桜庭愛理 推理します

モーターボートから海に降りた松本、伊豆山、蘭、園子、愛理は海底宮殿に向かってどんどん潜っていた

海の中は海上の荒れようが嘘のように穏やかだったが、昨日は陽が差し込んで神秘的に映った海底宮殿も、今日は暗くひどく不気味に見えた

1本のタンクを共有する3人は体をぴったりとくっつけて、松本と伊豆山に続いて宮殿の南側の崖に沿って潜った

愛理はできるだけ酸素を吸わずに2人に酸素を吸わせ続ける
苦しくなれば、一気に口から空気を出し、蘭と園子から空気を貰っていた
なので、愛理はレギュレータをくわえていないのだ

園子はナイフで切られた右腕を手で押さえていたが、血が止まる事なく少しずつ海の中へと流れていく

蘭と愛は園子の背中に手を回しながら、険しい表情でその流れる血を見つめた

「(…このままじゃ鮫が来ちゃう!!)」

すると、遠くで何かが動くのが見えた
松本と伊豆山も振り返る

「……‼」

サメだ 血の臭いを感じ取ったサメが近づいて来た–––‼
さらに別の方向からもう一匹現れ、恐怖に包まれた園子のレギュレータから大量の空気がゴボゴボと流れ出た

「(園子ちゃん‼)」

園子「‼(愛理姉…?)」

「(心配しないで?私がついてる、何かあれば私が助けるから、今は落ち着こう、ね?空気がなくなれば蘭ちゃんが息苦しくなっちゃうよ?)」

園子「‼」

蘭「(ニコッ」

愛理はハンドサインで何とか園子に伝えると、落ち着きを取り戻した園子は、コクリと頷いた
だが、恐怖は収まる事なくガタガタと震える

すると、松本が背後から園子の頭を掴んだ
ナイフを持った手で『早く行け』とどんどん潜っていく伊豆山を指す

蘭と愛理は仕方なく園子を抱き抱えて伊豆山の後を追った
松本もその後に続く

しかし、二匹のサメも血の臭いにつられてどんどん近づいてくる–––‼
松本は園子がくわえているレギュレータのホースを掴んで引っ張り上げた

園子「‼」

レギュレータが外れた園子の体が2人から離れて浮上していく
その頭上をサメが横切り、園子は必死に手足をばたつかせて逃げようとした

「「(園子/ちゃん‼)」」

2人が園子を追おうとすると、松本が2人の足首を掴んで引き寄せ、ナイフを向けた
蘭はその手を掴み松本の顎に蹴りを入れた
蘭は園子を追ったが

「(うっ・・・)

松本は足首を掴んでいた愛理の腕と太ももを切りつけた

「(痛ったい)」

腕と太ももの痛みに耐えながら松本に顔面に蹴りをお見舞いした愛理は痛みを忘れて、すぐに蘭を追いかけた

松本は下へ潜り、伊豆山が隠れている崖の割れ目に入った
愛理はその姿を確認してから、蘭を追いかけた

いつの間にか園子の頭上には沢山のサメが集まっていて、その一匹が凶暴な口を開いてせまってくる–––‼

園子に追いついた蘭は、園子のレギュレータをサメに向け、パージボタンを押した
吹き出した空気にサメが怯んで離れると、蘭は向かってくるサメに次々と空気を浴びせた

だが、背後からくる一匹のサメが蘭を襲って

蘭「‼」

「(失せて)」

蘭の後ろについた愛理がどこからか取り出したのかまるでわからないナイフをサメに向け殺気を放った

得体の知れない気配と、感じた事の無い殺気にサメが思わず怯んだ
しかも、それは周りのサメ達もだ

「(大人しく自分の住処にかえりなさい……殺されたく無ければ……)」

ギラリとナイフを光らせ、サメに向けるとサメ達は怯えたように愛理達から離れた
蘭と園子はそんなサメ達に驚きながらも潜っていく

蘭はすかさず園子の口にレギュレータを押し込む
むさぼるように空気を吸い込む園子の横で、蘭は上を見た

3人の頭上では、先程逃げたサメが凝りもせず血の臭いに吸い寄せられた無数のサメが旋回している

ここは潜るしか無い–––蘭は園子を抱き抱え、崖の割れ目へと向かった
愛理は2人の手を引っ張りながら全速力で泳ぐ

向かってくるサメに自分のレギュレータを向けて空気を浴びせながら潜る蘭と、殺気と睨みでサメを怯ませる愛理で園子を守りながら潜っていく

残圧計をチェックした蘭は、残りの空気が少なくなっている事に気付いた

蘭(エアーが……!)

3人で1本のタンクを共有した上に、サメを追い払うために空気を使ってしまったのだ
パニックに陥った園子は無我夢中で呼吸している

蘭は愛理に残圧計を見せると、愛理は目を見開きすぐに真剣な表情でサメを睨みつけた

蘭も目を閉じて一度だけ大きく息を吸い込んだ
そして、息を止めて、崖の割れ目へと急いだ
愛理はナイフを前にしながら泳ぐ、後ろからサメに襲われれば終わりだが、愛理が放っている殺気にサメはそんな事をする勇気が出ていなかった

後を追って来たサメ達が凶暴な口を開いて襲って来た瞬間–––3人は割れ目に潜り込んだ
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