グロリアスマスカレード~紅蓮の花と救いの鐘~

オーケストラがそこにでもいるかのような音楽が大講堂に響いた

マレウスの歌声は聞く者の耳を奪ってしまう

ロロ「これは…花の街に古くから伝わる歌ではないか!」

ステージを降りたロロが目を見開いていた

マレウスはこの日のために花の街の歌を練習していたのだ

…そこへヒールの音が響く

ロロはそれがすぐにロゼッタだと見極めた

そして、ロゼッタの衣装を目の当たりにする

ロロ「か、か…」

褒め言葉を言いそうで言わないロロ

ロゼッタ「?」

ロゼッタはロロに一瞬だけ顔を向けると、そのあとはずっとマレウスたちが歌うステージを見上げていた。

ロロ「っ…うぐっ…」

ロロは何とも言えない気持ちに頭を抱えた

ロロ「まったく君は…」

はあ、と呆れるロロだが、その耳は真っ赤に熟していた

ロロは壁に背を打ちつけ、腕を組んだ

ロロ「その…君は歌わないのかね?ステージには立たないのか?」

ロゼッタ「ええ。」

ロロ「どうやら目立ちたがらないようだな」

ふんっと嫌そうな音を鼻から出した
 
ロロ「けれど…それで本当にいいのか?」

ロロはロゼッタを見つめる

仮面の下からうっすらと見えるロゼッタの瞳を確認した。揺れている

目立つな、と闇の鏡と精霊に言われたロゼッタ

でも、本当はーー“みんなと歌いたい”

ロロはそんなロゼッタに告げ口をする

ロロ「マスカレード…仮面を付ければ、正体は誰にもわからない。もうないぞ?こんな夜…」

ロゼッタはロロの言葉に目を丸くする。

そして安心したようにクスリ、と微笑みステージへ足を動かした

既に歌は後半へやってきていた

マレウスの低音が響く。そしてアズールの麗しい歌声も…

そしてイデア、マレウス、アズールの全員のハモリがやってきた

「「「『僕の夢とともにーーーー』」」」

間に曲が入ったところでロゼッタは息を吸った

ロゼッタ「“鐘よーーー響けーーー”“僕の願いを運んで”」

ロゼッタの優しいソプラノの歌声が響く

マレウスたちは仮面の下で目を見開いた。会場の皆も騒然としていた。

「“今日も華やぐ街に 胸を踊らせてる”」

でもロゼッタは、無我夢中で歌っていた。マレウスから見たその横顔は楽しげだった。

イデアとアズールはそれにクスッと笑う

「「『“ああ いま 美しく咲いた 喜び 悲しみ 皆で歌おう』」」

ロロ「……」

ロロは楽しげに歌うロゼッタとマレウスたちを見上げた





ーー「ぼく魔法が大好き。なんでか知ってる?」


ーー「ぼくが魔法を使うと…お兄さまが、楽しそうにしてくれるから!」


ーー「もっともっと、一緒にいっぱい遊ぼうね」

ロロは弟が笑顔を向けてくれた時間に浸った

そして、「くだらん…本当に…」と呟いた








歌が終わるとみんなからたくさんの拍手をもらう

グリム「オイッ、オマエら!歌なんていつの間に練習してたんだ!?」

そこへ猛スピードでグリムがやってきた

ロゼッタの顔にくっついて、マレウスに肉球を向けている

マレウス「お前も交流会に参加するって事前に分かってたら、一緒に練習できたのにな」

デュースが「ロゼッタさんが息できないだろ!」と言ってすぐに外してくれた

アズール「まさか、ロゼッタさんも歌ってくれるとは思いませんでしたが」

そこへアズールがやってくる。「素敵な歌声でしたよ」とロゼッタに耳打ちした

イデア「ロゼッタ氏があんな歌、うまいなんて」

ほんとビックリ!とイデアは仰天していた

ロゼッタ「ふふっ。ありがとう。」
 
アズール「でも、練習時に私は歌わないとおっしゃっていたので・・・」

ルーク「トレビアン!!ロゼッタっっっ!!!」

ルークが大声を出した。イデアは「ひょえ!?」と驚いている
 
ルーク「ああ、なんて素敵な歌声だったんだ!踊ることも忘れて君の歌声をただ黙って聞いてしまいそうで危なかったよ!」

ルークは泣いているのが瞳が濡れていた

ぎゅー、とロゼッタを抱きしめる

エペル「はい!すんごかったです!」

エペルはコロン、と丸い顔で微笑んでいた

「お見事でした」とジャミルにも褒められる

ロゼッタ「ありがとう。皆さん」

その後の舞踏会も盛り上がりを見せ、ロゼッタは紅蓮の花のことを忘れるほど、楽しんだのだった。
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