①「そいつのこと大好きなんだなっ!」
お名前を教えてください!!!
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おはようあんず!おっ!もしかして
プロデューサー2号か?」
登校途中、見慣れた女の子の背中を見つけ
声を掛けると、隣には知らない女の子。
前から聞いていたプロデューサー第2号
もしかしたらこの子がそうなのかもしれない
そう思い俺は声をかけた
『あっ……はい!』
「やっぱり。はじめましてだよな
俺はTrickstarの衣更真緒!
悩み事があればいつでも頼ってくれ!」
『あ…真瀬、結羅です…!
よろしくお願い致します!』
「ははっ、そんな固くなるなって!
同じ歳だろ?タメでいいぞ」
『うっ、うん…!』
そう返事した新しい転校生は、
緊張したような、ぎこちない笑みを
俺に向ける。それが俺と彼女の
最初の出会いだった
☆.。.:*・
「結羅〜!」
『あっ……!どうしたの?』
「いや、すげぇ荷物もってるな〜って
思ってさ。手伝おうか?」
『ううん、大丈夫!!』
それから1ヶ月した時の放課後
彼女は1人で大きな箱を持って廊下を
歩いているのを見かけ、声を掛けた
「そうか?」
『うん!生徒会の仕事あるんだよね、
それにそんなに重くないし大丈夫!』
「ならいいけど…無理はするなよ!」
『ありがとう真緒く……衣更くん!』
不意に名前を呼ばれてドキッと高鳴る
胸の鼓動。それを無視して俺は言葉を
少し慌て気味に紡いだ
「全然、名前でいいぞ?俺もお前のこと
結羅って呼んでるし!」
『っほ、んと………?』
「おう!」
『…嬉しい……ありがとう…!!じゃあ
…真緒くんっ!』
たったひとつ、そう言っただけで、
結羅は嬉しそうに笑った
その笑顔に、俺も自然と頬が緩む
「おう!悩みとかあれば言えよ!
なんでも聞くからな!」
緩む頬を誤魔化すため、笑いつつそう
言えば、彼女はあ、と声を出す
『プロデュースのことなんだけど…』
「お、なんだなんだ?」
『次のライブでね、こういう演出を
考えてるんだけど…真緒くんから見て
Trickstarにこの演出は有りかな?』
箱を置いて差し出された資料。
俺は彼女の隣に立ち、資料を覗き込む
そこには、転校して1ヶ月とは思えない
ほどのクオリティと考察、完成された予算案
セットアップ、集客………
全てを把握しているようだった
「すげぇな結羅!!この案、
俺はいいと思う!会長からも許可は
降りるはずだぞ〜!」
『ほんと!良かった…じゃあこれで
天祥院先輩に提出するね…!』
「おう!正式に通ったら楽しみにしてる!」
『ありがとう!じゃあ、また』
箱を再び持ち、彼女は去っていく
「………すげぇ仕事頑張るな〜…けど、
あれは応援したくなるわ」
頑張れ、と背中を見ながら応援し
俺は生徒会室に足を運んだ
それからだろうか
俺はよく結羅を気にかけるように
なって、困っていたらすぐ手伝うように
なっていた。
皆もそれをわかっているのか、苦笑いで
世話焼きをしてる俺を見ているけど
俺からすればそれでいいと思えた
そしてある日
『……真緒くん、実は相談があって』
「相談?どうした?プロデュースか?」
『ううん、個人的な話なんだけど…』
「全然いいぞ!んじゃ、放課後どうだ?
今日何も無いし!」
彼女から相談を持ち込まれ
特に予定のなかった俺は放課後に
話を聞こうかと提案した
『い、いいの?』
「俺から提案してるからな〜」
『っ……ありがとう、真緒くん!!』
勢いよく頭を下げてお礼を言う結羅
そのお辞儀が酷く綺麗で、俺は思わず
笑って返事をした
「んじゃ、放課後迎えに来るよ」
『うん!お願いします!』
いつもより嬉しそうな笑顔で
結羅は笑った
☆
「おーい結羅〜」
隣のクラスを覗き込んで名を呼べば
結羅以外の奴らも俺を見る
いや、そんなに声でかかったか!?
