どうしようも出来ないこと
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「お前が男だったら……もう少し
絡みやすかったんだけどな」
―お前が男だったら
その言葉は、離れることなくずっと
胸の中にこびりついている
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
「おーい、結羅聞こえてる?」
『!う、うん…』
友達にそう言われ意識を覚醒させる
思い出していたのは中学のこと
仲の良かった彼…衣更真緒に
私は密かな片想いをしていた。
―『真緒〜かえろ〜!』
―「おう!いいぞ!」
我ながら頑張ったつもりだ。けど
当時から人気の真緒。周りの女の子達は
それをよく思わなかったらしく、私はよく
裏で悪口を言われていた
それでも良かった。真緒に伝わらず
こうして隣を歩けるだけで
―「お前が男だったら……もう少し
絡みやすかったんだけどな」
彼にとって何気ないことだったはずだ
けど、私にとっては絶望の言葉
だって彼は私のことを そういう対象 で
見ていない…私の願いは届かない
そうはっきり言われたのと同じだと
その時感じてしまった
―『そうだね〜』
あの時私は、上手く笑えてただろうか
3年たった今、彼はアイドルをして
私は普通科でそのライブで見るだけ
以前見た時、可愛い女の子と歩いているのを
たまたま見てしまった
噂には聞いていた プロデューサー の子
彼を輝かせてくれる人
『……』
「ねぇ、ほんと大丈夫?ずっとぽーっと
してるけど…今からライブだよ!?」
『う、うん大丈夫!』
意識を覚醒させて、友達をしっかりと見る
今日はTrickstar…真緒の居るユニットの
ライブ。席がいいとか悪いとかじゃない
ただ久しぶりに彼を見たくなった
しつこく片想いして、もう届かなくても
それでも…
「ちゃんとボックスに入れないとね!」
『うん…!忘れないようにしなきゃ』
そっと手で包み込んでるのは
初めて綴った想いの手紙
名前も書いてない。ただのファンとしての
好きという想い…他の人と違うのは、
想っている長さ。これは負けない
「あっ!始まるよ結羅!」
『う、うん…!!』
やっぱりアイドルで、楽しそうな真緒
あの時と変わらない笑顔や格好良さで
ずっと、気持ちを伝えられなかった私が
霞んで見えないほどの輝きを出す彼を
遠くから見つめ続けて
「…!!」
『っ!』
曲のイントロでの出来事
1秒、2秒……その2秒間、彼とパッチリ
目が合っている気がした。目を見開いた彼と
その姿を見て同じように動きが止まる
…………見間違いだろう
私の周りには真緒を好きな人もいる
人が多いと目が合ったという錯覚さえ
起こしてしまう。心臓に良くないな…
気のせいか、それからチラリチラリと
真緒と目が合っている気がする中
あっという間にライブは幕を閉じる
「楽しかったね〜!」
『そうだね………』
帰り際、プレゼントボックスの前に行くと
女の子がボックスの整理をしていた
…以前見た子だ。プロデューサーの女の子
『あの、これもお願いしていいですか?』
直接伝えると、その綺麗な瞳と
目がパチリと合った
「勿論です!…お名前、書いてませんが
大丈夫ですか?」
『はい、これで大丈夫なんです』
この手紙に込めた小さな願いが
「分かりました!衣更くんにしっかり
渡しておきますね!」
君の心に届きますように
私と気づかなくていい。貴方のことを
応援している人がいるよってことが
伝わればそれでいいの
『真緒に、頑張れって伝えて下さい』
「えっ……!あっ、あの…」
撤去も始まってるし皆もう会場から
出てしまっている。迷惑になると思い
去ろうとすると、呼び止められて振り返る
プロデューサーの女の子は私をじっとみて
「あなた、もしかして……」
「お〜いあんず〜」
ふと、誰かが呼ぶ声…あんずというのは
彼女のお名前だろう。そしてこの声は
「あっ、はーい!」
『じゃあ、私はこれで!』
「あっ……………」
聞こえないふりをして私は友達の元へ戻る
「おかえり〜!いこっか!」
『うん』
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
「衣更くん、これ」
着替えが終わり、荷物を持って
あんずの元へ向かうと、ふと沢山の手紙を
見せられる
そこには全て俺の名前が書かれていた
「お!全部俺宛か…ありがとな!」
そう言って手紙を受け取ろうとすると
ひとつの封筒を先に俺に渡す
「?」
「いまさっき、衣更くん宛に貰ったの」
後ろを見るが、名前は書かれていない
赤い花のシールで止められた白い封筒
ただ表面にひとつ 衣更真緒くんへ と
書かれている字に見覚えがあった
「あんず、これ渡してきたのって」
「普通科の女の子かな…?背は私より
