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昼休み
『衣更、ちょっといい?』
「!どうしたんですか結羅先輩?」
ふと名を呼ばれ教室のドアを見れば
ファイルを抱えた結羅先輩がいた
俺は急いで弁当を置いて駆け寄る
『生徒会のこの書類…』
そう言って先輩はファイルの中から
書類を1枚俺に見せる
覗き込もうと近付けば、ふわりと
好みの匂いが鼻を掠める
「(うわぁー、すげえいい匂い)」
なんの匂いだろ…柔軟剤?
シャンプー?もしかしたらなにか
フレグランスを使っ
『…きいてる?』
………しまった。意識がズレていた
ついそっちに意識が行っちまった……
「あっ、えっと、すみません…」
『ははっ、もう一度言うから
ちゃぁぁぁぁんと聞けよ?』
「うっ…はい」
そう言って今度こそ書類に目を通す
「ああ、それなら会長が持ってました
多分まだ会長の机の二段目にあるかと」
『二段目ね、わかった。
ありがと衣更、助かったよ』
そう言って先輩は俺の頭を
わしゃわしゃと撫でる
完全に子供扱いのように感じるが
別に嫌ではないから先輩にされるがまま
頭を撫でられ続ける
「お役に立てて良かったです」
『お役に立ちまくり。さすが衣更
頼りになる、大好きだぞ!』
「ははっ、俺も先輩のこと
尊敬してますよ!」
『ありがと!じゃ、また放課後』
「はい!」
そう言って先輩が教室から出ていき
一緒に食べていたメンバーの元に戻ると
スバルからじっと見られる
「…サリ〜、あの先輩と付き合ってるの?」
「は?なんでだ」
「え、付き合ってないの!?!?」
スバルの叫ぶようなその声に
少しばかり耳を塞ぎつつも
その言葉に対し頭を傾げると、真が横から
控えめに声を出した
「衣更くん、あんなに結羅先輩と
その…好きとか、近い距離で会話とか
してるのに付き合ってないのはちょっと」
「ん?」
どういうことだ?
ちょっと、って?おかしいことでも
俺はしてたか?
「衣更、あの距離だとお前は何でも出来る」
「お、おう?」
最後にとっておいた卵焼きを口の中に
放り込んで
「つまり触れる事もキスをする事も
抱きしめる事もできるという事だ」
「ぶふぉっ!!!!」
むせた
「サリ〜動揺しすぎ!なになに、
考えたことあるの!?」
「ねぇよ!結羅先輩はそういう男女関係
っていうか…そんなのじゃねえし」
「え、好きじゃないの?」
「先輩として尊敬してるって感じだな
格好いいし、頼もしいし優しいし」
「結羅先輩は女の人だけど、
確かに格好いいよね!」
「うむ。俺達も先輩を見習って
頼もしくなりたいものだ」
そう、先輩は憧れだ
「(先輩今日も格好良かったなあ)」
俺もあんなふうに頼れる人になりたい
なんて思っていたその3日後
その気持ちを上回る新しい気持ちが
芽生えることになる
.☆.。.:.+*:゚+。
3日後の放課後
「失礼します。結羅先輩いますか?」
「衣更か!結羅ならさっき、満面の
笑顔で教室から走り去って行ったぞ!」
「笑顔で…?」
笑顔だったかどうかは理由はまあ…
分からないけど…けど教室には
居ないみたいだ。
「部長、ありがとうございます!」
「おう!それはそうと衣更、バスケ部に
ついてなんだが、やはりユニフォームを
もうすこしヒーローっぽく」
「急いでるんで失礼します!」
嫌な予感がして部長の言葉を遮り
急いで教室から出た。
「笑顔で?…どこ行ったんだろ先輩」
俺の手には未記入の書類
結羅先輩の持っている記入例と
印鑑が無いと会長に提出出来ないものだ
早く見つけて、今日中には出したい
「先輩のことだから、レッスン室か?」
レッスン室、購買、屋上、それに
ガーデンテラス、飼育小屋
手当り次第探してみるが見当たらない
ふと体育館に視線を向けると
1人の男子生徒が体育館裏から出てきた
他学科の生徒だろうが、ふと気になって
体育館裏に足を進める
曲がり角を曲がって、ひとつの影
女子制服、艶がある黒い髪
俺と同じくらいの背丈
心做しか震えているその人は…
『あっ、衣更…』
「!?どうしたんすか、先輩!」
間違いなく、結羅先輩だった
『…何でも、ないよ』
「嘘つかないでください」
『いや、ほんとになんでも』
「何もないのに泣くような
先輩じゃ無いですよね、俺知ってるんで」
『(ほんと、誰にでも世話焼き)
………………………振られた、それだけだよ』
結羅先輩が苦笑いを浮かべながら
俺を見つめる
「…彼氏、居たんですね」
『さっきまでは、ね。プロデュースして
普通科の彼からすれば時間も合わないし
男ばっかで見えないから無理だ〜って』
何だ、その理由……ただ信じる自信が
無いだけじゃないか
「そ、うなんですか」
『気にしても仕方ない。ありがと、衣更』
「俺なら!」
思わずそう、反射で口にした
『?』
「俺なら先輩が見えます!
時間も合います!それに仕事だって
手伝えるし帰りだって…!」
俺は一体何を言ってるんだ?