『あっ、真緒くん!』
「お待たせ!行こうぜ!」
『うん!…じゃあ、真くんまた明日!』
「じゃあな真!また明日!」
「う、うん…!また、明日…!」
走ってきた結羅の姿を確認して
俺は彼女と2人正門を出た
「…衣更くん、もしかして……
結羅ちゃんのこと…?」
商店街の中、何気ないことを話しながら
不意に視界に止まった喫茶店を指さす
「あそこでいいか?」
『!うんっ』
2人で入り、テーブルに案内され
俺はメニュー表を開く
『真緒くんはブラックコーヒー?』
「え、なんでわかったんだ?」
『ふふっ、寝不足が顔に出てるから』
「うげ……さすがだよ、プロデューサー」
そう言いながらメニューを見るが
結羅は一向にメニューを見ずに
俺を見ていた
「結羅?」
『ん?』
「メニューもしかして決まってる?」
『うん!入る時に!』
「そっか〜、じゃあもう頼んじまうな!」
店員さんを呼んで俺がコーヒーを頼むと
『いちごとプリンのカスタードパフェ
お願いします!』
満面の笑みで、彼女は噛まずに注文した
…え、まじ?これ頼むの?でかくね?
「かしこまりました!失礼致します」
店員さんもつられたような笑顔でそう言うと
そのままカウンターに戻って行く
それを見送ってから、俺は彼女に聞いた
「…あのパフェでかくね?」
『ん?大丈夫だよ!』
「そ、そうか?」
こんな小さな体に全て収まるのか
と思えば不思議で仕方ないが
あまり深くは気にしないでいよう
「んで?相談って?」
『あっ、そうそう!…真緒くんって、
今恋愛したいと思う?』
「……は?」
突然の言葉に俺はキョトンとしてしまう
…恋愛??俺が?
『真緒くん?おーい』
「っ、悪い!恋愛、だよな…んー…
あんま考えてなかったけど…今は学校とか
Trickstarで活動できるのが楽しいから
しなくていいかなとは思うよ」
『………………そっか』
それだけ言って、結羅は水を1口
口に含んでふぅ、と息を吐いて
『………好きな人が、いるんだけど』
「好きな人?」
『そう。それが今日相談したいこと』
相談したいこと、を話始めた
『好きな人が、振り向いてくれなくて』
「なるほどな。付き合ってはないのか?」
『まぁ…………今は…』
「そっか…その人がそんなに好きなのか?」
そう聞くと、結羅は俺を目を見て
泣きそうな顔で笑いながら言った
『…好き、大好きだよ』
辛そうなその姿に、俺も胸を締め付けられる
同時に、その相手が誰かわからないけど
俺を見て言うから錯覚すらしてしまう
まるで俺に言ってるような、そんな錯覚
「その気持ちがあれば大丈夫だ!」
『………………っ…うん……』
「俺が出来ることなら手伝うし!
応援してるからさ!」
『…ありがとう』
「おう!だからそんな辛そうな顔
するなって!幸せ逃げちまうぞ〜?」
『…そう、だよね…!ありがとう真緒くん』
そんな話をしていると
コーヒーと一緒に大きなパフェが
彼女の目の前に置かれる
…………でかくね?
「ま、マジでそれ食うのか?」
『うん!ここのパフェ大好きなんだ〜
後もうひとつ好きなのがあるんだけど
…………ねぇ真緒くん、土日は空いてる?』
突然の問いかけに驚きつつ
俺はんーと思考を働かせる
「土曜日なら空いてるけど…」
『良かった…良ければ1日、私に
付き合ってくれないかな?』
「?」
彼女はニッコリと笑った
☆.。.:*
土曜日 AM10:00 夢ノ咲学院前駅
『真緒くん、おはよう!待った…?』
「おはよう!全然待ってな…………っ…」
振り返り、彼女の初めて見る私服に
俺は思わず呼吸を忘れた
白いトップスと黒のスカート
胸元にはピンクのネックレス
左手の薬指には同じピンクの指輪が
嵌められている
髪型といい服装といい、全てが
俺好みのものだったから
「………かわいい」
『へ?』
「すっげー可愛い…」
そう言ってからハッとする
コイツには好きなやつがいるのに
俺は今何を言ってんだ!?
