王子様と秘密のお嬢様 番外編

学園長室

学園長「そういえば、もうすぐキングスカラー君の誕生日ですね」

「ええ。」

学園長「いつもインタビューは監督生サンにやってもらっていましたが、今回だけはロゼッタ、あなたにお願いします。」

「わかりました」

ーー誕生日当日ーー

サバナクロー寮 誕生日会場

「レオナさん。お誕生日おめでとうございます」

レオナ「ああ。」

「ご家族からお祝いはされましたか?」

レオナ「ああ。祝いのメッセージが届いてたぜ。大量のプレゼントと一緒にな。どうせ俺の趣味に合うものはないだろうから部屋に放置してある。欲しけりゃお前にやるぜ?  ただ、甥のチェカからのプレゼントが厄介で…。」

「チェカ様の?」

レオナ「中はもう見たか、うれしかったかと、届いたその日のうちに電話がかかってきやがる。あまりにしつこいから「見てねえ」で切ったら今度はオネエサマから苦言のお電話だ。なのに肝心の中身ときたら…

去年はぬいぐるみで、その前は絵本だぜ?

あんまり可愛いモンを寄越すんで、思わず感動で涙が出ちまった。ありがたいよなァ、まったく。」

「とっても可愛らしいプレゼントだったんですね。もっとレオナさんのご家族のことお聞きしても?」

レオナ「言っとくが、面白い話はねえぞ」

「あなたがどうやって過ごしてきたのか知りたいんです。ダメ…ですか?」

レオナ「(可愛すぎる…)家にいたころは兄嫁とチェカが騒がしくて、落ち着かねえことばっかりだった。10歳違いの兄貴もそうだ。病に伏せてる親父の代わりに、夕焼けの草原を統治しているが…やたらと俺の面倒を見たがって、口うるさい。

国のことだけ考えてりゃいいものを…流石は、誰にでも優しいオニイサマだ。この間も、お前も知ってるだろうが、夕焼けの草原で作られた伝統品のラグを寄越してな。

寮生活にお高いラグ?そんなものふつう贈るか?気の遣いどころがずれてるんだよ。俺に余計なもんを渡してる暇があったら、敷物1枚でも近隣の国に渡して親交を深め解きゃあいいなのに兄貴はそのことに気づいていない。あの能天気さじゃあ、国の先が思いやられるぜ。」

「レオナさん‥‥」

レオナ「そんな顔するな。俺はお前がいればいい」

レオナさんが私の頭をそっと撫でる。そうされているうちに、悲しい気持ちも少し和らいだ

「それでは質問の続きを…学園内でお気に入りの場所はどこですか?」

レオナ「よく行くのは植物園だな。あまり人が来ないうえに静か…サボりにはもってこいの場所だ。しかも室温管理が徹底されてて、昼寝にもちょうどいい。

だが、あそこで寝てると寮生や部活のヤツがよく呼びに来やがる。寮生の喧嘩を停めてほしいだの、マジフトの特訓に付き合ってほしいだの…面倒ごとを引き連れてな。

だから最近は見つからねえように、隠れる場所を変えてる。そうだな・・・鏡舎裏なんか、身を隠すにはうってつけだ。香りの強い植物もある。実際、この間俺を探してたラギーが近くまで来たが気付かず通り過ぎってたぜ。ククッ…。もちろん今のは一例だ。隠れ家を正直に言うわけねえだろ?見つからなくても恨むなよ。」

「私、レオナさんの居場所は絶対わかるんですからね!!」

レオナ「(可愛いな…頬を膨らませて)そうかよ・・・次の質問はなんだ?」

「寮長になろうと思った理由について聞かせてください」

レオナ「単純な話だな。これ以上小物の下に付くのは嫌だと思ったからだ。」

「小物…ですか?」

レオナ「ああ。入学して最初のうちは、面倒な仕事が増えるだけだと思ってたから、寮長なんかに興味は無かった。ただ、寮の相部屋が…

経験してみると、想像以上に苦痛でな。思うままにならないのは気に障るし、ほかの奴らもビクビクしてるしで、煩わしくて仕方がねえ。

俺もうんざりしてたし、同室の奴らにも「頼むから寮長になってくれ」と泣いて頼まれて…2年に上がるとき、前の寮長に決闘を挑んで奪い取ったわけだ。」

「相部屋だったんですか!?それが苦痛なら今私同じ部屋で寝てますけど、あなたの苦痛になってますか?」

レオナ「ンなわけねえだろ。番と同じ部屋が嫌な奴なんているかよ。

寮長にいざなってみれば、俺が直接動く必要のある仕事はほとんどねえ。

たいていは寮生に任せておけば何とかなるから、楽なもんだ。ただ、寮長会議だけは面倒だな。基本的には寮長が出ることになってるから逃げられない。たまに代理で副寮長が来てる寮もあるが、そうしようにもうちには副寮長がいない。

サポートなんて邪魔なだけだと思って副寮長を置かなかったが…会議の時だけは後悔するぜ。だが、お前が寮長会議に参加するときは憂鬱じゃねえな」

「な・・・なっ///」

レオナ「(顔が赤くなってやがる…可愛い)」

「しゅ・・しゅみは?」

レオナ「強いて言えば、チェスだろうな。盤上を見るのは面白い。相手の戦略を見れば、どんな思考をしているかもだいたい見える。チェスポロ部レムなんかも、繰り返し説くうち新しい戦略を思いつくことがある。あの瞬間がたまらない。

ガキの頃から、よく遊んでたぜ?周りのえら~い大人の方々にお相手いただいてなァ。最初は俺を子どもと侮っていたヤツが、途中から本気になり、最後には悔しげな顔をする…ハハッ!当時の、最高の娯楽だったぜ。」

「チェス‥ですか…やったことありません」

レオナ「今度教えてやるよ」

「いいんですか!」

レオナ「(さっきからコロコロ表情変えやがって‥‥俺の気も知らねえで…)」
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