短編
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「すまん、飲ませすぎた」
へべれけのキラウシさんを支えながら門倉さんが家にやってきた。大体いつも二人とも同じくらい酔っ払っているのに、今日の門倉さんはそんなに酔ってなさそうだ。対するキラウシさんは、目の焦点が合わないほどにめちゃくちゃに酔っている。こんなに酔っている姿を見るのは初めてで、一体どうしたのかと心配になる。私の知らないところで何かあって、ヤケ酒みたいなことをしたんだろうか。
「ナマエ……?」
「おう、そうだぞナマエちゃんだ」
「ナマエ、何してたんだ」
それは私のセリフです。門倉さんから離れて、数歩だけなのにフラフラと見事な千鳥足で私の方に歩いてきたキラウシさんを抱きとめる。一人で立つ気なんてなさそうだ。酒臭い。重い。多分今、私たちは「人」という漢字を体現している。お互いが支え合っているようでいて、実は片方がめちゃくちゃ頑張って支えている。もしかして人っていう字はこういう感じのシチュエーションでできたんじゃないだろうか。古代に思いを馳せたくなるくらいにはしんどい。グッと腹と脚に力を込めて頑張って支えれば、痛いくらいにキラウシさんが抱きしめ返してきた。いや、そうじゃなくてですね。それよりちゃんと立ってほしい。「お熱いねぇ」と後ろで門倉さんが面白がっている。
「カドクラあっち行け……」
「送ってやったのになんだその言い草は……言われなくても邪魔者は帰るさ」
じゃあな、と後ろ手に手を振って門倉さんが去っていった。キラウシさんはまだ私に抱きついたままだ。玄関の鍵を掛けようと手を伸ばすが届かない。一回離れようとすれば「どこ行くんだ」とさらに腕に力を込められた。そろそろ私の腰が限界だ。バキッといきそうで怖い。
「鍵、かけないと」
「あとでいいだろう」
「……門倉さん戻ってきちゃうかも」
キラウシさんが後ろ手に鍵を探し当てようとするが上手くいかない。しぶしぶ私から離れて、覚束ない動作で鍵をかけた。しっかりドアガードまでかけている。ベロベロに酔っ払ってるくせに、その辺りの思考はちゃんとしているんだな。面白くて吹き出したら、据わった目でジッと見つめられたあとに「可愛い」と小さく呟かれた。聞き間違いか?とドギマギしていたら、今度は大きくて無骨な手のひらで頬を包まれた。
「ナマエだ……」
まるでおにぎりを握るように、色んな角度と方向から顔を包まれる。ささくれが少しだけ頬を刺激してくすぐったい。もしかして、私がちゃんと存在していることを確かめているのだろうか。酔っ払いが可愛いことをしてくれる……なんていうシラフの人間としての余裕は、キラウシさんの発言によって粉々に破壊されることとなる。
「ナマエがいなくて寂しかった」
「へっ……?!」
「もう離れたくない」
「はなっ……?!えぇっ?!」
なんだこの破壊力は。しゅん、と子犬のような目で、とんでもないことを言われて頭が追いつかない。お酒が入っているせいかいつもよりもずっと体温が高くて、触れられる度に火傷するんじゃないかって思う。いつもはこんなに分かりやすく愛情表現しないのに。言葉だけじゃない。門倉さんだったとはいえ、さっきみたいに人前で私のことを抱きしめたり、こんな手のひらで確かめるように触ってきたり、キラウシさんの今日の愛情表現はとても直接的で心臓に悪い。いつもはもっと、言葉の端々やちょっとした行動から愛を感じる程度なのに。私も直球で愛を伝えるのは苦手だから、慎ましくてほわほわとした関係で丁度良かったのに。こんな熱烈に来られたら、どうしたら良いのか分からない。
「ナマエ、好きだ」
「わっ、」
「大好きなんだ」白熊 無断転載禁止
力強く腰に腕を回されて、キスをされた。嗅ぐだけで酔いそうになるくらい強かったお酒の匂いが、回数を重ねるうちに段々と気にならなくなっていく。自分の重心が分かっていないのかわざとなのか、キラウシさんが私に寄りかかるようにしてくるので、どんどん後ろに進んでしまう。いつの間にか壁際に追いやられていたことに、後頭部をぶつけた痛みで気づく。逃げ場がなくて、入り込んできた舌に必死に応える。