「わ、悪い………!!」
『…っ、ううん!嬉しいありがとう!
…今日はね、少し遠出をしたいんだ』
そう言って笑う結羅
「それはいいけど…何処に行くんだ?」
『ふっふっふ…』
「…こ、こは?」
『喫茶店。ここのパフェが凄く凄く
美味しいの!どうしても食べたくて』
…え、そんなパフェ好きなの?
この小さい体に?また??
サンプル見る限りやばい大きさだぞ?
「お、おい結羅…」
『すみません、2人で!』
「……………」
食べない選択肢はないようだ
俺が意見を伝える間もなく注文。
そして待つこと7分弱
俺の携帯が何個あればいいのか、それほど
大きなパフェが目の前に現れた
『いただきますっ!ほら、真緒くんも』
「え、俺も?」
『私一人じゃ無理だもん』
だと思ったよ!!
「…うま……」
『んふふ〜おいひい……真緒くんは
こっちのクリーム担当ね、溶けちゃう!
私はこっちのクリーム行くから!』
「お、おう?」
…俺は結羅とこのパフェを
シェアするために呼ばれたのだろうか
…いや、頼られてるんだ…そうだ
そうだろ俺?もしかしたらこの前言ってた
好きな人のことでまだ悩みがあって
空元気かもしらねぇだろ俺?
1人悶々としながら担当と言われた箇所を
食べていると
『…このパフェ、大好きなんだ』
少し、暗い声で結羅は言った
さっきとは違う声音のせいか
俺は腕を止めて彼女を覗き見る
『…その、好きな人とね。初めて来て
初めて食べたの、これ…初デートでさ』
「…でも、付き合ってないんだろ?」
『うん。だから…彼はきっと…覚えてない
でもいいんだ〜!その人が忘れてても、
私が覚えてるからさ!』
「結羅」
なんでそんな奴に惹かれたんだ?
俺なら…俺ならそんな思いさせないのに
『…人生の中に恋愛があるじゃん?
だから人生に何かあれば、必然と恋愛にも
何かある。嫌われるのは一瞬。
離れられるのも一瞬…』
「…俺は」
『うん?』
「俺は、結羅から離れない」
『…え?』
自嘲していた彼女に、俺はそう言った
「……いや、なんでもない」
『ふふっ、変な真緒くん』
その笑顔が、俺に向けばいいのに
…結羅の気持ちが向いてるのは
俺ではない別の誰か
『けど真緒くんと来れたから!
…今日だけ私のワガママを聞いてください』
分かってるのに、切なげな目で俺を見て
そう言うから、俺に勝ち目はないんだな
と実感してしまう
「…おう」
『ありがとう!』
その後
アクセサリーショップ、腕時計屋
化粧品、本屋と順に回って
『ここ!』
「ここ?」
次に来たのはスポーツ用品の店
俺がよく来る所だ
『1度来てみたかったんだ〜』
「なにか探してるのか?」
『うん!』
頷いて彼女は店の中に入る
迷わず店内を歩いて行って、俺を見た
『…真緒くん、これ似合いそう』
そう言って指を指したものは
ちょうど俺が気になっていたもので
「やっぱ結羅もこれに
目が行くよな〜!」
『…今日1日凄く真緒くんを振り回して
色々付いてきてもらったから、お礼を
させて欲しいの、これ、良かったら
プレゼントさせて欲しいな』
「っ!いや、俺はそんな大したこと…」
別になにかしてもらうために
俺は結羅からの誘いを受けたわけじゃ
ないし…!
『いいの!逆に受け取って…!』
「いやいやほんとに大丈夫だから!」
『すみません、これお願いします!』
「聞いてくれー!!!」
どうやら彼女は謎に決断力が固いらしい
気付けば会計を終わらせていて
紙袋を持って俺の元に戻ってきた
『はい、真緒くん!』
「…ほんとに、いいのか?」
『うん!お返しだよ!』
そんな、お返しって言うほど俺は
何も力になれてないけどな…?
