桜庭愛理 愛されます
「どうやってここに来たの?」
探検にはしゃぐ元太君、光彦君、歩美ちゃんの後ろをいつものようについてきた哀ちゃんに尋ねる。
哀「城の裏に塔があったのよ。私たちが先に入ったら、博士が抜け道の扉のボタンをうっかり押したみたいで」
博士のうっかりでこの地下に迷い込んでしまったのか…。
「さあさあ!先に進みましょう!」
「お宝お宝~!」
子供たちはすっかり探検者気分だ。
白鳥警部の後ろを子供たちは意気揚々とついて行き、地下の奥へと進む。
その間に、姿を消していた人が戻ってきたようだ。
けれど、乾さんの気配が消えた。
痛む胸を抑え、心の中で謝罪をしながら前へ進む。
少し進むと道は消え、何かの模様が描かれた扉に突き当たってしまった。
小五郎「行き止まり…」
香坂「通路をどこか間違えたのかしら?」
白鳥「いや、そんなはずありません。通路は1本道でしたから」
「なら、この扉にも何か仕掛けがあるのかもしれないですね」
白鳥警部が懐中電灯で扉を照らす。
歩美「わぁ、鳥がいっぱい」
光彦「あれ?変ですね。大きな鳥だけ頭が2つありますよ」
光彦君の言う通り、扉にひと際大きく描かれた鳥の頭は2つあり、1つの王冠を被っている。
哀「双頭の鷲。皇帝の紋章ね」
哀ちゃんが淡々と呟いた。
「東ローマ帝国や神聖ローマ帝国に関連した、ヨーロッパの国家や貴族たちが使っていた紋章ね」
コナン「ああ。王冠の後ろにあるのは太陽か…。…太陽…、光…もしかして…」
何か思い当たったコナン君は、白鳥警部へ駆け寄った。
コナン「白鳥警部、あの双頭の鷲の王冠に、ライトの光を細くして当ててみて」
コナン君に言われた通り、白鳥警部はライトの照準を狭めて王冠の部分に光をあてた。
すると、王冠に描かれていた宝石が光を放ち、地響きが襲う。
「な、なんだ!?」
コナン「みんな下がって!」
コナン君の足元が徐々に下へと降りていく。
白鳥「なるほど。この王冠には光度計が組み込まれているってことか」
「足元、危ないわよ。」
白鳥「!」
王冠の絵に夢中になっていた白鳥警部にそう忠告する。
今度は彼の足元が左右に開き始めていた。
白鳥警部は慌てて後退し、足元をライトで照らす。
左右に開いた地面から現れたのは、またしても階段だった。
「まだ下があるのね」
コナン君の足場も現れた階段の下で止まったようだ。
その先には奥へと進む通路があった。
私たちは階段を降り、奥への通路を進んでいく。
辿り着いたのは天井が高い円状の間だった。
広間の奥には教会のような祭壇が祀られており神と天使を模した像が立っていた。
祭壇の上には、棺が置かれている。
小五郎さんが持っていたライターで置かれていた燭台に火を灯す。
白鳥「棺の様ですね」
白鳥警部が祭壇に上がり、棺に近づいた。
私も祭壇に上がり、棺を観察する。
「作りは西洋風だけど、桐で作られてる。それに…立派な錠前が」
棺には大きな錠が付けられていた。
コナン「あ…!夏美さん!あの鍵!」
コナン君が思い出したように香坂さんを振り返る。
香坂「え?ああ、そっか!」
香坂さんは鞄から例の大きな鍵を取り出し、祭壇に上がってきた。
鍵を鍵穴に挿して回すと、ガチャリを音を立てて開錠された。
香坂「この鍵だったのね…」
開いた錠に驚いた様子で、香坂さんは呟く。
――ということは…この棺の中には…。
小五郎「開けてもよろしいですか」
香坂「は、はい」
小五郎さんが香坂さんに許可を取り、棺の蓋に手をかけた。
小五郎「ぅ…っ、くぅ…!結構重いぞ…!」
力を振り絞って、小五郎さんは蓋を上へと上げ切った。
土埃が舞う中、棺の中を覗き込む。
小五郎「遺骨が1体…。それに、エッグだ」
棺の中には白骨化した遺体。
そしてその胸の部分に、赤いエッグが置かれていた。
