姉ちゃんより大きくなったら
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―「おれ!結羅お姉ちゃんと
けっこんしたい!」
―『そっか…じゃあ真緒くんが私より
背が大きくなるまで待ってるね』
―「ほんと!?はやくおれの方が
おおきくなるから、まってて!」
―『ふふっ、楽しみにしてるよ』
―「うん!おれの方が大きくなったら…
そしたら!」
「結羅……」
『………………真緒くん?』
約10年止まっていた2人の時間
ぎしりと動き出した音を
「久しぶり」
私は 俺は
しっかりと聞いた
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
『久しぶりだね、まさか夢ノ咲の
アイドル科に居たなんて…!』
「ははっ、俺もびっくりしたよ!
まさか研修の講師として夢ノ咲に
結羅が来てるなんてな〜」
生徒会の資料をまとめていると
普通科に来ているという研修講師の資料を
見つけた。ふとそれを読み進めてみると
―「…桜庭…結羅………!?」
よく知っている名前
間違うはずもない、間違えるわけない
その名前は10年も前に
俺が好きだと伝えた人の名前なのだから
―「会長!これ…!」
―「ああ、普通科に来ている大学生の
方だったかな…教育実習生だよ」
俺は急いで普通科から必要な書類を
彼女に持って来てもらうように頼んだ
…本人だという確証が欲しかった
早く会いたかった
ずっと………待ち遠しかったんだ
―『失礼致します』
入ってきた彼女は、まさに俺の知る
その子で間違いはなくて
10年前の気持ちが、一気に戻った
.☆.。.:.+
『まぁね、ずっと教師になりたかったし
夢叶える途中って感じだよ』
「けど本当にそこまで行ったのすげぇよ…
中1だっけ?」
ふと俺は、10年ほど前に意識を戻す
あれはまだ、俺が小学校に上がる前
対して結羅は小学校を卒業
中学1年になる年のことだったはず…
元々、家が隣だった俺たち。
小学生の結羅からすれば
俺なんて本当に小さくて
―『可愛い…真緒くん!おいで!』
―「結羅おねえちゃん!」
よく世話をしてくれたり遊んでくれた
気付けば結羅のことを好きになって
所謂、初恋と言うやつだろう
幼かった俺はそれをすぐ口に出した
―「おねえちゃん!おれ、
おねえちゃんが、だいすき!!」
―『わ〜嬉しい!ありがとう!』
なのに、俺が小学校に上がる時
結羅は父親の転勤で
かなり遠い街まで引っ越す事になった
今だからこそ分かるけど、街ではなく
都道府県を跨ぐ距離だった
―「おれ!結羅お姉ちゃんと
けっこんしたい!」
引越しの日、俺は満面の笑顔でそう言った
すると彼女は目を丸くして
―『そっか…じゃあ真緒くんが私より
背が大きくなるまで待ってるね』
そう言って笑ったんだ
その返事を真に受けて、離れていく
結羅を泣きながら見届けて
俺はそれから毎日背が伸びるように
牛乳を飲んでたんだっけか
『そう!中1の夏に引っ越したんだよね
それ以来だから…確かに10年ぶりかも
でも…さっきすぐ髪色で分かったよ
真緒くん変わってないね、安心した!』
その言葉に、少しモヤっとする
それはあの時と変わらない…つまり
男としては見てないということなのか
「なぁ、結羅!久しぶりに
今日、うちに来ないか?」
『…?真緒くんの?』
「そう!勉強も教えて欲しいし、
母さん達も喜ぶと思うんだ」
『わわ、覚えてくださってるんだ…!
嬉しい…!だったら是非とも!なら
急がなきゃ!荷物取ってくるね!』
「おう!」
長いポニーテールの髪を揺らして
彼女は生徒会室から飛び出していく
その姿が可愛くて、また胸が高鳴った
「………………10年、か」
彼女は、結婚という言葉を
覚えているだろうか?
『わ〜!懐かしい…!!
この眺めも変わらないんだ!?
なんだか安心する』
「ははっ、ウチも変わってないぞ」
『ほんと?良かった〜!』
久しく歩いていなかった二人での帰路
少し恥ずかしく思いつつ、子供のように
はしゃぐ結羅の後ろ姿を見る
…髪、伸びたな。その姿もすっごく
「可愛い」
『ん?真緒くんなにか言った?』
「い、いや何も!!!」
あっぶね、口をついて出ちまった…
いや確かに伝えたいことではあるけど!