けどここまでしたら黙ることは出来ない
『何が、言いたいの?』
「…俺じゃ、ダメですか」
あぁ、もう、本当に何言ってるんだ
『!!』
「年下は、ダメですか…先輩に似合う男になります。アイドルとして、
後輩として、男として強くなります
だから!!」
『…衣更』
尊敬している先輩で止まってたのに
「俺を、選んでください」
『っ!!!』
「1週間後、また告白します
それまで俺の事、しっかり見てください
必ず、惚れさすんで」
先輩の泣いてる顔見て、無理して彼女は
強がってるんだって、やっぱりどれだけ
尊敬しても、憧れても…女の子なんだって
そう実感したら、突然愛しくなった
無理させたくないって、俺も一緒に
この人の重さを背負いたいって…
俺が、大切にしてあげたいって思ったんだ
『い、いさ…』
「あ!そうそう、この書類の記入例が
欲しくて先輩を探してたんですよ!」
『…あ、それなら丁度私の机の中に…』
「んじゃ教室行きましょう!流石に先輩の
机漁るのは気が引けるというか…」
『…………』
「先輩?」
『ふふっ、分かった。教室に行こ』
そう言って、ようやく結羅先輩は笑う
まだ目元に涙は残っているけど、それでも
「…やっぱ先輩は、笑顔が一番ですね
すっごい可愛いです」
『んんん!?』
「じゃ、教室に行きますか!」
『え、待って、衣更?君そんなこと言うの
え?平然と?えっ…』
「先輩、早くしてください!」
『…………はーい!』
俺は、先輩の笑顔が見たい
あわよくば、俺の隣で
憧れだけだった先輩に、俺はこの時
初めて恋心を抱いた
『…………期待してるよ、衣更』
「?なんかいいましたか」
『なーんでもない!ほら、この書類
今日中に提出したいんだろ?
手伝ってあげるから、早くしよう』
「うっす!」
☆ミ
『おーい衣更〜』
「はい!どうしたんすか?」
翌日、俺の元に再び先輩がやってきた
前にやって来たときはなんとも
思わなかったのに、昨日の今日だ
すっげー可愛く見えてしまう
『これの印鑑持ってる?敬人が衣更に
渡したって言ってたからさ』
「あ!持ってますよ!書類どのくらい
あります?」
そう言ってノート二冊分ほどの書類を
抱えて先輩は
『これだけ』
と、何事も無いように言ったから
「んじゃ放課後、俺も手伝います!」
『いや、私一人で出来るか…』
「………俺が、先輩といたいだけなんです」
そう言って抱えてる書類の上から
先輩の手を包み込む
『!!』
「それに一緒に書類終わらせたら
帰ることできますよね?
最近暗くなるの早いんで、送りますよ」
『え、だ、大丈…』
「……………」
『お、お願いします』
俺の無言の眼差しに堪えたのか
先輩は渋々そういった
―「ねえ、つい昨日とかまでサリ〜
好きじゃないって言ってたよね?」
―「多分昨日なにかあったよね…」
―「あの様子だと衣更からアプローチが
既に始まっているようだな」
―「マセマセ先輩…頑張れ…………」
放課後、私は手伝いに来てくれた衣更と
私のクラスで書類を進めていた
私の隣の席…千秋の席に座って、彼は私が
持っていた半分の書類を確認してくれる
「先輩、ここの席って…」
『そこはね、千秋』
「へぇ…後ろの席は誰なんですか?」
『千秋の後ろは』
「じゃなくて! 先輩の後ろです!」
ああ、私の後ろか!
流れ的に千秋かと思っちゃった
『私の後ろは英智だよ』
「生徒会長ですか」
『そうなの…すごい、あのね…授業中に
圧を感じるときがある…ほら、こんな
書類が終わってない日とか』
「うわ…」
『「授業中にしろとは言わないけど終わらせるよねそうだよね?」って圧よ…』
「流石にそれずっとはキツいっす…
でもいいなあ」
『え、英智からそんな視線がほしいのか?』
「じゃなくて!!」
今度は何だと思って衣更を見ると
「だって…生徒会長は授業中ずっと
先輩のこと見てられるんですよね
俺は学年も違うから、授業中は先輩を
見ることなんて出来ないんで…
なんだかちょっと…羨ましいっす…」
『ぁ…』
彼は顔を赤くしてそう言った
その表情に少し動揺してしまう
『け、けどそんな大したこ…』
ガシャン!!!
『…あーごめん、筆箱落とした』
「大丈夫っすよ!」
落とした筆箱を拾っていると
衣更が手伝おうとしゃがんでくれる
こういう時にペンを沢山持ち運んでいると
時間がかかるし不便だが、書類等で
分かりやすくするには必要だから
仕方ない部分ではある
「あ、先輩…これ…」
『おお、ありが…あ…』
衣更が拾ってくれたのは筆箱…の中に
入れていた、元彼とのプリクラ
写真の中の私も彼も、まだ付き合って
間もなくて、楽しそうに笑っている
『…………懐かしい』
「………」
『そもそもね、向こうから告白してきた
告白なんて初めてだったからさ、
嬉しくてOKしたんだよ。けどちゃんと
私もこいつを好きになった
なのに昨日でアレだよ…………』
「先輩…」
あー…昨日寝ただけで立ち直れたと
思ったんだけどなあ。私は強くないってか
『苦しっ…それに馬鹿みたいだ
相手を信じて好きになったのにさ
向こうは私を信じれなかったんだぞ?
一方通行にも程があるよな』
「そんなこと、ないです」
『はは、ありがとう。けど衣更、ごめんな
こんな状況だから、昨日のお前の言葉も』
「信じれない…ですか?」
『ううん、信じるのが怖いんだ』
「!!」
『ごめんな…私が弱くて』
そう苦笑いすると、衣更は切なげに眉を
顰めてから、私の手からプリクラを取り
そのまま手を握りしめてくる
「先輩は、確かに頼もしいです。
仕事も出来るし思ったことも言える
けどそれ以前にひとりの女の子です
確かに俺の先輩だけど…でも」
『っわ!』
あれ?あれれ?
