王子様と秘密のお嬢様 番外編
その日は、夕焼けの草原の国民にとって、近年で最も華やかな1日となった。
数年前、王の長男が生まれたときもお祭りムードだったが、今回は王弟殿下の婚約ということ、一度引き離された二人が再び結ばれたということで数日前から国全体が期待と希望で溢れていた。
花が舞い、お祝いの歓声が上がる中、婚約式を終えて国民の前に姿を現したロゼッタとレオナはとても幸せそうな笑顔で手を振っていた。
レオナ・キングスカラーは最近政務に携わり、視察や何やらと国民の前に出る機会が増え、女性人ファンが急増したともっぱらの噂だった。
公務に携わるようになったのは、ロゼッタのためなのだが、この話はまた別の機会に‥‥
滅多に見ることのできないその微笑みがただ一人に向けている羨ましさと、それでも愛おしむようなその微笑みを見られただけで満足な心と。ファンの心は複雑だ。ただひたすら「ありがとう…」と拝む女性があちこちで目撃された。
お相手の女性は、美しい所作と屈託のない笑顔で好感が持てる。
と、そこにチェカ王子が抱っこをせがみ、ロゼッタがチェカ王子を持ち上げる。抱っこされたまま国民に手を振り、ロゼッタと何やら会話をしたと思ったら、チュ、とロゼッタの頬にキスを贈った。
なんとも微笑ましい光景に皆が笑顔になり、両側にいた王も王妃も楽しそうだ。
ただ一人、レオナ・キングスカラーだけ真顔になるやチェカ王子の首根っこを掴んでロゼッタから引き剥がし、王へと押し付けた。何やら言っているようだが音声までは拾えていない。
コメンテーターは『甥っ子にもヤキモチを焼くとは、愛されてますね~』などと笑っていた。
式の翌日は、前日の晩餐会よりももっと気安いお披露目を兼ねた舞踏会が催される。
晩餐会は国賓の招待客のみだが、お披露目パーティーでは前日の招待客の家族やロゼッタやレオナの友人なども参加できる。様々な人が2人の登場を今か今かと待っていた。
しかし会場に続く控えの間では、令嬢達が面白くなさそうな顔で集まっていた。
2人の控え室はすぐそこ、短い廊下の先で、この控えの間を通って会場に入るはずだ。会場に入ってしまえばいつ挨拶できるかわからないので、
一番にお祝い…と、側室候補として自分を売り込むつもりで集まっていた。
バチバチと火花を散らす彼女達の後ろから「失礼、退いてくださる?」と声がかかり、全員がハッと振り返った。上等なスーツに身を包み、華のような笑顔で女性達を見ていたのは、
「ヴィル·シェーンハイト…!様!」
世界的スーパーモデル、ヴィル·シェーンハイト。今やテレビでも雑誌でも彼を見ない日は無い有名人だ。
しかもそのあとには、熱砂の国の大富豪の息子、カリム・アルアジームの姿が。
「早くロゼッタの姿が見たいな。なあ、ジャミル」
「もう少し落ち着いてくれ、カリム」
ヴィルとカリムが会話を交わした後、ロゼッタが現れた。
そのドレスがシンプルすぎたことに、令嬢たちが陰口をたたく。
その令嬢たちを見たロゼッタは顔を暗くした。
そんな様子を見たヴィルはこう話しかけた。
ヴィル「今日のドレス、似合ってるわね。アタシとクルーウェル先生が仕立てただけあるわ。」
カリム「俺のとーちゃんが最高級の生地だって言ってたぜ。似合ってる。」
ジャミル「お似合いでございますよ、ロゼッタ様。」
そして、ヴィルがこう付け加えた。
「このドレスに似合うネックレスを準備したの。つけない?」
どうすればよいのかわからず、ぼーっとするロゼッタ。その様子を見ったレオナは、こういった。
「つけてこい。そして、アイツらを見返してやれ」
もと来た道をUターンしていく一行を、令嬢達は呆然と見送った。
これ以上は会場に居られない。そう悟った令嬢たちはそそくさと会場を後にする。そんな令嬢たちを気にする者は居なかった。
監督生SIDE
『一目見たその時から貴女の虜だ』
『からかわないでください』
『からかってなどいない!俺の想いを受け入れてくれ…!』
舞台の上で学校の制服を来た男とメイドのような服を着た女が手を取り合ってラララと歌い出す。恋に戸惑い、揺れ動く感情を乗せて音を紡ぐ。