「あのさ!!」
『ん〜?』
「約束のこと………」
そこまで言って…
「やっぱなんでもない!」
『え〜なに、気になるじゃん!』
言えなかった俺!馬鹿!意気地なし!
ヘタレ!いや自覚はあるけど!
「そ、それよりさ!
ちょっと公園寄っていかね?」
『お、いいね!懐かしい!行こ行こ!』
なんとか意識をそっちに
持って行く事へ成功した
他愛もない話にすり替えて、そのまま
公園を目指す。ひときわ大きな遊具が
見えてくると、再び彼女ははしゃぎ
始め、公園へ駆け出していく
『真緒くん、早く〜!』
ー「お姉ちゃん、早くー!!」
懐かしい会話、違うのはその言葉を発した
のが俺か彼女かということだろうか
『真緒くん!みてみて!昔真緒くんが
よく上ってたジャングルジム!』
「ははっ、懐かしいな」
あの時はよく上ってた。
あそこに登れば結羅より背が高くなれた
結婚に…結羅に、近付くと思ってたんだ
「っておい!何してんだ!?」
『え?ちょっと上まで上ろうと…』
「スカートだろ!女子なんだから
もう少し自覚をだな…!!」
『大丈夫大丈…』
「っ!?」
……………よく分からないが風が吹いた
「…いやっ、その……何もみてな…」
『今の風強かったね〜』
「…そ、そうだな〜!」
どうやら風が吹いてスカートが舞い、
下着が見えたことを気にしたのは
俺だけのようだ
いや、もしかすると男として認識されて
いないのではないか?
可愛い年下の子 ってだけで
男 という 異性 としては
見てもらえてないのでは無いか
『真緒くん!そっち乗って〜!』
「ん?おー」
複雑な気持ちになりつつも俺は
言われた通り、シーソーの向かいに座る
俺の重みで結羅の身体が浮き、同時に
目を見開いた
『…真緒くん、大きくなったね』
「そりゃ10年も経てばな〜」
『そうだよね〜…ほら昔はさ、私のほうが
背も高くて重かったから…こうして
シーソーが傾いてるのが違和感というか』
「そりゃ身長も結羅が高かったろ?
今は俺の方が高い…し…」
そこまで言ってお互いに目を合わせる
心なしか、彼女の頬が赤い気がする
夕日のせいなのか、それとも
俺が自惚れてもいいことなのか
「…っ………」
『真緒くん……』
「…帰る、か」
『そ、そうだね…!真緒くんのお家
着くの遅くなるのも申し訳ないし』
そう言って公園を出ると再び帰路につく
少しぎこちない様な距離感のまま
隣にいる俺より小さな女の子の存在を
視界に入れた
「(期待、してもいいのか…?)」
家に着けば玄関で
「まぁ!まぁまぁまぁ!!!
結羅ちゃん!?!?あらぁ!
久しぶり!大きくなって…!しかも
こんんんんっなに可愛くなって!!
元気にしてた?彼氏はいる?
いつ頃こっちに戻ってきたの?
いつ帰っちゃうの?今晩泊まってく?」
あの放任主義の母が早々に質問攻めを
始めてしまった
「おいおい結羅困ってるだろ…」
『あはは…お久しぶりです…えっと…
何からお返事すれば良いのやら…』
「元気にしてた??」
『あっ、はい!』
どうやら一問一答になるようだ
母はニコニコと微笑むとそのまま
リビングへ結羅を案内する
「アイスティーで良いかしら!?
結羅ちゃんレモンティー好きよね?
レモンあったかしら…真緒、レモン
冷蔵庫にある??」
「なんで俺だよ…一応あったはず……」
『いえいえお構いなく…!』
母の猛攻は止まらない
「そんなこと言わないで!
久しぶりに会ったんだもの、たくさん
お話しましょ!真緒、レモンティー
用意、お願いね!」
「だと思ったよ…はいはい」
『ごめんね真緒くん…』
「大丈夫だぞ〜」
そう言ってレモンティーの用意をしつつ
母と結羅の話に耳を傾ける
「いつこっちに戻ってきたの?」
『先月、ですかね。教育実習の為に
戻ってきたんです』
「あら!そうなのね!?教育実習
ってことは教師!?それで真緒に
会ったのね…!」
『そうなんです。教育実習先を丁度
夢ノ咲に選んでいたのもあって…』
「それってまさか真緒が居るから?」
ガシャガシャガチャン!!
……………手が滑った
「ちょっと真緒、なにしてるの〜?」
『真緒くん、大丈夫?』
「ははっ、大丈夫、大丈夫…」
いや母さんが悪いだろ?