少し小さくて…あとね…伝言を受けてて」
―真緒に、頑張れって伝えて下さい
「…………………ゆ、うら………?」
ライブ中に見つけた見覚えのある子
嬉しくて、申し訳なくて、思わずじっと
そして何度も見つめてしまった。
ずっとほんとの気持ちを伝えられなくて
3年前、俺の勝手で傷つけた女の子
急いで封を開き中身を見る
【⠀衣更真緒くんへ
初めてお手紙を書きます。
伝えたいことが沢山あるのですが
まとめ切れませんでした。
貴方のことをずっと応援しています
ステージで輝いて、笑う貴方も
これまで頑張ってきた貴方のことも
大好きです。ずっとずっと大好きです
これからも頑張って下さい 】
この字は、俺がずっと愛しいと思っていた
ノートを見せてもらう度、胸が高鳴って
緊張していた字
「っ…あんず、これをくれた子は…!」
「衣更くんが来る前に帰っちゃったけど…」
「っ…俺行ってくる………!」
☆*☆*☆*
『じゃあまた明日ね』
「また明日〜!」
分かれ道で友達と別になり、
1人で帰路に着く
ライブの後からか、中学時代に真緒と
歩いたこの道を思い出す
―「結羅、今日また寝てたろ」
―『寝てたけどノートは取ってるよ完璧!』
何気ない話をして帰るのが楽しかった
2人きりが嬉しかった
たくさん笑って、もっと一緒にいたいな
って毎日思って………
『………気持ちを伝えられなくて…
結局…あの言葉の後は一緒に帰ることも
話すことも無くなって』
あの時も遠くから真緒を見つめ続けてた…
分かってた、真緒から話しかけようと
してくれてた事や誘おうとしてくれてた事
私を心配してたこと…全部わかってた
結局そのまま卒業して、でも…
やっぱり真緒を見ていたくて夢ノ咲の
普通科に入って、今日とうとう手紙まで
渡してしまった
諦めが悪いにも程があるよ私
けど、今日のあれが最後
真緒は人気になった。手が届かなくなった
これでちゃんと諦められる
『……なんで…』
溢れ続けるのは楽しい思い出
幸せだった思い出
今になってこんなに溢れても困るんだよ
「結羅…!」
『!!』
後ろから聞こえる声は、まさに私の心に
溢れて止まらない想い相手
なんで来たの…なんで私って気付いたの
名前なんて何も書いて無かったのに
「この手紙、結羅だろ!?」
『………どうしてそう思ったの?』
振り返るのが怖くて、立ち止まって
俯いたまま私はそう尋ねると
「字を見て分かったよ。よくノート
見せてもらったからさ…」
『そっか』
徐々に近付いてきているのは分かる
けど私は意気地無しで
振り返ることも、立ち去ることも出来なくて
その場で立ち竦んでしまう
私の少し後ろで、足音が止まった
「ずっと、謝りたかったことがある」
『なに?』
「…お前が男だったらって…3年前言った事
ずっと謝りたかった。俺のあの言葉で
疎遠になっちまって…ずっと後悔してた」
その言葉に目を見開く
てっきり彼は忘れていると思っていた
あの言葉に囚われていたのは、
私だけではなかった
「ずっと、本当の気持ち伝えられなくて
言ったあとも…見つめ続けることしか
出来なかった」
『………うん』
「夢ノ咲の普通科に居るって知った時
正直汚い手を使ってお前と話す機会を
作ろうともした。けど上手くいかなくて」
『…汚い手…?』
真っ直ぐな彼がそんなことをしてまで
あの言葉に囚われて、私に話しかけようと
していたなんて信じられない
「そう。やたらアイドル科に書類を
頼まれたりしなかったか?」
『…ある』
「それ全部だよ。お前に会いたくて
俺が先生に頼んだんだ」
驚きで思わず声が裏がえるが
そんなことはどうでもいい
彼は今なんと言った? 会いたくて ?
そういった気がする
『…なんで、そこまで気にして』
「………あの言葉は、ただの照れ隠し…
ただの強がりだった。男だったらって
思ったことなんてない」
『……だから、どうしてそこまで気にして』
「気になるならこっち向いてくれ」
そう言われ背筋に冷や汗が流れる
どうしたらいい。今ならそのまま
駆け出すことも出来る。いや、きっと
すぐ追いつかれてしまうだろう。ならダメだ
「…結羅、頼む」
…そんな悲しそうな声をしないでほしい
―真緒には、笑っていて欲しいの
『…真緒』
「好きだ、ずっと。あの頃から
結羅の事がずっと好きだから
だからずっと話がしたかった」
振り返り、久しぶりに近い距離で真緒を
見つめると、早々に彼はそう口にした
突然の言葉に私は瞬きを何度も繰り返す
『………う、そだ…』
「おいおい、人の告白を疑うなよ
本当じゃなかったらさっき言ったみたいに
あの手この手使って話そうとしないよ
まぁ…全部タイミングがあわなかったけど」
『…………ま、お…』
「…あの時は、ごめん…中学で出会って
帰るようになった時から今もずっと
結羅が好きだ」
疎遠になったのに、真緒はずっと
私のことを…?そんなこと、ある…?
