ゴーストマリッジ

リドル君が下にいるゴーストさん達を食い止めてくれる間に、私達は階段を駆け上がる。
しかし、下や上からはゴーストさん達が湧いてくる。

エペル「ゴースト家臣の数がどんどん増えていく……!」

ルーク「あちらも本気ということなのだろう。なにせ500年待ち続けた結婚式だからね」

「でもこれでは…キリがない」

エース「……めーわくな話だよ、ほんっと!」

監督生「…こうして間も、捕まっている皆が駄弁ったり、爆笑してたりと思うと苛々してくるね」

グリム「子分…ブーケが潰れちまうんだゾ!!」

ユウがブーケを握りしめていると、グリム君に止められた。

ルーク「迷惑か……確かにそうだね。だがその熱意は、称賛に値すると思わないかい?」

エース「称賛~?そんな悠長なこと言ってる場合っすか!?」

ルーク「誰にでも譲れないものはある。
そのためなら手段を問わないという気持ちは私にはよくわかるよ

___きっと……」

ルーク先輩は一度立ち止まると、バサッとブーケを振った。
赤い花びらが舞上がり、ゴーストたちを消し飛ばしていく。

ルーク「私が、キミ達を守りたいと思うのと同じことさ」

いつもおおらかに笑って「メルシー!」とか言っているルークさん。
けど、今は何だか…怒っているような顔をしている。

ゴースト【うわあっ、弓兵のゴーストがやられた!】

ゴースト【気配を決して捕らえるチャンスを狙っていたのに……まさかこちらに気づいていたというのか!】

ルーク「もちろんさ、ムシュー。私から隠れられる者なんていないよ」


「‥お化けに気配とかあるの?」

監督生「存在そのものに気配があるのでしょうか…」

エース「マジレスしてる場合かよ!」

エース君にツッコマれていると、ルークさんは軽く此方を振り返った。

ルーク「……みんな、先に行っててくれるかな」

監督生「え、いやでも…」

エース「ウチの寮長みたいに強いからともかく、んなことできるわけ……」

エペル「みんな、行こう!」

エース「お前今度はずいぶんあっさりだな!?」

「3年生とは言えど、この数を相手に‥」

エペル「……みんな、よく見て。あの人の表情を」

「「表情?」」

エペル君に言われ、私達は立ち尽くすルークさんの表情を見る。

……ものすごい、笑顔だった。寒気がするほど

ルーク「ふふふ……。

ずっと気になってたんだよ!

どうやったらゴーストが狩ることができるんだろうってね」

狂喜的な笑顔だ。
まるで獲物を狙ったハンターの様な……。

ゾッとするそんな瞳は、今はゴーストさん達をとらえている。

ルーク「実体はないらしいけど、魔法を使えば凍るのかな?

それとも霧のようなものなのかい?瓶詰めにならできるかな」

ゴースト【び、瓶に詰める!?こいつ、言ってることが怖い!】

ルーク「ああ、未知の獲物を前にすると狩人の血が騒ぐよ……!」

ゴースト【ひぃっ。ち、近寄るなー!】

さっきまで追いかけていた側のゴーストさん達が、にこやかに笑いながら近づくルークさんから逃げている。

「……楽しそうね、ルークさん」

エース「オレ達のこと守りたいって建前でしょ。めちゃくちゃ楽しんでんじゃん」

エペル「そう。ルークサンなら大丈夫。あの人……悔しいけど、僕達よりずっと強いから」

グリム「強いかもしんねーけど、近寄りたくねーんだゾ」

エース「ルーク先輩って、ほんと変わってるわ……」

監督生「……て、呆れてないで進むよ!!」

ルーク「マダム・ロゼッタ、3人を頼んだよ。
私はゴースト達と、楽しくワルツでも踊ることにしよう」

「…あ、はい。どうぞ、ごゆっくり」

私達はルーク先輩に背を向け、階段を駆け上がり、廊下を突き抜ける。


グリム「…なぁ子分、ロゼッタ」

「聞いちゃダメよ、何も聞こえていない。あれはゴーストさんの悲鳴じゃないんだから」

監督生「ロゼッタさんの言うとおり、あれはゴーストの悲鳴じゃないから」

エース「言ってんじゃん…」

エペル「…ルークサン、本当に楽しそうだよね」

背後でルークさんの笑い声と、ゴーストさんの悲鳴が聞こえたが……無視だ。

ごめんなさいね、ゴーストさん
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