夕焼けの草原のタマ―シュナ・ムイナ
私達は、夕焼けの草原にある暁光の都に到着した。
レオナ「着いたぞ」
グリム「おー、ここが夕焼けの草原かあ!」
レオナ「ああ、王都・暁光の都…俺の故郷だ。
ようこそ、このようなむさ苦しいところへ」
ジャック「あ、暑い…」
ヴィル「確かに。輝石の国だけじゃなく、賢者の島と比べても気温が高いわね。空気が違うように感じるわ。」
カリム「明るくて、綺麗な街だな―!」
リリア「そうじゃな。それに、これほど町中に緑の多い大都市は珍しい」
レオナ「それは、この国のありがたーい信条のおかげだ。この国の奴らは”自然と共存”を何よりも大事にしている。獣人族の祖先である動物のため、動物の暮らす自然環境を保護したいんだと」
その時のレオナさんの声はとても不機嫌だった。
リリア「どうじゃ、久しぶりに里帰りした故郷は。なつかしくて心が躍るじゃろう?」
レオナ「逆だ。代わり映えしない景色にうんざりしてる。」
リリア「そうか?わしは夕焼けの草原に来るのは久しぶりじゃが、ずいぶんと様変わりしておるぞ。」
ロゼッタ「随分と前というといつ頃ですか?」
私は気になったので、リリアさんに質問した。
リリア「昔はこのように整備された都市ではなかった。高層建築物などなかったしな。」
レオナ「それは何十年前の話だ。親父が元気に執政をしてた頃には、もう都市の整備は始まってたはずだ。」
ヴィル「アタシも暁光の都には何回か来ているけど、いつも素敵なところだと感じているわ。」
レオナ「素敵なところ、ねえ…そりゃ「たまに」、この国に「遊びに来る」程度の奴にとってはそうだろうな」
レオナさんは「たまに」と「遊びに来る」を強調して言い放つ。
私もこの国の現状を知っているからこそ手に力が入ってしまう。
ヴィル「何?さっきから随分と含みのある言い方ね」
レオナ「カリム。お前の熱砂の国も暑くて、乾燥した国だったな。」
カリム「ああ。国のほとんどは砂漠だよ。でもオレが住んでた『絹の街』は、街中に運河があるから結構涼しいぜ。大昔は飲み水に困ってたみたいだけど、今は全然そんなことないし。」
レオナ「施政者が先進的な技術を積極的に取り入れて、住人の生活環境を発展させたおかげだろうな」
ロゼッタ「夕焼けの草原のほとんどは、サバンナで乾燥地帯。砂漠ではないけれど、水が貴重なのは同じよ。」
私が暗い顔をしているのがわかったのか、レオナさんはそっと私の頭を撫でた。
ロゼッタ「だけど、熱砂の国みたいにインフラの整備が進んでいないの。今も井戸水で生活している人もいる。」
レオナ「律儀なことに、住人が土地の環境に順応するかたちで生活しているんだ。全ては自然頼み。だから、雨期を願う雨乞いの祭りだなんて時代錯誤なもんが残ってやがる。この国にも豊富な地下資源がある。それを大規模に採掘すれば、もっと豊かになるはずだ。だが”自然との共存”を大事にしすぎて、都市開発をしようって考えに至らない。熱砂の国とは大違いだろう?」
ヴィル「開発できないわけじゃなく、意図的に開発を避けている…というわけね」
レオナ「ああ。」
リリア「ふうむ。わしは全てが悪いことばかりだとは思わんがのう。近代的なだけの街は世界にいくらでもある。一方的な開発など金をかければ簡単にできるからな。この街のように、自然を残しながら都市を発展させる方がよっぽど難しい。」
レオナ「模範的な回答だ。兄貴が聞いたら「レオナにもそう聞かせてやってくれ」って泣いて頼むだろう。」
カリム「レオナの兄ちゃんかあ。兄ちゃんは今、この国の代表なんだっけ?」
ロゼッタ「王様はレオナさんのお父様よ。だけど今は病で臥せっているの。」
レオナ「何年も前から、第一王子・ファレナがこの国を取り仕切っている」
カリム「レオナの兄ちゃんなら、ちゃんと挨拶しとかないとな。いつも楽しく遊んでます、って!」
ロゼッタ「ふふっ。」
レオナ「遊んだ覚えはねえぞ」
