熱砂の策謀家
エリーゼの額に触れ、フゥと息を吐くシュナ。
シュナ【“エリーゼ、そっち側へ行ってはならぬ。影を吐き出すのじゃ”】
**
「!」
声がした、シュナの声。
さっきまで夢の中で見た大きな森にいた筈・・急に視界が暗転して、
また目が覚めると……暗い闇に私はいた。
…宴の終わり、急に心臓が痛くなって、吐血して・・・・・そこから意識がない。ともかく、歩き出さないと……。
身体が重く感じる。
夢の森では軽く感じたのに__ハッと自身のお腹を見ていると、誰かが乗りかかっていた。
子供だ。
銀髪に、光がない蒼い眼をした………あ、…小さい頃の私。
ポタポタッと幼い私が流す涙が私の頬に落ちる。
__【どうして…そこに居続けるの?】
また、この私は泣いている。
「…‥どうして、泣いているの?」
過去の私は、目を見開き、蒼い瞳でこちらを見ている。
過去の私は目に光がない、隈も酷いし、顔色悪いし、何より痩せこけている。私って、こんな風だった……のかな?
__お母様とお父様は帰ってこない
__だからルシファー家の悪行を我慢して……ずっと1人でいたのに__
__どうして……どうして、貴方は……私は__
とても生き辛そうだ。
__なんで、゛今”の私は……‥‥‥なんで___
「………教えて貰ったからよ、ルシファー家の人達の言葉が間違いだって」
__間違いなんかじゃない!!__
暗い空間に過去の私の声が反響する。
__だって、それが間違っていたら……__
__今まで我慢してきたわたしは……__
「…過去の私の判断が間違っていたのか…それは分からないし、答えられないわ。他人から見たら、間違いだと思うかもしれない」
ジャミル君やカリム君の問題のように…一般論で間違いだと指摘するのは間違っている気がする。まぁ、お義父様には怒鳴ったんだけど…。
そっと手を伸ばし、過去の私の涙を拭う。
どんなに拭っても、またポロポロと落ちてくる。
これは本当に私?…‥いや、私がなりたかった私なのかもしれない。
一人でいろと言われて、誰にも相談できなくて、
関わったら関わったで怒られて、
泣く事も出来なくて__そんな私の欲望なのかもしれない。
なんとか上体を起こして、ポロポロと泣いている過去の私の頭を撫で、抱きしめる。
__1人でいるって、言ってよ__
__お願いだから、1人の私に戻って__
__じゃないと……”今“の私が消えちゃう__
ポンポンと背中を優しく叩いて、過去の私の言葉を聞く。
可哀想だし、これは私の欲望なんだし、頷いてあげたいけど…。
「ごめんなさいね、それは無理なの」
__なんで…何で…?__
「一人になろうとしても、放っておいてくれない人達が側にいるからよ」
心配してくれている彼らがいるから、私は“昔”に戻る訳にはいかない。
__わたしはいらない子なの、だから___
__だから、皆は……私を...___
泣いて縋る過去の私……その背中に黒い影が見えた気がした。
私はぎゅっと過去の私を抱きしめる。
「…1人でいろと言われて、
悲しかったし、苦しかったし、ルシファー家の人たちを恨んだことだってある………けどね、それは全部 “私”なの。全部、必要なの。
これは‟いらなく”なんかない……全部、全部、私の心だから。
貴方だって、私の一部、何も怖がらなくていいのよ」
強張っていた過去の私の体が私に寄り掛かってきた。
「……だから…影は私から出ていって」
私の過去に張り付いた、影がスッと離れた。
***
シュナ【…!】
エリーゼの額に触っていた手を離れさせ、どこからか杖を取り出した。
シュナ【流石、我が娘。すべきことをわかっている】
杖を一振りすると、エリーゼの首に巻かれていた包帯が切れる。
ジャミル「お、おい!」
シュナ【出てくるわよ】
シュナがそっと首にある噛み痕を触れる。
その時、首の痕から何か“黒い蛇”が飛び出してきた。
その蛇は覗き込んでいたジャミルの方へ向かったが、その直前にシュナが蛇を掴む。
カリム「へ、蛇!?」
監督生「どうして蛇がエリーゼさんの首から出てくるんですか!?」
ジャミル「‥こ、この蛇」
シュナ【灰色の空間で見た蛇と同じ…じゃろ?やはり、エリーゼの中にいたんじゃな】
メリッサ『居心地悪くて出てきたんでしょ』
