グロリアスマスカレード~紅蓮の花と救いの鐘~

ゴーンゴーン、と花の街に鐘の音が鳴り響く

マレウスが盛大に鳴らしたおかげで、紅蓮の花がみるみると弱っていき、枯れていった

それはいろんな人のもとの胸へ響く

だが、ロゼッタの胸には痛々しい棘が刺さった

マレウス「貴様ァアアアアアアアア!!!」

マレウスは怒鳴った。しかし、ロロに怒鳴ったのではない

ロゼッタにだ

二度目の雷がロゼッタを襲った

ウィンディーネ『(ロゼッタ!)』

ロゼッタ「(大丈夫・・・痛くないから)」

ウィンディーネ『(力を使った反動がもう出ている。…後から、何もなければいいのだけれど…)』

ギョッ、とイデアとアズールが仰天した
 
マレウス「よくもロゼッタを焼き殺したな…ッ!!」

マレウスは背中で息を吸っていた。物凄く怒っていた。

爪でロゼッタを引き裂こうとするほどに

マレウス「ロゼッタ…!っ…どうして…なぜ…」

マレウスは膝を崩し,嘆いた

どうやら…ロゼッタが捨てた仮初の体を本物の彼女と勘違いしていたようだ

それに気づいたロゼッタの正体を知っているイデアとアズールは「やめて!/やめてください!」とマレウスを抑えた

マレウス「後でお前を引き裂いてやるからな!!!」

だが、マレウスは顎に皺を寄せて怒って怒って怒りまくった

ロゼッタはそんなマレウスを見つめる

驚きも泣きも憎みもしなかった

マレウスさんは自分を大切に思ってくれているのだと、満足していた

ロゼッタはそっと意識を手放すのだった
 





ロゼッタが目を覚ましたときには鐘楼に紅蓮の花はもうどこにもなかった

それよりも…隣に…縄でグルングルン巻きにされたロロがいた

ロロ「起きたのか、化け物」

ロロは気持ち悪そうにロゼッタを見つめた

ロゼッタは体を起こす…が、ロゼッタ自身も縄で拘束されていた

ロゼッタは目を見開く

ロゼッタ氏!とイデアが駆け寄ってきてくれる
 
イデア「ごめんね。マレウス氏がロゼッタ氏のことを、こうしてろって…あの人、ぜんっぜんロゼッタ氏に気づかないんだもん…」

イデアはあわあわしながら説明してくれた

ロゼッタ「大丈夫です。」









アズール「マレウスさん!聞いてますか!?この人は無害で…」

アズールに説得されているマレウス。しかし、聞こうとしなかった

よっぼど恨んでいるのだろう

マレウス「さあ、鐘楼を降りるぞ」

声のトーンが低い。横顔でもわかる。マレウスは怒っている

ロロはアズールに、ロゼッタはイデアに連れてかれた






ーー鐘楼内部

アズール「大人しくしていてくださいね」

ロロ「抵抗しないと言っているのに」

アズールに連れられるロロは落ち着いた表情だった

イデア「ロゼッタ氏…ゆっくりね。転ばないようにね」

こっちはこっちでめちゃくちゃイデアに心配されていた

大丈夫ですよ。?と声をかけても「手の自由が効かなかったら人間、バランスが取れなくなるんですぞ!」ともっと心配されてしまう

よっぽど、ロゼッタに転ばれるのが嫌なようだ

マレウス「さて、ここにいるはずだが…」

マレウスは一息つくと辺りを見渡した

ロロ「いる?君たちの仲間かね」

ロロが反応した

「そういうわけではないのですが…」とアズールはマレウスを見つめた
アズール「やっぱり気になっていたんですね」

「おーい!」

部屋の向こうから明るい声が聞こえた

ロゼッタもその声を聞いてマレウスと同じく喜んだ

「みんなー!無事だったんだね!」

ガーゴイルだ。ガーゴイルは笑顔でやってきた

ロロ「鐘楼のガーゴイルではないか。誰を探しているのかと思えば、彼に会いに来たのか?いったいなぜ」

マレウスの珍行動に、ロロは不思議がる

イデアはガーゴイルがマレウスにとって“推し”だということを明かした

アズールからは『ガーゴイル研究会』のことが話される

「助けてくれてありがとう。マレウス…それに…ええっと…そっちの燃えてる髪の人と、眼鏡の人…」

ガーゴイルはお礼をするため、皆の名前を呼ぼうとしたが、2人の名前がわからない

2人は丁寧に「イデアです」「アズールです」と答えた

「そっか。それじゃあ…マレ!それにイデ!そして、アズ!
それから…ロゼッタ!」

ガーゴイルは気軽にロゼッタの名前まで呼んでくれた

ロゼッタはニコッと優しく微笑む
 
マレウス「……え…」

そんなロゼッタの名前をガーゴイルから聞いたマレウスは瞳孔が縮めた

まるで最初にしゃべるガーゴイルを見た時のように…

マレウス「ロゼッタ…だと…?」

マレウスはその名前を呟いた。ロロも驚きつつ

その少女…もといロゼッタを見つめた

マレウス「え…」
 
マレウスはまだ驚いていて、その言葉しか口から漏らさなかった

「ロゼッタったらまだ魔法なんかかけてるの?もういいじゃない。」

ガーゴイルはニコニコしながらそう言う

事態が終息したのだから、もう魔法を解いてもかまわない・・・