衣更に抱きしめられてる?
いつも思うけどいい匂いだよなあ
それに背が小さめにも関わらずしっかり
筋肉がついてる…
あれ、何意識してるんだ私は!?
「…ほら、俺に力で負けますよね
簡単に俺の腕の中に引き寄せられる
だって先輩以前に女の子だから
弱くて、いいんですよ。信じるのが
怖くても良いんです、俺はそれを駄目とか
悪いとか弱いとか言いません
けど先輩が強くなりたいなら、俺はそれを
応援しますよ。あわよくば…いや、絶対
俺はその時、先輩の隣にいたいって
心から思いますけどね」
『……衣更…』
そんなこと言われたことなかった
強くいなきゃ、女だからって
舐めなれないようにしなきゃって
ずっと思ってたのに
「だから、ゆっくりでいいんで
俺の昨日の言葉信じてほしいなぁって
思ったりはします」
『……………ありが、と』
「いえ!あっ…す、すみません!急に
抱きしめたりし…………て………」
『………』
そんなこと言われたら何が何でも
「………先輩、顔真っ赤」
意識、せざるを得なくなってしまう
「そんな表情も出来るんですね
先輩…すっげー可愛い」
『ぇっ…あ…』
そんな優しげな顔しないで。微笑まないで
優しい声で、愛しい人を見る目で
「………結羅…」
『っ…………』
私を求めないで。
逃げられなくなりそうだから
「目、逸らさないで」
『!!……い、衣更………』
「結羅……好き…早く俺を見て
絶対大切にするから…」
『っ……………』
彼の手が頬に伸びて、優しく私に触れた時
ピーンポーンパーンポーン
「2年Bクラス、衣更真緒くん
3年Aクラス、桜庭結羅さん
至急生徒会室にお越しください」
突然の呼び出し放送でハッとする
俺は今…何をしていた?
「すっすすすすすすみません!」
『………』
「せ、先輩、えっと、その…!!」
『ぷっ…あはは!さっきまでの勢いは
どこにいったんだ!』
「うっ…」
あれはホントに可笑しかったというか
あまりに照れる先輩が可愛くて…
『呼ばれてる。どうせこの書類だろうし
衣更、行くよ』
「う、うっす!」
『それと』
「?」
『…………衣更が、信じさせてくれるって
期待してるから』
「!!」
振り返ると先輩はまだ赤らめたままの
頬で、俺に微笑んだ
「はい!」
『よし、これ出しに行くか〜』
二人で廊下を歩く。自分で定めた1週間
俺は絶対先輩に信じてもらえるよう
頑張ることを決めた
☆
助けて欲しい
「っ、先輩!」
『ん?衣更か、お疲れさん』
「お疲れ様です!あのっ、
今日空いてますか?」
「おーい、結羅先輩!」
『お〜衣更』
「それ手伝います!」
『助かるよ!』
「終わったら一緒に帰りませんか?」
『いいよ〜』
「おはようございます結羅先輩!」
『おはよう衣更!朝から元気だな』
「はい!今日は結羅先輩と同じ
正門前のチェックなので!」
『そ、そう……』
「?先輩、顔赤いです」
『っうるさい!行くぞ!』
「あ、待ってくださいよ!」
「結羅先輩いますか?」
『!い、衣更』
「今日良ければ昼休み一緒にって
思ったんすけど…」
『それがさ、書類が終わってないんだ…』
「手伝います!一緒に片付けましょう!
…そしたら、残りの時間は俺に
全部…くれたりしますか?」
『っ………』
衣更が肉食なんだ
思ってた以上にグイグイ来る
いや、別に衣更が嫌とかじゃない
素直に言うなら顔立ちとかタイプだ
そう、タイプなんだよ
けどやっぱ信じるのが怖い
私がただ臆病なだけ
そう感じる日が何日も続いて
『………はあ、なんか申し訳ないな』
「?どうしたんですか」
『いや、毎日こうして手伝ってもらって
本当に申し訳ないなって思ってさ』
なんだかんだ1週間経った
素直に思ったことを伝えると
彼は目をぱちくりさせてから笑う
「そんなこと気にしなくていいです!
俺がしたくてやってる訳ですし
何より先輩と時間が増える………それだけで
俺にはメリットしかないんですよ」
『そ、そう……』
あとこれだ。しれっと口説いてくる
なんだこいつは、どうしたらいい
しかも自覚はないだろうが少しなんだ
こ、声が甘いんだよ!
口説いてくる言葉と声とタイプの顔で
正直胸がバックバクで…
「先輩?せんぱーい?」
『……だからもうすこし自覚を…』
「…先輩?結羅先輩…?
………………返事しないと襲いますよ?」
正直言うなら、理想形な男の子だ
年下というのが少し気にしてしまうけど…
やっぱり1つとはいえ、同じ歳や年下の方が
可愛いと思える女の子が多いのではないか
だとすればまた信じるのが怖い、という
思考に陥ってしまう私がいて…
『はぁ………こんな年上ババアを…』
「先輩俺とひとつしか変わりませんよね
何変なこと言ってるんですか?」
『…別に変なことは』
「言ってますよ。年上ってなんすか?
それって、俺から見てのことです?」
………変に感が冴えわたるやつは嫌いだよ
なんで分かるんだよ…
『…衣更はほんとに私でいいのか?
