グロリアスマスカレード~紅蓮の花と救いの鐘~
ロゼッタたちはノーブルベルカレッジの南門へ向かった。あの地下水路からはこの門が距離的に近かった
セベク「マレウス様、ノーブルベルカレッジへの入り口が見えました!」
セベクのハキハキした声が聞こえた
しかし、シルバーが立ち止まる
シルバー「なっ……これは…!」
みんなも立ち止まった。ロゼッタはその光景に表情を歪めた。
ロゼッタ「(・・・ひどい)」
デュース「ひどい…どこもかしこも紅蓮の花だらけだ」
セベク「なんと無残な姿に…」
デュースは驚き、セベクは頭を抱えた
今朝、すごい!と感動していた光景は見るも無残な姿になっていた
中央にある馬に乗った『正しき判事』の像でさえ、火の花に塗れている
アズールがロゼッタの背中に話しかける
アズール「…まっすぐ向かうより、回り道をしたほうが良さそうですよ」
アズールは増殖した花たちを見て、そう囁いた。
イデアは床全体がダメージの的になっていることに無理ゲーだと叫ぶ
マレウス「ふむ…では先刻のシュラウドの助言の通り、なにか道具を使うか?」
マレウスの考えにセベクは「さすがマレウス様!」と称賛していた
近くにいたラギーは「いやぁー」とマレウスの意見に物申す
ラギー「オレも壁に立ててかけてある掃除用の箒で、飛んで行ったらどうかって思ったんスけど…」
ラギーは紅蓮の花を見下ろした
ラギー「それだと、魔力を感じた花に狙われちまうんじゃないかなーって」
ラギーの意見に対し、アズールは1秒考えた
アズール「飛行術ですか。…正直に言って、是非“飛ぶ”以外の方法を検討したいところです」
イデアもそれに賛同した。どうやら飛行術の授業をサボっていたらしい。
ロゼッタは初耳だった
「ロゼッタ氏、今日の飛行術楽しかった?」なんて会話をしたのがつい先日だったからだ
ルーク「ああ。紅蓮の花の持つあのしなやかなツルをご覧。自在に収縮し、動きも速い。まるで鞭のようだ」
ルークは持ち前の観察眼でツルの動きをチェック
よっぽどの飛行術の腕ではないと通り抜けるのは困難らしい。シルバーもかわしきれない、と断念
エペル「それじゃあ、どうしたらいいんだろう…」
エペルが考え込む
マレウス「今見えている範囲の花だけならば、僕の魔力でもって一掃することも可能だ」
マレウスはみんなで進むためならやむを得ない、と魔力を使いそうになる
アズールが慌てて止めに入った
アズール「この戦いは、チェスのようなものです。僕たちのうち、何人が倒れようと、最後に誰かが救いの鐘を鳴らせれば、こちらの勝ち」
アズールはマレウスを見つめた
アズール「序盤でわざわざキングを敵地に進めて、ポーンをとる人がいますか?」
ポーン…?
デュースとエペル、はキョトン、としてしまった
デュースが「すみません。チェスに例えられてもよくわかんないです」と片言で謝る
イデア「つまりさ、アズール氏が言いたかったのは…捨てる駒と進める駒を選べって事だよ」
イデアが簡単にまとめてくれた
けれどその言葉の意味は残虐なものだった
セベク「捨てる、駒…!?」
セベクが唖然とする
そんなセベクにイデアがまたわかりやすく説明した
イデア「ここで誰かを囮にして、他は力を温存したまま先に進むってこと」
シルバーは「だ、だが囮となった者は無事では済まないのではないか?」とみんながみんな気になることを慌てて聞いた
イデアはすんなり答える
イデア「勝利条件“鐘を鳴らす”のために必要な犠牲ってことですな」
犠牲はつきもの…みんなは囮になることに押し黙った
シルバーがすぐに手をあげたが、ここで名乗りをあげる者がいた
リドル「待ってくれ。ボクが囮となって、飛行術で紅蓮の花を引き付ける。その間にみんなは先に進んでくれ」
リドルだ
リドル「囮となる者は、他の者が鐘を鳴らすまで、この花との戦いに耐えうる人間でなければならない。それには相当の魔力と実力が必要だ」と言い切った
それは自分以外、当てはまならないと
飛行術の手伝いをしているロゼッタは彼の飛行術の成績を知っている。彼ならピッタリだということも…けれど…嫌だった…
リドル「そこの君、箒はこの近くにあるんだろうね?」
リドルはロゼッタに聞いた
