夕焼けの草原のタマ―シュナ・ムイナ

練習試合後

レオナ「…よし、そこまでだ。一旦集まれ」

カリム「どうだったレオナ?」

レオナ「リリアが1番腕がいいな。攻撃も防御も知ろうとの動きじゃない。文句なしのメジャーピースだ」

カリム「メジャーピース?なんだそれ?」

リリア「チェスピースの中で、価値の高い大駒を指す言葉じゃな。」

レオナ「ああ。クイーンとルークっていう駒のことだ」

カリム「へえ。つまりそれだけリリアはすごいってことだな!」

リリア「くふふ。そんなに褒められると照れるのう。」

レオナ「マイナーピースってのもある。ナイトとビショップのことだ。メジャーピースより価値が低いとされている。うちのチームで言えば、ヴィルだろう。実力はリリアの次だからな。大抵の相手なら、お前らで2分を計算に入れられる。計画通りだ。」

ヴィル「素直に喜んでおくわ。マイナーって言葉は気に食わないけどね。」

レオナ「問題はカリムだ。…分かってはいたが、どうも動きに冴がない。力がなくとも、相手の死角をつくとか、不意をついて体当たりするとか、やり方はあるだろうが。」

カリム「ええっ。オレ、そんな酷いことできないよ」

「相手の死角や不意をつくカリム君は想像できないわね…」

リリア「カリムは優しい男だからな。このような格闘系競技には向いておらんのじゃろう。」

レオナ「まともに戦ったら1勝もできないまま終わる。」

カリム「そうなのか?まいったなあ」

レオナ「チェスの駒で言えば…ポーンだ」

ヴィル「ポーンって、前に1マスしか進めない駒よね」

リリア「何とも期待値が低いのう。カリムよ、わしがコツを教えてやろう。相手のビーズをババッ!ビューン!ドン!ズバーン!と取ればいいのじゃ♪」

そんな擬音ばかりで理解できるのかしら

カリム「なるほどなあ。やってみるよ!」

ヴィル「…よくあんな指示で分かるわね、カリム」

カリム「ドラムもこうやって教えてもらったんだ」

レオナ「それぞれの力量がわかったところで…ここからは俺が指導してやる」

レオナさんはマントを脱ぎ、私に渡した

レオナ「頼む」

「ええ」

リリア「お!ついにレオナもマントを取ったか」

ヴィル「相変わらず見てくれだけはいいわね、まったく。アンタが試合に出たら、客たちは沸くんじゃないの?」

レオナ「もう忘れたのか?俺は出場できない。俺はサンセット・ウォーリアーを率いる立場。1つのチームに加勢したら、不平等だと非難される。俺が競技場に上がった瞬間に、キファジが怒髪天を衛く勢いで飛び込んでくるだろう。その場でチームは失格。お前達の練習は全て水泡に帰すってわけだ。」

ヴィル「…前言撤回。アンタは大人しくしてなさい。」

グリム「ってことは、レオナが1番の役立たずなんじゃねーか?」

レオナ「何だと。この毛玉が…」

リリア「試合に出られぬのなら、観客席からわしらをしっかり応援するのじゃぞ。「リリア―!がんばれー!」とな。ほれ、言うてみい」

レオナ「誰が言うか。」

レオナさんがそんなこと言っているところなんて想像つかない

リリア「つまらんやつじゃのう」

レオナ「さあ、楽しい楽しいお勉強の時間だ。時間いっぱい稽古をつけてやる。誰からでもいいぜ。かかってきな」

監督生「何か手伝いますか?」

レオナ「お前はロゼッタと一緒に飲み物を準備しておけ。この日差しの中でハードな運動をするんだ。相当体力を消耗するだろう。くく…あいつらのバテた顔を見逃したくないんなら、早めに戻って来いよ。」

ロゼッタ「行きましょう、ユウ」

監督生「はい!」

ー数時間後ー

皆さん息切れが激しい

レオナ「ふん。もうへばったのか?」

ヴィル「アンタは息も切れてないのね」

レオナ「今日初めてキャッチ・ザ・テイルをやった奴らを相手にしたって、息が切れるほど疲れるかよ。」

カリム「すげえなあ、レオナ!キファジから聞いてたけどさ、想像以上だぜ!」

リリア「全くじゃ、わしでもまったく歯が立たん。太陽の下で動いているとはいえ、ここまで実力差があるとは思わなかったわい。年季の差…というわけか」

レオナ「そういうことだな。だがお前らも、だいぶ動きがよくなった。」

ヴィル「そうね。具体的なアドバイスが聞けたのは助かったわ。」

リリア「うむ。本番の試合ではお主に授けられた作戦通りに闘うぞ」

カリム「ああ、明日が楽しみだなあ!」

レオナ「よし、練習は終わりだ。ホテルに戻るぞ。」

こうして私たちはホテルに戻ったのだった
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