①変えられない
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真瀬結羅、17歳
私には好きな人がいる
同級生、同じクラスの衣更真緒くん
生徒会にもいて、Trickstarで活動も
していて、世話焼きだけど頼もしい
優しくて気配りの出来る人
「どっかであったことあるか?」
初めてあった時、彼は私にそう言った
『え!?そ、そんなことないよ…
衣更くんみたいな格好いい子と出会ったら
私も忘れないってば』
そう言うと、彼は恥ずかしそうに微笑む
その姿に一目惚れをした
更にはそんな性格だ、惹かれないわけがない
でも相手はアイドル
真緒くんは特に人気も出ている
私が恋をしたり想いを伝えるなんてこと
許されないって、分かってる
それに
『おはよう、真緒くん』
「おう、おはよう!結羅、
あんずを見なかったか?」
『あんずちゃん?』
「そ!昼飯誘おうと思ってさ…」
そう言って頬を赤らめる彼は
いくら鈍い私でもわかるほど恋をしていた
『見なかったな〜、伝えておこうか?
真緒くんが一緒に居たがってたよ〜
って!』
「ばっ!言い方があるだろ…!?」
『え、違うの?』
「っ…ちが、わない……けど…」
『ふふっ、応援してるから!任せて』
「お、おう!ありがとな!」
そんな彼を見て胸が苦しいのに
彼が喜んでくれるのが嬉しくて、私は
自分の苦しい思いを無視して彼の恋を
ただひたすら応援してる
そんな時に夢ノ咲の伝説を、
スバルくんから聞いた
―「知ってる、マセマセ?
満月の日、夜7時に屋上からグラウンドに
向かって飛び降りると1ヶ月間だけ
過去に行けるって言うやつ!」
―『ええなにそれ!?』
―「明星くん、それは伝説であって
本当にしたら死んじゃうからね!?」
みんな苦笑いで聞く中
私だけが真剣にその話を聞いた
…真緒くんが、あんずちゃんを好きになる
その前に私と出会って、私がもっと
頑張っていれば…変わったのかな…
そんな気持ちを抱いている自分が嫌になる
けれども、悲しいことに私だって人間で
恋する1人の女の子なわけで。
自分の恋に、少しだけ頑張ろうって…
手遅れだからこそ期待してもいいでしょう
『……失敗したら死ぬ
成功したら………もう、後悔はしない』
そう誓った、満月の夜7時
私は、真緒くんの優しげな笑顔を
頭に思い浮かべて、身体を投げ打った
それが約1週間前の話
それから…
『……………過去に来たわいいけど何!?
1年前とか聞いてない!!』
そう、私は1年前に飛んだみたいです
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
「おはようございます、先輩!」
『おはよう!…………………え、今の人誰』
という訳で1年前…つまり私がまだ
夢ノ咲に来る前…なのだが
過去に飛んで早々、夢ノ咲講師陣…
そう、佐賀美先生と椚先生に遭遇
未来から持ってきた夢ノ咲の
プロデュース書類や着ている制服など
洗いざらい説明し、なんとなんと!
私が元の時代に戻るか、この時代の私が
転入確定するまで、保健室に置いてくれた
…え?書類とか戸籍?気にしたら負けよ
なんで保健室か?教室に私が常駐できる
わけが無いでしょう!!
そして今、アイドル科と普通科の架け橋
言わば繋ぎ役として動いている
もちろん元の時間軸に戻った時、仕事が
できるようにプロデュース資料も作る
言わば保健室が仕事場になっている
そんな感じで1週間
過去には過去の私もいるため家には行けず
保健室で寝泊まり。ご飯も佐賀美先生の
自腹ご提供(代わりにお仕事手伝ってる)
という環境下で過ごしている
勿論、1年前の彼らもいる訳で。
この過去に行けることを教えてくれた
スバルくんも、阻止してた真くんも
それを見ていた北斗くんも…真緒くんも
けど、肝心な私は何も出来ずにいた
もうすぐ2週間目…どうしたものか
『………………そもそも1ヶ月で帰れる?