シュナ【追い出されたが正しいのかもしれんな】
フラフラと手の中で暴れる黒い蛇を見て笑うシュナと、ゲェという顔をするメリッサ。
グリム「あ!エリーゼの顔、青くなくなったゾ!」
デュース「!ほ、本当だ…息遣いも落ち着いてる」
シュナ【そのまま寝ていれば、2日位で目が覚める筈じゃ。さて…】
手元で暴れる黒い蛇に目を向け、ギューッと握りしめるシュナ。
もう片手で握る杖で、地面をトンと叩く。
すると、シュナの足元から白い光がかかれた魔法陣が一瞬で現れる。
アズール「!?こ、こんな一瞬で!?」
シュナ【入っちゃ駄目よ、怪我じゃすまないから】
メリッサ『手を貸しましょうか?』
シュナ【あなたの手を借りるまでもないわ。小物だもの】
蛇から手を離した途端、黒い蛇が逃げ出そうとするが、魔法陣により弾かれ、陣の外へ行けないようになる。
そして、その蛇に向かって杖の先につく魔法石らしき石を向ける。
シュナ【“災禍を払え ”】
シュナが詠唱を唱え終わると途端に苦しみだす蛇。
そしてシュナがもう一度杖を地面にトンと叩く
___バシャッと音を立てて、黒い蛇が消えさった。
シュナ【…ふぅ、もう近付いていいわよ】
メリッサ『相変わらず、魔力がすごいのね』
シュナ【まあね。エリーゼは柔らかいベッドの上で寝かせた方がいいわ。ここに部屋は無いの?】
シュナに言われ、ハッとしたカリムが慌てて寮生に部屋を用意させる。
そして、空き部屋にエリーゼを寝かせ、談話室に戻る一同。
監督生「‥……あ、あの。エリーゼさんを助けてくれて……あ、ありがとうございます」
デュース「そ、その…かなり失礼な扱いを」
シュナ【まぁ、突然現れたヤツを警戒しない奴の方がおかしいからのぉ。
自己紹介をおろそかにしたわっちも悪いし】
メリッサ『彼女を知らないと言っているけど…この学園の生徒であるならば、彼女の事を知っている筈』
メリッサの言葉に皆、ん?という顔を浮かべる。
それとは対照的にフフッと笑うシュナ。
エース「いや…知らないんだけど」
デュース「この学園の生徒なら…?」
メリッサ『名前が面倒なのよね』
シュナ【名前はないかもしれないけど、呼び方を知ってるはずじゃ】
カリム「呼び方?」
ジャミル「このシュナ…さんの、か?」
シュナ【”さん”付けしたくなかったら別によい。
そうじゃな…教科書には”種族の始祖”と書いてあるかのぉ】
メリッサ『【銀髪の女】とか【碧眼の主】じゃなかった?』
シュナ【そう堅苦しい呼び名は嫌いじゃ。】
グリム「何だ~いっぱいあるんだゾ!……ん?どうした、お前等?」
グリムが感心しているが、周囲の反応はそれぞれ、目を見開き、シュナを食い入るように見ている。
アズール「……ま、まさか……【全知全能の神】とも名称がつけられる……シュナ・ユーピテル!?」
シュナ【ほぉ、教材に名前まで載っておったか。まぁ、堅苦しくて…いつもシュナとだけ名乗っておるが】
「「「えぇえ!!?」」」
グリム「ふな!?な、何だよ、いきなり…」
エース「お前、バカ‼‼最後のトレイン先生の授業で散々教えられただろ!?」
デュース「種族間の戦争をただ1人で止めた…そ、その人の名前だよ!」
グリム「え…えぇええ!?こいつが!?」
監督生「本当にいたなんて・・・」
エースやデュースに言われ、グリムも叫び出す。
シュナ【戦争…そういえばそんな冒険したっけ~昔のことだし忘れてた】
エース「い、いやいや!!何百年前の話だと思ってんの!?」
ジェイド「…正確な記録はなくとも…100年は過ぎていますよ」
シュナ【私はエリーゼによって造られた。・・・エリーゼが呼んでくれないときに、過去に行けるかな~って考えたら、本当に過去に行けて驚いちゃった。それで帰ってきたら偉人扱いになっててびっくりよ】
ハハハと笑うシュナと対照的に愕然としている周囲。
カリム「お、俺でも知ってるぞ…その名前は」
ジャミル「馬鹿、知ってて当然だろ!て、事は待て…エリーゼは、その娘?」
その事実に気付いて、また声を上げる一同。
シュナ【証拠があればよかったんじゃが…あ、王国から貰った勲章見る?】
教科書でしか見たことないような勲章を見せられ、声にならない叫びをあげる、ジャミルとアズール。
アズール「い、いいです!もういいです!!」