年上だけど?』
「何度も言いますけど、俺は
年齢とか本当に気にしてないです
ただ…」
『ただ?……………っ!』
生徒会室、昼休み、ソファに座り2人きり
そんな状況で、衣更は私の横に来ると
そのまま優しく頬に触れてきた
私より逞しくてしっかりした手が触れて
嫌でも異性を自覚させられる
「……目の前にいる貴女が、たまたま
年上だっただけ。俺は貴女がいいです
…ほらまた、顔赤くなってる」
『っ、それは…』
「前に伝えてから1週間経ちました
…結羅先輩、もう一度言います
……俺じゃ、ダメですか?
力に、なれませんか?もしなれるなら
少しでも俺を意識してくれてるなら
俺と、付き合って貰えるなら…
俺の手、握り返して欲しいです」
ああ、もう。衣更には
そもそも敵う気がしてなかったんだよ
信じるのが怖くても、恋に臆病でも
衣更なら受け止めてくれそうな
そんな気がずっとしてたから
あと1回くらいなら、衣更なら
………信じても、いいかな
☆
きゅっ………と
俺の制服の裾を掴む先輩
視線を先輩に戻したら、顔を赤らめていて
そんな先輩は俺と目が合うと
「っ!!!」
そのまま反対の、俺が握る手を
ゆっくり握り返してくれた
…本当に信じてくれたのか?
怖がっていた先輩を?
俺なんかが救えたのか?
………だとすれば本望でしかない
『……』
「…先輩…いや、"結羅さん"
…………俺と付き合ってください」
そう伝えたら先輩は俺と再び視線が合って
柔らかく笑った
『……お願いします』
「っ…!」
肩を掴むと、先輩は目を閉じる
俺の緊張は限界を超えているけど
それ以上にひたすら嬉しかった
早鐘を打つ心臓を無視して
俺はずっと触れたかった先輩の唇に
自分の同じものを重ねる
……なんだろ、甘い
いつもの先輩から漂う柔軟剤の
柔らかい匂いとはまた違う甘さ
なんだ…これ……お菓子にこんな味が
あったような…
『ん、んぅ………!!!!』
「………もう少し…」
『ん…衣更………も……ん……』
なんだったっけ、もう少しで
思い出せそうなはずなのに…ピンと来ない
もう少し…………あ、そうだアレだ。
思い出した途端、意識が戻ってきて
『ん、ぁ…い、さら………』
「っ!!!!!」
今の状態に気づいた
………………………そう今の状態に気づいた
先輩をみると、苦しかったのか
目に涙をためていて、半開きの口元で
呼吸しながらも今してしまったことを
裏付けるように銀の糸が伝って………
「す、すんません!!俺がっつきすぎって
言うかその、すっすみません!」
急いでその場で土下座しようと
先輩から手を離した…のに
『…だ、大丈夫………です…』
「…………」
俺の前で顔を真っ赤にさせて
でも小さな手でその顔を隠すように
覆っていて…なんかこう………萌えた
年上とかやっぱ関係なく
先輩は女の子なんだって感じる
途端に愛しさが大きくなる
「…………もう1回いいですか」
『ぅえっ!?!??』
「今度は苦しかったら俺の胸
叩いてください。絶対とめるんで…!
だからその…いい、ですか?」
『…………………』
ダメ元に聞いてみると、先輩は耳まで
赤くして…けど俺の制服をまた掴んで
こくりと頷いた
「…っ……結羅先輩…」
可愛い先輩の甘い唇に、俺はまた自分の
唇を重ねる。目元に溜まっていた涙は
目を閉じたせいか溢れてきていて…
けど、前に見た悲しい涙じゃないから
俺はそれだけで嬉しく思えた
『…んん……』
「……………」
『っ!!……………ん…ぁ』
開けて、と伝えるように舌で先輩の唇を
つつけば、恐る恐る口が開く
心の中の俺はそれが我慢できなくて
急ぐように先輩の舌を捕まえた
「…はっ…………」
『!!ん、はぁ…ん…』
静かな生徒会室に、2人きりで
舌を絡めたキスに溺れる
こんなこと先輩とできる日が来るなんて
『ん、んん…』
「はぁ……先輩、大丈夫ですか?」
『はぁ、はぁっ』
胸元を控えめに叩かれて唇を離せば
俺と先輩の間にお互いの唾液で結ばれた
銀の糸が繋がって、プツリと切れた
………やべ、ムラッときた落ち着け俺
「先輩?」
『はぁ、はぁ…あい、ひょうふ……』
「全然大丈夫じゃないじゃないですか
…すみません、すげーがっついて…」
そう言うと先輩は俺に抱きついてきて
ぎゅっとしながら口を開く
『……大丈夫…衣更のこと、信じてるから…
だから…これからも衣更は衣更のまま
変わらないで……』
「…ははっ変わりませんよ、俺は俺です」
先輩のことが好きな、衣更真緒です
.☆.。.:.+*:
あれから少し時が経って
先輩も俺の前では強気ではなく
ありのままの女の子として、
仕草や喋り方を出してくれるようになった
舐められないように男勝りな口調で
居たことにはびっくりしたけど
2人の時はそのギャップに俺が悶絶する日々
結論どっちも可愛くて俺は好きだ
先輩から感じる
『…………あ、やっと来た』
「教室に忘れ物したことを不意に
思い出してな!」
『気づいてよかったじゃん、途中だと
戻るの嫌だもんね?』
「おう!…じゃあデートに行こうぜ、結羅。今日も絶対喜ぶと思う!」
『ふふ…楽しみにしてるね、真緒』
甘い甘い、いちごみるくの味
『衣更、ちょっといい?』
「!どうしたんですか結羅先輩?」
ふと名を呼ばれ教室のドアを見れば
ファイルを抱えた結羅先輩がいた
俺は急いで弁当を置いて駆け寄る
『生徒会のこの書類…』
そう言って先輩はファイルの中から
書類を1枚俺に見せる
覗き込もうと近付けば、ふわりと
好みの匂いが鼻を掠める
「(うわぁー、すげえいい匂い)」
なんの匂いだろ…柔軟剤?