どうやら、この扉の向こうへの入り口が開かれているみたいね。
小五郎「夏美さん。この遺骨はひいおじいさんの?」
香坂「いいえ。多分、曾祖母のものだと思います。横須賀に曽祖父の墓だけあって。ずっと不思議に思っていたんです。もしかすると、ロシア人だったために、先祖代々の墓には葬れなかったのかもしれません」
小五郎「夏美さん、こんな時にとは思いますが、エッグを見せていただけないでしょうか?」
祭壇に上がったセルゲイさんが香坂さんに願い出た。
その後ろには青蘭さんもいる。
香坂さんは了承し、棺の中からエッグを取り、セルゲイさんに手渡した。
セルゲイさんはまず、エッグの下を観察しだす。
セルゲイ「底には小さな穴が開いてますね」
そして次に、エッグの蓋を開けた。
「え…?空っぽ…。そんなバカな…」
「どういうことかしら?」
もう1つの緑のエッグには、ニコライ皇帝一家のカラクリ模型が入っていた。
けれど、こっちの赤いエッグは空…。
歩美「それ、マトリョーシカなの?」
一連のやり取りを見ていた歩美ちゃんが聞いてきた。
その言葉に大人たちはハッと目を見開く。
小五郎「なんだ?その、マト、リョーシカ…?って」
小五郎さんを除いて。
「ロシアの伝統的な人形ですよ。人形の中に小さな人形が次々入ってるやつです」
小五郎「あ、ああ!あれかぁ!」
…たぶん分かってないな。
セルゲイ「確かにそうかもしれません。見てください。中の溝は、入れたエッグを動かないように固定するためのもののようです」
セルゲイさんが持つ赤いエッグの中を覗き込むと、確かに底に溝があり、その形状は緑のエッグの底と一致する。
小五郎「くそ!あのエッグがありゃ、確かめられるんだが」
白鳥「エッグならありますよ」
悔し気に喚く小五郎さんの横で、白鳥警部が静かに告げた。
全員の注目が白鳥警部に向く中、彼は平然と持っていた鞄の中から緑のエッグを取り出した。
白鳥「こんなこともあろうかと、鈴木会長から借りてきたんです」
小五郎「お前…。黙って借りて来たんじゃねぇだろうな…?」
詰め寄る小五郎さんに、白鳥警部は仰け反る。
白鳥「や、やだなぁ…。そんなはずないじゃありませんか…」
盗んできたのね。
セルゲイ「さっそく試してみましょう」
白鳥警部はセルゲイさんに緑のエッグを渡した。
セルゲイさんは赤いエッグの中に少し小さい緑のエッグを入れる。
小五郎「…ピッタリだ」
セルゲイ「つまり喜市さんは2個のエッグを別々に作ったんじゃなく、2個で1個のエッグを作ったんですね」
…エッグがただのマトリョーシカなわけがない。
きっと、まだ何か仕掛けがあるはず。
小五郎「それにしても見事なダイヤですな」
小五郎さんが赤いエッグの装飾を見つめながら感心の声を上げた。
私もジッとその装飾を見つめるが、この輝きはダイヤじゃない。
「…これ、ダイヤじゃありませんよ。」
香坂「ええ。ただのガラスじゃないかしら」
私の言葉に香坂さんも頷いた。
ガラス…、となると…もしかして、これも魔境…。
コナン「セルゲイさん!そのエッグ貸して!」
気づいたコナン君が祭壇に上がってきて、セルゲイさんからエッグを受け取った。
小五郎「またこいつは…!」
白鳥「待ってください、毛利さん。…何か手伝うことは?」
コナン君を摘まみだそうとする毛利さんを抑えて、白鳥警部がコナン君に尋ねる。
コナン「ライトの用意を」
コナン君はそう言って祭壇を降りていく。
白鳥警部もその後に続いた。
2人は広間の中央にある台の前に立ち、コナン君の指示で白鳥警部は持っていた懐中電灯の光を細くして台の中に入れた。
コナン「セルゲイさん、青蘭さん!蠟燭の火を消して!」
2人はコナン君に言われた通り、祭壇の左右に灯った火を吹き消した。
