フェアリー・ガラ

ジャミル「本番は明日なんだぞ、カリム。もっと集中したらどうだ?」

ヴィル「ジャミルも人のこととやかく言える立場?
正直、今は3人の中でアンタが一番酷いわ」

ジャミル「なっ!?俺ですか!?」

信じられないという顔をするジャミルくん。
まぁ、ダンスの実力に至っては正直カリムくんより上だし…注目は浴びると思う。

けど……。


ヴィル「ロゼッタ、ジャミルのダンスを見てどう思ったの?」

「踊りに関しては……一番上手だと思うわ」

ジャミル「お褒めに預かり光栄です」

「……ただ、余り…楽しくなさそうにみえるの……ジャミル君、1人で踊っているような感じがして・・・」

ヴィルさんも「そうよ」と呟く。

ヴィル「ジャミルのダンスには観客を引き込むものがない。アンタに足りないものが何か、わかる?」

ジャミル「……」

考え込むジャミル君、きっと答えが分からないんだろう。

ラギー「ジャミル君、今からダンスを仕上げるのは厳しくないッスか?
ダンスが駄目なら、宝石をすり替える役を手伝うってのはどう?」

ジャミル「…いやダンスの担当を外れる気はない」

考え込み過ぎて頭がパンクしないといいけど。

私はジャミル君に近付き、レモネードを渡した。

「ジャミル君、宴で私やカリム先輩と踊ってくれた事、覚えてる?」

ジャミル「え?…覚えていますが」

何の話だ?という風な顔を浮かべるジャミルくん。

今は本当にただの作業で踊っているけど…あの時、一緒に踊ってくれたジャミル君は…。

「あの時のジャミル君は踊る事を楽しんでいるように見えたわ」

ジャミル「踊る事を…楽しむ?」

「もし失敗したらとかいろいろ考えてるかもしれないけど、

ジャミル君は踊る事をどう考えてるの?」

ジャミル「俺が…踊る事を………」

「ヒントになれば、と思ったけど、…混乱させてしまったのなら、ごめんなさい」

ジャミル「………いや、参考にさせていただきます。。少しだけ、外の空気を吸ってきますね」

空のグラスを渡して、ボールルームから出て行った。
本当に大丈夫だろうか

あれから暫く立ったがジャミル君が戻ってくる様子はない。
ヴィルさんに自分の力で何とかしたいと言っていたから…答えを探しているんだろう。

「………ヴィルさん、少しだけ外を探してきます」

ヴィル「アンタも気にしすぎねぇ…と言いたいけど、アタシもどうなっているか気にはなっていたから、見てきてあげて」

「はい」

部屋を出るともう日は暮れていた。
時計を全然見ていなかったから分からなかったけど…もうこんな時間か。

「…‥ん?」

教室、廊下とジャミル君を探している時、中庭の方から…2つの声が聞こえてきた。

その内の1つの声は、今私が探している人だ。

「…ジャミル君?」

誰かと練習しているのかもしれないから、そっと中庭を除く。
そして…光景に驚いた。

「「サンダー!!パンサー!!!」」

中庭にある井戸の前で、ジャミル君とイデアさんが光る棒を両手に持って、振り回していた。

「あの曲って確か……“がけも”っていうアイドルの…」

ユウが動画を見せてくれたことがある。
2人がやっているのは“打つ”というアイドルを応援する動作らしい。

凄い動きだな、ダンスみたい…。

イデア「ジャミル氏!もっと腕を高く上げて!」

ジャミル「は、はい!」

さっきまで随分と悩んだ顔をして、暗い面持ちだったのに…。

まぁ、今の顔も大分困惑しているようだけど………けど、何か楽しそうだな。
必死に取り組めているというか…。

ヴィルさんに様子を見てきてと言われたけども、あのままでいいかもしれない。
自分で答えを出すと彼が言ったんだから。

「邪魔しないであげよう」

イデアさんに任せましょう。
そう考え、私はボールルームの方へ戻って行った。

ジャミル「…?…ロゼッタ様?」

イデア「ジャミル氏!もう1パターンを覚えるとは見事ですぞ!次は2パターン目もいきますか?」

ジャミル「!…はい!お願いします!」
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