ー数日後

「大学院生の男性に工藤邸を貸すかもしれない！？」

コナン「ああ、父さんも母さんも許可は取れてる」

「優作さんや有希子さんに許可を取ったなら、私はどうこう言わないけど、どんな人なの？」

本当は知ってるけれど、あえてこの質問をした。そんなことは露知らず、新一君は私に大学院生について教えてくれた

コナン「名前は沖矢昴さん。東都大学大学院工学部博士課程に所属している、２７歳の男の人だよ‥…まあ、そういう設定っていうのが正しい言い方なんだけど」

「何か裏があるのね？」

コナン「愛理姉は知らないだろうけど、昨日、赤井さんが来葉峠出キールに射殺されたんだ。でも、それはすり替えトリックで誤魔化されていて、本物の赤井さんは、今その姿に変装してる。」

「そんなことが‥。新しい自分として生活する家がないから工藤家を使おうってことね」

コナン「ああ。その通り」

話を聞く限り、トリックは成功したみたい…

「他に住めそうな家がなかったら貸せばいいと思うわ。私も探してみる」

コナン「ありがとな、愛理姉」

誰かから、連絡が‥文面を確認すると、私は画面を閉じた

「‥ごめんなさい、新一君。ちょっと家にお客さんが来ることになっちゃった。住まいのことは私に任せて、今日のところは帰ってくれるかしら？」

不服そうな顔をする新一君を見送った若菜と見送った私は、その人をお向かいする準備をした

その相手とは、ゼロこと降谷零さんだった

ー夕方

リビングのソファに座って住宅とインテリアの雑誌を読んでいたところ、インターホンが鳴り響いた

すると、側で丸まってくつろいでいた若菜が立ち上がり、玄関に向かって走り出した

「あっ、若菜！？…もう」

雑誌をソファに置いて私も立ち上がり、マシになっている足で松葉杖をつかずに歩きながら玄関までゆっくりと歩いた

扉の前で開けてもらえるのを待っている若菜に苦笑いしながら玄関を開けると、途端に若菜がそこにいる人物に飛びかかった

若菜「にゃあ!!」

?「おや。とても可愛らしいお出迎えですね」

「でしょう? 外ではあれですし、どうぞ中に入ってください。安室透さん」

私がドアを大きく開けて中へ促すと、彼もニコッと人に好かれる笑顔で「お邪魔します」と中に一歩踏み出したーーー

その後、家の中に入った彼は本性である降谷零に戻っていた

腕の中にいる若菜を優しく撫でながら、私の案内したリビングへと移る

キッチンで紅茶を入れて彼の元に行くと、彼は若菜の相手をしながら私がさっきまで見ていた雑誌を鋭い目で見ていた

「あっ…。降谷さん、その雑誌は…!!」

降谷「へぇ、引っ越すのか…」

「私じゃなくて、友達が引っ越すんです!!一緒に選んでって頼まれてしまって」

嘘を言っているわけではない。１人暮らしをしたいといってる友人がいたのだ

降谷「ふーん…」

こうして私と会話しながらも、雑誌のページをめくっていく降谷さん

どうして自分はソファに雑誌を置いてしまったんだろう…

するとあるページをめくったとき、彼の手がぴたりと止まった

降谷「…なぁ、この雑誌は本当に友達の物件探しか?」

「えっ…?」

降谷「二種類の色のマーカーで、別々のマンションが囲われている。これはつまり、片方は友達の家で、もう片方が別の誰かの候補ってことなんじゃないのか?」

「(…怖いくらいに何でもお見通しだ)」