…はぁ………』
正直、みんな過去だからこそ
私のことを本当に知ってて頼れる人が
居なくて辛い
戻りたいと思ったから行動したのに
いざ戻ると辛い…
『……やっぱり、無理なのかな』
と、呟いた時
「失礼します」
『はーい、どうし…………っ!?』
「えっと…体育の授業でちょっと足を
捻っちまって…あれ、先生は?」
入ってきたのは、体操服を着た彼…
過去の、真緒くんだった
『先生なら少し抜けてて…
私が手当するから座って?』
「いや、大丈夫、1人ででき……って
すみません!先輩に対して…」
彼はすぐ私のネクタイを見て、謝り
勢いで土下座をし始めた…………
この頃から既にこれが形だったのか…
『だ、大丈夫だよ真緒くん!
ほら座って!!手当するから!』
「…どうして、俺の名前を………」
『アイドル科の1年生はみんな覚えてるよ』
これから、私の同級生になる人
大切な仲間だもん
「そう、なんですか」
『うん、ほら座って!…左足だね』
プロデュース途中で培った手当が役立って
ほんとうによかった。そう思いつつ
真緒くんの足に触れた
『…………』
この足でこれから踊って、革命を
起こしていくんだよね
走り回って、ステップを踏んで…
あんずちゃんの元に向かうようになる
「あの、先輩?」
『!!あっ、ごめんね、ほら終わった!
授業まだあるし、戻っていいよ!』
暗い考えを払拭し、真緒くんに笑いかけると
まだ髪の短い彼は私の目を見て言った
「………いえ、あと15分くらいなんで
休んでいいですか?」
『わ、私はとやかく言う権利ないから!
椅子出すね…!』
なんてこった。過去に戻って10日程で
ようやく過去の彼とコンタクトを取れた
『はい、どうぞ』
「あっすみません!ありがとうございます!
…先輩は、どうして保健室に?」
『そうだなぁ…佐賀美先生のお手伝いを
してるんだ〜今の範囲は頭に入ってるから
だからこうして保健室の見張り番』
うん、咄嗟にしてはいいと思う
実際1年生の範囲は頭に入ってる
何も問題は無いだろう…あ、嘘
今この状態が問題しか残ってない
「凄いんすね、先輩…俺は色々追われて
毎日忙しいです」
『ふふ…生徒会に勧誘された?』
「っ!…気付けば役員に…っ!?!」
そう苦笑いする彼の頭を優しく撫でる
…未来の彼にしたくても、出来ないこと
だから…過去の彼にするなんて卑怯だけど
『そっか〜頑張ってるんだね。お疲れ様
…けど、絶対無理はしないでね!』
「っ……はい、ありがとうございます」
未来の貴方には、私より可愛い子が
あなたの隣にいるから
この瞬間、今だけは………今だけ…
「先輩、名前聞いてもいいですか」
『っ!?!?!?』
名前…どうしよう…………来年私が来たら
さすがにびっくりするよね…だから……
えっと…名前…………
『さっ、サリ〜!!!!』
ごめんスバルくん、借ります!!!