リリア「わしらも挨拶せんとな!なんか良い感じにいっておけばいいんじゃろ?」
ヴィル「レオナさんはとーっても真面目で優しくて頼もしい友人ですって伝えないとね」
グリム「オレ様の子分の子分だって伝えるんだゾ!」
レオナ「ロゼッタはともかく一介の観光客が会えるわけないだろ。兄貴は国政の最高責任者だぞ。悪いが俺も会いに行く気はない。恐れ多くて、お目にかかるのもはばかられるんでな。」
ヴィル「なあんだ、残念」
カリム「あ!迎えが来た。オレ、そろそろホテルに行かないといけない時間だ。」
リリア「何じゃ。カリムとはもうお別れか。つまらん。そうじゃ。お主の泊まるホテルを教えてくれぬか。夜にでも遊びに行こう」
レオナ「聞くまでもない。どうせ『サンセット・ヴィラホテル』だろう。」
カリム「えーっと・・・おっ、そうみたいだ!『サンセット・ヴィラホテル!!!(忘れるな)』ってジャミルにもらったメモに書いてある。なんでわかったんだ?」
ジャミル君…メモを残すほどカリム君のことが心配なのね
レオナ「国賓を宿泊させられるようなグレードの高いホテルは限られてるからな。だから、俺たちと同じホテルだ」
カリム「なーんだ。そうだったのか。よかった。一緒で嬉しいよ」
ヴィル「へえ。アンタ、ちゃんといいホテルを用意してくれていたのね」
カリム「それじゃ皆、またあとで会おうぜ!」
ロゼッタ「ええ。またね」
カリム君が去った後、リリアさんが元気よく言う
リリア「では、わしらは観光を始めるとするか」
ヴィル「そうね。せっかく夕焼けの草原に来たんだし」
ジャック「あ、暑い・・・・・」
ロゼッタ「ジャック君?」
レオナ「ずっと黙ってたかと思えば、また同じ感想か?そんなに暑いか?」
ジャック君の様子がおかしい‥‥
監督生「暑いです!」
レオナ「気のせいだ。ってことで我慢しろ。夕焼けの草原は縦に長いし、標高の高い山も多い。地域によって気候は全然違うが、暁光の都の平均気温は、学園よりも少し高いくらいだ。」
ジャック「そ、その割に…暑くないっすか…?あ、汗がドンドン…噴き出してくる・・・」
レオナ「まあ、確かに日差しは強い。その点は他の国とは違うな」
ヴィル「日焼け止めをしっかり塗っておいてよかったわ。」
リリア「わしもサンバイザーを被ってきた甲斐があるわい。他にもあらゆる対策をしてきたぞ!」
グリム「オレ様も、ずーっとほかの奴らの陰に入ってるから平気なんだゾ!」
リリア「おおっ。なかなか賢いではないか。わしもよくやる手じゃ」
ジャック「・・・・」
レオナ・ロゼッタ「「…ジャック?/…ジャック君?」」
私達の呼びかけに反応がない…汗があふれ出てくる…まさか!?
レオナ「おい、大丈夫か」
ジャック「だ…大丈夫っす…」
ロゼッタ「ウィンディーネ!ジャック君の体を冷やしてあげて!」
ウィンディーネ『わかったわ』
レオナ「嘘吐け!顔色がどんどん悪くなってる。さっさと日陰に入れ!」
ジャック「大丈夫・・・・大・・・」
ジャック君はふらついて‥‥倒れた
ロゼッタ「ジャック君!?」
ヴィル「い、いきなり倒れた…呼びかけても返事がないわ」
ロゼッタ「まずいわ…恐らく熱中症。ジャック君、衣服を緩めるわね」
監督生「手伝います」
ロゼッタ「ありがとう」
意識のないジャック君に呼びかけながら、熱中症の応急手当てをしていく
ウィンディーネ『この子、体温が異常に高いわよ』
ロゼッタ「できるだけ早く体を冷やしてあげて」
ウィンディーネ『ええ。わかっているわ』
私たちの会話を聞いた皆さんに焦りが出始めた。
リリア「こいつは一大事じゃぞ」
グリム「ふなーっ!オレ様、倒れたジャックの下敷きになっちまったんだゾ!」
ロゼッタ「・・・レオナさん」
レオナ「ああ。安静に寝かせられる場所を探すぞ」
???「お困りのようですね、レオナ様。ロゼッタ様」
その時、聞いたことのある声が聞こえた。
レオナ「!?テメエは・・・」
他の皆さんは誰かわかっていないので、首をかしげている。