ロゼッタさんとレオナ先輩の婚約式から早1週間。今日は巷で人気のお芝居を観劇にきました。
広い劇場のボックス席で劇を見下ろすロゼッタさんとレオナ先輩。心なしかレオナ先輩の表情はひきつっている。私は、ロゼッタさんの友人枠でロゼッタさんたちの近くのボックス席にいた。
どうしてレオナ先輩がこんな顔になったかというと・・・・
この劇は、ロゼッタさんとレオナ先輩との馴れ初めの物語…だからだ。
でも、仕掛人はレオナ先輩。どうやらレオナ先輩が婚約を発表した時、『学園に通われている王弟殿下を誑かして王室に潜り込んだ女』という噂が立ったらしく、このままではダメだと「噂には噂で対抗する」と言ってこの劇を上演することになったそう。そんなことロゼッタさんがするはずないと学園のみんなが起こっていたことを今でも思い出す。
名前は出さないがとある名門校で起こった、王子と身分を捨てた女の子が再び出会い、恋に落ちるラブストーリー。
重要なのは『ノンフィクションを基にしたフィクション作品』であるという売り込み文句。劇は大ヒットだった。名前は出してないが、タイミング的にどうみても『レオナ殿下とその婚約者』の物語で、真実も混ざっているということから劇の内容と『レオナ殿下の恋バナ』とを結びつける…いや、錯覚させることに成功した。おかげで民衆からの支持もバッチリ、
ロゼッタさんもすんなり受け入れてもらえた…。
舞台の上では、元の姿に戻ったヒロインがベッド上で目を覚ました。
殿下がヒロインを優しく抱きしめ、語り掛ける。
『俺は兄の…王の補佐をする』
『貴女に俺の故郷の良いところをたくさん見せたい!』
『愛しているんだ!俺が卒業したら結婚してほしい』
『殿下…!』
場内からテンションの高い、息を飲む音が聞こえた。
王子様からのプロポーズ。憧れるのも頷ける。こんなことをロゼッタさんも言われたのだろう。プロポーズの言葉は秘密といって教えてくれないが‥‥
『殿下…。お申し出はありがたいのですが…私は貴族の身分を捨てた身です。卑しい身分の者を王室に入れるなど…周りが許さないでしょう…』
『きちんとしたご令嬢とご結婚なさってください』
『私のことは学園での思い出として時々思い出してくだされば…それで良いのです』
なんとヒロイン、レオナ先輩との身分差に引け目を感じて身を引いて走り去った。
『殿下が好き…!でも彼は故郷で大切にされる人。彼の幸せは国民に愛されること。私が居ては迷惑になる…!』
殿下の今後を思い、殿下を好きだと言いながらも身を引くヒロインに、会場からすすり泣く声が微かに聞こえる。心情を歌い上げるのは若手女優。
ロゼッタさんの同じような清楚系美人。こうしてヒロインが殿下のためを思って身を引くことができる健気な子とすることで、ロゼッタさん(レオナ先輩の嫁)も健気な人なのだと思わせることができる。
『待ってくれ!俺の幸せは貴女なしでは成り立たない!』
『殿下…!』
追ってきた殿下はヒロインを抱きしめる。
『俺が嫌いになったか?』
『いいえ…嫌いになどなりません…!』
『なら何も問題はない』
『貴方の立場が悪くなります…!』
『貴女と共にあれないこと以上に悪いことなどない』
『貴女が王族が嫌だと言うのなら俺は王子という身分を捨てよう。』
『俺と結婚すると言ってくれ!その唇で、俺と一生一緒に生きると誓ってくれ!』
熱烈なプロポーズ。この辺が『 レオナ殿下が口説き落として乞い願ってやっと結婚にこぎつけた』とかいうことになるわけだ…なるほど。
レオナ先輩の役を演じるのは今人気の若手俳優さん。
チラリと隣のレオナ先輩を見る。ロゼッタさんとお話をしていた。
レオナ「あれくらい情熱的な方が良かったか?」
ロゼッタ「ふふっ。今から、してくださいますか?」
レオナ「お望みとあらば」
お互いフフフと笑いあっている。お似合いだ。
舞台ではヒロインを保護して育てている養父が登場していた。プロポーズを知り、怒り出す。