ロゼッタはジルフが探してくれた箒を渡す。
リドル「ありがとう」
リドルはそれを受け取った。だが・・・
リドル「…あ、あの…離してくれ」
ロゼッタは箒から手を離そうとしない。ロゼッタは押し黙り、下を向いて呟いた
リドル「キミ、いい加減にーー」
ロゼッタ「リドル君…」
「!」
ロゼッタはそう呟いた。リドルは驚く。
なぜ、ノーブルベルカレッジの生徒が自分のことを知っているのだろう
交流会の名簿でも読んだのだろうか…他の者なら思うだろう
しかし、その呼ばれ方にリドルが反応したのは、そういうわけではなかった
リドル「…なぜ、今…」
リドルはきゅっ、と唇を噛み締めた。泣きそうになっている。
リドルはフルフルと震えながらロゼッタに問いかけた
リドル「そういえば…キミの名前を聞いていなかったね…」
ロゼッタはリドルの霞む声に頷いた
ロゼッタ「私の名前は…エリーゼよ」
ロロに会うまで自分の正体を明かせないと考えたロゼッタは、昔の偽名を名乗った。リドルなら気付いてくれると思ったからだ。
リドル「そうか…エリーゼ…(無事だったのだね、ロゼッタ)」
リドルはロゼッタを真正面から見つめた
リドル「ボクはかならず、キミのもとは戻って帰るから。だから…箒を渡してくれ」
リドルはふっ、と微笑んだ。ロゼッタはゆっくり…指を箒から離した
そして、リドルの頬に触れた。
もう喋らなくても気づいてくれるのだから
リドル「うん…気をつけるね」
リドルは優しげな目でそう返事をした
そして、メインストリートの広さを考え、もうひとり捨てる駒を用意することになったそれに名乗りをあげたのはデュースだったが、エースと飛行術でやらかしたため、却下される
「それなら僕が、リドルサンと一緒に残ります」
エペルがやわらかな声でそう言う。デュースが「エペル!?」と驚いた。
ラギーはエペルの主張ににっ、と笑う
ラギー「エペルくんはマジフト部でも期待のルーキーッスよ。飛行術に関しては部長のレオナさんのお墨付き…ここは任せてもいいんじゃないッスか?」
ラギーに期待のルーキーと言われ、エペルは嬉しそうだった
アズール「わかりました。では、ここはリドルさんとエペルさんにお願いしましょう」
アズールは2人に任せることにした
エペル「僕にも箒、ください」
エペルはロゼッタの前に歩み寄った。無邪気に笑っている。
ロゼッタは箒をきゅっと握り、困り眉を作った
ロゼッタ「(エペル君ならできると思うけれど‥‥もし、できなかったら…)」
エペル「?どうしたんですか?」
エペルは不思議がる
ロゼッタはルークがエペルを信じるようにロゼッタも決意することにした
ロゼッタはエペルに箒を渡すと、首につけていたネックレスを取り外し、エペルの首にかけた。
ロゼッタ「(どうか…彼を守ってください)」
エペル「え、な、なんでこれを…」
エペルは驚いた。これはヴィルがロゼッタにと、エペルに渡すよう頼んだものだからだ
エペルが驚きを隠せない中、ロゼッタは背伸びをし、エペルの頭にチュッ、とキスをした
ロゼッタ「(どうか、無事に役目を果たせますように…)」
リドル「いい後輩を持ったものだね」
リドルがそう隣で呟いた。
ロゼッタはふわふわなエペルの髪から唇を離すと、エペルに微笑みかけた
エペル「ま、待ってけろ…このキスする人知ってる…」
エペルはキスされたおでこを抑え、ロゼッタを見つめた
そして「まっ…」と瞳を輝かせる
エペル「ロゼッタサンにキスしてもらえた!めっさ嬉しい!!」
エペルはテカッ、と笑った。目の前の彼女ががロゼッタだと気づいたのだ。
エペル「ロゼッタサンのキスはお守りだ!俺、頑張ります!!」
エペルはめっちゃはしゃいだ。前もこんな感じだった。
ルークに訳を聞けば、「マジフト大会のあの日からエペル君にとって君は憧れの存在でね」とそう聞いた
ロゼッタもそんなエペルに目を細めた
エペル「無事を祈っててくれてるんですね!大丈夫ですよ!俺、ロゼッタサンのキスで無敵なんで!」
エペルはロゼッタに手をふり、リドルの隣で箒にまたがった
「それじゃあ」と2人が飛んでいく
ルーク「2人とも、どうか無事で…!また笑顔で会おう」
