フェアリー・ガラ

監督生SIDE

クルーウェル先生のお手伝いも終わって、教室の前に到着した。

どうなっているだろう…と思っていると、中から声が聞こえてきた。

ラギー「お、この金ピカのタイピン、高そうでいいッスね。採用っと」

カリム「うーん……なんか胸元が寂しくないか?でっかい宝石とかつけようぜ」

ラギー「宝石! いいッスね!んじゃ、この赤い石のブローチとか……」

ラギー先輩とカリム先輩だ。

カリム「小指の先くらいしかないルビーだな。目立たないんじゃないか?
ウチでボードゲームのコマに使ってたダイヤより小さいし、もっと大きいやつにしようぜ」

ラギー「ボードゲームのコマ!?なんでそんなモンにお高い宝石使うんスか!?」

カリム「なんでって……もともと家にあったやつだし、理由なんて考えたこともなかったな」

ラギー「へ、へ~……。カリムくんもレオナさんもやっぱ金銭感覚ぶっ壊れてるッスね……」

カリム「あっ! ラギーの顔より大きい青い宝石のブローチがあるじゃないか!」

ラギー「おぉ、めっちゃいいじゃないっすか!つけて下さい、はやくはやく!」

「それは・・・」

金銭感覚化け物とお金関係ヤバイ人が出そろった…。
他人事のように考えていると、隣にいたクルーウェル先生が「Bad boys」と呟く。

クルーウェル「不合格だ、アジーム!!」

そして、先生は扉を乱暴に開け、カリム先輩にいい放った。

驚くカリム先輩達に構わず先生はカリム先輩に近付き、
彼の手にある金だの宝石だのをひったくった。

クルーウェル「なんて品のないコーディネイトだ……ターキーをはき違えるな!

まず衣装を見ろ。
ブッチの魅力を引き立たせるために白い布地をベースにシンプルに仕上げている。

だとすると、
装飾も色数が増えないよう白や銀で最小限のアクセントを添えるように留めるべきだ。
つまり、サファイアのブローチもゴールドのピンもミスマッチ!すべて外せ!」

ラギー「ええ!? 金ピカでがっつり注目を集めたほうがよくないッスか!?」

ロゼッタ「ラギー君が注目を集めちゃったら意味がなくなってしまうわ」

貴方、宝石をすり替える側なのに、目立ったら意味がない。

クルーウェル「ロゼッタの言う通りだ。それとも……俺の見立てが間違ってるとでも?」

ラギー「いや! 全然そんなつもりはないッスけど。
せっかくなんだし、とびきり豪華な高そうな服のほうがありがたいな~、なんて……」

クルーウェル「一応言っておくが、衣装はショーの後に全て回収するぞ。
まさか、自分のものになるなんて思ってないだろうな?」

ラギー「えええっ!?
でも、さっき与えてやるって言ってたじゃないッスか!ウソだったんスか!?」

アクセサリーが入った箱を机に置き、ラギー先輩の言葉に納得した。

さっきクルーウェル先生から“与える”とか言われたから、フェアリーガラが終わったら貰えると思ったんだろう…。
装飾品を業火にしようとしたのは、その後売る為…。

「セッコイ…」
グリム「オレ様と同じ位セコイんだゾ!」

「堂々と言えないよ。こら、盗っちゃ駄目」

そーッと宝石に手を伸ばすグリム君の手を抑える。

クルーウェル「……何を勘違いしているのか知らんが……「与えてやる」というのは、
あくまで「貸し与えてやる」ということだ」

ラギー「…そうッスか。
んじゃなんでもいいや。好きにしてください」

さっきまでの勢いは何処へいったのか…いきなり諦めた。
分かりやすい…。

カリム「コーディネイトやめんのか、ラギー?」

ラギー「服なんて着られれば何でもいいんスよ。
あ、作戦のために動きやすいようにだけはお願いするッス」

ジャミル「さっきまでの熱の入れ具合が嘘みたいだ…」

レオナ「お前はそういう奴だよな、ラギー」

ラギー「ちえっ、せっかく大儲けできると思ったのに……
世の中そう上手くはいかないもんッスね…」

耳を垂らし、ガッカリするラギー先輩。
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