ゴーストマリッジ

イライザ〈あ……ああ……!〉

小さくなったチャビーのほうを見て、震えるイライザ姫。

リドル「もう花嫁を守る護衛もいない。今なら断絶の指輪もはめられそうだね」

エペル「暴れる前に、ケリをつけよう!」

「え、…まって」

さっそく指輪片手に姫様のほうへ行こうとする男子勢を止める。

エペル「こういうのは勢いが大事だって!さっき監督生サン言ってたじゃないですか!」

「いや、あれは転がすときに…。けど、そうじゃなくて」

多分、もう指輪必要ない…と言おうとしたのだが、エース君が意地悪な顔をしてイライザ姫に近づく。

エース「さーて。最後に言い残したことは?愛しのイデア先輩にお別れでも……」

イライザ〈チャビーーーーッ!〉

悲痛な叫び声を上げた彼女は、倒れたチャビーに駆け寄った。
男子勢が「え」という声を漏らす。

イライザ〈チャビー、ああ……なんてことなの……!

 私を悪党から守って、ボロボロになってしまうなんて……〉

監督生「…悪党って、私たちのこと?」

エース「なんで急にディスられてるわけ!?」


勝手に乗り込んで、勝手にイデアさんを攫って、勝手に結婚式しようとしたのに…。

どっちが悪党なんだか………。

チャビー〈姫様、悲しまないでください。

 あなたが笑顔であることが俺の幸せなんです……〉

弱弱しい声でそう話すチャビーさんの体が徐々に消え始めていた。

イライザ〈チャビー?どうして、あなたが体がどんどん消えていく……〉

チャビー〈どうやら、先の戦いで力を使い果たしてしまったようだ。

 ……姫様、どうかいつまでも笑っていてくださいね。

 貴女の幸せを、いつも心から願っています。王子様と末長くお幸せに……>

イライザ〈いやよ……いや、いかないで!〉

薄れ消えていくチャビーさんの体を抱きしめるイライザ姫。

チャビー〈姫様…だめな俺をどうか許してください〉

イライザ〈い、いや……っ! いかないで、チャビー!!〉

___カラン

ランタン『愛しい子。この茶番いつまで続けるの?』

「きゃっ!?」

突然私の影から現れたランタン君に驚き、その場から飛び跳ねてしまった。

グリム「ふなっ!?お、おめぇ…いつからみてたんだ?」

ランタン『んー?ずっと』

そういえば、ずっと私の影にいたんだ…………あ。

「ランタン君。チャビーさんっていう幽霊を助けたいんだけど…消滅を防ぐ方法あるの?」

イライザ〈っ!あるなら教えて!お願い!〉

ランタン君の存在を見て、目に涙を浮かべたイライザ姫がこちらを見る。
それを見て、ランタン君はカランッとランタンをふるう。

ランタン『人の子に“死”という結末があるように、僕ら精霊や妖精、ゴーストにだって“終わり”がある。

それを覆すことは神の子であろうと許されない』

イライザ〈そ、そんな…わ、私!なんでもする!

 だからチャビーを……っ!!〉

ランタン『力を使い果たしたのならば、終わりを迎える』

能天気な声なのに、その言葉には今までにない重みを感じた。
絶望的なその言葉に、イライザ姫は落ちることがない雫を流す。

しかし、【だけど…】と彼は言葉をつづけた。

ランタン『ゴーストの始まりは“未練”から。 その未練を断ち切る手立てがあるならば…“奇跡”がおきるかもしれない』

「未練?」

ランタン『愛しい子なら、気づいてるはずでしょ~?』

なんとなく、彼がいう未練が分かった。私は泣き崩れるイライザ姫に近づく。
後ろでエース君たちが止めようとしたけど、私は彼女の前に膝をついた。

「イライザ姫。先ほど、私が言った言葉を覚えていますか?」

イライザ〈…わたしの、本当の王子様について?〉

「心の中で分かっているはずです。
それがあなたの“未練”と……同時に、彼の“未練”を晴らせるかもしれない。

自分に素直になって、今まで言えなかった言葉を伝えてあげてください」

私の言葉にコクリと頷いた彼女は涙をぬぐい、今にも消えそうなチャビーさんの頬に手を添えた。

イライザ〈チャビー…。あなたはダメなひとなんかじゃないわ。だって、あなたがいつも優しく励ましてくれたから、

どんなに辛くても夢を追いかけてこられた。

私にはチャビーが必要なの!〉

チャビー〈姫……〉

イライザ〈……ああ、そうなのね。今、ようやくわかったわ。
私の本当の王子様は……チャビー、あなたよ!〉

「「「えぇえ!?」」」

彼女の告白に、驚愕の声を上げた3人。
微笑むルークさんをみるに…気づいていたみたい。
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