ルークがそうお別れの挨拶をする。ロゼッタも隣に並び、リドルとエペルから「出動」の合図がやってくるのを待った
セベク「マレウス様、ノーブルベルカレッジへの入り口が見えました!」
セベクのハキハキした声が聞こえた
しかし、シルバーが立ち止まる
シルバー「なっ……これは…!」
みんなも立ち止まった。ロゼッタはその光景に表情を歪めた。
ロゼッタ「(・・・ひどい)」
デュース「ひどい…どこもかしこも紅蓮の花だらけだ」
セベク「なんと無残な姿に…」
デュースは驚き、セベクは頭を抱えた
今朝、すごい!と感動していた光景は見るも無残な姿になっていた
中央にある馬に乗った『正しき判事』の像でさえ、火の花に塗れている
アズールがロゼッタの背中に話しかける
アズール「…まっすぐ向かうより、回り道をしたほうが良さそうですよ」
アズールは増殖した花たちを見て、そう囁いた。
イデアは床全体がダメージの的になっていることに無理ゲーだと叫ぶ
マレウス「ふむ…では先刻のシュラウドの助言の通り、なにか道具を使うか?」
マレウスの考えにセベクは「さすがマレウス様!」と称賛していた
近くにいたラギーは「いやぁー」とマレウスの意見に物申す
ラギー「オレも壁に立ててかけてある掃除用の箒で、飛んで行ったらどうかって思ったんスけど…」
ラギーは紅蓮の花を見下ろした
ラギー「それだと、魔力を感じた花に狙われちまうんじゃないかなーって」
ラギーの意見に対し、アズールは1秒考えた
アズール「飛行術ですか。…正直に言って、是非“飛ぶ”以外の方法を検討したいところです」
イデアもそれに賛同した。どうやら飛行術の授業をサボっていたらしい。
ロゼッタは初耳だった
「ロゼッタ氏、今日の飛行術楽しかった?」なんて会話をしたのがつい先日だったからだ
ルーク「ああ。紅蓮の花の持つあのしなやかなツルをご覧。自在に収縮し、動きも速い。まるで鞭のようだ」
ルークは持ち前の観察眼でツルの動きをチェック
よっぽどの飛行術の腕ではないと通り抜けるのは困難らしい。シルバーもかわしきれない、と断念
エペル「それじゃあ、どうしたらいいんだろう…」
エペルが考え込む
マレウス「今見えている範囲の花だけならば、僕の魔力でもって一掃することも可能だ」
マレウスはみんなで進むためならやむを得ない、と魔力を使いそうになる
アズールが慌てて止めに入った
アズール「この戦いは、チェスのようなものです。僕たちのうち、何人が倒れようと、最後に誰かが救いの鐘を鳴らせれば、こちらの勝ち」
アズールはマレウスを見つめた
アズール「序盤でわざわざキングを敵地に進めて、ポーンをとる人がいますか?」
ポーン…?
デュースとエペル、はキョトン、としてしまった
デュースが「すみません。チェスに例えられてもよくわかんないです」と片言で謝る
イデア「つまりさ、アズール氏が言いたかったのは…捨てる駒と進める駒を選べって事だよ」
イデアが簡単にまとめてくれた
けれどその言葉の意味は残虐なものだった
セベク「捨てる、駒…!?」
セベクが唖然とする
そんなセベクにイデアがまたわかりやすく説明した
イデア「ここで誰かを囮にして、他は力を温存したまま先に進むってこと」
シルバーは「だ、だが囮となった者は無事では済まないのではないか?」とみんながみんな気になることを慌てて聞いた
イデアはすんなり答える
イデア「勝利条件“鐘を鳴らす”のために必要な犠牲ってことですな」
犠牲はつきもの…みんなは囮になることに押し黙った
シルバーがすぐに手をあげたが、ここで名乗りをあげる者がいた
リドル「待ってくれ。ボクが囮となって、飛行術で紅蓮の花を引き付ける。その間にみんなは先に進んでくれ」
リドルだ
リドル「囮となる者は、他の者が鐘を鳴らすまで、この花との戦いに耐えうる人間でなければならない。それには相当の魔力と実力が必要だ」と言い切った
それは自分以外、当てはまならないと
飛行術の手伝いをしているロゼッタは彼の飛行術の成績を知っている。彼ならピッタリだということも…けれど…嫌だった…
リドル「そこの君、箒はこの近くにあるんだろうね?」
リドルはロゼッタに聞いた
ロゼッタはジルフが探してくれた箒を渡す。
リドル「ありがとう」
