熱砂の策謀家

__スカラビア寮

ジャミル君の体調が回復し、それぞれ冬休み課題が終える事が出来たので、なんか記念に宴をする事に…

カリム「よおし。ジャミルの体調も回復したし、冬休みの課題も終わった!今日はみんなでホリデーの宴といこうじゃないか!」

ジャミル「お前の宴好き、なんとかならないのか?」

アズール「まあまあ、いいじゃありませんか。賑やかなホリデーパーティーで嬉しい限りです」

ジェイド「ラクダにはたっぷりご馳走と飲み物も積み込みましたし」

フロイド「オアシスで泳ぐために水着も持った!」

グリム「あいつ等、水着いんのか?」

監督生「しっ、それは言っちゃ駄目」

カリム「それじゃあ……象もクジャクもみんな連れてオアシスまでパレードだ!」

グリム「出発進行!なんだゾー!」

……もう行進が強制ではなくなっているから、平和になった。

ジャミル「エリーゼ、体調はいいのか」

「…え、ええ。噛み痕もそんな痛くないし・・・」

首に残る蛇の噛み痕が見つかった時、ジャミル君とカリム君の連携により、医務室に引っ張り込まれた。

カリム君、毒の鑑定が得意らしい……スカラビアの裏側を垣間見てしまった気がする

「ジャミル君は…」

ジャミル「数日休めば元に戻った。俺の事は気にしなくてもいい」

アズール「ご無理なさらずいいんですよ、ジャミルさん。病み上がりですし、僕でよければお手をお貸ししましょうか?」

ジャミル「結構だ。お前に借りを作るとろくな事にならない」

バチバチと睨み合う2人…間に挟まないで欲しい。
そうこうしている間にオアシスに到着した…が、以前のオアシスと変わっていた。

水が溜まり、草木も十分生えている。
もしかして、この間のカリム君とウィンディーネの魔法のお蔭かな?

カリム「さあ、宴の準備は整った。みんな好きなだけ食って、歌って、踊って、今年の嫌なこと全部忘れちまおう!」

簡易的な机が建てられ、その上に豪華な食事と飲み物が置かれる。
グリム君はそれに飛びつき、夢中で食べ進んでいる。

カリム「ほら、ジャミルもこっちで踊ろうぜ!」

ジャミル「お、俺はいいから……!」

と、言いつつカリム君に引っ張られるジャミル君。

嫌々…という感じだけど、凄いダイナミックな動きだ。
カリム君に悪態つきながらも笑っているから…ダンスが好きなのかも。

ジェイド「皆さんお上手ですね。アズールも踊りを教えていただいては?」

アズール「やめてください。人魚にはハードルが高過ぎます」

フロイド「オレも踊る~!」

そういい、フロイド君は踊りに混ざる。
グリム君が食べているのを見つつ、私はマンゴージュースを飲む。

カリム「エリーゼ!お前も!」

「え・・・急に言われても無理よ」

カリム「大丈夫!俺を信じろって!」

絨毯乗る時に聞いたセリフ。手を掴まれ、踊りの輪へ入る。

カリム「ほら、俺の手を掴んで」

「え、でもやり方が・・」

カリム「そんなもん、楽しめばなんだっていいんだよ!」

そういい、カリム君に手を取られ、クルクルと回される。
殆どカリム君に任せているので、どういう動きをしているのかよく分からない。

カリム「エリーゼは上手いな!この調子で大技……と、うわ!?」

ジャミル「掴み過ぎだ、変われ、馬鹿」

グイッとカリム君を押しやって私の手をとるジャミル君。
先ほどのカリム君と似たダンスだけど、カリム君と違って、動きが優雅だ。

カリム「ちょ、ズルイぞ!ジャミル!」

ジャミル「何がズルいもんか。言っただろ?遠慮しないって」

凄い悪い顔をしてカリム君の方を見て、ニタリと笑うジャミル君。

フロイド「俺もやる~!」

監督生「エリーゼさん・・人気者だな」

「え・・」

ジャミル「馬鹿、フロイド!潰れるだろ!!」

__「―ぃ、おーい!」

ふと、砂漠の奥から声が聞こえた。ユウとグリム君も気付いたのか、食事の手を止める。

グリム「砂漠の向こうから、誰か走ってくるんだゾ」

監督生「誰?」

グリム君が見る砂漠の奥の方を見る。

ナイトオブカレッジの制服を着た…2人の男子生徒。その2人はこちらに手を振って…ん?