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
『うん!』
「ありがとな」
『こちらこそありがとう!』
彼女が何故か切なげに笑った時
ピンクのネックレスが反射で光る
それが相まって、すごく可愛くて
儚い印象を受けた
☆.。.:*
「…?」
翌日日曜 家で漫画を読んでると
ふと外が明るくなる
「お、虹か!」
こういうの見たら、結羅が
喜ぶんだろうな〜。明日学校で
虹を見たか聞いてみよう
月曜日
目を覚まし、時計を確認する
…そろそろ起きる時間だ
家を出て、結羅のことを考える
今日もまた可愛いんだろうな〜なんて
考える俺はかなり危ないと思うが
仕方ない、許して欲しい
浮きだって家を出ればあんずと鉢合わせて
「おはよう、あんず!」
「あっ…おはよう、衣更くん」
登校中、結羅と会わないかと
ソワソワしているとあんずが俺をじっとみた
「…衣更、くん」
「ん?」
「……結羅ちゃんさ」
「結羅?もしかして先に行って
仕事してたりするのか?あいつほんと
サマーライブもそうだったけどさ、色々と
無理しすぎじゃね?俺が言わないと
あの時はもっと無理してたよな〜?」
そう聞くと、あんずは俯いた
すると急に泣き始めて
「あんず!?どうした!?」
「……………結羅ちゃんね…
…引っ越し、したんだって…っ………」
「…………はっ?」
.☆.。.:.+*:゚
「っ!スバル!北斗!真!」
「…………サリ〜…」
「っ…結羅が転校したって…」
「…誰にも連絡先を伝えず去ったらしい」
なんでだよ…せめて…
「俺には言えよ…っ…………」
その言葉に、周りのメンツが
眉を寄せて視線を逸らす
「…どこに行ったのも、分からないんだ
衣更くん、どうするの…?」
一際泣いたのは真だろうか
目を腫らしたまま俺にそう言った
「どうするも何も探すよ。当たり前だろ」
「…そっか……もし見つけたら、僕にも
教えて欲しいな。もちろん協力するよ」
「おう、ありがとな…!」
こうして突然、彼女は俺達の前から
姿を消した
必ず見つけ出す。それに………
「あいつも引っ越した土地できっと
頑張ってるだろうし…
俺も頑張らねえとじゃん?」
「衣更くん………」
そこから俺は、仕事の傍らで
彼女を探す日々が始まった
1ヶ月、3ヶ月………半年…
日付が過ぎるだけで、情報は得られない
「…そろそろ会いたくてやべぇかも……」
「衣更くん、大丈夫?」
「へ?結羅?」
「いや、結羅ちゃんの名前は
一切出してないよ……」
「真か……悪い悪い!どうしたんだ?」
疲弊してる中、俺の机の前に真がやって来る
「うん、今月なんだけどね」
そう言ってレッスン日の休みを伝えてくる
「了解、ありがとな〜…」
「はは…疲れてるね、衣更くん」
「…結羅の情報が無くてさ……
もう1年も会ってないんだぞ…さすがに…
俺が堪えるわ…」
「…休みの日、ちゃんと探してみるしか
ないよね…衣更くん、仕事の合間にずっと
結羅ちゃんのこと探してるみたいだし
結構大変でしょ?」
「まあな…けど」
あいつは、他の誰かじゃ埋まらない…
そんな、俺の心の居場所を掴んでるんだ
「あいつに会えるなら、これくらい
どうって事ないよ」
そう言って笑うと、真は目を見開いた
「っあのね…衣更くん……!
…………僕っ………情報を得たんだ!!」
―結羅ちゃんの、居場所の
「……………………!!!!ほんとか!?」
その言葉に、俺は反射で立ち上がり
真の肩を掴む
「う、うん……今度の休み…この日丁度
Trickstarのレッスンもないし、
行ってみたらどうかな…?また色々と
ハッキリとした場所が分かれば
衣更くんに伝えるね…!」
そう言って困ったように笑う真
俺は感謝しかなくて、ただ真にお礼を
言い続けた
「………結羅」
1年経って、ようやくお前に会える
少しは成長したかな
あいつに"相応しい男"に、俺はなれてるかな
…俺を見て、泣くかな?驚くかな
色んな想像をしては、弾む鼓動
頭の中で笑う結羅を想像して
俺は頬を緩めた