リドルはそれを受け取った。だが・・・
リドル「…あ、あの…離してくれ」
ロゼッタは箒から手を離そうとしない。ロゼッタは押し黙り、下を向いて呟いた
リドル「キミ、いい加減にーー」
ロゼッタ「リドル君…」
「!」
ロゼッタはそう呟いた。リドルは驚く。
なぜ、ノーブルベルカレッジの生徒が自分のことを知っているのだろう
交流会の名簿でも読んだのだろうか…他の者なら思うだろう
しかし、その呼ばれ方にリドルが反応したのは、そういうわけではなかった
リドル「…なぜ、今…」
リドルはきゅっ、と唇を噛み締めた。泣きそうになっている。
リドルはフルフルと震えながらロゼッタに問いかけた
リドル「そういえば…キミの名前を聞いていなかったね…」
ロゼッタはリドルの霞む声に頷いた
ロゼッタ「私の名前は…エリーゼよ」
ロロに会うまで自分の正体を明かせないと考えたロゼッタは、昔の偽名を名乗った。リドルなら気付いてくれると思ったからだ。
リドル「そうか…エリーゼ…(無事だったのだね、ロゼッタ)」
リドルはロゼッタを真正面から見つめた
リドル「ボクはかならず、キミのもとは戻って帰るから。だから…箒を渡してくれ」
リドルはふっ、と微笑んだ。ロゼッタはゆっくり…指を箒から離した
そして、リドルの頬に触れた。
もう喋らなくても気づいてくれるのだから
リドル「うん…気をつけるね」
リドルは優しげな目でそう返事をした
そして、メインストリートの広さを考え、もうひとり捨てる駒を用意することになったそれに名乗りをあげたのはデュースだったが、エースと飛行術でやらかしたため、却下される
「それなら僕が、リドルサンと一緒に残ります」
エペルがやわらかな声でそう言う。デュースが「エペル!?」と驚いた。
ラギーはエペルの主張ににっ、と笑う
ラギー「エペルくんはマジフト部でも期待のルーキーッスよ。飛行術に関しては部長のレオナさんのお墨付き…ここは任せてもいいんじゃないッスか?」
ラギーに期待のルーキーと言われ、エペルは嬉しそうだった
アズール「わかりました。では、ここはリドルさんとエペルさんにお願いしましょう」
アズールは2人に任せることにした
エペル「僕にも箒、ください」
エペルはロゼッタの前に歩み寄った。無邪気に笑っている。
ロゼッタは箒をきゅっと握り、困り眉を作った
ロゼッタ「(エペル君ならできると思うけれど‥‥もし、できなかったら…)」
エペル「?どうしたんですか?」
エペルは不思議がる
ロゼッタはルークがエペルを信じるようにロゼッタも決意することにした
ロゼッタはエペルに箒を渡すと、首につけていたネックレスを取り外し、エペルの首にかけた。
ロゼッタ「(どうか…彼を守ってください)」
エペル「え、な、なんでこれを…」
エペルは驚いた。これはヴィルがロゼッタにと、エペルに渡すよう頼んだものだからだ
エペルが驚きを隠せない中、ロゼッタは背伸びをし、エペルの頭にチュッ、とキスをした
ロゼッタ「(どうか、無事に役目を果たせますように…)」
リドル「いい後輩を持ったものだね」
リドルがそう隣で呟いた。
ロゼッタはふわふわなエペルの髪から唇を離すと、エペルに微笑みかけた
エペル「ま、待ってけろ…このキスする人知ってる…」
エペルはキスされたおでこを抑え、ロゼッタを見つめた
そして「まっ…」と瞳を輝かせる
エペル「ロゼッタサンにキスしてもらえた!めっさ嬉しい!!」
エペルはテカッ、と笑った。目の前の彼女ががロゼッタだと気づいたのだ。
エペル「ロゼッタサンのキスはお守りだ!俺、頑張ります!!」
エペルはめっちゃはしゃいだ。前もこんな感じだった。
ルークに訳を聞けば、「マジフト大会のあの日からエペル君にとって君は憧れの存在でね」とそう聞いた
ロゼッタもそんなエペルに目を細めた
エペル「無事を祈っててくれてるんですね!大丈夫ですよ!俺、ロゼッタサンのキスで無敵なんで!」
エペルはロゼッタに手をふり、リドルの隣で箒にまたがった
「それじゃあ」と2人が飛んでいく
ルーク「2人とも、どうか無事で…!また笑顔で会おう」
ルークがそうお別れの挨拶をする。ロゼッタも隣に並び、リドルとエペルから「出動」の合図がやってくるのを待った