短編
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休日なのに早めに目が覚めてしまった。佐一君はまだ寝ている。静かに寝息を立てながら、長い睫毛を伏せて眠る無防備な姿をもう少し見ていたかったけど、手持ち無沙汰なのも否めないのでこっそりと寝室を後にした。
リビングのカーテンを開ければ、暖かい陽の光が部屋を満たす。良い天気だ。佐一君が起きたらどこかに出かけようか。でもあえて部屋でゴロゴロするのも捨てがたい。
この後どうするかは佐一君が起きてきてから決めるとして、今は一人なので最近あまり出来ていなかったゲームをすることにした。一人用のオープンワールドアドベンチャーゲームだ。佐一君もゲームはするけど対戦系しかしないから、このゲームは私一人で進めている。購入してからだいぶ経っているけれど、自由度が高いので探索と寄り道ばっかりしていて、メインストーリーの方が全然進んでいない。今だって、そろそろボスを倒しに行くかと素材を集めていたはずなのに、良い感じの洞窟を見つけてしまってまた探索に勤しんでしまっている。本当にこのゲームは無限に楽しめる。買う時はちょっと高いなと感じたけれど、こんなの実質ゼロ円だよ、なんてどうでも良いことを考えながら一人の時間をのんびりと過ごしていた。
白熊 無断転載禁止
探索が一段落した時、後ろで寝室のドアが開く音がした。
「おはよ……」
「おはよう」
ふぁあ、とあくびの音が聞こえた。軽く屈んだ佐一君が、後ろから緩く腕を回してきて、首元にすり寄ってきた。ふわふわとした癖っ毛が、首筋と頬に当たってくすぐったい。ぽんぽん、と頭を撫でれば満足そうに洗面所の方に向かって行った。子供……と言うには大きすぎるけど、まだ完全に覚醒していない雰囲気があどけなくて、とても可愛い。自然と頬が緩む。寂しかった部屋に、佐一君の分の生活音が加わって心地良い。カチャカチャとうるさかったはずのボタンの操作音が気にならなくなっていく。
暫くして佐一君がコーヒーとロールパンを持って隣に腰を下ろした。その分ソファーが少しだけ沈んで、私達の肩と腕が触れ合う。じんわりと伝わってくる少し高めの体温が愛おしい。横目でこっそりと佐一君を盗み見れば、さっきよりも幾分かしゃっきりとしているけど、寝癖はそのままだし髭も少し生えている。瞼も重そうで、たまにゆっくりと瞬きをしている。パンをもぐもぐと食べながらゲーム画面をぼーっと見ている姿は、私しか知らないオフの佐一君だ。
「これ結構前に買ってたやつ?」
「そう。寄り道しすぎちゃったから良い加減ボスやろうかなって」
もう半年くらい主軸のストーリーそっちのけで遊んでいた。探索やサブクエスト含めてまだまだやることはたくさんあるけれど、この辺りでメインストーリーをクリアしておきたい。装備を整えて、いざボス戦へ。
ボスってどれぐらい強いんだろう、ドキドキするなぁと思っていたら、パンを食べ終わった佐一君が寄りかかってきた。重い。右腕が潰されて操作しづらい。ムービーが終わってボス戦が始まった。右にのしかかる体重をいなすために少し前のめりになれば、私の背中と、ソファーの背もたれの間に佐一君が入り込む。そのままぐいぐいと体を捩じ込んでくるのでその分私は押し出されて、ソファーから滑り落ちそうになる。足に力を入れて抵抗するが、そもそも佐一君に力で勝てるはずがないので、どんどんソファーとお尻の接地面が少なくなっていく。邪魔すぎる……!目の前のボスで手一杯なのに、佐一君の相手もしないといけないのは無理ゲーすぎる。上手く対処できずにボスの攻撃を何度か食らってしまったので、慌てて一時停止してソファーから立ち上がった。
「えっ、なに?どうしたの?」
「ほら、ここ座って」
私が座っていた場所に佐一君が座った。足の間をポンポンとしたあとに両腕が伸びてきて、すっぽりと後ろから抱きしめられる。そのまま逞しい体に背中を預ければ、なんとも言えない安心感に身を包まれた。ぎゅうぎゅうに抱きしめられて少し息苦しい。けど、直接伝わってくる体温と鼓動が心地良い。甘えたモードなのだろうか。もう少し待っててほしいな、と思いながらゲームを再開した。
