王子様と秘密のお嬢様 番外編

「あの…レオナさん。お願いがあるんですけど」

レオナ「ん?」

ロゼッタからお願いしてくるなんて、珍しい。レオナはそう思った。そして、できることなら、叶えてやりたい、と

「髪を弄らせてほしくって…」

レオナ「!?…いいぜ。好きにしろ」

「ありがとうございます」

ロゼッタは、ブラシを掲げてレオナの顔色を窺うように尋ねてきた。その様子が可愛らしくて、レオナはすぐさま背中を向けた

よく手入れされてるな‥‥ロゼッタはそう思った。レオナの髪を梳く前にぎゅっと抱きしめて…

髪に頬を摺り寄せて幸福をかみしめていると、指を甘噛みして催促されたので、ロゼッタはブラッシングを開始した。

部屋オイルを馴染ませてから毛先から丁寧にブラシを滑らせる。

レオナの喉はゴロゴロとご機嫌になり、可愛らしい耳はピコピコと踊る。

尻尾はロゼッタの膝をくすぐるように撫でていて、ロゼッタは全てが愛おしいと感じていた

獣性や行動で愛を伝えてくれる彼が大好きだ、ロゼッタはそう思っていた

「レオナさん‥大好きです」

レオナ「知ってる」

俺も、と言ってこないところが何ともレオナらしい。代わりに、膝をなでていた尾をユラユラと揺らして、言葉よりも雄弁に気持ちを伝えているのだ。

ブラッシングが終わるころには、レオナの瞼はほとんど閉じかけていて、まさに夢うつつといった様子だ。

「髪型はお任せで大丈夫ですか?」

レオナ「おー」

相当眠たいのだろう。だって、ロゼッタにはこんな返事を絶対にしない

そしてロゼッタが取り出したのは、2本の黄色のリボン

1本はロゼッタのもの、もう1本は言わずもがなレオナのだ

ロゼッタは、レオナにマーキングをするのはまだ恥ずかしかった。けれど、レオナは自分のものだと主張したい…

そう悩んでいたとき、監督生であるユウが”なら、紙紐をお揃いにするのはどうですか”と提案してくれたのだ

レオナさん‥気付いてくれるかな、と期待を込めてまずロゼッタは自らの髪をポニーテールにした。

折角だから、レオナさんの髪形も同じにしよう!そう決めたロゼッタは、レオナの髪を結った。黄色のリボンも忘れずにつけて…

_________________________________

ラギー「シシシッ、レオナさん。今日はずいぶんと可愛らしい装いで」

レオナ「可愛いのは俺の番だろう?」

ラギー「なぁんだ、気付いてたんスね」

珍しく慌てる姿が見られると思ったのに拍子抜けである

ユラユラと、ご機嫌の尻尾の時のように揺れる髪と、ひらひらと舞うリボン

レオナ「番がいつもと違う髪形をしていて、自分も同じ髪型にされたら、飾りも一緒なんだろうと察しくらいつく」

思いのほか気に入っている様子は、疑いようもなく惚気であり、言わなきゃよかったとすら思う。砂糖を吐きそうだ

ラギーは彼女が欲しくなったが、目の前の人物に話しても絶対に得しないという確信があったので、その言葉を飲み込んだ。
13/24ページ
スキ