『なりません!殿下は本来、雲の上の存在。王室に入れば貴女が苦労するのは目に見えています。この話はお断ります。殿下、お帰りください』
『お父様…!』
『愛だけではどうにもならないこともあるんですよ。愛しい我が子。殿下が諦めるまで出てきてはなりません』
『必ず幸せにする!どうか認めてくれ!!』
養父がヒロインを塔に閉じ込める。ここからは完全に捏造です。学園長がロゼッタさんの意見を否定することなどありえないから。
劇の流れはザックリ言うと、この後、龍に変化した養父を倒して結ばれる。認めてほしければ俺を倒していけ!!というよくある(?)試練だ。
倒された養父は娘の手を取り、「幸せになりなさい…」と祝福し、雲間から光が射し込み、あれよあれよと婚約式。
人々が楽しく歌い踊り、ハッピーエンド。
いやー、良い舞台でした
カーテンコールはスタンディングオベーションだ。うわ…すごい。
主役の二人が中央でお辞儀をし、顔を見合せてついと手を上へ…ロゼッタさんとレオナ先輩の方に伸ばして微笑んだ。
釣られて何だ何だと観客も此方を見上げて…
「えっ!レオナ殿下だ!」
「うっそ!!?本物!?」
「隣はロゼッタ様…!?」
ロゼッタさんが困ったようにレオナ先輩を伺うと、ニヤリと唇の端を上げた。レオナ先輩が、ス…と手を観客の方へ伸ばすと途端にざわめきが静まり、観客がレオナ先輩へと注目した。
「『俺と結婚すると言ってくれ!その唇で、俺と一生一緒に生きると誓ってくれ!』」
これ!舞台の台詞!!
マイクなしで声を会場に響かせたレオナ先輩が、芝居がかった仕草で、客席に向けていた手をロゼッタさんへと伸ばす。
ロゼッタさんは驚いた顔をした後、レオナ先輩に優しい笑みを浮かべて、レオナ先輩の手を取る
「よろしくお願いします」
その瞬間会場が割れんばかりの歓声に包まれた。
翌日の新聞には、二人のお忍び観劇の記事が載り、ますます劇はヒットしたことをここに記しておく。
余談だが、しばらく巷では『俺と結婚すると言ってくれ!その唇で、俺と一生一緒に生きると誓ってくれ!』とプロポーズし『よろしくお願いします』とお返事するのが流行ったそうだ。
数年前、王の長男が生まれたときもお祭りムードだったが、今回は王弟殿下の婚約ということ、一度引き離された二人が再び結ばれたということで数日前から国全体が期待と希望で溢れていた。
花が舞い、お祝いの歓声が上がる中、婚約式を終えて国民の前に姿を現したロゼッタとレオナはとても幸せそうな笑顔で手を振っていた。
レオナ・キングスカラーは最近政務に携わり、視察や何やらと国民の前に出る機会が増え、女性人ファンが急増したともっぱらの噂だった。
公務に携わるようになったのは、ロゼッタのためなのだが、この話はまた別の機会に‥‥
滅多に見ることのできないその微笑みがただ一人に向けている羨ましさと、それでも愛おしむようなその微笑みを見られただけで満足な心と。ファンの心は複雑だ。ただひたすら「ありがとう…」と拝む女性があちこちで目撃された。
お相手の女性は、美しい所作と屈託のない笑顔で好感が持てる。
と、そこにチェカ王子が抱っこをせがみ、ロゼッタがチェカ王子を持ち上げる。抱っこされたまま国民に手を振り、ロゼッタと何やら会話をしたと思ったら、チュ、とロゼッタの頬にキスを贈った。
なんとも微笑ましい光景に皆が笑顔になり、両側にいた王も王妃も楽しそうだ。
ただ一人、レオナ・キングスカラーだけ真顔になるやチェカ王子の首根っこを掴んでロゼッタから引き剥がし、王へと押し付けた。何やら言っているようだが音声までは拾えていない。
コメンテーターは『甥っ子にもヤキモチを焼くとは、愛されてますね~』などと笑っていた。
式の翌日は、前日の晩餐会よりももっと気安いお披露目を兼ねた舞踏会が催される。
晩餐会は国賓の招待客のみだが、お披露目パーティーでは前日の招待客の家族やロゼッタやレオナの友人なども参加できる。様々な人が2人の登場を今か今かと待っていた。
しかし会場に続く控えの間では、令嬢達が面白くなさそうな顔で集まっていた。