「はぁっ……んっ……」
「可愛い……なんでいつもこんな可愛いんだ……」
至近距離でそんなことを言われたらこっちの心臓が持たない。い、いつもと言ったか、今……?キラウシさんが目を細めて「耳まで真っ赤だ」と私の髪を耳にかけるついでに、耳たぶをふにふにと触わった。
「可愛すぎる」
また直球が飛んできて心臓が爆発する。その後も「ピリカ」「シレトッコロ」「ニペク」とブツブツと呟き続けている。色々言われているけどピリカ以外分からない。でも多分褒められている。お酒が入ると沢山笑う人を笑い上戸というけれど、キラウシさんは沢山褒める褒め上戸なんだろうか。誰にでもこんなだったら嫉妬してしまう。
今度は愛おしそうに私の唇を親指で撫でられた。そのまま指先がグッと入ってきてびっくりする。奥歯までなぞられたり、舌を押される。もうパニックだ。恍惚とした表情で見下ろされて体が震える。指が抜かれると、透明な糸が引いてプツリと切れたのが見えた。私の唾液でてらてらと濡れた親指をペロリと舐めるキラウシさんに、思考回路がショートする。え、えっ、えっちだ……バクバクと鳴る自分の心臓の音がうるさくて、耳鳴りまでしてきた。
「も、もう無理ぃ……!」
「やだ」
勘弁してください。頭を抱えて蹲りたいのに、また熱い手のひらで顔を包まれた。
「もっと顔を見せてくれ」
熱に浮かされた瞳で言われてきゅううっと胸が締め付けられた。いつもは少年みたいに無邪気で、門倉さんとバカやってるくせに。いつも酔っ払っても、ただニコニコするだけだったのに。なんで今日は急にこんな、腰が砕けそうな甘い色気を振り撒いてるの。
「ナマエは?俺のこと好きか?」
「うっ……」
どうかなりそうなほどに甘ったるい雰囲気に、顔を背けたくなった。でも身動きができない。キラウシさんの蕩けた瞳に吸い込まれる。
「す、好きです……」
言い終わるや否やまたキスが降ってきた。酔っぱらってるせいなのか、たまにキラウシさんの歯が当たってしまう。でも普段はこんなふうに荒々しいキスなんてしないから、新しい一面に興奮している自分がいる。
「んっ……ぁっ」
いつのまにかパジャマの裾からキラウシさんの手が入ってきていた。えっまさかここでするの、と驚く自分と、今までお行儀のいい方法でしか愛し合ったことがなかったので、淡い期待を持つ自分がせめぎ合う。お腹の辺りをまさぐっていた手が上へ上へと上がっていく。くすぐったさと、キラウシさんの余裕のない表情にお腹の奥がキュンとする。首筋に舌を這わされて固まる。ほ、本当にここで……!?手が胸に到達したところで、キラウシさんの動きがピタッと止まった。
「気持ち悪い……」
「わ!待ってここはダメ!」
慌ててトイレに連れて行き、背中をさする。さっきの大人な雰囲気はどこへ行ったのか、大きな体を曲げて情けなく蹲る姿は、ただの面倒な酔っ払いだった。苦しそうな声を上げているが出そうで出ないらしい。可哀想に、明日は酷い二日酔いになりそうだ。もう、なんでこんなに飲ませたんだ。門倉さんもそんなに酔ってないなら止めてくれたら良かったのに。
後日門倉さんにクレームを入れたら「段々ナマエちゃんが可愛いってことしか話さなくなるのが面白くて、つい飲ませすぎた」と笑いながら言われた。一定のラインを超えると私のことしか話さなくなるらしい。なんだそれ、笑い事じゃない。恥ずかしすぎるし確信犯だったのか!それアルハラですよ、と言い返そうとしたら門倉さんに先を越された。
「本当、愛されてるねぇ」
からかうわけでもなく、ただ普通に、本心からそう思っているように門倉さんが言うものだから、あの夜のキラウシさんのことをはっきりと思い出してしまって、その場で悶えてしまった。まだ笑ってくれたほうがマシだ。第三者から見ても本当に愛されているだなんて思われるのは、とても恥ずかしい。
「あいつ普段、だいぶ出力抑えてんだな」
もうやめて、私のライフはゼロです。でも今度は家で、二人きりの時にちょっと多めに飲ませてみたいな、なんて思ってしまった。
