フェアリー・ガラ

そして、翌日__…

__ポムフィオーレ寮 ボールルーム

本日からヴィルさんによるレッスンを受ける為、私以外の人達は衣装に身を包み、
ポムフィオーレ寮のボールルームへ訪れた。

クルーウェル「どうだ?立派な毛並みの仔犬に見えるだろう」

ヴィル「……さすがだわ、クルーウェル先生。
あえて色味を抑えた衣装がその者本来の美しさを引き出す様は、ストイックで、
どこかミステリアス……未知へ尽きぬ憧れ、それこそがエチゾチックなのね」

クルーウェル「ふっ。お前のようにファッションを理解できる者がいると話が早くて助かる」

ジャミル「数え切れないほどの布を当てられ、着ては脱ぎ、着ては脱ぎ……」

ラギー「特訓する前から疲れたッス」

カリム「そうか? 服を仕立てる時はいつもこんなもんだろう。なー、レオナ」

レオナ「まぁな」

怠そうにしていたけど、疲れてはいないレオナさんと終始楽しそうにしていたカリム君。

王子様と大富豪の息子だからかしら・・・

カリム「そういえば、ロゼッタの服はまだなのか?」

ヴィル「安心しなさい。ロゼッタの衣装はこのあたしが手をかけているんだから、
最高の出来に仕上がるわ」

「ヴィルさんが作ってくださるなんて、とても嬉しいです」

監督生「皆さんの衣装が決まってよかったです」

ヴィル「それについては安心するのはまだ早いわよ。
着ている人間の所作が美しくなければシルクのシャツだってズタ袋に見える」

監督生「…ズ、ズタ袋」

ヴィル「ファッションショーで注目を集めるパフォーマンスをするためには……
美しいウォーキング。美しいパフォーマンス。

この2つが不可欠。まずはウォーキングでアンタ達の実力を見せてちょうだい」

レオナ「歩くだけだろ?寝ながらでも余裕だな」

ジャミル「いざ意識して歩くとなると勝手がわからなくなりそうだ」

カリム「そんな緊張するなよ。リラックスしてやろうぜ」

「が、頑張ってください」

ラギーくん、グリム君、ユウと共にウォーキング様子を見学する。

そして、ウォーキングが終わった…。

ヴィル「……意外だったわ。アンタがこんなに優雅に歩けるなんて……」

一緒にウォーキングを見ていた私達もその言葉に納得し、‟2人”を見た。

ヴィル「……すごいわ。ジャミル」

ジャミル「ヴィル先輩にお褒めいただけるなんて、光栄です」

ヴィル「カリムも姿勢がよくて上品だわ。ご実家の教育の賜物かしらね」

カリム「そうか? へへっ、ちょっと照れるぜ。
あ、でも……姿勢がいいのは実家の教育っていうよりダンスが好きだからかも」

ジャミル「カリムは幼い頃から伝統舞踊を習っていますし、
俺もストリートダンスを少し嗜んでいます」

ヴィル「なるほど。だから2人とも体幹が鍛えられていたのね」

「意識せずあんなに綺麗に歩ける何て、凄い!」

カリム「そうか?そりゃよかったよ!」

ジャミル「これ位は普通の事です」

カリム「アッハハ!ロゼッタに褒められて、ジャミルも嬉しいって!」

ジャミル「勝手に言うな!!カリム!!」

ヴィル「それに比べて……」

ヴィルさんの視線がレオナさんへ

ヴィル「レオナ。アンタのだッッッッッさいウォーキングはなに?」

レオナ「あ? スカラビアの野郎共と同じだろうが」

ヴィル「全然違う。ジャミルの軽やかさ、カリムの高貴さ……
どちらも、アンタにはこれっぽっちもない。足が地面を擦ってる。姿勢も悪い。
歩くときに頭が揺れるし、肩で風を切っててガラが悪い!」

物凄い言われようだが‥実際に、2人と比べればかなりレオナさんの歩き方が悪い事が分かる。

でも、サバナクロー寮の人は猫背の人が多い…ジャック君を除いてだけど。

ヴィル「王子の肩書きが聞いて呆れるわ。玉子の間違いなんじゃないの?」

監督生・ユウ「「た、玉子!?」」

ラギー「けちょんけちょんに言われてるッス……」

「…玉子はウォーキングしないんじゃ…」

ジャミル「真面目に答える所ではありませんよ、ロゼッタ様」

クルーウェル「……シェーンハイント。
キングスカラーのような駄犬にはまず二足歩行を躾る必要があるんじゃないか?

このままでは、生まれたての仔猫をランウェイで歩かせるのと同じことだ」

ヴィル「……確かに、クルーウェル先生の言う通りね」

「…‥レ、レオナさん!背筋を伸ばせていなくても…その、かっこいいですし、強いですよ」

レオナ「何のフォローにもなってねぇよ」

更に眉間の皺が強くなってしまった…。
9/30ページ
スキ