ジャミル「し、信じます!信じましたから!!」
シュナ【そう?じゃあいっか】
と、雑に勲章をしまう。
「お、王国の勲章が…」と声を出すジャミルとアズール。
フロイド「ハハハッ、マジ凄ぇー、何で若ぇの?」
ジェイド「フロイド…」
エース「この状況においても、笑えるの凄ぇ…」
年齢と対照的にまだ30代程のシュナの見た目に笑うフロイドと、そんなフロイドを見て、焦る周囲。
シュナ【わっちのことは後から説明するとして……まず、あの子に何があったかを説明してくれない?】
__…
シュナ【ハハハッ!!本当に鉄薔薇の腕輪を壊したなんて!そりゃ、血を吐いて当然よ、ハハハ!】
メリッサ『笑い事じゃない!!』
オーバーブロットまでの流れを説明受け、先ほどからずっと笑うシュナ。
そんなシュナに怒るメリッサ。
シュナ【ま、いい教訓になったんじゃない?加護を受けしもの・・・こういう事はよくある】
グリム「よくあっちゃ困るんだゾ!」
シュナ【結果的に無事だったからいいの】
エース「本当にエリーゼさんの母親なの?そんでもって、全知全能の神なわけ?」
フロイド「こう見たら、ただのオバさんなんだよねぇ」
シュナ【聞こえておるぞ、坊主共。まあ…後でクロウリーに確認とればいいから。それより・・・あの子が起きる前にやるべき事をやりましょう。
バイパー君とアジームの子、鉄薔薇の腕輪があった場所に案内してくれない?」
カリム「物置の事か?何で?あ、エリーゼを助けてくれたお礼か!ならいっぱい持って行ってくれ!」
シュナ【おー、圧倒的な光属性…わっちはただ、鉄薔薇の腕輪のような呪術関係の魔法道具を回収したいの】
ジャミル「呪術関係の?」
シュナ【わっちは今、それを回収するために、世界各地を回っておる。
普通の…それも学生の手元に置くべきでない物も当然ある。そなたみたいに、それを悪用されたらこちらも困るからのぉ】
ジャミル「うっ…それを言われると」
エリーゼに腕輪を差し出したジャミルは言葉を詰まらせる。
シュナ【アジーム本家の方は回収を済ませたんだが…息子の方に持たせるとは思っとらんかった。丁度いいし、今の内に回収するわね】
カリム「お、親父にあった事あるのか!?」
シュナ【わっちは知り合いは多いぞ。
ホリデーで仕事せず、バケーション楽しんでる、この学園の学園長殿とは違って、仕事はする。
どーせ、“重要任務につき…”とか言い訳して南国に行っているじゃろ?】
監督生「全部見破ってる」
デュース「す、凄い、言っている事もあってる」
エース「てか、それだけ学園長が単純って事なんじゃ…」
シュナ【…君らも魔法道具に関する恐ろしさは分かったじゃろ?】
カリム「そ、そういう事なら分かった!じゃあ案内するよ」
ジャミル「お、おい、カリム!待て!1人で行くな!」
シュナを案内するカリムを慌てて追いかけるジャミル。
フロイド「結局、ウミヘビくん、ラッコちゃんの世話係かわんねーよな」
ジェイド「まぁ、前より素直になったと思いますよ」
アズール「…そうですね‥一先ず、僕らも休みましょう。
エリーゼさんも大丈夫みたいですし…監督生さん達も、エリーゼさんが起きる前ではここにいるんでしょう?」
監督生「ま、まぁ」
アズール「なら、部屋を用意してもらいましょう。彼女が言うには2日は起きないようですし…」
シュナ【“エリーゼ、そっち側へ行ってはならぬ。影を吐き出すのじゃ”】
**
「!」
声がした、シュナの声。
さっきまで夢の中で見た大きな森にいた筈・・急に視界が暗転して、
また目が覚めると……暗い闇に私はいた。
…宴の終わり、急に心臓が痛くなって、吐血して・・・・・そこから意識がない。ともかく、歩き出さないと……。
身体が重く感じる。
夢の森では軽く感じたのに__ハッと自身のお腹を見ていると、誰かが乗りかかっていた。
子供だ。
銀髪に、光がない蒼い眼をした………あ、…小さい頃の私。
ポタポタッと幼い私が流す涙が私の頬に落ちる。
__【どうして…そこに居続けるの?】
また、この私は泣いている。
「…‥どうして、泣いているの?」
過去の私は、目を見開き、蒼い瞳でこちらを見ている。
過去の私は目に光がない、隈も酷いし、顔色悪いし、何より痩せこけている。私って、こんな風だった……のかな?
