桜庭愛理克服します
渋谷夏子の事件の翌日の晩、この家を任されていた沖矢昴はリビングでマカダミー賞の受賞番組を見ていた。テレビでは司会者の男が進行をとっていた
《では、まず助演男優賞から…。プレゼンターは雑念の受賞者・ジョニー・ビップさんです!》
ワアァァ!とテレビから歓声が聞こえた。と、その時
ピーンポーン……
チャイムが鳴った。マスクを付けている沖矢はソファからのっそり立ち上がり、対応に出る
沖矢「はい」
?《宅配便です》
沖矢はそれだけ聞くと玄関に向かい、ドアを開けた。すると、そこにいたのは宅配業者の服装の者ではなく、安室透が立っていた
安室「どうも…。初めまして…安室透です」
沖矢「はぁ…」
安室「…でも、初めましてじゃ…ありませんよね」
ニヤリ、と常人ならすくみ上がりそうなほど怖い笑みを浮かべる安室だが、沖矢は少しも怯まなかった
安室「少し話がしたいので…中に入っても構いませんか?」
沖矢「ええ。大丈夫ですよ…」
その頃。桜庭邸の玄関の前には1台のベンツが停車していた
キャメル「ら、来葉峠?」
運転席に座るアンドレ・キャメル捜査官は、驚いた顔で助手席のジョディ・スターリング捜査官をチラリと見た
キャメル「赤井さんがやつらに殺された場所に、桜庭愛理さんを連れて今から行くんですか?!」
ジョディ「ええ…。行けば何か掴める気がするのよ…」
怖い顔でジョディがそう言うと、キャメルは「そうですか…」とだけ呟く。
静まり返る車内の中、彼らはただ目的の人物が現れるのを待っていた
ーーー工藤邸
家に招かれた安室は、紅茶を持って沖矢が現れるまでの間リビングのソファに座っていた
そして沖矢がリビングに入ったそのタイミングで、安室は切り出す
安室「ミステリーはお好きですか?」
沖矢「ええ…まぁ…」
安室「では、まずその話から…。ま、単純な死体すり替えトリックですけどね…」
沖矢「ホォー。ミステリーの定番ですね…」
沖矢は紅茶を机に並べると、自分も安室の向かいのソファに座った。そして、安室は話を始める
安室「ある男が来葉峠で頭を拳銃で撃たれ、その男の車ごと焼かれたんですが…辛うじて残った焼け残ったその男の右手から採取された指紋が…生前、その男が手に取ったと言うある少年の携帯に付着していた指紋と一致し、死んだ男の身元が証明されました」
沖矢は背後にあるテレビをつけた状態で、ミステリーを披露する安室の声を聞き取る
安室「でも、妙なんです…」
沖矢「妙とは?」
安室「その携帯に残っていた指紋ですよ…。その男はレフティ───左利きなのに、なぜか携帯に付着していたのは右手の指紋だった。変だと思いませんか?」
沖矢「携帯を取った時、偶然聞き手が何かで塞がっていたからなんじゃ…」
安室「…もしくは右手で取らざるを得なかったか…」
安室が机に置かれたミルクの入った食器をそっと取らと、沖矢が身振りで進めた
沖矢「ほう…なぜ?」
安室「その携帯はね、その男が取る前に別の男が拾っていて、その拾った男が右利きだったからですよ」
沖矢「別の男?」
安室はミルクを注ぎ終わると、ティーカップを取ってそっと口に運ぶ
安室「ええ…実際には3人の男に携帯を拾わせようとしてたみたいですけどね…。さて、ここでクエスチョン。最初に拾わせようとしたのは脂性の太った男…次に首にギブスをつけた痩せた男…。そして、最後にペースメーカーを埋め込まれた老人…。この3人のなかで指紋が残っていたのは1人だけ。だと思います?」
安室は挑戦的にも取れる笑みで、目の前の男に問うた。すると、すぐに答えが返ってくる
沖矢「2番の痩せた男ですね? なぜなら、最初に太った男が拾ったのなら付着した指紋は綺麗に拭き取られてしまったから…。脂まみれの携帯を後の2人に拾わせるのは気がひけるでしょうしね…。そして3番目の老人は携帯の電波でペースメーカーが不具合を起こすことを危惧して拾いすらしなかったと言うところでしょうか」
安室「…ええ」
安室はカップを置くと、両肘を膝に付けて組んだ手に顎を乗せた前かがみの体勢で話を促す
沖矢「でも痩せた男の後に問題の殺された男も携帯を手にしてたんですよね? だったらその男の指紋も…」
