桜庭愛理迷います

翌朝早朝

私達は海の上にいた

園子ちゃんが手配した大型クルーザーで八丈島に向かっている

子供たちは甲板に出て海を眺めていた

蘭「愛理姉、お父さん見てない?」

船内のロビーで一人寛いでいると、蘭ちゃんに声をかけられた

「小五郎さんなら、少し仮眠をとるって言ってたわよ」

蘭ち「もう…子供たちの面倒見てもらうためにつれてきたのに」

「休めるのは今の内だから」

蘭「ったくもう…。それより、愛理姉は甲板に出なくていいの?少し寒いけど、潮風が気持ちよかったよ」

「潮風に当たると体が冷えちゃうかもだから…ごめんね」

やんわり断ると蘭ちゃんがじっと私のことを見つめてきた

「どうしたの?」

蘭「ううん、何でもない(無理してる気がする…大丈夫かな)」

園子「あ、いたいた!蘭!愛理姉!そろそろ着くわよ!」

甲板に出ていた園子ちゃんがロビーの扉を開けて私たちに声をかけてくる

「小五郎さん呼んでくるわね」

蘭「あ、愛理姉…!」

客室に向かおうとしたとき、不安を孕んだ蘭ちゃんの声に呼び止められた

「なぁに?」

蘭「…無理、しないでね」

蘭ちゃんは私が不安に駆られてるって気づいてるのね

「大丈夫よ。ありがとう」

それだけ言って、荷物を取りに行くついでに小五郎さんを呼びに客室へ向かった

八丈島に辿り着き、ホテルまでの道をバイクで向かう

博士も自分の車を積み込んでいたので、彼のビートルと小五郎さんが借りたレンタカーの後を追って島をバイクで走らせる

観光スポットともあって、この季節でも客足が多い

普段とは違う自然の多い景色を眺めながら走っていると、スマホが着信音を鳴らした

ヘルメットに取り付けてあるBluetoothスピーカーの電源を入れ、スマホと繋いだ

「もしもし」

ディスプレイは見えていないため、誰からの着信かは分からないけれど、とりあえず出た

沖矢『俺だ。今話せる状況か?』

電話の相手は沖矢さんの声のパパだ

「なぁに?」

私たちが八丈島に来ることはパパには筒抜けのはず

沖矢『愛理の未来通り、ドイツのフランクフルトにあるユーロポール防犯カメラネットワークセンターに何者かが侵入した』

…やっぱり起きてしまった

「ユーロポーロの職員の方は無事だったの?」

沖矢『事前に血糊が出る防弾チョッキを着用してもらっていたから無事だ。ジョディの知り合いらしくてな。ジョディが愛理にお礼をしたいと言ってたぞ』

「またあとでジョディさんに連絡するね。…銃を撃ったのはジンって人?」

沖矢『ああ。キールからの情報だ』

「侵入者も組織の…」

沖矢『ああ。髪をコーンロウに編み上げたヤツで、コードネームは…ピンガ。ラムに気に入られていると聞いたことがある』

ピンガ。ラムと同じ原料の蒸留酒…

「いつもは教えてくれないのに、どうして今日は教えてくれるの?」

沖矢『今日そのセンターと回線を繋いで本格始動するのが、その近くにあるパシフィック・ブイだ』

「ニュースで最近見た」

あのとき少しだけ嫌な予感がしたのを覚えている

この話のせいでその予感は膨張した

パパは私に気をつけろと遠回しに忠告してる

「もうすぐホテルついちゃうから切るね。何かあったら連絡するから」

沖矢『ああ。楽しんで』

通話を切ってベルツリーリゾートと書かれた敷地に入る

ホテルだけじゃなくて、この一帯が鈴木財閥の所有物らしい

「…あれ?」

ホテルの駐車場に向かっている途中、入り口で電話をしている白鳥警部の姿を見つけた

どうして、白鳥警部がこんなところに…

もしかして、もう何か事件が起こっているの…?











ホテルでは1人部屋をあてがわれ、1時間後にロビーに集合となった

「ふぅ…」

荷物を置いてベッドに腰掛ける

この後は本命のホエールウォッチングだ

スマホを取り出して確認するも、零さんや紗希ちゃん、景光さんからの連絡はなかった

八丈島に向かうことは伝えてはいたけれど、既読はまだ付いていない

パパがピンガというコードネームを聞いたことがあったのなら、少なくとも最近入ったメンバーではないのだろう

どちらにせよ、今後関わってくるのは確実…

立ち上がり、窓を開けてベランダに出ると、隣のベランダでちょうどコナン君が通話を切ったタイミングだった。

隣の部屋はコナン君と蘭ちゃんの2人部屋

「…電話、パパから?」

コナン「ああ。…もしかして、愛理姉も聞いたのか?」

「聞いた。…どう思う?」

コナン「……嫌な予感がする」

絶対にまた組織が絡んでくる

「…コナンくん。私、未来を恐れないから」

そう宣言した私を、コナン君は目を見開いて見上げる

そして、フッと笑った

コナン「おう。頼りにしてる」

私が守りたいもののために、出来ることをする
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