真っ暗になった広間の中央の台の周りにみんなが集まる。
小五郎「いったい何をやろうっていうんだ」
コナン「まあ見てて」
そう言ってコナン君は懐中電灯の光が1本立つ台の上に、エッグを置く。
エッグは光を帯び始め、中の模型が透けて見え始めた。
その光景に誰もが息を呑む。
セルゲイ「…ニコライ皇帝一家の写真です」
小五郎「そうか…。エッグの中の人形が見ていたのはただの本じゃなく、アルバム…」
コナン「だから“メモリーズ・エッグ”だったってわけか…」
小五郎さんの横でコナン君が魅入るように写真を見上げながらポツリと呟く。
セルゲイ「もし、皇帝一家が殺害されずにこのエッグを手にしていたらこれほど素晴らしいプレゼントはなかったでしょう…」
セルゲイさんがしみじみと呟いた。
写真にはニコライ皇帝とその妻、アレクサンドラ皇后。
四皇女である、オリガ、タチアナ、マリア、アナスタシア。
そして末のアレクセイ皇子が写っている。
家族での集合写真であったり、成長する子供たちの姿を切り取ったものだったり…。
小五郎「まさに、世紀末の魔術師だったんですな。貴方のひいおじいさんは」
香坂「それを聞いて、曽祖父も喜んでいることと思います」
小五郎さんの言葉に、香坂さんも嬉しそうだ。
コナン「ねぇ、夏美さん。あの写真、夏美さんのひいおじいさんじゃない?」
コナン君が1枚の写真を指さした。
その先には、椅子に腰かけた2人の男女が写る写真があった。
香坂「ほんとだわ。じゃあ一緒に写っているのは曾祖母ね…!…あれが、ひいおばあ様…。やっとお顔が見られた…」
香坂さんは瞳を揺らしながら、焼き付けるようにその写真を見上げていた。
沢部「あの写真だけ日本で撮られたのですね。後から喜市様が加えられたんでしょう」
その隣で沢部さんもしみじみと呟く。
暫くすると、エッグの光が収束されていった。
映し出されていた写真は消え、広間が暗くなる。
探検にはしゃぐ元太君、光彦君、歩美ちゃんの後ろをいつものようについてきた哀ちゃんに尋ねる。
哀「城の裏に塔があったのよ。私たちが先に入ったら、博士が抜け道の扉のボタンをうっかり押したみたいで」
博士のうっかりでこの地下に迷い込んでしまったのか…。
「さあさあ!先に進みましょう!」
「お宝お宝~!」
子供たちはすっかり探検者気分だ。
白鳥警部の後ろを子供たちは意気揚々とついて行き、地下の奥へと進む。
その間に、姿を消していた人が戻ってきたようだ。
けれど、乾さんの気配が消えた。
痛む胸を抑え、心の中で謝罪をしながら前へ進む。
少し進むと道は消え、何かの模様が描かれた扉に突き当たってしまった。
小五郎「行き止まり…」
香坂「通路をどこか間違えたのかしら?」
白鳥「いや、そんなはずありません。通路は1本道でしたから」
「なら、この扉にも何か仕掛けがあるのかもしれないですね」
白鳥警部が懐中電灯で扉を照らす。
歩美「わぁ、鳥がいっぱい」
光彦「あれ?変ですね。大きな鳥だけ頭が2つありますよ」
光彦君の言う通り、扉にひと際大きく描かれた鳥の頭は2つあり、1つの王冠を被っている。
哀「双頭の鷲。皇帝の紋章ね」
哀ちゃんが淡々と呟いた。
「東ローマ帝国や神聖ローマ帝国に関連した、ヨーロッパの国家や貴族たちが使っていた紋章ね」
コナン「ああ。王冠の後ろにあるのは太陽か…。…太陽…、光…もしかして…」
何か思い当たったコナン君は、白鳥警部へ駆け寄った。
コナン「白鳥警部、あの双頭の鷲の王冠に、ライトの光を細くして当ててみて」
コナン君に言われた通り、白鳥警部はライトの照準を狭めて王冠の部分に光をあてた。
すると、王冠に描かれていた宝石が光を放ち、地響きが襲う。
「な、なんだ!?」
コナン「みんな下がって!」
コナン君の足元が徐々に下へと降りていく。
