないと劇自体が決められないので、忘れっぽい劇作家と一生懸命な舞台美術家が頭を抱えていたそうだ。
劇の開演まで残り一週間。かなりまずい状況である。

《俺らでいいならやるで?》

「そうね。このままだとまずいわ。」

『みんなで演奏できるの!?』

[私も賛成だよ。]

再び助けてくれるのかと座長は感心していた。
何度もお礼を言い、頼んだよ、と言った。

《先ずは役割分担よな…そのために演目を決めなあかんな。》

ここぞとばかりに忘れっぽい劇作家が進み出た。

《お、すでに案があるんか!さすがやな!》

劇作家は頷き、誇らしげに懐をまさぐる。しかし、直ぐにあれ、と言いながら辺りを見回す。
どうやら何処かに置いてきてしまったようだ。

慌てて楽屋に駆け込む劇作家。

《いや台本持ってないんかい!》

cralsのツッコミが炸裂した。
団員達は笑いに包まれた。これだけで劇になりそうなものである。





それからなんとかして台本を引っ張り出してきた劇作家が、それをsirutoたちに見せる。

「なるほど…私たちが出るのはこの最後の締めなのですね。」

《最重要パートやんけ!》

『うわぁ…今から緊張してきたぁ…。』

[これは絶対成功させないとだねぇ。]

主旋律は自分がやるので大丈夫だよ!とのんびり屋の音楽家が励ます。
sirutoはハンドパン、irisはハープ、raimuは白ピアノ、cralsはフルートを担当することになった。
音楽家の指導に合わせ、楽譜の通りに練習していく。
その脇では舞台美術家が四人の揃いの衣装を製作する。
慎み深い踊り手は振り付けがこれでいいのか座長に見せていた。

練習が終わり休憩になると、各自各々自由に過ごす。
sirutoは楽譜を忘れると大変だ、などとブツブツ旋律を呟きながらずっと練習している。彼女の頭に休憩という単語はあるのだろうか。

その横でirisは踊り手と楽しそうに創作ダンスを踊っている。可愛らしいうえに上手い。

cralsは、少し離れたところで劇作家とノリツッコミなどの掛け合いのの空け方について盛り上がっていた。一つの話題だけでよくもまぁ、あんなに続くものだ。

こんな感じでみんなの様子をraimuは観察しながら、演奏で固まった体をほぐすためにストレッチをしていた。

座長の計らいで、練習の間は劇場に泊まっていくことになった。
時間を効率的に使うためだ。

そんなこんなで次の日以降も順調に準備は進んでいった。
後半ぐらいには余裕も出てきて、せっかくならと座長がこの楽団の根幹を成すメインソングで、毎回踊り手が舞う曲を教えてくれたりもした。
この曲は、私たちに元気と勇気をくれるんだ。観客と一体になって楽しめるんだよ。普段流すのは記憶媒体に記録している音源だけれども、生演奏もいいね。そう座長は微笑んで言っていた。

『わぁ!すごい曲なんですね!』

「尊敬だわ!」

[ウキウキするよね!}

《皆と一体に…。》

わいわいと騒ぐ三人とは対照的に、静かに呟いたcralsの独り言は誰に聞かれることもなく空に消えていった。
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