「ねぇねぇ、これ終わったらどっか行く?」
「んー……」
うわ、さすがに硬いな。もっと火力の高い武器を揃えておけば良かった。回復足りるかな……佐一君が耳元で何か話しているが、ボスが強くてそれどころではない。
「ナマエちゃん俺の話聞いてないでしょ?」
「うーん?」
「もう、ひどい」
「ひゃっ……!」
ゾリゾリと首筋を髭で撫でられて変な声が出た。鳥肌立ってる、と私の二の腕をなぞりながら佐一君が小さく笑った。その感覚にまたさらに鳥肌が立つのが分かった。
「ま、待ってて、もうすぐだから」
はーい、と素直な返事が返ってきたけれど、服の上から脇腹をさわさわと撫でられる。いや、待っててって!振り払おうにも両手はコントローラーで塞がっているし、体は後ろからがっちりとホールドされていて逃げられない。今更ながら体格差をまざまざと思い知らされて鼓動が速くなる。そのうち手が服の中に入ってきて、直接肌を撫でられた。手のひらで大きく撫でていたと思ったら、今度は指先でなぞられる。ビクッと体を捩れば、耳元にキスを落とされた。鼓膜を揺らした、ちゅっという可愛らしい音に動揺して、攻撃を避け損ねた。
「ちょっ……!」
「ん、気にしないで。続けて」
無理だって。何これ拷問?抗議したかったけど「ほらほら、敵来てるよ」と言われて慌ててボタンを操作する。間一髪で攻撃を避けて、一度ボスから距離を置く。落ち着け。ここで死んだらまたボス戦が最初からになってしまう。せっかく第二形態まで進んだのに。
佐一君の手がまた直にお腹を撫でていたと思ったら、おへそに指を突っ込まれてびっくりしてしまった。何が楽しいのか、ぐりぐりとねじ込んでくる。体の奥から湧き上がってくる感覚を身じろぎしながらやりすごしていたら、もう片方の手で服の上からふにふにと胸を揉まれた。柔らかい、と耳元でため息交じりに言われて、無意識に体が震える。自分の体温が上がっていくのが分かって恥ずかしい。佐一君は一体私をどうしたいんだ。お腹とおへそを触っていた手も上がってきて、本格的に危機感を感じたのでさすがに怒ろうと振り返ったら、部屋を満たす暖かい日差しのような金色と目があった。
「やっとこっち見てくれた」
目元がゆるゆるの佐一君が、そこに居た。キャラの痛々しい悲鳴が聞こえて、攻撃を受けていることに気づく。回復しなきゃ、と思っても「……寂しかったんですけどぉ」と唇をツンと尖らせて言われたら、もうコントローラーを置くしかなかった。
「俺とゲームどっちが大事なの?」
「ごめんごめん」
向かい合えば、またぎゅうっと抱きしめられる。ふわふわとした髪の毛を撫でれば、すりすりと首筋に寄ってくるのが可愛い。ちゅ、と頬に可愛いキスを落とされた。目が合う。吸い寄せられるように優しいキスを交わす。放置してごめんね、という気持ちを込めてもう一回、鼻先に小さいキスを落とせば、佐一君がふふっと満足そうに笑った。可愛い。私はこの笑顔にめっぽう弱い。
「じゃああそこ行こう、佐一君が言ってた新しいカフェ」
「いいね、ナマエちゃんもあの辺りでお買い物したいって言ってたよね」
お互いが何気なく言ったことを覚えている。そんな小さなことで、こんなにも幸せな気持ちになれるなんて、佐一君と出会って初めて知った。佐一君と共に過ごす日々は穏やかで、暖かくて、まるで春の陽気のようだ。
「あのカフェ、12時過ぎたら結構待つんだって」
「じゃあ早く支度しなきゃ」
立ち上がろうとすれば、佐一君の手が私の腰を掴んだ。「もうちょっとだけ」とはにかむのが可愛くて可愛くて、寝ぐせのついた頭を引き寄せて撫でまわす。元々スキンシップは多い方だけれど、今日は特に甘えたさんだ。
「どうする?諦めてゴロゴロする?」
「いや、行く。行きたい」
「ね」
そう言う割にはお互い全く動く気配がないのが可笑しい。とく、とく、と伝わってくる心音も、少し高めの体温も、肺を満たす匂いも、佐一君のすべてが心地よくて離れがたい。ジッと、見つめ合って笑い合う。多分、佐一君も同じことを思ってるんだろう。できることなら、ずっとこのままでいたい。最後にもう一回だけ軽くキスを交わして、私たちは今度こそソファーを後にした。