2人の控え室はすぐそこ、短い廊下の先で、この控えの間を通って会場に入るはずだ。会場に入ってしまえばいつ挨拶できるかわからないので、
一番にお祝い…と、側室候補として自分を売り込むつもりで集まっていた。
バチバチと火花を散らす彼女達の後ろから「失礼、退いてくださる?」と声がかかり、全員がハッと振り返った。上等なスーツに身を包み、華のような笑顔で女性達を見ていたのは、
「ヴィル·シェーンハイト…!様!」
世界的スーパーモデル、ヴィル·シェーンハイト。今やテレビでも雑誌でも彼を見ない日は無い有名人だ。
しかもそのあとには、熱砂の国の大富豪の息子、カリム・アルアジームの姿が。
「早くロゼッタの姿が見たいな。なあ、ジャミル」
「もう少し落ち着いてくれ、カリム」
ヴィルとカリムが会話を交わした後、ロゼッタが現れた。
そのドレスがシンプルすぎたことに、令嬢たちが陰口をたたく。
その令嬢たちを見たロゼッタは顔を暗くした。
そんな様子を見たヴィルはこう話しかけた。
ヴィル「今日のドレス、似合ってるわね。アタシとクルーウェル先生が仕立てただけあるわ。」
カリム「俺のとーちゃんが最高級の生地だって言ってたぜ。似合ってる。」
ジャミル「お似合いでございますよ、ロゼッタ様。」
そして、ヴィルがこう付け加えた。
「このドレスに似合うネックレスを準備したの。つけない?」
どうすればよいのかわからず、ぼーっとするロゼッタ。その様子を見ったレオナは、こういった。
「つけてこい。そして、アイツらを見返してやれ」
もと来た道をUターンしていく一行を、令嬢達は呆然と見送った。
これ以上は会場に居られない。そう悟った令嬢たちはそそくさと会場を後にする。そんな令嬢たちを気にする者は居なかった。
監督生SIDE
『一目見たその時から貴女の虜だ』
『からかわないでください』
『からかってなどいない!俺の想いを受け入れてくれ…!』
舞台の上で学校の制服を来た男とメイドのような服を着た女が手を取り合ってラララと歌い出す。恋に戸惑い、揺れ動く感情を乗せて音を紡ぐ。
ロゼッタさんとレオナ先輩の婚約式から早1週間。今日は巷で人気のお芝居を観劇にきました。
広い劇場のボックス席で劇を見下ろすロゼッタさんとレオナ先輩。心なしかレオナ先輩の表情はひきつっている。私は、ロゼッタさんの友人枠でロゼッタさんたちの近くのボックス席にいた。
どうしてレオナ先輩がこんな顔になったかというと・・・・
この劇は、ロゼッタさんとレオナ先輩との馴れ初めの物語…だからだ。
でも、仕掛人はレオナ先輩。どうやらレオナ先輩が婚約を発表した時、『学園に通われている王弟殿下を誑かして王室に潜り込んだ女』という噂が立ったらしく、このままではダメだと「噂には噂で対抗する」と言ってこの劇を上演することになったそう。そんなことロゼッタさんがするはずないと学園のみんなが起こっていたことを今でも思い出す。
名前は出さないがとある名門校で起こった、王子と身分を捨てた女の子が再び出会い、恋に落ちるラブストーリー。
重要なのは『ノンフィクションを基にしたフィクション作品』であるという売り込み文句。劇は大ヒットだった。名前は出してないが、タイミング的にどうみても『レオナ殿下とその婚約者』の物語で、真実も混ざっているということから劇の内容と『レオナ殿下の恋バナ』とを結びつける…いや、錯覚させることに成功した。おかげで民衆からの支持もバッチリ、
ロゼッタさんもすんなり受け入れてもらえた…。
舞台の上では、元の姿に戻ったヒロインがベッド上で目を覚ました。
殿下がヒロインを優しく抱きしめ、語り掛ける。
『俺は兄の…王の補佐をする』
『貴女に俺の故郷の良いところをたくさん見せたい!』
『愛しているんだ!俺が卒業したら結婚してほしい』
『殿下…!』
場内からテンションの高い、息を飲む音が聞こえた。
王子様からのプロポーズ。憧れるのも頷ける。こんなことをロゼッタさんも言われたのだろう。プロポーズの言葉は秘密といって教えてくれないが‥‥
『殿下…。お申し出はありがたいのですが…私は貴族の身分を捨てた身です。卑しい身分の者を王室に入れるなど…周りが許さないでしょう…』
