フェアリー・ガラ

ジャミルSIDE

ランウェイの上に上がると、小さい人達が拍手をして迎えてくれた。

カリム「観客がたくさん……ステージの上から見ると凄い迫力だな!」

ジャミル「落ち着いて、練習通りランウェイを進もう」

ヴィル先輩の教え通り、ランウェイを進んでいくと、
口々に彼らが俺達の衣装を褒めてくれている。

ジャミル「衣装への反応は上々」

レオナ「クルーウェルのヤツ、
偉そうにするだけのことはあって妖精にも通用するセンスらしいな。」

カリム「よしっ、じゃあもっともっと盛り上げて行こうぜ!ヴィル先生の特訓の効果、
ここで見せる時だ!いくぜジャミル!」

ジャミル「羽目を外しすぎるなよ、カリム!」

先にステップを踏むカリム、次に動き出すのは俺だ。

イデア先輩に教えられた“がけも”で得たもの…それは“パッション”だ
観客を全員引き込まなければ、完璧に踊っても意味がない。

__ジャミル君は踊る事をどう考えてるの?__

ロゼッタ様がおっしゃっていたあの言葉…ずっと作業的にしていたダンス。

だけど、それじゃあ駄目だ…俺はずっと……今まで、押し殺し着てきた考え。

カリム「対等になろう!」

あの能天気馬鹿の言う通りにするのはまぁ癪だが……対等だというからには譲ってやる気はない。

この気持ちも、ダンスへの情熱も……全部、ここで見せてやる。

フェアリー【とっても素敵……素晴らしいパフォーマンスですね、女王様!】

女王【ええ。とても美しいです】

妖精の女王が俺達に見入っている。
このままいけば……。

ジャミル「!」

ふと、視界の端にロゼッタ様が此方を見ているのが見えた。

うっすら笑みを浮かべ、俺達のダンスを見て、目を輝かせていた。
カリムみたいに、感情がすぐ顔に出るお方だな…。

ふっと自然と口角が上がるのが分かった。

ロゼッタ様が見ているんだ、俄然失敗なんて出来るか…あの方の目に、届くように…。

目の前のカリムがバッとしゃがむ。

いつも失敗していたターンだ…だけど、今回は……タイミングがバッチリ。

ジャミル「!」

俺はリズムにあわせ、バク転した。

その瞬間、会場の妖精達が立ち上がり、拍手しているのが見える。

カリム「ははっ、楽しいな!ジャミル!」

本番だというのに声をかけるな…と言いたいが、今の俺は気分がいい。

ジャミル「ふっ、まぁな」

満面の笑みのカリムに、そう返てやった。
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