フェアリー・ガラ

ヴィル「ウォーキングの基礎もないレオナが、
気の利いたパフォーマンスをするのは無理」

躊躇もなくバッサリと言い切られてしまった。

ヴィル「どっち付かずになるくらいなら、
いっそのことウォーキングに集中させたほうがいい。

不本意だけど、この男の無駄に偉そうなオーラをうまく活かせれば、
目を惹くメインモデルになるわ」

レオナさんには悪いけど、頑張ってもらうしかないわね。

ヴィル「スカラビアの2人は既にウォーキングは100点。
だから次の段階……ダンスに挑んでもらう。

ダンスパフォーマンスでポンコツメインモデルを引き立てつつ、会場を盛り上げる役目よ。
全体のパラメーターを感じるとこれしかない」

クルーウェル「ああ。
キングスカラーという穴を埋めるにはシェーンハイントのプランしかない」

ジャミル「こんなにどうしようもないレオナ先輩を俺達2人でカバーできるだろうか……」

カリム「がんばろうぜ。レオナのこともちゃんと面倒見てやるって、最初に約束したんだ」

ラギー「サバナクローの寮生として恥ずかしいッス……手間のかかる寮長ですみません」

グリム「2本足の歩き方ならオレ様がコーチしてやるからいつでも言うんだゾ」

監督生「こら、グリム!」

ユウが慌ててグリム君の口を塞ぐが、もう既にレオナさんは怒り狂っている。

今にも【キングス・ロアー】が出されそうだ。

レオナ「お前ら……黙って言わせておけば……!!!」

「レオナさん!!落ち着いて!い、一緒に頑張りましょう!」

ラギー「それ、今は最悪って事を認めちゃってるッスよ」

どうやってレオナさんを抑えようか…と思っていると、
「ビークワイエット!」とクルーウェル先生が指示棒を振り払われる。

クルーウェル「いいな、仔犬ども。
シェーンハイントのレッスンを受けて、最高のファッションショーに仕上げろ!」

ヴィル「さあ。
早速フェアリーガラに向けてレッスン開始よ!」

絶対厳しいものになるでしょうね・・・


そして、また数日が過ぎた。

レオナ「……おい、ロゼッタ」

「…私だって好きにしている訳では…‥」

ヴィル「ロゼッタ、甘えはいらないわ。さっさとおきなさい』

双方に睨まれ、困惑するが……助手という立場なので、ヴィルさんに従うとする。

「おい!」とレオナさんに怒鳴られたが、気にせず彼の肩と頭に水の入った花瓶を置いた。

「そ、それで1周部屋を回ってください」

何か言われる前に距離を取り、ユウが見ているダンスチームの方へ。

カリム「あ、ロゼッタ~!…て、うわ!?」

ジャミル「ばっ、カリム!」

カリム君が私に気付いてダンス中にも構わず、手を振ってくれた。
が、その腕がジャミル君の背に当たり、バランスを崩したジャミル君の足がカリム君をひっかけてしまう。

結果的に、2人はかなり痛い音を出し、転んでしまった。

「だ、大丈夫!?」

慌てて近づくとカリム君に「おう、心配するな~」と言われ、
ジャミル君には渋い顔をされた。

カリム「ごめん、またぶつかっちまった」

ジャミル「カリム、今のはお前が一歩前に出るタイミングだぞ」

ヴィル「カリムは1つ1つの所作は綺麗なのに振りのミスが多いわね」

カリム「楽しくなってくると体が勝手に動いちまうんだよなぁ」

ヴィル「ジャミルは踊り自体にミスはないけど、逆に優等生すぎて盛り上がりに欠ける」

「「……はい」」

怒られてシュンとなっている2人にとりあえず、タオルを手渡す。

と、そこにラギー君やグリム君が入ってきた。

ラギー「ちわーっす、ウチの寮長、ちゃんとやってます?」

グリム「遊びに来たんだゾ!」

監督生「…遊びにって、こっちは真剣に……」

レオナ「おい!!!!」

…レオナさんの怒りが最高潮になってしまいそう…

ラギー「おっ、レオナさん。サボらずちゃんと……」

何も知らないラギー君とグリム君はレオナさんの方を向く。

ラギー「!?ど、ど、どうしたんッスか!?」

グリム「なんで花瓶何かのってんだ!?」

「‥‥…えーっと、あれがレッスンらしくて」

私からそう聞くと、2人ははぁ!?と声を上げる。

レオナ「ヴィル!!!!!さっさとこの花瓶をどけろ!!!!!!」

ヴィル「アンタの姿勢を正すには必要なレッスンよ。
花瓶の水をこぼさずに部屋を一周できるようになりなさい」

レオナ「てんめぇ…!!!」

「あ、それ以上動いたら…!」
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