グリム「誰だ、コイツ?」
レオナ「着いたぞ」
グリム「おー、ここが夕焼けの草原かあ!」
レオナ「ああ、王都・暁光の都…俺の故郷だ。
ようこそ、このようなむさ苦しいところへ」
ジャック「あ、暑い…」
ヴィル「確かに。輝石の国だけじゃなく、賢者の島と比べても気温が高いわね。空気が違うように感じるわ。」
カリム「明るくて、綺麗な街だな―!」
リリア「そうじゃな。それに、これほど町中に緑の多い大都市は珍しい」
レオナ「それは、この国のありがたーい信条のおかげだ。この国の奴らは”自然と共存”を何よりも大事にしている。獣人族の祖先である動物のため、動物の暮らす自然環境を保護したいんだと」
その時のレオナさんの声はとても不機嫌だった。
リリア「どうじゃ、久しぶりに里帰りした故郷は。なつかしくて心が躍るじゃろう?」
レオナ「逆だ。代わり映えしない景色にうんざりしてる。」
リリア「そうか?わしは夕焼けの草原に来るのは久しぶりじゃが、ずいぶんと様変わりしておるぞ。」
ロゼッタ「随分と前というといつ頃ですか?」
私は気になったので、リリアさんに質問した。
リリア「昔はこのように整備された都市ではなかった。高層建築物などなかったしな。」
レオナ「それは何十年前の話だ。親父が元気に執政をしてた頃には、もう都市の整備は始まってたはずだ。」
ヴィル「アタシも暁光の都には何回か来ているけど、いつも素敵なところだと感じているわ。」
レオナ「素敵なところ、ねえ…そりゃ「たまに」、この国に「遊びに来る」程度の奴にとってはそうだろうな」
レオナさんは「たまに」と「遊びに来る」を強調して言い放つ。
私もこの国の現状を知っているからこそ手に力が入ってしまう。
ヴィル「何?さっきから随分と含みのある言い方ね」
レオナ「カリム。お前の熱砂の国も暑くて、乾燥した国だったな。」
カリム「ああ。国のほとんどは砂漠だよ。でもオレが住んでた『絹の街』は、街中に運河があるから結構涼しいぜ。大昔は飲み水に困ってたみたいだけど、今は全然そんなことないし。」
レオナ「施政者が先進的な技術を積極的に取り入れて、住人の生活環境を発展させたおかげだろうな」
ロゼッタ「夕焼けの草原のほとんどは、サバンナで乾燥地帯。砂漠ではないけれど、水が貴重なのは同じよ。」
私が暗い顔をしているのがわかったのか、レオナさんはそっと私の頭を撫でた。
ロゼッタ「だけど、熱砂の国みたいにインフラの整備が進んでいないの。今も井戸水で生活している人もいる。」
レオナ「律儀なことに、住人が土地の環境に順応するかたちで生活しているんだ。全ては自然頼み。だから、雨期を願う雨乞いの祭りだなんて時代錯誤なもんが残ってやがる。この国にも豊富な地下資源がある。それを大規模に採掘すれば、もっと豊かになるはずだ。だが”自然との共存”を大事にしすぎて、都市開発をしようって考えに至らない。熱砂の国とは大違いだろう?」
ヴィル「開発できないわけじゃなく、意図的に開発を避けている…というわけね」
レオナ「ああ。」
リリア「ふうむ。わしは全てが悪いことばかりだとは思わんがのう。近代的なだけの街は世界にいくらでもある。一方的な開発など金をかければ簡単にできるからな。この街のように、自然を残しながら都市を発展させる方がよっぽど難しい。」
レオナ「模範的な回答だ。兄貴が聞いたら「レオナにもそう聞かせてやってくれ」って泣いて頼むだろう。」
カリム「レオナの兄ちゃんかあ。兄ちゃんは今、この国の代表なんだっけ?」
ロゼッタ「王様はレオナさんのお父様よ。だけど今は病で臥せっているの。」
レオナ「何年も前から、第一王子・ファレナがこの国を取り仕切っている」
カリム「レオナの兄ちゃんなら、ちゃんと挨拶しとかないとな。いつも楽しく遊んでます、って!」
ロゼッタ「ふふっ。」
レオナ「遊んだ覚えはねえぞ」
リリア「わしらも挨拶せんとな!なんか良い感じにいっておけばいいんじゃろ?」