__お母様とお父様は帰ってこない
__だからルシファー家の悪行を我慢して……ずっと1人でいたのに__
__どうして……どうして、貴方は……私は__
とても生き辛そうだ。
__なんで、゛今”の私は……‥‥‥なんで___
「………教えて貰ったからよ、ルシファー家の人達の言葉が間違いだって」
__間違いなんかじゃない!!__
暗い空間に過去の私の声が反響する。
__だって、それが間違っていたら……__
__今まで我慢してきたわたしは……__
「…過去の私の判断が間違っていたのか…それは分からないし、答えられないわ。他人から見たら、間違いだと思うかもしれない」
ジャミル君やカリム君の問題のように…一般論で間違いだと指摘するのは間違っている気がする。まぁ、お義父様には怒鳴ったんだけど…。
そっと手を伸ばし、過去の私の涙を拭う。
どんなに拭っても、またポロポロと落ちてくる。
これは本当に私?…‥いや、私がなりたかった私なのかもしれない。
一人でいろと言われて、誰にも相談できなくて、
関わったら関わったで怒られて、
泣く事も出来なくて__そんな私の欲望なのかもしれない。
なんとか上体を起こして、ポロポロと泣いている過去の私の頭を撫で、抱きしめる。
__1人でいるって、言ってよ__
__お願いだから、1人の私に戻って__
__じゃないと……”今“の私が消えちゃう__
ポンポンと背中を優しく叩いて、過去の私の言葉を聞く。
可哀想だし、これは私の欲望なんだし、頷いてあげたいけど…。
「ごめんなさいね、それは無理なの」
__なんで…何で…?__
「一人になろうとしても、放っておいてくれない人達が側にいるからよ」
心配してくれている彼らがいるから、私は“昔”に戻る訳にはいかない。
__わたしはいらない子なの、だから___
__だから、皆は……私を...___
泣いて縋る過去の私……その背中に黒い影が見えた気がした。
私はぎゅっと過去の私を抱きしめる。
「…1人でいろと言われて、
悲しかったし、苦しかったし、ルシファー家の人たちを恨んだことだってある………けどね、それは全部 “私”なの。全部、必要なの。
これは‟いらなく”なんかない……全部、全部、私の心だから。
貴方だって、私の一部、何も怖がらなくていいのよ」
強張っていた過去の私の体が私に寄り掛かってきた。
「……だから…影は私から出ていって」
私の過去に張り付いた、影がスッと離れた。
***
シュナ【…!】
エリーゼの額に触っていた手を離れさせ、どこからか杖を取り出した。
シュナ【流石、我が娘。すべきことをわかっている】
杖を一振りすると、エリーゼの首に巻かれていた包帯が切れる。
ジャミル「お、おい!」
シュナ【出てくるわよ】
シュナがそっと首にある噛み痕を触れる。
その時、首の痕から何か“黒い蛇”が飛び出してきた。
その蛇は覗き込んでいたジャミルの方へ向かったが、その直前にシュナが蛇を掴む。
カリム「へ、蛇!?」
監督生「どうして蛇がエリーゼさんの首から出てくるんですか!?」
ジャミル「‥こ、この蛇」
シュナ【灰色の空間で見た蛇と同じ…じゃろ?やはり、エリーゼの中にいたんじゃな】
メリッサ『居心地悪くて出てきたんでしょ』
シュナ【追い出されたが正しいのかもしれんな】
フラフラと手の中で暴れる黒い蛇を見て笑うシュナと、ゲェという顔をするメリッサ。
グリム「あ!エリーゼの顔、青くなくなったゾ!」
デュース「!ほ、本当だ…息遣いも落ち着いてる」
シュナ【そのまま寝ていれば、2日位で目が覚める筈じゃ。さて…】