なんてことを聞いてんだ!俺の気持ちも
考えてくれよ頼むから!
『私が居るのは普通科なので…』
「あらそうなの?じゃあ真緒から
結羅ちゃんを探しに行ったのね」
ドボドボっ!!!
……………手が滑って零した
一度落ち着け、俺。ほんと落ち着け?
「それに教師って…大学にやっぱり
彼氏いるの?こんんんんっなに可愛い
結羅ちゃんならモテモテでしょ?」
それは確かに気になった
昔から老若男女問わず人気があった
今彼氏がいる、と言われても可笑しくない
寧ろそれが普通だと思うし、10年前のことを
信じている俺のほうが可笑しいくらいだ
返事が気になり耳を砥ぎすませていると
『居ませんよ。何度か告白はあったん
ですけど、皆お断りしてて………』
その言葉に、ひどく安心した
心を落ち着かせて飲み物を持っていく
そのまま隣に座り、今度は俺が聞いた
「彼氏作ったことないのか?」
『ないよ〜。みんな違うというか…
付き合う気になれなくて……』
安心するような悲しいような
複雑な心情のまま飲み物を口にすると
「あら、じゃあウチの真緒はどう?」
「ぶふぉ!!」
爆弾投下により一瞬で吹き出した
『ちょっ、真緒くん!?』
「ちょっと汚いわよ真緒〜、いくら
嬉しいからって吹き出すのは
やめなさいな」
「急に変なこと言うからだろ!?」
そう言いつつ上がっている体温を下げる為
タオルでテーブルを拭いていると
「けど、教育実習が終わればまた
帰っちゃうんでしょ?」
『そうですね…また勉強して面接して…
どこの学校に配属になるかです』
突然現実味を帯びた話になる
いつまでも一緒じゃない
それは俺自身がよく分かってることだ
この教育実習が終わればまた彼女と…
「先生になった結羅ちゃん、
楽しみだわ〜!…あらやだもうこんな時間
買い物に行こうとしてたのよ…!
今晩泊まってくでしょ?沢山お買い物
しなきゃね!」
「ぶふぉ!」
「だから真緒汚いわよ!」
いやだからさ、母さんの言動のせいなんだ
分かってくれよ、俺は無実なんだ
『えっいいんですか…?』
「おーい結羅さん?そんな、
無理して泊まろうとしなくても全然大丈夫
だぞ?え?」
『私は全然大丈夫だよ』
「決まりね!じゃあ買い物に行ってくるわ!
ふふっ、夕飯は張り切るわよ〜!」
放任主義はどこへやら
この場にいる誰よりも活気に満ちた母は
浮足立って家を出た
…あれ今…
「ご、ごめんな母さんが」
『大丈夫だよ〜!』
……………なにげに家にふたりきり??
『あ、真緒くんのお部屋見てみたいな!』
「ぐふっ!!」
危ない、また吹きかけた
え、今なんて言った??
『…駄目?』
「い、いや駄目じゃないけど……
面白いものなんて何もないぞ?」
『うん!』
頼むからそんな嬉しそうな顔をするな…
……………あの本隠したっけ
☆彡
「ほら、ここだよ」
『お邪魔しま………おおお!』
部屋に入れば早々に感銘の声を上げる
視線は完全に棚にある漫画達だ
『昔から真緒くん、漫画が好きだったから
今も好きなのかなって思って
…あ、あった!!』
そう言って手に取ったのは最近完結した
バトル漫画。結羅も好きなのかな
「好きなのか?」
『そう!まだ新刊買えてなくて…』
「読んでもいいぞ?」
すると結羅は目を輝かせて
いいの!?と声を上げた。その姿が
可愛らしくて緩む頬を隠しつつ承諾すると
ベッドの横に座り早速読み始める
…6つも歳上なのに、どこか幼げがあって
けどあの頃から変わらず可愛くて
寧ろ綺麗にもなった容姿
性格だって変わらず明るくて優しい
…少し抜けてるところもあるけど
「あ、飲み物持ってくるな!」
『忘れてた…!ごめんね、ありがとう…!』
一度冷静になろう(何回目だ)
と思い、リビングにある2つの
飲みかけのグラスを持って上がろうと
「………っ……」
結羅が飲んだ…レモンティーだよな
「って俺は変態か!」
何飲もうとしてるんだよ、俺!
気持ち悪いにも程があるぞ落ち着け!