ロゼッタは自身にかけたユニーク魔法を解除した。

アズール「マレウスさん、最後の最後まで気づかなかったようですね」

アズールがやれやれと呟いた。

他の皆はロゼッタに気付けたものの、マレウスはなかなか気づいてくれなかったのだ

マレウスも、ロロも,その素顔に驚く

マレウス「ロゼッタ…なのか…?」

目を見開いているマレウスにロゼッタはふわっとやさしく微笑んだ

ロゼッタ「マレウスさん」

その声と笑みでマレウスはようやく彼女が本物だと気づく

マレウス「…!」

マレウスはロゼッタにしがみついた

マレウスは目を伏せ、ロゼッタを抱き締めて抱き締めて…ずっと抱きしめ続けた。もう二度と失いたくないと言わんばかりに…

ーーと思ったらパッと手を離す

マレウス「なぜ、もっとはやくに正体をばらさなかった!?地下水路のときに既にロゼッタはいたのだろう!」

ムスッ、とするほど怒るべきところがあった

マレウス「お前が傷つけられたから怒ったのに…僕が逆に傷つけてしまったじゃないか。僕が悪者になってしまう」

腕を組んでムッ、とするマレウス

そんなマレウスに必死に首をふるロゼッタ

ロゼッタ「マレウスさんは何も悪くありません。私がユニーク魔法を使ったから…」
 
しかし、マレウスはピリピリとした空気を放つ
 
マレウス「言い訳はじっくり今、ここで聞いてやろう。僕が使うなと命令したユニーク魔法を使った件も」

マレウスはニコッ、と笑った。その笑みからは圧が感じられる

ロゼッタ「…ごめんなさい」

マレウスの怒りの声に少しだけ震え、謝るロゼッタ。

「でも…まあ、それよりも…」とマレウスの声を聞いて、その震えは消え失せた

マレウス「怪我はないか?痛いところは?そういえば僕を庇って腕を負傷しただろう?それに僕の雷も受けたのだ。見せてみろ。すぐに完治させてやる」

マレウスはペタペタとロゼッタに触れ、怪我はないかと探し始めた

ロゼッタ「大丈夫ですよ。怪我はありません。」









一方、ロロはロゼッタがもうひとりいたことには驚いていた

ロロ「化け物だ…自分をもうひとり作り出していたなんて…それに平然と自分を焼き殺した…」

呆然とロゼッタの横顔を見つめる

マレウスに微笑んでいるロゼッタの姿を見れば、胸が痛がった

でもこれも全部…ロゼッタのせいだと従った

アズール「なっ!?ロゼッタさんを化け物って…!?あなたはロゼッタさんのユニーク魔法の素晴らしさを知らないのだから!(それに、お姉さまの生い立ちを知らないから、化け物と言えるんですよ。)」

アズールはロロを睨んだ

大好きなロゼッタを馬鹿にされて、怒っていた

イデア「さっ、マレウス氏。ロゼッタ氏の縄、ほどいてくんない?」

マレウス「……これはこれで悪くないと思うぞ?」

イデア「はっ!?Sか!?マレウス氏、無自覚Sの体質か!?」

マレウスのびっくり発言にびっくりするイデア

「可哀想だから縄、ほどくからね!」とロゼッタから縄を外した

ロゼッタ「ありがとうございます、イデアさん」

イデア「あーもう、こんなにキツく縛ってさ…よし…」







イデア「おかえり、ロゼッタ氏」

イデアのやわらかな表情に

ロゼッタ「ただいま」

ロゼッタは微笑むのだった









ガーゴイルはロロのことについて語った

「お前さんたちのおかげで、おいらたちは元に戻ったし…それにロロが、取り返しのつかないことになる前に、止めることができた」

ガーゴイルはロロを見つめる。ロロは「私…?」と驚いていた

「なあ、ロロ。おいらたち、いつでもここにいるからさ。悩みがあるなら話し相手になるよ」

ガーゴイルの優しさに「ふむ…石相手に話し掛けるのかね。馬鹿馬鹿しい」とロロは冷たくあしらう

が、マレウスに睨まれ、「まあ、考えておこう」と呟く

「本当に本当にありがとうな、マレ」

マレウス「ああ、いいんだ。お前たちがそんなに喜んでくれるなら“マレ”も嬉しいぞ」

「「「マレ!?」」」

マレウスのぶっちゃけ発言にみんなが驚く

「今自分のことマレって言いました?嬉しすぎてキャラ崩壊起こしてますぞ!」とイデア

「私は…こんなおかしな男に負けたのか…」とロロ

マレウスはよっぽど嬉しかったのだろう

マレウス「さて、名残惜しいが今は他の者たちの無事を確かめねば…」
 
マレウスたちは鐘楼を出ることにした。マレウスはガーゴイルに手をふる

ロゼッタも頭を下げ、下に降りようとした…

「あ、ロゼッタ。ちょいちょい」

ロゼッタ「?」

が、ロゼッタはガーゴイルに呼び止められる。

そして、こしょこしょと喋り始めた

マレウスが不思議がる

再びロゼッタがマレウスの隣を歩けば、「何の話をしていたんだ?」と聞いた

ロゼッタは内緒ですと人差し指を唇に当てた
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