手元で暴れる黒い蛇に目を向け、ギューッと握りしめるシュナ。
もう片手で握る杖で、地面をトンと叩く。
すると、シュナの足元から白い光がかかれた魔法陣が一瞬で現れる。
アズール「!?こ、こんな一瞬で!?」
シュナ【入っちゃ駄目よ、怪我じゃすまないから】
メリッサ『手を貸しましょうか?』
シュナ【あなたの手を借りるまでもないわ。小物だもの】
蛇から手を離した途端、黒い蛇が逃げ出そうとするが、魔法陣により弾かれ、陣の外へ行けないようになる。
そして、その蛇に向かって杖の先につく魔法石らしき石を向ける。
シュナ【“災禍を払え ”】
シュナが詠唱を唱え終わると途端に苦しみだす蛇。
そしてシュナがもう一度杖を地面にトンと叩く
___バシャッと音を立てて、黒い蛇が消えさった。
シュナ【…ふぅ、もう近付いていいわよ】
メリッサ『相変わらず、魔力がすごいのね』
シュナ【まあね。エリーゼは柔らかいベッドの上で寝かせた方がいいわ。ここに部屋は無いの?】
シュナに言われ、ハッとしたカリムが慌てて寮生に部屋を用意させる。
そして、空き部屋にエリーゼを寝かせ、談話室に戻る一同。
監督生「‥……あ、あの。エリーゼさんを助けてくれて……あ、ありがとうございます」
デュース「そ、その…かなり失礼な扱いを」
シュナ【まぁ、突然現れたヤツを警戒しない奴の方がおかしいからのぉ。
自己紹介をおろそかにしたわっちも悪いし】
メリッサ『彼女を知らないと言っているけど…この学園の生徒であるならば、彼女の事を知っている筈』
メリッサの言葉に皆、ん?という顔を浮かべる。
それとは対照的にフフッと笑うシュナ。
エース「いや…知らないんだけど」
デュース「この学園の生徒なら…?」
メリッサ『名前が面倒なのよね』
シュナ【名前はないかもしれないけど、呼び方を知ってるはずじゃ】
カリム「呼び方?」
ジャミル「このシュナ…さんの、か?」
シュナ【”さん”付けしたくなかったら別によい。
そうじゃな…教科書には”種族の始祖”と書いてあるかのぉ】
メリッサ『【銀髪の女】とか【碧眼の主】じゃなかった?』
シュナ【そう堅苦しい呼び名は嫌いじゃ。】
グリム「何だ~いっぱいあるんだゾ!……ん?どうした、お前等?」
グリムが感心しているが、周囲の反応はそれぞれ、目を見開き、シュナを食い入るように見ている。
アズール「……ま、まさか……【全知全能の神】とも名称がつけられる……シュナ・ユーピテル!?」
シュナ【ほぉ、教材に名前まで載っておったか。まぁ、堅苦しくて…いつもシュナとだけ名乗っておるが】
「「「えぇえ!!?」」」
グリム「ふな!?な、何だよ、いきなり…」
エース「お前、バカ‼‼最後のトレイン先生の授業で散々教えられただろ!?」
デュース「種族間の戦争をただ1人で止めた…そ、その人の名前だよ!」
グリム「え…えぇええ!?こいつが!?」
監督生「本当にいたなんて・・・」
エースやデュースに言われ、グリムも叫び出す。
シュナ【戦争…そういえばそんな冒険したっけ~昔のことだし忘れてた】
エース「い、いやいや!!何百年前の話だと思ってんの!?」
ジェイド「…正確な記録はなくとも…100年は過ぎていますよ」
シュナ【私はエリーゼによって造られた。・・・エリーゼが呼んでくれないときに、過去に行けるかな~って考えたら、本当に過去に行けて驚いちゃった。それで帰ってきたら偉人扱いになっててびっくりよ】
ハハハと笑うシュナと対照的に愕然としている周囲。
カリム「お、俺でも知ってるぞ…その名前は」
ジャミル「馬鹿、知ってて当然だろ!て、事は待て…エリーゼは、その娘?」
