グロリアスマスカレード~紅蓮の花と救いの鐘~

アズール「紅蓮の花を駆除するためには、大量の魔力を注いで枯らすのが最も手っ取り早い。しかしさっき話したとおり、僕たちの魔力だけでは足りません。それなら、他で補えば良いんです」

アズールは戦意を表した。けれど、

マレウス「他?だがこの街で無事な魔法士はほとんどいない。それに僕たち以上の魔力を持つ者など、そう多くはない。何百人もの魔法士を集めなければならないぞ」

マレウスは首を傾げていた

「…驚いた」とアズールの声が漏れる

そしてイデアが禁句を…

イデア「ママ、マレウス氏ってさ…確かに魔力はすごいんだろうけど…その分、魔力isパワーっていうか…実はめっちゃくちゃ脳筋だったりする?」

すぐにセベクが怒鳴った

「貴様!!今若様を馬鹿にしたのか!!!!」

セベクの大声にイデアがきょどる

イデア「いい、いやだってそうでしょ!普通自分たちじゃどうにもならないってなったら、ど、道具を使わない?不便を克服するために道具を使って環境を変えるのが、知的生命体の証だと思うんですけど?」

マレウス「道具…?」

マレウスが気になる単語を復唱する

イデア「便利なのがあるじゃん…。街中に魔力を行き渡らせるっていう、とんでもない魔法道具がさ」

イデアはさあさあ、とマレウスの解答を待つ

そしてイデアのたくさんのヒントで、マレウスはひとつの答えを思い立った

その時の表情と言えば、驚きで包まれていた

マレウス「救いの鐘か!」

イデア「正解!」

イデア「あのさ…拙者たちが大講堂で花に襲われたとき、ロロ氏がなんて言ったか覚えてる?」

イデアはロロの真似をする
 
イデア「“4度目の鐘が鳴ったことで街に魔力が満ちた!”」

キリッ!からのドヤァ…と効果音までつける

ロゼッタ「(イデアさん…物真似、上手ね)」

イデア「普段鐘が撞かれるのは1日3回って決まってる。だから…ロロ氏は4度目の鐘で普段よりも魔力を多く供給して花を急速に成長させたわけだよね」

シルバーはイデアの説明で大講堂で花が大量発生したことを思い出した。あれも4度目の鐘の影響だ

なら、もっと鳴らせばいいだけ

マレウスはフッ、と笑った

マレウス「今以上に街に魔力が溢れ…花はそれに耐えきれず、枯れてしまうというわけか」
 
成長のきっかけとなった鐘が、花を枯らす原因にもなる

マレウスは踏ん切りがついたようにノーブルベルカレッジを見上げた

マレウス「よし。では今すぐ救いの鐘の元へ行き、あの鐘を鳴らそう」

トレイン「ーーいいや、ならん。お前たちはここで待っていなさい」

さきほどまで疼くまっていたトレインがロゼッタの手を使い、震えながらも立ち上がった

ロゼッタはトレインの体を支える

「えっ」と生徒たちが声を漏らした

トレイン「私がノーブルベルカレッジにある鐘楼を登り、救いの鐘を鳴らしてくる」

トレインは自分がやる、と言い出した

紅蓮の花の駆除がすんだここは安全だと、教師として生徒を守ろうとしていた

トレインの強がりにロゼッタはこっそり微笑んだ

そして先生をゆっくりその場に座らせた

トレイン「!」

「先生…腰が痛いのなら、無理はしないほうがいいです。ここで待っていてください」

トレインが「だが…!」とロゼッタの腕を掴んだ

けれどロゼッタはその手を包み、先生の手を返した

「平気です。彼らを信じてください。彼らは強いんですよ?」

ロゼッタは強い目でトレインを捉えた

トレイン「はあ…わかった。お前たちを信じよう」

トレインの言葉に生徒たちは喜んだ
 
トレイン「それと…」

トレインはロゼッタの肩に手を置いた

トレイン「いいか?お前は人のためだからと言って、無理をしすぎるのが短所だ。精霊の力を使いほぼ無限に魔法を使うことができるといっても、むやみにその力を使ってはならない。お前は世界にひとつしかいないのだから…」