「さり?…紗里さん?」
『そ、そう!』
よくわからないけど勘違いがいい感じに
名前を生んでくれたようだ
「衣更真緒です…って、知ってますよね」
『う、うん!バッチリ!』
ホッと一息つくと、聞こえてくるのは
授業が終わるチャイムの音
『あ、チャイム鳴ったね。真緒く…
衣更くん、時間だよ』
「真緒」
『ん?』
「…真緒で、いいです!!」
『じゃあ…真緒くん』
そう呼ぶと少し顔をあからめる、
幼げのある真緒くんは少し可愛くて
でもやっぱり格好よくて
「ありがとうございました、紗里先輩!」
『うん!』
私が知ってる彼より、まだ少し
何か違うものが満ちている気がした
.☆.。.:.+*:゚+。
翌日から、真緒くんはたまに保健室に
来るようになった
と言っても彼は真面目なので休み時間
もしくは昼休みが殆どだけど
「紗里先輩!」
「おはようございます紗里先輩!」
まだ、Trickstarを知らない真緒くん
自分の輝きに気づいていない真緒くん
だからだろう、私の知る真緒くんと違う
眩しさがあるんだ
…………今をしっかり生きてる真緒くん
過去に戻って、やり直そうとしてる私と
大違いで…やはり彼に釣り合わないと
実感してしまう
『ねぇ、真緒くん』
「なんすか?」
昼ごはんを一緒に食べながら、私は彼に
ひとつの質問をする
『好きなタイプってどんなの?』
「…好きなタイプ…ですか?」
『そう』
これは以前、私が未来の真緒くんに聞いた
ことのある質問
―『真緒くん、好きなタイプってある?』
―「ん?そうだな〜…仕事に一生懸命で
髪はミディアムかな、茶髪がいい」
―『あんずちゃんじゃん』
―「ばっ…違…………」
―『はいはい、嘘つかないの〜』
―「…お前には何でもバレるなあ」
―『当たり前でしょ』
―ずっと、真緒くんを見てたんだから
あの時、私は確かに絶望した
過去の彼もタイプが一緒だろう
これを聞けば諦めが着く。そう思った
「と、特にないですよ…!」
『嘘だ〜』
「いえいえ!ほんとです!その……
好きになった人がタイプっていうか…」
『ん〜じゃあ…仕事に一生懸命で
髪はミディアムヘアの茶髪かな』
「へ?」
『真緒くんが好きになる人!
私の予想は当たるよ〜』
馬鹿な私、また自分の首を絞める
分かってる…分かってるのに……
「仕事に一生懸命で、髪はミディアム…
茶髪、ですか?」
『うん!』
「俺は黒髪の方が……」
『あ!もうこんな時間!予鈴なるから
戻った方がいいよ!』
「ちょっ、紗里先輩…!」
無理矢理保健室から追い出してから
私はしゃがみこむ
『……………何しに、ここに来たんだろ』
過去に来てもやっぱり私は
頑張ることなんて出来なかった
結局、素直で優しい真緒くんをみて
未来を変えようとすることなんて
私にはする勇気がなかった
『………もうすぐ、1ヶ月』
この時代の…真緒くんとお別れ
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
『…………はぁ』
あれ以降、真緒くんは保健室に
来なくなった。
それがいい、私と関わらない方がいい
元々この時代にはいないんだ
寧ろ関わることがダメなんだろうけど
佐賀美先生と椚先生にお礼を言い
また半年後、と挨拶を交わす
どうしたら戻るのかわからなくて
公園まで歩いてみれば
『Trickstarの皆…??』
4人が揃って桜の木を見上げている
あれがスバルくんの言ってた木?