リビングのカーテンを開ければ、暖かい陽の光が部屋を満たす。良い天気だ。佐一君が起きたらどこかに出かけようか。でもあえて部屋でゴロゴロするのも捨てがたい。
この後どうするかは佐一君が起きてきてから決めるとして、今は一人なので最近あまり出来ていなかったゲームをすることにした。一人用のオープンワールドアドベンチャーゲームだ。佐一君もゲームはするけど対戦系しかしないから、このゲームは私一人で進めている。購入してからだいぶ経っているけれど、自由度が高いので探索と寄り道ばっかりしていて、メインストーリーの方が全然進んでいない。今だって、そろそろボスを倒しに行くかと素材を集めていたはずなのに、良い感じの洞窟を見つけてしまってまた探索に勤しんでしまっている。本当にこのゲームは無限に楽しめる。買う時はちょっと高いなと感じたけれど、こんなの実質ゼロ円だよ、なんてどうでも良いことを考えながら一人の時間をのんびりと過ごしていた。
白熊 無断転載禁止
探索が一段落した時、後ろで寝室のドアが開く音がした。
「おはよ……」
「おはよう」
ふぁあ、とあくびの音が聞こえた。軽く屈んだ佐一君が、後ろから緩く腕を回してきて、首元にすり寄ってきた。ふわふわとした癖っ毛が、首筋と頬に当たってくすぐったい。ぽんぽん、と頭を撫でれば満足そうに洗面所の方に向かって行った。子供……と言うには大きすぎるけど、まだ完全に覚醒していない雰囲気があどけなくて、とても可愛い。自然と頬が緩む。寂しかった部屋に、佐一君の分の生活音が加わって心地良い。カチャカチャとうるさかったはずのボタンの操作音が気にならなくなっていく。
暫くして佐一君がコーヒーとロールパンを持って隣に腰を下ろした。その分ソファーが少しだけ沈んで、私達の肩と腕が触れ合う。じんわりと伝わってくる少し高めの体温が愛おしい。横目でこっそりと佐一君を盗み見れば、さっきよりも幾分かしゃっきりとしているけど、寝癖はそのままだし髭も少し生えている。瞼も重そうで、たまにゆっくりと瞬きをしている。パンをもぐもぐと食べながらゲーム画面をぼーっと見ている姿は、私しか知らないオフの佐一君だ。
「これ結構前に買ってたやつ?」
「そう。寄り道しすぎちゃったから良い加減ボスやろうかなって」
もう半年くらい主軸のストーリーそっちのけで遊んでいた。探索やサブクエスト含めてまだまだやることはたくさんあるけれど、この辺りでメインストーリーをクリアしておきたい。装備を整えて、いざボス戦へ。
ボスってどれぐらい強いんだろう、ドキドキするなぁと思っていたら、パンを食べ終わった佐一君が寄りかかってきた。重い。右腕が潰されて操作しづらい。ムービーが終わってボス戦が始まった。右にのしかかる体重をいなすために少し前のめりになれば、私の背中と、ソファーの背もたれの間に佐一君が入り込む。そのままぐいぐいと体を捩じ込んでくるのでその分私は押し出されて、ソファーから滑り落ちそうになる。足に力を入れて抵抗するが、そもそも佐一君に力で勝てるはずがないので、どんどんソファーとお尻の接地面が少なくなっていく。邪魔すぎる……!目の前のボスで手一杯なのに、佐一君の相手もしないといけないのは無理ゲーすぎる。上手く対処できずにボスの攻撃を何度か食らってしまったので、慌てて一時停止してソファーから立ち上がった。
「えっ、なに?どうしたの?」
「ほら、ここ座って」
私が座っていた場所に佐一君が座った。足の間をポンポンとしたあとに両腕が伸びてきて、すっぽりと後ろから抱きしめられる。そのまま逞しい体に背中を預ければ、なんとも言えない安心感に身を包まれた。ぎゅうぎゅうに抱きしめられて少し息苦しい。けど、直接伝わってくる体温と鼓動が心地良い。甘えたモードなのだろうか。もう少し待っててほしいな、と思いながらゲームを再開した。
「ねぇねぇ、これ終わったらどっか行く?」
「んー……」
