桜庭愛理温まります

事件から数日後、いったん東京に帰ったけれど、高にぃのお見舞いに長野の総合病院へやってきた

ノックをして病室の扉を開く

「高にぃ、調子はどう?」

ベッドで上半身を起こして、本を開いていた高にぃ

少し開いている窓から風が吹いてこっちを見てきた

高明「愛理さん、態々来てくれたんですか」

本を閉じ、微笑んできた

「うん。お見舞いもあったけど、ちょっと大和警部と約束事があって」

高明「約束ですか?」

「大和警部が私のことを知りたいって」

高明「.....。敢助君は物凄く頭が固いんですよ」

「それ、本人の前で言っちゃだめだよ」

嫌味に肩を竦める

お見舞いの和菓子詰めをベッド横の机に置いた

「良かったら食べて」

高明「...そこまでしなくても」

「高にぃは見舞い品を断るの?」

少しだけ意地悪をしてみた

高明「ふっ、それもそうですね。有難く頂きます」

高にぃがじっとこちらを見つめてくる

「?」

自身の唇に指先を当てた高にぃ

そして、申し訳なさそうに眉を下げた

高明「すみません。アレ以外に何も思いつかなくて...」

「どうして謝るの?」

ベッドの近くにおいてあったイスに座って高にぃを見つめる

高明「嫌、でしたよね」

「私を助けるためのしたことでしょ。謝らないで」

高明「…ありがとうございます」

「ふふっ。どういたしまして」

高にぃに頭を優しく撫でられた

撫で方がヒロにぃにそっくりだ

その時、病室の扉がノックされた。開いて顔を見せたのは由衣さん

由衣「諸伏警部…あら。愛理ちゃん!来てたのね」

「怪我はもう大丈夫ですか?」

由衣「ええ。諸伏警部、下で敢ちゃんが待ってるわ」

高明「ふむ。では、一つ顔を出しに行きましょうか」

由衣「車椅子は私が押すから」

高明「ありがとうございます」

高にぃが乗ったのを確認し、エレベーターで下に行く

ロビーにいた大和警部を見つけた

大和「...愛理?」

こっちに気付いて振り返ってきた

「約束、したでしょう?」

大和警部は目を細め、口の端を上げる

そしてジト目で高にぃを睨み付けた

大和「ったく、無茶しやがって。あの時、病院から無理やり抜け出してきてたなんてな」

高明「君も似たようなものでしょう。」

大和「大体なぁ、俺が死んだふりしてたこと、高明お前は知らなかったのかよ?」

高明「ええ。微塵も...なにより、私はまだ偽りの涙とはいえ、愛理さんに悲しい思いをさせたこと許してませんから」

「えっ…?」

これはどう反応したらいいの…?

大和「めんどくせーな、お前...。つかだったら涙ぐらい流せってんだよ!」

高明「いやぁ。君のような人間が死ぬこともあるんだと、あっけにとられて...それに、仕方がないじゃないですか。私は敢助君と違い愛理さんの事をよく知っている...仲が深い義兄妹なので」

大和「あ”!?」

「2人ともやめてください」

手を上げ、2人の間を仲裁する

由衣「でも驚いたわ、愛理ちゃん演技上手ね〜」

「それは由衣さんもでしょう?」

由衣「気付いてたのね、実は私コナン君から聞かされて知ってはいたんだけど...」

私はジョディ先生のことが頭に浮かんだ

同じ過ちは繰り返さないってところ、新一君らしいわね

大和「あの小僧は高明には教えずに、なんで上原には教えたんだ?」

大和警部の疑問には顎に手を当て高にぃが返す

高明「...おそらくあの少年は、悲しませたくなかったんじゃないでしょうか?それが我々警察とは違う、きっと公安とも違う、彼なりのやり方なんでしょう」

流石高にぃ。コナン君のことよくわかってる

大和「よくわかんねェな。...ってか、上原 お前知ってたんなら、さすがにあれはないぞ」

由衣「っ.....」

食堂でのことかしら

大和「あんなオーバーな芝居しやがって」

由衣「別に、オーバーじゃないもん!」

頬を染め、恥ずかしそうに顔を逸らした由衣さん

邪魔をしてはいけないと思って3人から少し離れる

大和「ただの同僚が死んだだけで、みんなの前であんなに泣くバカがいるか」

由衣さんはチラリと大和警部を見た

由衣「ただの同僚...じゃないとしたら?」

大和「......あ?」

高明「フッ」

…え?

傍のソファに座っていたけれど、すぐに立って大和警部を見る

大和「で、愛理。お前は…」

大和警部と由衣さんって相思相愛だと思ってたけど、大和警部は自分が由衣さんに恋してるって気づいてないんだ

大和「おい、愛理?」

「あ、ごめんなさい」

大和警部に声をかけられているのに気づかなかった

高明「愛理さん」

「なぁに?」

高明「三日会わざれば刮目して見よ。です」

高にぃの言葉に閃く

「ふふっ。ずっと見てきた高にぃの言葉は違うね」

大和「?何言ってんのかしらねーが、納得したようだな」

由衣「.....はぁ」

由衣さん…頑張って

大和「で、愛理。お前のこと教えてくれよ」

「…はい」

由衣「約束って、なんの?」

大和「気付いてるだろ、上原。お前だって」

由衣「...あっ。でも、これは敢ちゃんから問うべきじゃ?」

微笑みながら、指先を顎に当てた由衣さん

大和「それもそうだな。愛理」

「はい」

大和「おまえ、一体何者なんだよ?」

ニカッ、と笑いながら尋ねてきた

私は、大和警部と由衣さんに自分のことすべてを話した

「…そういうことだから、これからもよろしくね?敢にぃ。由衣さん」

敢にぃは私の頭を豪快に撫でた

大和「おう」

由衣「ええ。愛理ちゃん」

暫く談笑した後、迎えが来たので帰ることになった愛理

頭を下げた後、自動ドアへと歩く愛理を3人は見送る

ドアを通って閉まった所で大和は由衣に、諸伏の怪我の状態を聞く。2人のやり取りを横目に諸伏は駐車場へ出た愛理の背中を見やる

高明「!」

すると、真横からヘルメットが渡された

「フッ、兄さん。元気そうだね」

愛理はメットを受け取り、フードを被っている人物の後ろへ乗った

バイクは発進し出し病院の角を曲がって行き、すぐに姿が見えなくなった


高明「(来てくれていたんだな、景光)」

兄である、高明はこっそりとほくそ笑んだ
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