その事実に気付いて、また声を上げる一同。
シュナ【証拠があればよかったんじゃが…あ、王国から貰った勲章見る?】
教科書でしか見たことないような勲章を見せられ、声にならない叫びをあげる、ジャミルとアズール。
アズール「い、いいです!もういいです!!」
ジャミル「し、信じます!信じましたから!!」
シュナ【そう?じゃあいっか】
と、雑に勲章をしまう。
「お、王国の勲章が…」と声を出すジャミルとアズール。
フロイド「ハハハッ、マジ凄ぇー、何で若ぇの?」
ジェイド「フロイド…」
エース「この状況においても、笑えるの凄ぇ…」
年齢と対照的にまだ30代程のシュナの見た目に笑うフロイドと、そんなフロイドを見て、焦る周囲。
シュナ【わっちのことは後から説明するとして……まず、あの子に何があったかを説明してくれない?】
__…
シュナ【ハハハッ!!本当に鉄薔薇の腕輪を壊したなんて!そりゃ、血を吐いて当然よ、ハハハ!】
メリッサ『笑い事じゃない!!』
オーバーブロットまでの流れを説明受け、先ほどからずっと笑うシュナ。
そんなシュナに怒るメリッサ。
シュナ【ま、いい教訓になったんじゃない?加護を受けしもの・・・こういう事はよくある】
グリム「よくあっちゃ困るんだゾ!」
シュナ【結果的に無事だったからいいの】
エース「本当にエリーゼさんの母親なの?そんでもって、全知全能の神なわけ?」
フロイド「こう見たら、ただのオバさんなんだよねぇ」
シュナ【聞こえておるぞ、坊主共。まあ…後でクロウリーに確認とればいいから。それより・・・あの子が起きる前にやるべき事をやりましょう。
バイパー君とアジームの子、鉄薔薇の腕輪があった場所に案内してくれない?」
カリム「物置の事か?何で?あ、エリーゼを助けてくれたお礼か!ならいっぱい持って行ってくれ!」
シュナ【おー、圧倒的な光属性…わっちはただ、鉄薔薇の腕輪のような呪術関係の魔法道具を回収したいの】
ジャミル「呪術関係の?」
シュナ【わっちは今、それを回収するために、世界各地を回っておる。
普通の…それも学生の手元に置くべきでない物も当然ある。そなたみたいに、それを悪用されたらこちらも困るからのぉ】
ジャミル「うっ…それを言われると」
エリーゼに腕輪を差し出したジャミルは言葉を詰まらせる。
シュナ【アジーム本家の方は回収を済ませたんだが…息子の方に持たせるとは思っとらんかった。丁度いいし、今の内に回収するわね】
カリム「お、親父にあった事あるのか!?」
シュナ【わっちは知り合いは多いぞ。
ホリデーで仕事せず、バケーション楽しんでる、この学園の学園長殿とは違って、仕事はする。
どーせ、“重要任務につき…”とか言い訳して南国に行っているじゃろ?】
監督生「全部見破ってる」
デュース「す、凄い、言っている事もあってる」
エース「てか、それだけ学園長が単純って事なんじゃ…」
シュナ【…君らも魔法道具に関する恐ろしさは分かったじゃろ?】
カリム「そ、そういう事なら分かった!じゃあ案内するよ」
ジャミル「お、おい、カリム!待て!1人で行くな!」
シュナを案内するカリムを慌てて追いかけるジャミル。
フロイド「結局、ウミヘビくん、ラッコちゃんの世話係かわんねーよな」
ジェイド「まぁ、前より素直になったと思いますよ」
アズール「…そうですね‥一先ず、僕らも休みましょう。
エリーゼさんも大丈夫みたいですし…監督生さん達も、エリーゼさんが起きる前ではここにいるんでしょう?」
監督生「ま、まぁ」
アズール「なら、部屋を用意してもらいましょう。彼女が言うには2日は起きないようですし…」