白鳥「なるほど。この王冠には光度計が組み込まれているってことか」
「足元、危ないわよ。」
白鳥「!」
王冠の絵に夢中になっていた白鳥警部にそう忠告する。
今度は彼の足元が左右に開き始めていた。
白鳥警部は慌てて後退し、足元をライトで照らす。
左右に開いた地面から現れたのは、またしても階段だった。
「まだ下があるのね」
コナン君の足場も現れた階段の下で止まったようだ。
その先には奥へと進む通路があった。
私たちは階段を降り、奥への通路を進んでいく。
辿り着いたのは天井が高い円状の間だった。
広間の奥には教会のような祭壇が祀られており神と天使を模した像が立っていた。
祭壇の上には、棺が置かれている。
小五郎さんが持っていたライターで置かれていた燭台に火を灯す。
白鳥「棺の様ですね」
白鳥警部が祭壇に上がり、棺に近づいた。
私も祭壇に上がり、棺を観察する。
「作りは西洋風だけど、桐で作られてる。それに…立派な錠前が」
棺には大きな錠が付けられていた。
コナン「あ…!夏美さん!あの鍵!」
コナン君が思い出したように香坂さんを振り返る。
香坂「え?ああ、そっか!」
香坂さんは鞄から例の大きな鍵を取り出し、祭壇に上がってきた。
鍵を鍵穴に挿して回すと、ガチャリを音を立てて開錠された。
香坂「この鍵だったのね…」
開いた錠に驚いた様子で、香坂さんは呟く。
――ということは…この棺の中には…。
小五郎「開けてもよろしいですか」
香坂「は、はい」
小五郎さんが香坂さんに許可を取り、棺の蓋に手をかけた。
小五郎「ぅ…っ、くぅ…!結構重いぞ…!」
力を振り絞って、小五郎さんは蓋を上へと上げ切った。
土埃が舞う中、棺の中を覗き込む。
小五郎「遺骨が1体…。それに、エッグだ」
棺の中には白骨化した遺体。
そしてその胸の部分に、赤いエッグが置かれていた。
どうやら、この扉の向こうへの入り口が開かれているみたいね。
小五郎「夏美さん。この遺骨はひいおじいさんの?」
香坂「いいえ。多分、曾祖母のものだと思います。横須賀に曽祖父の墓だけあって。ずっと不思議に思っていたんです。もしかすると、ロシア人だったために、先祖代々の墓には葬れなかったのかもしれません」
小五郎「夏美さん、こんな時にとは思いますが、エッグを見せていただけないでしょうか?」
祭壇に上がったセルゲイさんが香坂さんに願い出た。
その後ろには青蘭さんもいる。
香坂さんは了承し、棺の中からエッグを取り、セルゲイさんに手渡した。
セルゲイさんはまず、エッグの下を観察しだす。
セルゲイ「底には小さな穴が開いてますね」
そして次に、エッグの蓋を開けた。
「え…?空っぽ…。そんなバカな…」
「どういうことかしら?」
もう1つの緑のエッグには、ニコライ皇帝一家のカラクリ模型が入っていた。
けれど、こっちの赤いエッグは空…。
歩美「それ、マトリョーシカなの?」
一連のやり取りを見ていた歩美ちゃんが聞いてきた。
その言葉に大人たちはハッと目を見開く。
小五郎「なんだ?その、マト、リョーシカ…?って」
小五郎さんを除いて。
「ロシアの伝統的な人形ですよ。人形の中に小さな人形が次々入ってるやつです」
小五郎「あ、ああ!あれかぁ!」
…たぶん分かってないな。
セルゲイ「確かにそうかもしれません。見てください。中の溝は、入れたエッグを動かないように固定するためのもののようです」
セルゲイさんが持つ赤いエッグの中を覗き込むと、確かに底に溝があり、その形状は緑のエッグの底と一致する。
小五郎「くそ!あのエッグがありゃ、確かめられるんだが」
白鳥「エッグならありますよ」
悔し気に喚く小五郎さんの横で、白鳥警部が静かに告げた。
全員の注目が白鳥警部に向く中、彼は平然と持っていた鞄の中から緑のエッグを取り出した。
