桜庭愛理 推理します

その後、凶器がなかなか見つからなかった事や、萩恵が生前、他のバンドと揉めた事を踏まえ、外部犯の可能性を見出した刑事たちはすぐさま客のリストを使い来店者を呼び戻すことになる。

萩江が揉めた理由だが、どうやらこのバンドには元々ボーカルを担当していたらしい首藤朱音という女性がいたそうだ。
だが彼女は喉を潰してしまいそのショックから自殺し、それをバンドグループがからかわれていたらしい。

それを聞いた3人の探偵が次に注目したのは、監視カメラを遮っていたという携帯電話の動画。
そして、コナンはある違和感に気づいた。

横にして撮影すればいいものを、わざわざ縦にして強引に収めようとして見えたからだ。
だがそれは、横だと足元が切れるから縦にした方がいいという話になったかららしい


コナン「(…なるほど…)」

安室「(…そういうことですか…)」


どうやら、これまでの話で謎が解けたらしい。
コナンと安室の顔には、それぞれ不敵な笑みが浮かんでいる。
そしてそれは、隣で共に動画を見ていた世良も同じ。


いよいよ、探偵3人による推理ショーが幕を開けたのである───


探偵3人の推理ショーは、事件をあっという間に解決させた。

スタジオの監視カメラが半分だけ遮られていたのは、わざと携帯電話で視界を塞ぎ、犯行を見せないためである。
動画の映像から、そんな細工が出来るのは端でキーボードを担当し、唯一場所の移動で撮影位置をずらせた小暮留美ただ1人だった。

彼女の犯行は、まず山路さんが仮眠でスタジオに戻ったあとに「爪を切りたい」と言ってや爪切りを笛川さんから借りる。
それから笛川さんの後にキーボードでの曲の調整をしたいと言い、例のスタジオに入った。
そして、監視カメラの隠れた部分で伏せって寝ていた山路さんを、彼女のニット帽の緩めた毛糸で殺害する。
毛糸は、小暮さんがキーボードをするフリをしながらドラムのスティックで編み直した。
おそらく、移動させたキーボードの前に監視カメラから背を向けて座り込んだ時だ

そんな探偵たちの完璧すぎる推理披露に逃げられなくなり、小暮さんは涙目で動機を語る。喉を潰してしまうようなことを言い、首藤さんを自殺に追い込んだ彼女に復讐したかったんだ、と。

しかし、他のバンド仲間はそれを違うと否定した。

山路さんはきちんと首藤さんに謝罪したし、喉が回復するようにちゃんとしたアドバイスもしていた。
そして首藤さんが自殺したという事件は、実際には車に轢かれそうな子供がいて、「無理に声を出したらダメ」という山路さんの言いつけを守って自ら飛び出し助けた結果死んでしまったんだ、と。

山路さんは、もうとっくに赦されていた。


真実を知った小暮さんは、その場に崩折れると後悔の涙を流した。
知っていれば歩めただろう4人の楽しい時間を夢見ながら…───



小暮さんが署に連れて行かれ、警察たちも現場作業を終えて帰ってしまった後。
私と透さんとコナンくん、そして女子高生3人はもう解散しようと貸しスタジオの前に出た。

世良「秀兄のギター、聴いてみたかったなぁ…」


不意に、ポツリと真澄ちゃんが呟く。
近くにいた蘭ちゃんたちがそれに反応した。

蘭「あ…そっか、そのお兄さんって確か亡くなったって…」

園子「まさか刑事で殉職しちゃったとか?」

世良「ああ…。でもボクはどこかで生きてるって信じてるけど!それに日本の刑事じゃなくてFBIのエージェントだけどな!グリーンカード取るの大変だったらしいよ。」

蘭「だからお兄さん、アメリカに行ってたんだね…」


蘭ちゃんと園子ちゃんは、真澄ちゃんの兄が亡くなっていることに気付き、気まずそうな表情になった。けれど真澄ちゃんは生きていると信じているため特に暗くはなかった。

そこで、コナンが世良にその兄の名を尋ねた。
すると世良は満面の笑みを浮かべて自慢げに教えてくれた。


「赤井秀一っていうんだ!カッコイイだろー?」


その名前に、透さんの周りの空気がピンと張りつめたのを感じた。
そして足元のコナンくんも、「やっぱり」と顔を強張らせる。


赤井さんの妹の出現は、僅かながらにも2人を動揺させるには十分な出来事だったようだ…。
24/100ページ
スキ