『きちんとしたご令嬢とご結婚なさってください』
『私のことは学園での思い出として時々思い出してくだされば…それで良いのです』
なんとヒロイン、レオナ先輩との身分差に引け目を感じて身を引いて走り去った。
『殿下が好き…!でも彼は故郷で大切にされる人。彼の幸せは国民に愛されること。私が居ては迷惑になる…!』
殿下の今後を思い、殿下を好きだと言いながらも身を引くヒロインに、会場からすすり泣く声が微かに聞こえる。心情を歌い上げるのは若手女優。
ロゼッタさんの同じような清楚系美人。こうしてヒロインが殿下のためを思って身を引くことができる健気な子とすることで、ロゼッタさん(レオナ先輩の嫁)も健気な人なのだと思わせることができる。
『待ってくれ!俺の幸せは貴女なしでは成り立たない!』
『殿下…!』
追ってきた殿下はヒロインを抱きしめる。
『俺が嫌いになったか?』
『いいえ…嫌いになどなりません…!』
『なら何も問題はない』
『貴方の立場が悪くなります…!』
『貴女と共にあれないこと以上に悪いことなどない』
『貴女が王族が嫌だと言うのなら俺は王子という身分を捨てよう。』
『俺と結婚すると言ってくれ!その唇で、俺と一生一緒に生きると誓ってくれ!』
熱烈なプロポーズ。この辺が『 レオナ殿下が口説き落として乞い願ってやっと結婚にこぎつけた』とかいうことになるわけだ…なるほど。
レオナ先輩の役を演じるのは今人気の若手俳優さん。
チラリと隣のレオナ先輩を見る。ロゼッタさんとお話をしていた。
レオナ「あれくらい情熱的な方が良かったか?」
ロゼッタ「ふふっ。今から、してくださいますか?」
レオナ「お望みとあらば」
お互いフフフと笑いあっている。お似合いだ。
舞台ではヒロインを保護して育てている養父が登場していた。プロポーズを知り、怒り出す。
『なりません!殿下は本来、雲の上の存在。王室に入れば貴女が苦労するのは目に見えています。この話はお断ります。殿下、お帰りください』
『お父様…!』
『愛だけではどうにもならないこともあるんですよ。愛しい我が子。殿下が諦めるまで出てきてはなりません』
『必ず幸せにする!どうか認めてくれ!!』
養父がヒロインを塔に閉じ込める。ここからは完全に捏造です。学園長がロゼッタさんの意見を否定することなどありえないから。
劇の流れはザックリ言うと、この後、龍に変化した養父を倒して結ばれる。認めてほしければ俺を倒していけ!!というよくある(?)試練だ。
倒された養父は娘の手を取り、「幸せになりなさい…」と祝福し、雲間から光が射し込み、あれよあれよと婚約式。
人々が楽しく歌い踊り、ハッピーエンド。
いやー、良い舞台でした
カーテンコールはスタンディングオベーションだ。うわ…すごい。
主役の二人が中央でお辞儀をし、顔を見合せてついと手を上へ…ロゼッタさんとレオナ先輩の方に伸ばして微笑んだ。
釣られて何だ何だと観客も此方を見上げて…
「えっ!レオナ殿下だ!」
「うっそ!!?本物!?」
「隣はロゼッタ様…!?」
ロゼッタさんが困ったようにレオナ先輩を伺うと、ニヤリと唇の端を上げた。レオナ先輩が、ス…と手を観客の方へ伸ばすと途端にざわめきが静まり、観客がレオナ先輩へと注目した。
「『俺と結婚すると言ってくれ!その唇で、俺と一生一緒に生きると誓ってくれ!』」
これ!舞台の台詞!!
マイクなしで声を会場に響かせたレオナ先輩が、芝居がかった仕草で、客席に向けていた手をロゼッタさんへと伸ばす。
ロゼッタさんは驚いた顔をした後、レオナ先輩に優しい笑みを浮かべて、レオナ先輩の手を取る
「よろしくお願いします」
その瞬間会場が割れんばかりの歓声に包まれた。
翌日の新聞には、二人のお忍び観劇の記事が載り、ますます劇はヒットしたことをここに記しておく。
余談だが、しばらく巷では『俺と結婚すると言ってくれ!その唇で、俺と一生一緒に生きると誓ってくれ!』とプロポーズし『よろしくお願いします』とお返事するのが流行ったそうだ。