ヴィル「レオナさんはとーっても真面目で優しくて頼もしい友人ですって伝えないとね」
グリム「オレ様の子分の子分だって伝えるんだゾ!」
レオナ「ロゼッタはともかく一介の観光客が会えるわけないだろ。兄貴は国政の最高責任者だぞ。悪いが俺も会いに行く気はない。恐れ多くて、お目にかかるのもはばかられるんでな。」
ヴィル「なあんだ、残念」
カリム「あ!迎えが来た。オレ、そろそろホテルに行かないといけない時間だ。」
リリア「何じゃ。カリムとはもうお別れか。つまらん。そうじゃ。お主の泊まるホテルを教えてくれぬか。夜にでも遊びに行こう」
レオナ「聞くまでもない。どうせ『サンセット・ヴィラホテル』だろう。」
カリム「えーっと・・・おっ、そうみたいだ!『サンセット・ヴィラホテル!!!(忘れるな)』ってジャミルにもらったメモに書いてある。なんでわかったんだ?」
ジャミル君…メモを残すほどカリム君のことが心配なのね
レオナ「国賓を宿泊させられるようなグレードの高いホテルは限られてるからな。だから、俺たちと同じホテルだ」
カリム「なーんだ。そうだったのか。よかった。一緒で嬉しいよ」
ヴィル「へえ。アンタ、ちゃんといいホテルを用意してくれていたのね」
カリム「それじゃ皆、またあとで会おうぜ!」
ロゼッタ「ええ。またね」
カリム君が去った後、リリアさんが元気よく言う
リリア「では、わしらは観光を始めるとするか」
ヴィル「そうね。せっかく夕焼けの草原に来たんだし」
ジャック「あ、暑い・・・・・」
ロゼッタ「ジャック君?」
レオナ「ずっと黙ってたかと思えば、また同じ感想か?そんなに暑いか?」
ジャック君の様子がおかしい‥‥
監督生「暑いです!」
レオナ「気のせいだ。ってことで我慢しろ。夕焼けの草原は縦に長いし、標高の高い山も多い。地域によって気候は全然違うが、暁光の都の平均気温は、学園よりも少し高いくらいだ。」
ジャック「そ、その割に…暑くないっすか…?あ、汗がドンドン…噴き出してくる・・・」
レオナ「まあ、確かに日差しは強い。その点は他の国とは違うな」
ヴィル「日焼け止めをしっかり塗っておいてよかったわ。」
リリア「わしもサンバイザーを被ってきた甲斐があるわい。他にもあらゆる対策をしてきたぞ!」
グリム「オレ様も、ずーっとほかの奴らの陰に入ってるから平気なんだゾ!」
リリア「おおっ。なかなか賢いではないか。わしもよくやる手じゃ」
ジャック「・・・・」
レオナ・ロゼッタ「「…ジャック?/…ジャック君?」」
私達の呼びかけに反応がない…汗があふれ出てくる…まさか!?
レオナ「おい、大丈夫か」
ジャック「だ…大丈夫っす…」
ロゼッタ「ウィンディーネ!ジャック君の体を冷やしてあげて!」
ウィンディーネ『わかったわ』
レオナ「嘘吐け!顔色がどんどん悪くなってる。さっさと日陰に入れ!」
ジャック「大丈夫・・・・大・・・」
ジャック君はふらついて‥‥倒れた
ロゼッタ「ジャック君!?」
ヴィル「い、いきなり倒れた…呼びかけても返事がないわ」
ロゼッタ「まずいわ…恐らく熱中症。ジャック君、衣服を緩めるわね」
監督生「手伝います」
ロゼッタ「ありがとう」
意識のないジャック君に呼びかけながら、熱中症の応急手当てをしていく
ウィンディーネ『この子、体温が異常に高いわよ』
ロゼッタ「できるだけ早く体を冷やしてあげて」
ウィンディーネ『ええ。わかっているわ』
私たちの会話を聞いた皆さんに焦りが出始めた。
リリア「こいつは一大事じゃぞ」
グリム「ふなーっ!オレ様、倒れたジャックの下敷きになっちまったんだゾ!」
ロゼッタ「・・・レオナさん」
レオナ「ああ。安静に寝かせられる場所を探すぞ」
???「お困りのようですね、レオナ様。ロゼッタ様」
その時、聞いたことのある声が聞こえた。
レオナ「!?テメエは・・・」
他の皆さんは誰かわかっていないので、首をかしげている。
グリム「誰だ、コイツ?」