白鳥「こんなこともあろうかと、鈴木会長から借りてきたんです」
小五郎「お前…。黙って借りて来たんじゃねぇだろうな…?」
詰め寄る小五郎さんに、白鳥警部は仰け反る。
白鳥「や、やだなぁ…。そんなはずないじゃありませんか…」
盗んできたのね。
セルゲイ「さっそく試してみましょう」
白鳥警部はセルゲイさんに緑のエッグを渡した。
セルゲイさんは赤いエッグの中に少し小さい緑のエッグを入れる。
小五郎「…ピッタリだ」
セルゲイ「つまり喜市さんは2個のエッグを別々に作ったんじゃなく、2個で1個のエッグを作ったんですね」
…エッグがただのマトリョーシカなわけがない。
きっと、まだ何か仕掛けがあるはず。
小五郎「それにしても見事なダイヤですな」
小五郎さんが赤いエッグの装飾を見つめながら感心の声を上げた。
私もジッとその装飾を見つめるが、この輝きはダイヤじゃない。
「…これ、ダイヤじゃありませんよ。」
香坂「ええ。ただのガラスじゃないかしら」
私の言葉に香坂さんも頷いた。
ガラス…、となると…もしかして、これも魔境…。
コナン「セルゲイさん!そのエッグ貸して!」
気づいたコナン君が祭壇に上がってきて、セルゲイさんからエッグを受け取った。
小五郎「またこいつは…!」
白鳥「待ってください、毛利さん。…何か手伝うことは?」
コナン君を摘まみだそうとする毛利さんを抑えて、白鳥警部がコナン君に尋ねる。
コナン「ライトの用意を」
コナン君はそう言って祭壇を降りていく。
白鳥警部もその後に続いた。
2人は広間の中央にある台の前に立ち、コナン君の指示で白鳥警部は持っていた懐中電灯の光を細くして台の中に入れた。
コナン「セルゲイさん、青蘭さん!蠟燭の火を消して!」
2人はコナン君に言われた通り、祭壇の左右に灯った火を吹き消した。
真っ暗になった広間の中央の台の周りにみんなが集まる。
小五郎「いったい何をやろうっていうんだ」
コナン「まあ見てて」
そう言ってコナン君は懐中電灯の光が1本立つ台の上に、エッグを置く。
エッグは光を帯び始め、中の模型が透けて見え始めた。
その光景に誰もが息を呑む。
セルゲイ「…ニコライ皇帝一家の写真です」
小五郎「そうか…。エッグの中の人形が見ていたのはただの本じゃなく、アルバム…」
コナン「だから“メモリーズ・エッグ”だったってわけか…」
小五郎さんの横でコナン君が魅入るように写真を見上げながらポツリと呟く。
セルゲイ「もし、皇帝一家が殺害されずにこのエッグを手にしていたらこれほど素晴らしいプレゼントはなかったでしょう…」
セルゲイさんがしみじみと呟いた。
写真にはニコライ皇帝とその妻、アレクサンドラ皇后。
四皇女である、オリガ、タチアナ、マリア、アナスタシア。
そして末のアレクセイ皇子が写っている。
家族での集合写真であったり、成長する子供たちの姿を切り取ったものだったり…。
小五郎「まさに、世紀末の魔術師だったんですな。貴方のひいおじいさんは」
香坂「それを聞いて、曽祖父も喜んでいることと思います」
小五郎さんの言葉に、香坂さんも嬉しそうだ。
コナン「ねぇ、夏美さん。あの写真、夏美さんのひいおじいさんじゃない?」
コナン君が1枚の写真を指さした。
その先には、椅子に腰かけた2人の男女が写る写真があった。
香坂「ほんとだわ。じゃあ一緒に写っているのは曾祖母ね…!…あれが、ひいおばあ様…。やっとお顔が見られた…」
香坂さんは瞳を揺らしながら、焼き付けるようにその写真を見上げていた。
沢部「あの写真だけ日本で撮られたのですね。後から喜市様が加えられたんでしょう」
その隣で沢部さんもしみじみと呟く。
暫くすると、エッグの光が収束されていった。
映し出されていた写真は消え、広間が暗くなる。