…嬉しくて涙…が…でも……私も
『私も………真緒がずっと好き。
好きだから帰りも誘った、話もした
…手紙も、プロデューサーさんに渡した』
「…付き合って、くれませんか」
ちゃんと、伝えなきゃ
『…3年、空いちゃったけど大丈夫?』
そう聞くと
「3年空いた分そばにいてくれよ」
なんて言うから…ほんと
…そういうとこ、ずるいよ
『……うん、そばに、いたい…っ』
「!やべ……待って嬉しくて顔の筋肉が
緩みまくってる…」
『えっ、見せて見せて!』
「嫌に決まってるだろ!!」
覗き込もうとすると、真緒は不意に
私の腕を掴んで引…
『…………!』
引…き寄せて…………
「………ずっとしたかった」
『へっ、変態!』
「キスひとつで変態なのか!?」
『ばか!すけべ!むっつりすけべ!』
「彼氏に対して酷くね!?」
『あほ!天然たらし!でもすき……』
「っ…急にデレるなよ…可愛すぎるから」
また視線をしっかり合わせ
「ライブ中にお前を見つけたんだ
嬉しくて何度も見ちまったよ」
『…あれ…嘘じゃなかったんだ…』
「えっ?」
『いや…私の考えすぎなのかと……
周りにも沢山真緒のファンがいたし』
「可笑しいなぁ俺かなりファンサした
気がするんだけど…」
『あっ、あれ全部私にだったんだ』
「自分の可愛さを気づいていない俺の彼女
可愛すぎる件について」
?真緒は何を言ってるんだろう
じっと見つめると、真緒は優しい表情で
私を見つめ返す
「……3年空いた分、ぜっっっったい
幸せにするから」
『ははっ、プロポーズみたい』
「…それでもいいけどな」
『ん?なんて?』
「いーやなんでも」
真緒は私の手に触れ、そっと握りしめる
「一緒に帰ろう」
―『真緒〜帰ろ!』
『!うんっ』
☆*☆*☆*
「結羅〜今日のライブ行く!?」
『うん!行くよ』
「なら一緒にいこーよ!」
『もちろん!』
普通科の校舎から出てアイドル科の
ライブステージである講堂へ向かう
入る前に…
『あっ、ちょっと用事があるから
ここで待ってて!』
「ん?いいけど、早くね〜!」
『うん!』
講堂の外、木々が生い茂る中に
『真緒!』
ユニット衣装を着た愛しい彼の姿
「結羅、今日も来てくれたんだな」
『当たり前でしょ。大切な彼氏を見ない
彼女なわけないじゃん』
「………はぁぁぁぁぁ」
『ん?』
何故か突然ため息をついてしゃがみ込み
『真緒?』
「そういうと………………………こ…」
突然顔を上げて黙りこくった
『?……………!!!!ちょっと!!
なにスカートの中見てんの!!』
「違っ…不可抗力!たまたまだ!!!
そもそもスカート短くね!?だから
ピンクの下着が見えるんだぞ!?」
『ガッツリ見ないでよ変態!』
「すぐ変態って言う!俺は健全な
男子高校生だ!」
お互いムッとしかめっ面をしてから
くだらなさすぎて笑い合う
「…今日の席、どこ」
『センター左通路、前から6列目』
「了解」
これは彼の安心剤。私が何処にいるのか
確認することで、安心できるとか。
『頑張ってね』
「勿論。絶対結羅を見るから」
『恥ずかしいからやめて欲しい』
「いーや見る!」
そう言って私をぎゅっと抱きしめる真緒
3年経って、私より大きくなった体格と背で
安心できるほど優しく私を包み込む
「…充電中」
『あははっ…沢山充電してくださいな』
「あ、まじ?じゃあ」
そう言って唇を重ねてくる真緒は
『…やっぱり変態』
「やっぱりって何だやっぱりって」
『でもやっぱり大好き』
「うっ急に来るなよ………俺も好きだ
ちゃんと見ててくれよ」
『勿論』
3年経ってもやっぱり格好良くて
キラキラ輝く彼はいつまでも
私の中でいちばん素敵な男の子だ