シャンプー?もしかしたらなにか
フレグランスを使っ
『…きいてる?』
………しまった。意識がズレていた
ついそっちに意識が行っちまった……
「あっ、えっと、すみません…」
『ははっ、もう一度言うから
ちゃぁぁぁぁんと聞けよ?』
「うっ…はい」
そう言って今度こそ書類に目を通す
「ああ、それなら会長が持ってました
多分まだ会長の机の二段目にあるかと」
『二段目ね、わかった。
ありがと衣更、助かったよ』
そう言って先輩は俺の頭を
わしゃわしゃと撫でる
完全に子供扱いのように感じるが
別に嫌ではないから先輩にされるがまま
頭を撫でられ続ける
「お役に立てて良かったです」
『お役に立ちまくり。さすが衣更
頼りになる、大好きだぞ!』
「ははっ、俺も先輩のこと
尊敬してますよ!」
『ありがと!じゃ、また放課後』
「はい!」
そう言って先輩が教室から出ていき
一緒に食べていたメンバーの元に戻ると
スバルからじっと見られる
「…サリ〜、あの先輩と付き合ってるの?」
「は?なんでだ」
「え、付き合ってないの!?!?」
スバルの叫ぶようなその声に
少しばかり耳を塞ぎつつも
その言葉に対し頭を傾げると、真が横から
控えめに声を出した
「衣更くん、あんなに結羅先輩と
その…好きとか、近い距離で会話とか
してるのに付き合ってないのはちょっと」
「ん?」
どういうことだ?
ちょっと、って?おかしいことでも
俺はしてたか?
「衣更、あの距離だとお前は何でも出来る」
「お、おう?」
最後にとっておいた卵焼きを口の中に
放り込んで
「つまり触れる事もキスをする事も
抱きしめる事もできるという事だ」
「ぶふぉっ!!!!」
むせた
「サリ〜動揺しすぎ!なになに、
考えたことあるの!?」
「ねぇよ!結羅先輩はそういう男女関係
っていうか…そんなのじゃねえし」
「え、好きじゃないの?」
「先輩として尊敬してるって感じだな
格好いいし、頼もしいし優しいし」
「結羅先輩は女の人だけど、
確かに格好いいよね!」
「うむ。俺達も先輩を見習って
頼もしくなりたいものだ」
そう、先輩は憧れだ
「(先輩今日も格好良かったなあ)」
俺もあんなふうに頼れる人になりたい
なんて思っていたその3日後
その気持ちを上回る新しい気持ちが
芽生えることになる
.☆.。.:.+*:゚+。
3日後の放課後
「失礼します。結羅先輩いますか?」
「衣更か!結羅ならさっき、満面の
笑顔で教室から走り去って行ったぞ!」
「笑顔で…?」
笑顔だったかどうかは理由はまあ…
分からないけど…けど教室には
居ないみたいだ。
「部長、ありがとうございます!」
「おう!それはそうと衣更、バスケ部に
ついてなんだが、やはりユニフォームを
もうすこしヒーローっぽく」
「急いでるんで失礼します!」
嫌な予感がして部長の言葉を遮り
急いで教室から出た。
「笑顔で?…どこ行ったんだろ先輩」
俺の手には未記入の書類
結羅先輩の持っている記入例と
印鑑が無いと会長に提出出来ないものだ
早く見つけて、今日中には出したい
「先輩のことだから、レッスン室か?」
レッスン室、購買、屋上、それに
ガーデンテラス、飼育小屋
手当り次第探してみるが見当たらない
ふと体育館に視線を向けると
1人の男子生徒が体育館裏から出てきた
他学科の生徒だろうが、ふと気になって
体育館裏に足を進める
曲がり角を曲がって、ひとつの影
女子制服、艶がある黒い髪
俺と同じくらいの背丈
心做しか震えているその人は…
『あっ、衣更…』
「!?どうしたんすか、先輩!」
間違いなく、結羅先輩だった
『…何でも、ないよ』
「嘘つかないでください」
『いや、ほんとになんでも』
「何もないのに泣くような
先輩じゃ無いですよね、俺知ってるんで」
『(ほんと、誰にでも世話焼き)
………………………振られた、それだけだよ』
結羅先輩が苦笑いを浮かべながら
俺を見つめる
「…彼氏、居たんですね」
『さっきまでは、ね。プロデュースして
普通科の彼からすれば時間も合わないし
男ばっかで見えないから無理だ〜って』
何だ、その理由……ただ信じる自信が
無いだけじゃないか
「そ、うなんですか」
『気にしても仕方ない。ありがと、衣更』
「俺なら!」
思わずそう、反射で口にした
『?』
「俺なら先輩が見えます!
時間も合います!それに仕事だって
手伝えるし帰りだって…!」
俺は一体何を言ってるんだ?