話す事に桜の花が咲いた〜っていう…
『……ここから、始まるんだね』
もう時期隣にくるのは、私じゃないあの子
悔しいな、せっかく過去に来たのに
結局なにもせずに終わっちゃうなんて
『………けど、私の知らない皆を見れて
ほんと良かった』
きっと真緒くんも私のことを忘れちゃう
この時間を思い出さなくなっちゃうと思う
それでもいい。そのほうが良い…でも
『………あの間だけは…っ…』
私のことを、私のことだけを
女の子として…見てくれたよね
そう思い、まだ何者でもない4人の
後ろ姿を見て、私は公園を出た
宛もなく、ただ元の世界に戻るのを待つ
帰り方も分からなく、どうしようかと
思った時、来た時の方法を思い出した
『…また飛ぶのかな?』
そう思い夢ノ咲目掛けて歩き始めたら
「さっ、紗里先輩!!」
『…真緒くん』
「その……お久しぶりです…」
最後の最後に、出会ってしまった
逃げることも無いので、立ち止まり
真緒くんとお話をする
『久しぶり、かな』
「はい…最近金星杯の準備で忙しくて
中々行けない状態なんですけど………
さっき公園から見かけて…」
『ううん、大丈夫だよ!最後に真緒くんと
あえて良かった!ありがとね』
そう言うと、彼は目を見開く
「最後?」
『うん。私、夢ノ咲から離れることに
なったんだ』
半分嘘で半分本当
確かに私はこの時間軸からは消える
自分の居た夢ノ咲に戻る、それだけ
なのになんで…悲しいんだろ
「そ、んな…俺、先輩のこと」
『うん?』
「っ…やっぱ、何でもないです」
『嘘つかないの〜真緒くん嘘つくとき
頬に手が行くんだから!』
「っえ!?本当すか!?うわぁ……」
そう返事する彼が面白くて私はつい
笑みが溢れる。すると真緒くんは
真剣な眼差しで私を見た
「……どこに、行くんですか?」
『どこだろうねぇ』
「っ、ちゃんと答えてください」
『…真緒くんには関係ないよ』
「っ関係あります!」
『なんで?』
君はきっと私のことを忘れる
忘れて、あんずちゃんと出会って
惹かれて…好きになって行くんだよ
「っ、それは………」
『……ねぇ真緒くん…例えば全部夢だと
したら、何を言ってもいいと思う?』
「へ?」
突然話の逸れた質問に驚きつつも
真緒くんは考え込んでから
「…暴言じゃないならいいと、思います
…夢なら、目が覚めて忘れて…
言われた相手も幻だから……」
『そっか』
今、この1ヶ月弱を共に過ごした真緒くん
その真緒くんはあんずちゃんを知らない
私としっかり向き合って話してくれてる
そんな真緒くんだから
『少しの間だったけどありがとう真緒くん
………好きだよ、ううん…大好きだった』
元の世界に戻ったら頑張るから
心から応援できるようにするから
…今だけ、言わせてよ
「っえ………紗里先輩いま………」
『…行かなきゃ…真緒くん、ばいばい』
「っ、紗里先輩!」
私はそのまま夢ノ咲に向かって走った
…………幸せだったな、見てもらえて
ほんの少し、2人保健室で話した事は
決して未来に反映されるものじゃない
けど、私に対して一途に話をしに来てくれた
……それだけで、いい
屋上に辿り着いて深呼吸
『…1ヶ月間ありがとう、この世界それに
………まだ何者でもない真緒くん』
『…………』
目を覚ませば布団の上
見慣れた景色に、私の部屋だと自覚する
『戻ってきたんだ……けど…』
どうしてここに居るんだろ…
時計を確認して、少し早いけど起き上がる
やけに涙を流しながら目覚めたせいなのか
目元が腫れている
『隠せるかな』
コンシーラーをのせて、いつもより早めに
家を出る。玄関を出て夢ノ咲への通学路に
ついた時、後ろから声が聞こえた
「おはよう、結羅!」
『あっ、おはよう真緒くん』
眩しい笑顔を向けられて、つい私も微笑む
やっぱり変わらなかったか、と苦笑い
『早いね?』
「せっ、生徒会の仕事があるからな〜
結羅も朝早いな、仕事か?」
『ううん、なんだか早く目が覚めて
……………ながい、夢を見たんだけどね』
「…そっか〜どんな夢なんだ?」
『……過去の皆と、お話する夢』
貴方が、私に生き生きと
お話をしてくれた、ほんの少しの
幸せで楽しかった時間
そう思って夢ノ咲への道を見る
結局どれだけ願っても変わらなかった
隣にいる真緒くんはもう
私を見ていない
『過去を』
「ん?」
『…なんでもない!行こ、お仕事
あるんでしょ?手伝うよ!』
過去をやり直すほど、君が好きだった
変わらなかったけれど
………淡い気持ちを、ぐっと胸の奥に
気付かれないよう押し込めた
「……………紗里、先輩…」
彼の声は、彼女には聞こえていない