表は平静を装いながらも、胃がキリキリする感覚を味わっている私

けれど、私はなんとか有希子さん譲りの演技力で誤魔化そうと、ソファの前のテーブルにお茶セットを置いた

「え? それは考えすぎですよ。たまに学生が板書でもやるじゃないですか。重要な単語なんかを別々の色ペンでかくってことを! いいなって思った物件と、2番目にいいなって思った物件を分けて印をつけただけですよ?」

降谷「分けただけで別の誰かなんていない、ねぇ…。君が言う友人が恥ずかしくなく生活できそうな高級でセキュリティも高いマンションと、収入のあまりないアルバイターが済むような目立たない低レベルなセキュリティのマンション…。同一人物が住む候補に挙げるには差が激しくないか? なぁ、愛理」

「(怖いよ!!助けて、紗希ちゃん！！)」

降谷さんの鋭い眼光が私を容赦なく突き刺す

彼は雑誌を元に戻して若菜を解放すると、私のところに近づいてくる

思わず身を引こうとすればその前に腕を掴まれて引き寄せられた

お互いの顔がすぐ目の前にある状態で、まっすぐにブルーの瞳が私を見つめる

降谷「…なぜ、友人の引っ越しを手伝おうと思った? 君がこんなに動揺しているなんて、まるで、最近君より危険な状況にいる人物に仮住まいを用意して間を空けて工藤家に住まわせようとしているみたいじゃないか…。そう、先日組織によって消された、赤井とかにな」

「!!!」

チェックをしていた住宅の雑誌を見られただけで、そんなに深くまで見破られてしまうとは…

彼の推理に思わず目を見開いて驚いた瞬間、それに目を細めた彼がフッと不敵に笑った

降谷「愛理、俺は赤井の死を信じてないよ。あのいけ好かない男がそう簡単に死ぬものか…。かといって、君が手助けをしたような様子もないと報告で聞いている。どうやったかも現段階は分からないーーー」

「だ、だったら亡くなったんじゃ…」

降谷「それは、君の反応で無いと確信したよ。暴いてやるさ。この
巧妙な作戦をな」

「え……今　聞かないんですか?」

すぐに答えを知れるチャンスを自ら棒に振った彼に、私は呆気にとられて思わず聞いてしまった

これでは赤井さんが生きていると言ってるも同然になってしまう

すると、彼は可笑しそうに笑って私の頬をそっと撫でてきた

その心底優しい熱のこもった瞳に、思わず顔が熱くなってどきりとする

降谷「俺は、君が嫌がることをしたくない。もともと生死だけ確認する予定だったしな。赤井の肩を持っていると思うと少々イラつくが…。まぁそれが君の魅力で好きなところなんだから、仕方ないと諦める他ないだろ?」

「…………へ??」

いま、なんだかサラリととんでもないことを言われた気がする……

降谷さんが私のことを好き？

「それって、友人として好きってことですよね？」

降谷「そ、そう言うことだ‥」

降谷さんはそういって私の頭を撫でた。私は降谷さんのことが好きだけど、降谷さんが私のこと好きなはずがない…

降谷さんの顔が赤いのに気づかず、自分が出した答えに納得していた