けどここまでしたら黙ることは出来ない
『何が、言いたいの?』
「…俺じゃ、ダメですか」
あぁ、もう、本当に何言ってるんだ
『!!』
「年下は、ダメですか…先輩に似合う男になります。アイドルとして、
後輩として、男として強くなります
だから!!」
『…衣更』
尊敬している先輩で止まってたのに
「俺を、選んでください」
『っ!!!』
「1週間後、また告白します
それまで俺の事、しっかり見てください
必ず、惚れさすんで」
先輩の泣いてる顔見て、無理して彼女は
強がってるんだって、やっぱりどれだけ
尊敬しても、憧れても…女の子なんだって
そう実感したら、突然愛しくなった
無理させたくないって、俺も一緒に
この人の重さを背負いたいって…
俺が、大切にしてあげたいって思ったんだ
『い、いさ…』
「あ!そうそう、この書類の記入例が
欲しくて先輩を探してたんですよ!」
『…あ、それなら丁度私の机の中に…』
「んじゃ教室行きましょう!流石に先輩の
机漁るのは気が引けるというか…」
『…………』
「先輩?」
『ふふっ、分かった。教室に行こ』
そう言って、ようやく結羅先輩は笑う
まだ目元に涙は残っているけど、それでも
「…やっぱ先輩は、笑顔が一番ですね
すっごい可愛いです」
『んんん!?』
「じゃ、教室に行きますか!」
『え、待って、衣更?君そんなこと言うの
え?平然と?えっ…』
「先輩、早くしてください!」
『…………はーい!』
俺は、先輩の笑顔が見たい
あわよくば、俺の隣で
憧れだけだった先輩に、俺はこの時
初めて恋心を抱いた
『…………期待してるよ、衣更』
「?なんかいいましたか」
『なーんでもない!ほら、この書類
今日中に提出したいんだろ?
手伝ってあげるから、早くしよう』
「うっす!」
☆ミ
『おーい衣更〜』
「はい!どうしたんすか?」
翌日、俺の元に再び先輩がやってきた
前にやって来たときはなんとも
思わなかったのに、昨日の今日だ
すっげー可愛く見えてしまう
『これの印鑑持ってる?敬人が衣更に
渡したって言ってたからさ』
「あ!持ってますよ!書類どのくらい
あります?」
そう言ってノート二冊分ほどの書類を
抱えて先輩は
『これだけ』
と、何事も無いように言ったから
「んじゃ放課後、俺も手伝います!」
『いや、私一人で出来るか…』
「………俺が、先輩といたいだけなんです」
そう言って抱えてる書類の上から
先輩の手を包み込む
『!!』
「それに一緒に書類終わらせたら
帰ることできますよね?
最近暗くなるの早いんで、送りますよ」
『え、だ、大丈…』
「……………」
『お、お願いします』
俺の無言の眼差しに堪えたのか
先輩は渋々そういった
―「ねえ、つい昨日とかまでサリ〜
好きじゃないって言ってたよね?」
―「多分昨日なにかあったよね…」
―「あの様子だと衣更からアプローチが
既に始まっているようだな」
―「マセマセ先輩…頑張れ…………」
放課後、私は手伝いに来てくれた衣更と
私のクラスで書類を進めていた
私の隣の席…千秋の席に座って、彼は私が
持っていた半分の書類を確認してくれる
「先輩、ここの席って…」
『そこはね、千秋』
「へぇ…後ろの席は誰なんですか?」
『千秋の後ろは』
「じゃなくて! 先輩の後ろです!」
ああ、私の後ろか!
流れ的に千秋かと思っちゃった
『私の後ろは英智だよ』
「生徒会長ですか」
『そうなの…すごい、あのね…授業中に
圧を感じるときがある…ほら、こんな
書類が終わってない日とか』
「うわ…」
『「授業中にしろとは言わないけど終わらせるよねそうだよね?」って圧よ…』
「流石にそれずっとはキツいっす…
でもいいなあ」
『え、英智からそんな視線がほしいのか?』
「じゃなくて!!」
今度は何だと思って衣更を見ると
「だって…生徒会長は授業中ずっと
先輩のこと見てられるんですよね
俺は学年も違うから、授業中は先輩を
見ることなんて出来ないんで…
なんだかちょっと…羨ましいっす…」
『ぁ…』
彼は顔を赤くしてそう言った
その表情に少し動揺してしまう
『け、けどそんな大したこ…』
ガシャン!!!
『…あーごめん、筆箱落とした』
「大丈夫っすよ!」
落とした筆箱を拾っていると
衣更が手伝おうとしゃがんでくれる
こういう時にペンを沢山持ち運んでいると
時間がかかるし不便だが、書類等で
分かりやすくするには必要だから
仕方ない部分ではある
「あ、先輩…これ…」
『おお、ありが…あ…』
衣更が拾ってくれたのは筆箱…の中に
入れていた、元彼とのプリクラ
写真の中の私も彼も、まだ付き合って
間もなくて、楽しそうに笑っている
『…………懐かしい』
「………」
『そもそもね、向こうから告白してきた
告白なんて初めてだったからさ、
嬉しくてOKしたんだよ。けどちゃんと
私もこいつを好きになった
なのに昨日でアレだよ…………』
「先輩…」
あー…昨日寝ただけで立ち直れたと
思ったんだけどなあ。私は強くないってか
『苦しっ…それに馬鹿みたいだ
相手を信じて好きになったのにさ
向こうは私を信じれなかったんだぞ?
一方通行にも程があるよな』
「そんなこと、ないです」
『はは、ありがとう。けど衣更、ごめんな
こんな状況だから、昨日のお前の言葉も』
「信じれない…ですか?」
『ううん、信じるのが怖いんだ』
「!!」
『ごめんな…私が弱くて』
そう苦笑いすると、衣更は切なげに眉を
顰めてから、私の手からプリクラを取り
そのまま手を握りしめてくる
「先輩は、確かに頼もしいです。
仕事も出来るし思ったことも言える
けどそれ以前にひとりの女の子です
確かに俺の先輩だけど…でも」
『っわ!』
あれ?あれれ?
