ゴーストマリッジ

気のせいだろうか、大食堂のほうから「キーッス」とかいうコールが聞こえてくる。

「楽しそうね、中」

グリム「確かに。もういいんじゃねぇか?」

エース「馬鹿言え!キスコールあるってことはマジでやばいぞ!!」

エース君がそういうと同時に、扉を勢いよく開いた。

エース「その結婚、ちょっと待ったー!!!!」

式場にいた全員が私達を見た。

デュース「こ、この声は……!」

監督生「ギリギリ…0時じゃない」

グリム「ま、間に合ったんだゾ~」

「さすがに疲れたわ・・・・」

エース「だっー、はぁ、はぁ…高校生がやる事じゃねーっての……!」

時間に猶予がある事を安堵し、息を整える私達。
本当に疲れた。

イデア「エース氏~、ロゼッタ氏!監督生氏にグリム氏まで!!」

息を整え、声がした方を見ると涙目のイデア先輩と目が合った。

動けない状態で、花嫁からのキスを必死で避けていたのだろう…可哀想に。

イライザ〈な、なによあなた達……はっ。

さては報告にあった侵入者!?大切な結婚式の邪魔をしないで!〉

エース「なーにが大切な結婚式、だよ。やりたい放題しやがって」

「何度も言いますけど、学校内に不法侵入しているのはあなた方ですから!」

エース「指輪をはめて、今すぐあの世送りにしてやる!!」

グリム「お前等がいなくならないとオンボロ寮が使えないんだゾ!」

監督生「そうですよ!どこで寝ろって言うんですか!」

イデア「え!?怒る理由そっち!?」

ヴィル「あの子たち…追い出す理由が私情ね」

ジャック「ま、まあオンボロ寮の住居者ッスからね…」

チャビー〈姫様に手を出すな!〉

ブーケを構える私達の前に、チャビーと呼ばれていた太いおばけが立ちはだかる。
その後ろには家臣であろうお化けたちも見えた。

エース「ちっ。まだ家臣のゴーストがいやがったのか!」

爺や〈姫様、ここは私達が抑えます〉

婆や〈今のうちに誓いのキッスをすませてくだされ!〉

「すませる訳にはいかないのよ!」

中央にいる2人に向かおうとした時、〈ここは通さない!〉と太いお化けが現れ、ユウにに魔法を放つ。

「ユウ!」

グリム「ふ、ふなぁ~!!」

監督生「っ!」

ユウはブーケを構えつつ、ユウの肩に乗っていたグリム君が炎を吐き出す。

炎とお化けが放った魔法がせめぎ合い、2つとも消えた。

エース「クソ!こいつらが邪魔で進めない!」

「もう0時の鐘がなってしまう…っ!」

私とエース君とグリム君の魔法で攻撃しつつ、隙を見てユウが前に走るが、家臣のゴーストに止められる。

イライザ〈もう、イデア様ったら。いつまで往生際悪く逃げるつもり?〉

イデア「拙者、は、ははは、初めての経験は大切にしたい派なんです!」

イデアさんの方を見てみると、顔を必死で動かして、姫様からのキスを拒んでいた。

どうして、その光景が目に入らないの?

自分さえよければ、どうでもいいの?

監督生「…っ…この、クソ馬鹿姫!!!!」

ユウがそう叫ぶと、キスに必死だった姫様が此方を向いて〈クソ馬鹿姫ですって!?〉と文句を言う。

「そーよ、貴女のこと!
自分勝手で、周りの人間の迷惑考えない、貴女のことをいったのよ!」

イライザ〈なっ、何ですって!!〉

エース「イデア先輩を見てみろよ。顔だけ必死に動かして、全力で嫌がってる」

「どうしてイデアさんが見えないの?!
こんなの結婚なんて言わない、貴女がやっていることはただの独りよがりよ!」

イライザ〈っ!…わ、私は…〉

私の言葉が相当効いたのか、今にも泣きそうな顔に変わる。

今ならいける。

私は家臣達を横切り、イデア先輩とイライザ姫の元へ走った。
が、すぐ目の前に炎の魔法が起こる。

「っ!」

咄嗟にブーケで守ったが、次の瞬間、突風が吹き荒れ、後方へ吹き飛ばされた。

エース・監督生・レオナ「ロゼッタさん/ロゼッタ!!」

飛ばされた私を後ろでキャッチしてくれたエース君。

チャビー〈姫様を悪く言う事は許せん!!〉

炎と突風を出したのは、あの太いゴーストの様だ。

「ご、ごめんなさい。エース君」

エース「…1人で無茶しないでくだい。後でレオナッ先輩に怒られても知らないっすからね」

エース君の手を借りて、私は立ち上がる。

そしてエース君は此方に武器を構えるゴーストたちを一瞥する。

エース「つーかよ!お前らも本当は、自分達の姫が間違ってるってわかってんだろ!」

婆や〈……全ては姫様のためなんじゃ。
 
 私達は幼少のみぎりより、ずうっと姫様の成長を見守ってきた。

 姫様は本当に優しく、明るく、国中みんなが姫様の将来を楽しみにしておった。



それが……〉

家臣のお化けが悲しそうな顔を浮かべ、ポツリポツリとお姫様の過去を話し始めた。
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