──
シレトッコロ(美しい人)
ニペク(光)
へべれけのキラウシさんを支えながら門倉さんが家にやってきた。大体いつも二人とも同じくらい酔っ払っているのに、今日の門倉さんはそんなに酔ってなさそうだ。対するキラウシさんは、目の焦点が合わないほどにめちゃくちゃに酔っている。こんなに酔っている姿を見るのは初めてで、一体どうしたのかと心配になる。私の知らないところで何かあって、ヤケ酒みたいなことをしたんだろうか。
「ナマエ……?」
「おう、そうだぞナマエちゃんだ」
「ナマエ、何してたんだ」
それは私のセリフです。門倉さんから離れて、数歩だけなのにフラフラと見事な千鳥足で私の方に歩いてきたキラウシさんを抱きとめる。一人で立つ気なんてなさそうだ。酒臭い。重い。多分今、私たちは「人」という漢字を体現している。お互いが支え合っているようでいて、実は片方がめちゃくちゃ頑張って支えている。もしかして人っていう字はこういう感じのシチュエーションでできたんじゃないだろうか。古代に思いを馳せたくなるくらいにはしんどい。グッと腹と脚に力を込めて頑張って支えれば、痛いくらいにキラウシさんが抱きしめ返してきた。いや、そうじゃなくてですね。それよりちゃんと立ってほしい。「お熱いねぇ」と後ろで門倉さんが面白がっている。
「カドクラあっち行け……」
「送ってやったのになんだその言い草は……言われなくても邪魔者は帰るさ」
じゃあな、と後ろ手に手を振って門倉さんが去っていった。キラウシさんはまだ私に抱きついたままだ。玄関の鍵を掛けようと手を伸ばすが届かない。一回離れようとすれば「どこ行くんだ」とさらに腕に力を込められた。そろそろ私の腰が限界だ。バキッといきそうで怖い。
「鍵、かけないと」
「あとでいいだろう」
「……門倉さん戻ってきちゃうかも」
キラウシさんが後ろ手に鍵を探し当てようとするが上手くいかない。しぶしぶ私から離れて、覚束ない動作で鍵をかけた。しっかりドアガードまでかけている。ベロベロに酔っ払ってるくせに、その辺りの思考はちゃんとしているんだな。面白くて吹き出したら、据わった目でジッと見つめられたあとに「可愛い」と小さく呟かれた。聞き間違いか?とドギマギしていたら、今度は大きくて無骨な手のひらで頬を包まれた。
「ナマエだ……」
まるでおにぎりを握るように、色んな角度と方向から顔を包まれる。ささくれが少しだけ頬を刺激してくすぐったい。もしかして、私がちゃんと存在していることを確かめているのだろうか。酔っ払いが可愛いことをしてくれる……なんていうシラフの人間としての余裕は、キラウシさんの発言によって粉々に破壊されることとなる。
「ナマエがいなくて寂しかった」
「へっ……?!」
「もう離れたくない」
「はなっ……?!えぇっ?!」
なんだこの破壊力は。しゅん、と子犬のような目で、とんでもないことを言われて頭が追いつかない。お酒が入っているせいかいつもよりもずっと体温が高くて、触れられる度に火傷するんじゃないかって思う。いつもはこんなに分かりやすく愛情表現しないのに。言葉だけじゃない。門倉さんだったとはいえ、さっきみたいに人前で私のことを抱きしめたり、こんな手のひらで確かめるように触ってきたり、キラウシさんの今日の愛情表現はとても直接的で心臓に悪い。いつもはもっと、言葉の端々やちょっとした行動から愛を感じる程度なのに。私も直球で愛を伝えるのは苦手だから、慎ましくてほわほわとした関係で丁度良かったのに。こんな熱烈に来られたら、どうしたら良いのか分からない。
「ナマエ、好きだ」
「わっ、」
「大好きなんだ」白熊 無断転載禁止
力強く腰に腕を回されて、キスをされた。嗅ぐだけで酔いそうになるくらい強かったお酒の匂いが、回数を重ねるうちに段々と気にならなくなっていく。自分の重心が分かっていないのかわざとなのか、キラウシさんが私に寄りかかるようにしてくるので、どんどん後ろに進んでしまう。いつの間にか壁際に追いやられていたことに、後頭部をぶつけた痛みで気づく。逃げ場がなくて、入り込んできた舌に必死に応える。