衣更に抱きしめられてる?
いつも思うけどいい匂いだよなあ
それに背が小さめにも関わらずしっかり
筋肉がついてる…
あれ、何意識してるんだ私は!?
「…ほら、俺に力で負けますよね
簡単に俺の腕の中に引き寄せられる
だって先輩以前に女の子だから
弱くて、いいんですよ。信じるのが
怖くても良いんです、俺はそれを駄目とか
悪いとか弱いとか言いません
けど先輩が強くなりたいなら、俺はそれを
応援しますよ。あわよくば…いや、絶対
俺はその時、先輩の隣にいたいって
心から思いますけどね」
『……衣更…』
そんなこと言われたことなかった
強くいなきゃ、女だからって
舐めなれないようにしなきゃって
ずっと思ってたのに
「だから、ゆっくりでいいんで
俺の昨日の言葉信じてほしいなぁって
思ったりはします」
『……………ありが、と』
「いえ!あっ…す、すみません!急に
抱きしめたりし…………て………」
『………』
そんなこと言われたら何が何でも
「………先輩、顔真っ赤」
意識、せざるを得なくなってしまう
「そんな表情も出来るんですね
先輩…すっげー可愛い」
『ぇっ…あ…』
そんな優しげな顔しないで。微笑まないで
優しい声で、愛しい人を見る目で
「………結羅…」
『っ…………』
私を求めないで。
逃げられなくなりそうだから
「目、逸らさないで」
『!!……い、衣更………』
「結羅……好き…早く俺を見て
絶対大切にするから…」
『っ……………』
彼の手が頬に伸びて、優しく私に触れた時
ピーンポーンパーンポーン
「2年Bクラス、衣更真緒くん
3年Aクラス、桜庭結羅さん
至急生徒会室にお越しください」
突然の呼び出し放送でハッとする
俺は今…何をしていた?
「すっすすすすすすみません!」
『………』
「せ、先輩、えっと、その…!!」
『ぷっ…あはは!さっきまでの勢いは
どこにいったんだ!』
「うっ…」
あれはホントに可笑しかったというか
あまりに照れる先輩が可愛くて…
『呼ばれてる。どうせこの書類だろうし
衣更、行くよ』
「う、うっす!」
『それと』
「?」
『…………衣更が、信じさせてくれるって
期待してるから』
「!!」
振り返ると先輩はまだ赤らめたままの
頬で、俺に微笑んだ
「はい!」
『よし、これ出しに行くか〜』
二人で廊下を歩く。自分で定めた1週間
俺は絶対先輩に信じてもらえるよう
頑張ることを決めた
☆
助けて欲しい
「っ、先輩!」
『ん?衣更か、お疲れさん』
「お疲れ様です!あのっ、
今日空いてますか?」
「おーい、結羅先輩!」
『お〜衣更』
「それ手伝います!」
『助かるよ!』
「終わったら一緒に帰りませんか?」
『いいよ〜』
「おはようございます結羅先輩!」
『おはよう衣更!朝から元気だな』
「はい!今日は結羅先輩と同じ
正門前のチェックなので!」
『そ、そう……』
「?先輩、顔赤いです」
『っうるさい!行くぞ!』
「あ、待ってくださいよ!」
「結羅先輩いますか?」
『!い、衣更』
「今日良ければ昼休み一緒にって
思ったんすけど…」
『それがさ、書類が終わってないんだ…』
「手伝います!一緒に片付けましょう!
…そしたら、残りの時間は俺に
全部…くれたりしますか?」
『っ………』
衣更が肉食なんだ
思ってた以上にグイグイ来る
いや、別に衣更が嫌とかじゃない
素直に言うなら顔立ちとかタイプだ
そう、タイプなんだよ
けどやっぱ信じるのが怖い
私がただ臆病なだけ
そう感じる日が何日も続いて
『………はあ、なんか申し訳ないな』
「?どうしたんですか」
『いや、毎日こうして手伝ってもらって
本当に申し訳ないなって思ってさ』
なんだかんだ1週間経った
素直に思ったことを伝えると
彼は目をぱちくりさせてから笑う
「そんなこと気にしなくていいです!
俺がしたくてやってる訳ですし
何より先輩と時間が増える………それだけで
俺にはメリットしかないんですよ」
『そ、そう……』
あとこれだ。しれっと口説いてくる
なんだこいつは、どうしたらいい
しかも自覚はないだろうが少しなんだ
こ、声が甘いんだよ!
口説いてくる言葉と声とタイプの顔で
正直胸がバックバクで…
「先輩?せんぱーい?」
『……だからもうすこし自覚を…』
「…先輩?結羅先輩…?
………………返事しないと襲いますよ?」
正直言うなら、理想形な男の子だ
年下というのが少し気にしてしまうけど…
やっぱり1つとはいえ、同じ歳や年下の方が
可愛いと思える女の子が多いのではないか
だとすればまた信じるのが怖い、という
思考に陥ってしまう私がいて…
『はぁ………こんな年上ババアを…』
「先輩俺とひとつしか変わりませんよね
何変なこと言ってるんですか?」
『…別に変なことは』
「言ってますよ。年上ってなんすか?
それって、俺から見てのことです?」
………変に感が冴えわたるやつは嫌いだよ
なんで分かるんだよ…
『…衣更はほんとに私でいいのか?
