桜庭愛理迷います

私は陣平にぃに付き添われ、車ですぐに下山した

長野県庁に到着したところで陣平にぃに抱えられ、玄関ホールで警察手帳を警官に見せる。蘭ちゃん達の居場所を尋ねるとみんな十階の食堂に集まっているらしい

エレベーターを使い、食堂に続く扉を陣平にぃが蹴って開けた

蘭「あっ」

歩美「松田刑事!愛理先生!」

光彦「よかったぁ〜!! 無事d」

松田「悪い、ちょっと後でな。嬢ちゃん、姫が凍傷に」

灰原「!?タオルを!!」

松田「持ってる、頼めるか?」

灰原「ええ!」

陣平にぃが差し出したタオルを哀ちゃんはすぐに受け取り、厨房の方へと駆けて行った。蘭ちゃんや子供たちも「えぇっ!?」と驚いた声を上げる、近くの椅子にそっと身体は下ろされた

「大和、警部は.....」

でも、自分より、大和警部の方が…気が気じゃない

松田「...救助されて無事なのを祈る他ねぇだろ。」

「…」

蘭「や、大和警部が…!?」

松田「ああ、まぁ...ちとどれだけ経緯を話せるか」

陣平にぃの手によって脱がされた手袋、指先は初期症状の赤みが出ていた

哀ちゃんが暖かいタオルを持って来て処置をし始める

あれから、コナン達はこっちへ戻って来なかった

私と陣平にぃはこの食堂で一夜を過ごした

早期に治療をしたおかげで凍傷は治った

朝早くに開いた食堂の扉

目を向けると、蘭ちゃんや子供たち由衣さんも一緒にいた

松田「.....」

蘭「...みんな、心配だって言って」

博士「寝付けんかったよ」

松田「そうだよな。」

光彦「大丈夫でしょうか、コナン君やおじさん達」

元太「あぁ」

由衣「......、皆気分転換に紅茶飲まない?あったかいわよ」

歩美「あ!飲む〜!!」

由衣さんの提案にみんなはすぐに乗った。

ずっと暗い表情のまま人数分の紅茶を紙コップに淹れている

それを目にやった蘭ちゃんは「お手伝いします」と察知して由衣さんに寄り添って行った

灰原「.....うん。これなら今日のうちに回復するわ」

哀ちゃんが私の前に来て、凍傷の状態を診てくれた

松田「ありがとな嬢ちゃん」

灰原「これから先絶対無茶しないでよ」

「うん。ありがとう、哀ちゃん」

灰原「(愛理おねーちゃんのことだからまた無茶するんでしょうけど…)

元太「あ、コナン!」

少しした時、半分開いている食堂のドアにコナン君がやってきた

駆け寄ると「すまん、心配かけたな」と小五郎さんが言った

小五郎「俺たちは大丈夫だ。」

コナン「遅くなってごめんなさい」

蘭「ううん。良かった...!」

すぐに哀ちゃんがコナン君と小五郎さんの分の紅茶を運ぶ

灰原「はい。紅茶でいい?」

コナン「おう、サンキュ」

灰原「熱いから気を付けて」

小五郎「おお、すまねぇ。ありがと」

小五郎さんには手渡し、入れ替わりで由衣さんが近付いた

紙コップを両手で持つ由衣さんに小五郎さんは尋ねる

小五郎「諸伏警部は?」

由衣「大丈夫です。命に別状はありません」

「.....はぁ」

椅子に着いたまま肩で息をして安堵する

由衣「それで、敢ちゃ...大和警部は.....?」

俯いて尋ね返した

コナン「今、救助隊が捜索してる」

長谷部「ところで」

コナン君達より少し前にやって来ていた長谷部さん

ハンカチ越しに持った鑑定書を見せる

長谷部「その子供が噛んだ犯人の手袋ですが、鑑定の結果 鹿革でした。照合を科捜研に依頼しています」

食堂の外から、走る足音が響いてきた

佐藤「はぁ...ッ、いま.....!」

ドアに手をついて、息を切らして現れた美和子さん

深く項垂れて救助の状態を伝えてくる

佐藤「救助隊から連絡があって...大和警部が...」

由衣「...!」

佐藤「見つかりました。」

由衣さんは微かに頬を緩める。コナン君達もほっとする

佐藤「ただ...ただ.....。」

...ただ?

俯いたまま絞り出すような声色で続ける美和子さん

佐藤「病院に選ぶ前に、大和警部の...大和警部の.....」

“ 死亡 ”

佐藤「が確認されました...」

蘭「そん...な...」

蘭ちゃんは口の前に手をやる

由衣さんの手から紙コップが落ち、中身が床に散る

由衣「うそ...嘘よ.....」

崩れる様に床に両膝を着けた

嗚咽を漏らす由衣さんの元に蘭ちゃんが歩み寄り、肩に手を置く

由衣「かんちゃ...、敢ちゃんッ...! 敢ちゃあああん!!!」

食堂に由衣さんの泣き叫ぶ声が響き渡る

由衣「っうぁ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙ーッ!!!!」

小五郎さんは歯噛みをして「大和警部まで...」と呟く

松田「...っ、オイ!さと__」

陣平にぃのスーツの袖を指で掴む

「........」

自分の頬にはただただ涙が流れ続けた














午後、善光寺やって来た。

雪が所々積もっているけれど、参拝客が沢山訪れていて本堂で私たちも手を合わせた。階段のところで小五郎さんは腰を掛け、私とコナン君はすぐ側の回廊に立っている

コナン「.....愛理姉」

「ききたくない...。もう、いいの.....」

コナン「....」
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