安室「つかない工夫をしていたとしたら?おそらくその男はこうなることを見越して予め指先に───」
《では、まず助演男優賞から…。プレゼンターは雑念の受賞者・ジョニー・ビップさんです!》
ワアァァ!とテレビから歓声が聞こえた。と、その時
ピーンポーン……
チャイムが鳴った。マスクを付けている沖矢はソファからのっそり立ち上がり、対応に出る
沖矢「はい」
?《宅配便です》
沖矢はそれだけ聞くと玄関に向かい、ドアを開けた。すると、そこにいたのは宅配業者の服装の者ではなく、安室透が立っていた
安室「どうも…。初めまして…安室透です」
沖矢「はぁ…」
安室「…でも、初めましてじゃ…ありませんよね」
ニヤリ、と常人ならすくみ上がりそうなほど怖い笑みを浮かべる安室だが、沖矢は少しも怯まなかった
安室「少し話がしたいので…中に入っても構いませんか?」
沖矢「ええ。大丈夫ですよ…」
その頃。桜庭邸の玄関の前には1台のベンツが停車していた
キャメル「ら、来葉峠?」
運転席に座るアンドレ・キャメル捜査官は、驚いた顔で助手席のジョディ・スターリング捜査官をチラリと見た
キャメル「赤井さんがやつらに殺された場所に、桜庭愛理さんを連れて今から行くんですか?!」
ジョディ「ええ…。行けば何か掴める気がするのよ…」
怖い顔でジョディがそう言うと、キャメルは「そうですか…」とだけ呟く。
静まり返る車内の中、彼らはただ目的の人物が現れるのを待っていた
ーーー工藤邸
家に招かれた安室は、紅茶を持って沖矢が現れるまでの間リビングのソファに座っていた
そして沖矢がリビングに入ったそのタイミングで、安室は切り出す
安室「ミステリーはお好きですか?」
沖矢「ええ…まぁ…」
安室「では、まずその話から…。ま、単純な死体すり替えトリックですけどね…」
沖矢「ホォー。ミステリーの定番ですね…」
沖矢は紅茶を机に並べると、自分も安室の向かいのソファに座った。そして、安室は話を始める
安室「ある男が来葉峠で頭を拳銃で撃たれ、その男の車ごと焼かれたんですが…辛うじて残った焼け残ったその男の右手から採取された指紋が…生前、その男が手に取ったと言うある少年の携帯に付着していた指紋と一致し、死んだ男の身元が証明されました」
沖矢は背後にあるテレビをつけた状態で、ミステリーを披露する安室の声を聞き取る
安室「でも、妙なんです…」
沖矢「妙とは?」
安室「その携帯に残っていた指紋ですよ…。その男はレフティ───左利きなのに、なぜか携帯に付着していたのは右手の指紋だった。変だと思いませんか?」
沖矢「携帯を取った時、偶然聞き手が何かで塞がっていたからなんじゃ…」
安室「…もしくは右手で取らざるを得なかったか…」
安室が机に置かれたミルクの入った食器をそっと取らと、沖矢が身振りで進めた
沖矢「ほう…なぜ?」
安室「その携帯はね、その男が取る前に別の男が拾っていて、その拾った男が右利きだったからですよ」
沖矢「別の男?」
安室はミルクを注ぎ終わると、ティーカップを取ってそっと口に運ぶ
安室「ええ…実際には3人の男に携帯を拾わせようとしてたみたいですけどね…。さて、ここでクエスチョン。最初に拾わせようとしたのは脂性の太った男…次に首にギブスをつけた痩せた男…。そして、最後にペースメーカーを埋め込まれた老人…。この3人のなかで指紋が残っていたのは1人だけ。だと思います?」
安室は挑戦的にも取れる笑みで、目の前の男に問うた。すると、すぐに答えが返ってくる
沖矢「2番の痩せた男ですね? なぜなら、最初に太った男が拾ったのなら付着した指紋は綺麗に拭き取られてしまったから…。脂まみれの携帯を後の2人に拾わせるのは気がひけるでしょうしね…。そして3番目の老人は携帯の電波でペースメーカーが不具合を起こすことを危惧して拾いすらしなかったと言うところでしょうか」
安室「…ええ」
安室はカップを置くと、両肘を膝に付けて組んだ手に顎を乗せた前かがみの体勢で話を促す
沖矢「でも痩せた男の後に問題の殺された男も携帯を手にしてたんですよね? だったらその男の指紋も…」
安室「つかない工夫をしていたとしたら?おそらくその男はこうなることを見越して予め指先に───」