「はぁっ……んっ……」
「可愛い……なんでいつもこんな可愛いんだ……」
至近距離でそんなことを言われたらこっちの心臓が持たない。い、いつもと言ったか、今……?キラウシさんが目を細めて「耳まで真っ赤だ」と私の髪を耳にかけるついでに、耳たぶをふにふにと触わった。
「可愛すぎる」
また直球が飛んできて心臓が爆発する。その後も「ピリカ」「シレトッコロ」「ニペク」とブツブツと呟き続けている。色々言われているけどピリカ以外分からない。でも多分褒められている。お酒が入ると沢山笑う人を笑い上戸というけれど、キラウシさんは沢山褒める褒め上戸なんだろうか。誰にでもこんなだったら嫉妬してしまう。
今度は愛おしそうに私の唇を親指で撫でられた。そのまま指先がグッと入ってきてびっくりする。奥歯までなぞられたり、舌を押される。もうパニックだ。恍惚とした表情で見下ろされて体が震える。指が抜かれると、透明な糸が引いてプツリと切れたのが見えた。私の唾液でてらてらと濡れた親指をペロリと舐めるキラウシさんに、思考回路がショートする。え、えっ、えっちだ……バクバクと鳴る自分の心臓の音がうるさくて、耳鳴りまでしてきた。
「も、もう無理ぃ……!」
「やだ」
勘弁してください。頭を抱えて蹲りたいのに、また熱い手のひらで顔を包まれた。
「もっと顔を見せてくれ」
熱に浮かされた瞳で言われてきゅううっと胸が締め付けられた。いつもは少年みたいに無邪気で、門倉さんとバカやってるくせに。いつも酔っ払っても、ただニコニコするだけだったのに。なんで今日は急にこんな、腰が砕けそうな甘い色気を振り撒いてるの。
「ナマエは?俺のこと好きか?」
「うっ……」
どうかなりそうなほどに甘ったるい雰囲気に、顔を背けたくなった。でも身動きができない。キラウシさんの蕩けた瞳に吸い込まれる。
「す、好きです……」
言い終わるや否やまたキスが降ってきた。酔っぱらってるせいなのか、たまにキラウシさんの歯が当たってしまう。でも普段はこんなふうに荒々しいキスなんてしないから、新しい一面に興奮している自分がいる。
「んっ……ぁっ」
いつのまにかパジャマの裾からキラウシさんの手が入ってきていた。えっまさかここでするの、と驚く自分と、今までお行儀のいい方法でしか愛し合ったことがなかったので、淡い期待を持つ自分がせめぎ合う。お腹の辺りをまさぐっていた手が上へ上へと上がっていく。くすぐったさと、キラウシさんの余裕のない表情にお腹の奥がキュンとする。首筋に舌を這わされて固まる。ほ、本当にここで……!?手が胸に到達したところで、キラウシさんの動きがピタッと止まった。
「気持ち悪い……」
「わ!待ってここはダメ!」
慌ててトイレに連れて行き、背中をさする。さっきの大人な雰囲気はどこへ行ったのか、大きな体を曲げて情けなく蹲る姿は、ただの面倒な酔っ払いだった。苦しそうな声を上げているが出そうで出ないらしい。可哀想に、明日は酷い二日酔いになりそうだ。もう、なんでこんなに飲ませたんだ。門倉さんもそんなに酔ってないなら止めてくれたら良かったのに。
後日門倉さんにクレームを入れたら「段々ナマエちゃんが可愛いってことしか話さなくなるのが面白くて、つい飲ませすぎた」と笑いながら言われた。一定のラインを超えると私のことしか話さなくなるらしい。なんだそれ、笑い事じゃない。恥ずかしすぎるし確信犯だったのか!それアルハラですよ、と言い返そうとしたら門倉さんに先を越された。
「本当、愛されてるねぇ」
からかうわけでもなく、ただ普通に、本心からそう思っているように門倉さんが言うものだから、あの夜のキラウシさんのことをはっきりと思い出してしまって、その場で悶えてしまった。まだ笑ってくれたほうがマシだ。第三者から見ても本当に愛されているだなんて思われるのは、とても恥ずかしい。
「あいつ普段、だいぶ出力抑えてんだな」
もうやめて、私のライフはゼロです。でも今度は家で、二人きりの時にちょっと多めに飲ませてみたいな、なんて思ってしまった。
──
シレトッコロ(美しい人)
ニペク(光)