うわ、さすがに硬いな。もっと火力の高い武器を揃えておけば良かった。回復足りるかな……佐一君が耳元で何か話しているが、ボスが強くてそれどころではない。
「ナマエちゃん俺の話聞いてないでしょ?」
「うーん?」
「もう、ひどい」
「ひゃっ……!」
ゾリゾリと首筋を髭で撫でられて変な声が出た。鳥肌立ってる、と私の二の腕をなぞりながら佐一君が小さく笑った。その感覚にまたさらに鳥肌が立つのが分かった。
「ま、待ってて、もうすぐだから」
はーい、と素直な返事が返ってきたけれど、服の上から脇腹をさわさわと撫でられる。いや、待っててって!振り払おうにも両手はコントローラーで塞がっているし、体は後ろからがっちりとホールドされていて逃げられない。今更ながら体格差をまざまざと思い知らされて鼓動が速くなる。そのうち手が服の中に入ってきて、直接肌を撫でられた。手のひらで大きく撫でていたと思ったら、今度は指先でなぞられる。ビクッと体を捩れば、耳元にキスを落とされた。鼓膜を揺らした、ちゅっという可愛らしい音に動揺して、攻撃を避け損ねた。
「ちょっ……!」
「ん、気にしないで。続けて」
無理だって。何これ拷問?抗議したかったけど「ほらほら、敵来てるよ」と言われて慌ててボタンを操作する。間一髪で攻撃を避けて、一度ボスから距離を置く。落ち着け。ここで死んだらまたボス戦が最初からになってしまう。せっかく第二形態まで進んだのに。
佐一君の手がまた直にお腹を撫でていたと思ったら、おへそに指を突っ込まれてびっくりしてしまった。何が楽しいのか、ぐりぐりとねじ込んでくる。体の奥から湧き上がってくる感覚を身じろぎしながらやりすごしていたら、もう片方の手で服の上からふにふにと胸を揉まれた。柔らかい、と耳元でため息交じりに言われて、無意識に体が震える。自分の体温が上がっていくのが分かって恥ずかしい。佐一君は一体私をどうしたいんだ。お腹とおへそを触っていた手も上がってきて、本格的に危機感を感じたのでさすがに怒ろうと振り返ったら、部屋を満たす暖かい日差しのような金色と目があった。
「やっとこっち見てくれた」
目元がゆるゆるの佐一君が、そこに居た。キャラの痛々しい悲鳴が聞こえて、攻撃を受けていることに気づく。回復しなきゃ、と思っても「……寂しかったんですけどぉ」と唇をツンと尖らせて言われたら、もうコントローラーを置くしかなかった。
「俺とゲームどっちが大事なの?」
「ごめんごめん」
向かい合えば、またぎゅうっと抱きしめられる。ふわふわとした髪の毛を撫でれば、すりすりと首筋に寄ってくるのが可愛い。ちゅ、と頬に可愛いキスを落とされた。目が合う。吸い寄せられるように優しいキスを交わす。放置してごめんね、という気持ちを込めてもう一回、鼻先に小さいキスを落とせば、佐一君がふふっと満足そうに笑った。可愛い。私はこの笑顔にめっぽう弱い。
「じゃああそこ行こう、佐一君が言ってた新しいカフェ」
「いいね、ナマエちゃんもあの辺りでお買い物したいって言ってたよね」
お互いが何気なく言ったことを覚えている。そんな小さなことで、こんなにも幸せな気持ちになれるなんて、佐一君と出会って初めて知った。佐一君と共に過ごす日々は穏やかで、暖かくて、まるで春の陽気のようだ。
「あのカフェ、12時過ぎたら結構待つんだって」
「じゃあ早く支度しなきゃ」
立ち上がろうとすれば、佐一君の手が私の腰を掴んだ。「もうちょっとだけ」とはにかむのが可愛くて可愛くて、寝ぐせのついた頭を引き寄せて撫でまわす。元々スキンシップは多い方だけれど、今日は特に甘えたさんだ。
「どうする?諦めてゴロゴロする?」
「いや、行く。行きたい」
「ね」
そう言う割にはお互い全く動く気配がないのが可笑しい。とく、とく、と伝わってくる心音も、少し高めの体温も、肺を満たす匂いも、佐一君のすべてが心地よくて離れがたい。ジッと、見つめ合って笑い合う。多分、佐一君も同じことを思ってるんだろう。できることなら、ずっとこのままでいたい。最後にもう一回だけ軽くキスを交わして、私たちは今度こそソファーを後にした。