年上だけど?』
「何度も言いますけど、俺は
年齢とか本当に気にしてないです
ただ…」
『ただ?……………っ!』
生徒会室、昼休み、ソファに座り2人きり
そんな状況で、衣更は私の横に来ると
そのまま優しく頬に触れてきた
私より逞しくてしっかりした手が触れて
嫌でも異性を自覚させられる
「……目の前にいる貴女が、たまたま
年上だっただけ。俺は貴女がいいです
…ほらまた、顔赤くなってる」
『っ、それは…』
「前に伝えてから1週間経ちました
…結羅先輩、もう一度言います
……俺じゃ、ダメですか?
力に、なれませんか?もしなれるなら
少しでも俺を意識してくれてるなら
俺と、付き合って貰えるなら…
俺の手、握り返して欲しいです」
ああ、もう。衣更には
そもそも敵う気がしてなかったんだよ
信じるのが怖くても、恋に臆病でも
衣更なら受け止めてくれそうな
そんな気がずっとしてたから
あと1回くらいなら、衣更なら
………信じても、いいかな
☆
きゅっ………と
俺の制服の裾を掴む先輩
視線を先輩に戻したら、顔を赤らめていて
そんな先輩は俺と目が合うと
「っ!!!」
そのまま反対の、俺が握る手を
ゆっくり握り返してくれた
…本当に信じてくれたのか?
怖がっていた先輩を?
俺なんかが救えたのか?
………だとすれば本望でしかない
『……』
「…先輩…いや、"結羅さん"
…………俺と付き合ってください」
そう伝えたら先輩は俺と再び視線が合って
柔らかく笑った
『……お願いします』
「っ…!」
肩を掴むと、先輩は目を閉じる
俺の緊張は限界を超えているけど
それ以上にひたすら嬉しかった
早鐘を打つ心臓を無視して
俺はずっと触れたかった先輩の唇に
自分の同じものを重ねる
……なんだろ、甘い
いつもの先輩から漂う柔軟剤の
柔らかい匂いとはまた違う甘さ
なんだ…これ……お菓子にこんな味が
あったような…
『ん、んぅ………!!!!』
「………もう少し…」
『ん…衣更………も……ん……』
なんだったっけ、もう少しで
思い出せそうなはずなのに…ピンと来ない
もう少し…………あ、そうだアレだ。
思い出した途端、意識が戻ってきて
『ん、ぁ…い、さら………』
「っ!!!!!」
今の状態に気づいた
………………………そう今の状態に気づいた
先輩をみると、苦しかったのか
目に涙をためていて、半開きの口元で
呼吸しながらも今してしまったことを
裏付けるように銀の糸が伝って………
「す、すんません!!俺がっつきすぎって
言うかその、すっすみません!」
急いでその場で土下座しようと
先輩から手を離した…のに
『…だ、大丈夫………です…』
「…………」
俺の前で顔を真っ赤にさせて
でも小さな手でその顔を隠すように
覆っていて…なんかこう………萌えた
年上とかやっぱ関係なく
先輩は女の子なんだって感じる
途端に愛しさが大きくなる
「…………もう1回いいですか」
『ぅえっ!?!??』
「今度は苦しかったら俺の胸
叩いてください。絶対とめるんで…!
だからその…いい、ですか?」
『…………………』
ダメ元に聞いてみると、先輩は耳まで
赤くして…けど俺の制服をまた掴んで
こくりと頷いた
「…っ……結羅先輩…」
可愛い先輩の甘い唇に、俺はまた自分の
唇を重ねる。目元に溜まっていた涙は
目を閉じたせいか溢れてきていて…
けど、前に見た悲しい涙じゃないから
俺はそれだけで嬉しく思えた
『…んん……』
「……………」
『っ!!……………ん…ぁ』
開けて、と伝えるように舌で先輩の唇を
つつけば、恐る恐る口が開く
心の中の俺はそれが我慢できなくて
急ぐように先輩の舌を捕まえた
「…はっ…………」
『!!ん、はぁ…ん…』
静かな生徒会室に、2人きりで
舌を絡めたキスに溺れる
こんなこと先輩とできる日が来るなんて
『ん、んん…』
「はぁ……先輩、大丈夫ですか?」
『はぁ、はぁっ』
胸元を控えめに叩かれて唇を離せば
俺と先輩の間にお互いの唾液で結ばれた
銀の糸が繋がって、プツリと切れた
………やべ、ムラッときた落ち着け俺
「先輩?」
『はぁ、はぁ…あい、ひょうふ……』
「全然大丈夫じゃないじゃないですか
…すみません、すげーがっついて…」
そう言うと先輩は俺に抱きついてきて
ぎゅっとしながら口を開く
『……大丈夫…衣更のこと、信じてるから…
だから…これからも衣更は衣更のまま
変わらないで……』
「…ははっ変わりませんよ、俺は俺です」
先輩のことが好きな、衣更真緒です
.☆.。.:.+*:
あれから少し時が経って
先輩も俺の前では強気ではなく
ありのままの女の子として、
仕草や喋り方を出してくれるようになった
舐められないように男勝りな口調で
居たことにはびっくりしたけど
2人の時はそのギャップに俺が悶絶する日々
結論どっちも可愛くて俺は好きだ
先輩から感じる
『…………あ、やっと来た』
「教室に忘れ物したことを不意に
思い出してな!」
『気づいてよかったじゃん、途中だと
戻るの嫌だもんね?』
「おう!…じゃあデートに行こうぜ、結羅。今日も絶対喜ぶと思う!」
『ふふ…楽しみにしてるね、真緒』
甘い甘い、いちごみるくの味
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