…………結果あまり落ち着くことなく
部屋に戻ると、あれよあれよと新刊を
読み進めている結羅の姿
「…いや読むの早くね?」
『読解とか必要だからね〜ついつい
読むのも早くなっちゃうんだ〜』
「あー、なるほどな」
別の漫画を手に取り、俺も横で読み始める
久々に再会してこれか、と思うのもあるが
着飾らずこんなことをしているのが
あのときと変わらなくて嬉しかったり
懐かしかったりするから気にしない
10分経つ頃、結羅が読み終わり
ふと立ち上がった瞬間
『あっ…』
「!?」
突然結羅が俺の方に倒れてきた
…………え、なにこれ膝枕状態?
落ち着け?落ち着け俺?
「ど、どうした?」
『ごめん、足が痺れた………』
あはは、と結羅は笑うが
全く警戒心のない姿にまた心がモヤつく
俺の部屋で、俺に対してそんなことして
「…………」
『真緒、くん?』
「…俺も男ってこと、わかってるのか?」
起き上がった彼女は再び床。
…反射で、結羅を押し倒していた
『っえ………』
「…なぁ結羅、10年前の約束
覚えてるか?お前が引っ越すときの約束」
『やく、そく………』
優しく、柔らかな髪に触れて
その一房キスを落とす
―「おれ!結羅お姉ちゃんと
けっこんしたい!」
―『そっか…じゃあ真緒くんが私より
背が大きくなるまで待ってるね』
「…大きくなったら」
―「ほんと!?はやくおれの方が
おおきくなるから、まってて!」
―『ふふっ、楽しみにしてるよ』
「お前の背を越えたら」
―「うん!おれの方が大きくなったら…
そしたら!-俺と、けっこん!してね!」
-『うん、約束ね』
-「やくそく!」
『真緒、く………』
俺と結婚してくれるんだろ?
「それとも子供の頃の約束だから
やっぱ無効か?」
『や、えっと………』
「ずっと、ずっと好きだった
10年間ずっと…記憶の中の結羅に
恋してたんだ」
『真緒くん………』
真っ直ぐ目を見る。口篭る彼女を見て
体温が上昇して、想いが溢れて
もっと触れたいのを自らの理性で
持ちこたえる。すると結羅は
『…よかった』
「っえ?」
そう、口にした
『あの時の言葉、覚えてるの…
私だけじゃなくてよかった』
「っ…もしかして、結羅も…」
『さっき聞いてたでしょ?彼氏はいないか
…簡単だよ、私だってずっと真緒くんとの
約束を馬鹿みたいに信じてたもん』
…………あぁ、愛しい
想ってくれていたことも
子供じみた口約束だったのに
忘れないでいてくれたことも
優しく頬を赤らめて笑う姿も
全部全部
「結羅、好きだ」
愛しくて仕方ない
.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*
「ま〜くううううううううん…
俺、俺寂しいよ…ま〜くんが…俺の…
俺のま〜くんが」
「おい凛月、頼むからここで泣くのを
止めてくれ…ほんと頼むから…」
「けど…寂しいのと同じくらい嬉しいよ」
「お、おう…そっか」
「おめでとうま〜くん」
「ありがとな、凛月」
幼い頃の夢を馬鹿みたいに信じて
10年間思い続けて
偶然再会出来たのか
それとも、格好よく言うなら運命なのか
それはどうか分からないけれど
「ふぅ……よし」
この言葉と関係に嘘はない
『…真緒くん』
「お、来たのか……ゆ、うら……………………」
『…似合って、ないかな…?』
「い、いいいいいいや!めちゃくちゃ!
すっげえ綺麗……!…で、す…」
『ありがとう…真緒くんも…すっごく
格好いい…です』
そう言って微笑む結羅があまりに
綺麗で、可愛くて…俺は思わず顔を隠す
「………俺でよかった?」
『真緒くんじゃなきゃダメです
真緒くんも、私で良かった?
6歳も年上だよ?もうすぐ三十路だし』
「馬鹿、そんなの関係ねぇよ…俺は
結羅が良いから結婚するんだ
……結羅だって、そうだろ?」
『………うん…!』
「じゃあ答えはひとつだな」
そう言えば首を傾げる結羅に
俺は真っ直ぐ近付いて目の前に立つ
絶対だと確約されたものではなかった
そんな 約束 。
「幸せにします」
『ふふ、よろしくお願いします』
―『真緒くんが私より背が大きくなるまで
待ってるね』
待ってくれてありがとう
―「はやくおれの方がおおきくなるから、
まってて!」
お前より背が高くなったよ
-『うん、約束ね』
-「やくそく!」
そんな約束が今日やっと果たされた
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