桜庭愛理 推理します

幾何学模様はカットラスとピストルを交差させた形だったのだ
同じ形を反転させたものがそれぞれの扉の下に彫り込んであって、上の左右の模様はカットラスの刃が内側を向き、ピストルの銃口が外側を向いている

下の模様はカットラスの刃が外側を向き、ピストルの銃口が内側を向いている
松本はリュックと松明を持って扉から離れると、園子を振り返った

松本「お前が開けろ」

園子「私……⁉」

すると、蘭が行こうとした途端目の前に松明が現れた

「言ったでしょう…大事な妹2人を危険な場所に先に行かすなんてお姉ちゃんとしては、恥ずかしいって」

蘭「でも!『私がやるわ』愛理姉‼」

蘭に松明を渡し、緊張した面持ちで扉の前に立った愛理は、胸元に光るネックレスに触れた

「(お父さん、お母さん……新一君……零さん……どうか守って…!)」

ネックレスに触れた後、浮き彫りになっているジョリー・ロジャーの顎の部分を掴んだ

「ん……っ!」

力を込めて横に引っ張ると、扉がわずかに開いた
が、愛理は足を滑らせた 転倒すると同時に横の壁から何かが飛び出し、愛理の頭上をかすめて反対の壁に突き刺さった

「「愛理姉‼」」

それは、木の槍だった 扉を無理に開こうとすると、飛び出す仕組みになっていたのだ
壁をよく見ると、突き刺さった後がいくつもある

「(足を滑らせていなかったら今頃……)」

愛理は突き刺さった木の槍を見て、ネックレスに触れながら身震いした

松本「やっぱり駄目か」

舌打ちをした松本は扉の前に立ち、4つの模様を見つめて考え始めた
伊豆山は木の槍が出てきた穴を塞ぐ

園子「もう諦めたら⁉」

園子が蘭に身を寄せながら叫んだ すると、松本が模様を見てニヤリと微笑んだ

松本「……なるほど そういう事か!」

伊豆山が「わかったのか⁉」と振り返る

松本「アンとメアリは互いに背中あわせで戦ったそうだ つまり、こういう事だ!」

松本は右上の模様にはめ込んだカットラスを右下にはめ込み直した
カットラスの刃が外側を向き、左上の模様にはめ込んだピストルの銃口も外側を向いている

つまり、カットラスとピストルが背中あわせになったのだ
すると、扉の奥で何かが外れた音がした
ゴゴゴ……と重厚な音を響かせながら、扉がゆっくりと開き始める

3人は松本達に続いて、恐る恐る中へと入っていった
伊豆山が持っていた松明をかざすと

「あ……(やっぱり)」

愛理は思わず声をあげた
松明の明かりに照らされたものは巨大な海賊船だった

伊豆山「やった!やったぞぉ!」

海賊船を前にした松本と伊豆山は興奮のあまり高笑いした

松本「火を貸せ!」

洞窟の隅にかがりを見つけた松本は、伊豆山の松明で火をつけた
すると、薪についた火は洞窟を一周し、海賊船の全容が浮かび上がった

巨大なマストを3本持つその帆船は、バウスプリットと呼ばれる長い棒が船首から角のように突き出し、その下には両手を広げて今にも飛び立ちそうな美しい女神像が取り付けられていた

松本「すげぇ……」

その雄大な姿に松本が思わず声を漏らすと

伊豆山「宝は……宝はどこだぁ!」

伊豆山は興奮しながら海賊船の横にある階段を駆け上がった
松本も「焦るんじゃねぇよ!」と笑いながら後に続く

残された3人は海賊船に乗り込んでいく2人を険しい表情で見つめた

園子「2人とも、どうする?」

蘭「今なら逃げ出せるけど……タンクなしで荒れている海を浮上しなくちゃならない……」

園子「そうね……」

「2人には悪いけど、ここで助けが来るのを待つしかない」

「「そうね!」」

園子と蘭はニヤリと笑い、扉からこっそり取ってきたカットラスを握りしめた

ほこらの裏にあった穴を入っていったコナンと安室は、腕時計型麻酔銃についているライトをつけ、安室はその明かりを頼りに、人が1人ようやく通れるような狭い隙間を滑るように下りていった

しばらく進むと、下から吹き上がってきた風が2人の髪の毛を揺らした

コナン「風だ!安室さん、繋がってる……!」

安室「ああ!」

この先に3人がいるに違いない そう確信した2人は、足を速めてさらに下りていった

「ねぇ、2人とも」

「「?」」

「助けが来るのを待ってる間、ちょっと…服を破いてくれないかな…?」

蘭「え?あ!」

蘭はチラリと愛理の腕と太ももを見た
ドクドクと流れ出る血に愛理は顔を歪ませた

「傷口が深くなったみたいで…」

園子「蘭!」

蘭「うん!」

蘭はハンカチを取り出し、腕に巻きつけ止血する
太ももの方は、愛理が履いていたズボンの裾をびりっと破り巻きつけていく

「ありがとう」

蘭「止血しただけだけど…大丈夫なの?」

「大丈夫よ」

愛理はまるで新一かのように笑った
その笑顔を見た2人はハッとして思った

蘭「……」

また、無茶をするんじゃないかと……
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