トレインは自分の思いを必死に伝えた

ロゼッタは「わかりました」と頷く





そんなトレインとロゼッタの会話を不思議に思う生徒がちらほら。「交流会でいつの間にか仲良くなったのかなー」とやはりロゼッタだとは思っていないらしい

「いつか気づいてくれたら…」

ロゼッタは小さな声で呟いた









トレイン先生は生徒たちを見送ったあと、街にいる魔法士を救助しに向かうらしい。生徒たちに心配されているが、トレインは首をふる

トレイン「心配はいらん。階段は登れずとも、花をおびき寄せて始末するぐらいのことは出来る」

けれどやはり心配なため、トレインはユウとグリムは連れて行くことになった

しかしグリムは「えーどうしよっかな~」と意地悪な態度だ

そんなグリムにデュースが詰め寄る

デュース「おいグリム。ユウに良いところをとられて良いのか?トレイン先生と一緒に街を救ったら、優しき鐘撞き男みたいな英雄として褒められるかもしれないぞ」

デュースの言葉にピクピクとグリムの耳が動く

デュース「そうだよな?ユウ」

ユウは街の人の真似をして「きゃー!グリム様すごーい!」とグリムの鼻を伸ばした

グリム「にゃっはー!そんな本当のこと言われたら照れるんだゾ」

グリムの喜び方にとあるカラスを思い出すロゼッタ

クスッと思わず綻んでしまった

グリムはトレインとユウとともに花の街を救う班に回った
 
他の皆はというと…

ラギー「やれやれ。救いの鐘を目指すのも、街に残るのもどっちも大変ってことか。そんならオレも腹くくって、みんなと救いの鐘を目指すッス」

ラギーは困難に遭遇したかのように成功への道を決めた

リドルが「どうして鐘楼へ向かう班を選んだんだい?」と詳しい理由をラギー聞いた

ラギー「盾…じゃなくて人数多い方を選んだほうが生き残れる確率高そうなんで」

そんな考え方をジャミルやイデアが評価する

ジャミル「ふっ。期待を裏切らない答えだ」

イデアはあの長い階段はうんざりだけれど、ラギーと同じ考えのようで優秀な魔法士が多い鐘撞き班を選んだ

「俺もです」とジャミルも挙手する

ジャミル「ここで1人だけ退けば、後で誰になんて言われるかわかったもんじゃない」

「それに…」とジャミルはロロを思い出した

ジャミル「あんなうさんくさい男に馬鹿にされたままじゃ、ナイトレイブンカレッジの沽券に関わる」

うさんくさい…とロゼッタはロロのことに反応してしまった。ジャミルだけは最初からロロのあの真面目さには裏があると睨んでいた

自分がそうしていたようにーー

「あっ、今、人のこと言えないってお思いになったでしょう…ーー」

ジャミルは仮面の生徒を見て、「ロゼッタ様」と呼びそうになった。口を隠す

ジャミル「いや、なんでもありません…」

そう言いつつも、何か違和感を感じていたのか、ずっとロゼッタを見つめていた
 
ジャミル「まさか、な…」

それから、デュース、エペル、リドル、ルークと賛同する声が響いた

ロゼッタ「では、私は…」

ロゼッタがどちらかを選ぶかなんて彼らはどうでもよかった。
既にロゼッタが選択する方向は彼らによって決められていたからだ

リドル「もちろん、鐘撞き班だよ」

リドルがビシッ、と言い放った

リドル「君はノーブルベルカレッジの生徒。あの敷地のことは十分理解しているはずだ。近道を案内してほしい」

鐘撞き班に決まった

生徒ではないので、まったく近道などわからないが

トレインも「ここは仕方ない。気をつけて行くんだぞ」と言えざるを得ない

トレイン「みんな、よく聞きなさい。フランムは花を増やすため、救いの鐘を利用した。ならばその脅威についても気付いていないはずがない」

トレインの推測は正しい

ロロはノーブルベルカレッジの生徒会長にもなった方だ。それに生徒たちから隠れて、絶滅したはずの花も生き返らせている

トレイン「第三者に救いの鐘が鳴らされることのないよう、今頃鐘楼の最上階で鐘を守っているだろう。彼もまた優秀な魔法士だ。くれぐれも、くれぐれも気をつけて行くのだ」

トレインは「くれぐれも」と2回言った

生徒たちが心配でたまらないのだ…ある意味で

イデア「とっくの昔に絶滅した、遺物の花にすがるような懐古厨の魔法士に、負けるわけがないですし」

アズール「私たちを見くびらないでください」

イデアはニヤッと笑い、アズールはジーとトレインを見つめる

アズール「それよりも今のうちから、無事に戻った際の褒賞についてご検討を」

そんなアズールの隣でマレウスは不気味な笑みを作った

マレウス「あの男の企みは全て、僕が阻止してやる。ふふ…さて、どうしてやろうか…フランム…再び相まみえるそのときを、楽しみに待っているがいい」

マレウスのいかにも悪役な笑い声に、セベクだけは「素敵です!」と瞳を輝かせていた

トレインは花の街の探索の際のときのように「本当に大丈夫だろうか…」と、とーても不安がっていた
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