「‥…‥あれって」

エース「お~い、監督生~!グリム~!エリーゼさん~!」

デュース「お前達、無事か!?」

監督生「エ、エース!?デュース!?」

マンゴージュースを置いて、グリム君を抱えて、2人に駆け寄るユウ。
2人は息を荒くして、ネクタイをずらし、ブレザーを脱いでいる。

エース「なにここ、めっちゃ熱い。真夏かよ!」

監督生「どうしたの?…実家に帰ったんじゃ…」

エース「どうしたの、じゃねーっつの!お前等こそどうしちゃった訳?」

デュース「実家には帰ってたさ。でも、お前らがSOSをよこしたから慌てて戻ってきたんじゃないか。“スカラビアに、かんきんされてるんだ!”なんてメッセージが届いたと思ったら、メッセも通話も通じなくなって……」

グリム「あ、そういえばコイツ等にも連絡しとけって言ったっけ?」

「スマホ・・・あ・・充電。さっき私が使いきっちゃった・・・・ごめんなさい。・・・でも、私のことはメッセージ送らなかったわよね?どうして知ってるの?」

監督生「私がつけたしで、エリーゼさんも一緒だって送ったんです」

「そうだったの・・・」

グリム「役に立たないと思っていたけど、本当に全部解決したから来たんだゾ」

エース「はぁ~!?こっちはなー、扉が開いてないから魔法でワープ出来なくて。公共の交通機関乗り継いで学園まで戻ってきたんだかんな!」

「本当にごめんなさいね。」

デュース「よくわからないが‥この楽し気な様子を見る限り、危機的状況って訳じゃなさそうだな」

カリム「なんだ?監督生の友達か?」

フロイド「あ、カニちゃんじゃん。遊びに来たの?」

ダンスをやめたカリム君とフロイド君が此方に近付いてくる。

デュース「カニ……?」

エース「あー、フロイド先輩は同じバスケ部で……スカラビアのジャミル先輩も同じ部活なんだけど」

カニ…ジャック君のことウニ君とか呼んでいたけど……もしかして髪の毛の色?いや、カニというにはちょっと無理があるんじゃ……。

カリム「おお!そうかそうか、ジャミルと監督生の友達ならオレの友達だな!」

監督生「凄い理屈ですね」

ジャミル「おい。何度も言うが俺はお前と友達になったつもりは…はぁ、聞いてないな」

カリム君の発言に反論しようとしたが、聞く耳を持たないので諦めたジャミル君。

カリム「とにかく、せっかく来たんだ。お前らもホリデーのホリデーの宴に参加していけよ!」

アズール「こちらにピザやパスタもありますよ」

ジェイド「お飲み物はどうされますか?」

エース「げげっ、オクタヴィネルの奴ら!」

デュース「お前達、なんであいつらと一緒にいるんだ?」

グリム「オマエらがいない間、オレ様達そりゃもう大変な目に遭ったんだゾ!グリム様の武勇伝を聞かせてやるから、そこに座れ!」

エース「なんだそりゃ……ま、無事だったならいいけどさ」

デュース「まったく……人騒がせなヤツらだ」

そう言って2人は笑う。

監督生「…来てくれてありがとう、2人とも」

エース「別に?実家にいてもゲームくらいしかやることなくて暇だったし……」

デュース「いつでもメッセージしてこいと言った手前、無視もできないからな」

グリム「素直じゃねぇヤツらなんだゾ」

素直じゃない彼らの言葉にふてくされるグリム君と笑うユウと私。

「何があったのかはゆっくり説明するとして・・・とりあえず、楽しみましょう!」

カリム「そーそ!それじゃあ、宴の再開だ!ありったけの料理と音楽を!!今日は最高のホリデーにするぞー!!」

「「「おー!!!」」」

カリム君の言葉に皆、歌い、踊り、楽器を吹き、食べて、飲んで、楽しみだした。

数日前まではとても想像できなかった光景…。

「楽しいわね、ジャミル君」

ジャミル「別に俺は………はぁ、やれやれ………まったく」

そう言いつつ、宴を見るジャミル君の笑みは穏やかなものだ。
本当にあの影が離れてよかった。

___けど、少しだけ不安にはなった。

今回のオーバーブロットで出た化身は“自我”を持っていた。

あの灰色の空間でも……ジャミル君を閉じ込めたり、私に噛みついたり、

オーバーブロットした本人の気持ちで薄れる事はなくなった。

「どうして?」

ギュッとクリスタルのペンダントを握りしめた。

ジャミル「そろそろ陽が熱くなる。寮へ戻るぞ」

カリム「そうだな!続きは寮で!」

ジャミル「まだやるのか!?」

カリム君の言葉に驚き、怒鳴っているジャミル君。
本当に素直になったな……。

ふと、メリッサが現れた

メリッサ『変わりない?』

「え?毒のこと?大丈夫よ。すぐに対処したから」

メリッサ『………ならいいんだけど』

「これから寮に戻るけど、メリッサも行く?」

メリッサ『……遠慮するわ』

じゃあね、と頭を撫でて、メリッサはいなくなった。どうしちゃったの?

カリム「エリーゼ~!寮へ戻ろうぜ!」

グリム「寮でもごちそう食うんだゾ!」

監督生「まだ食べるの?」

「いいじゃない。今回グリム君頑張ったんだから」

カリム「ほら帰ろうぜ!」

グリム「御馳走がまってるんだゾ!」

カリム君の肩に乗るグリム君の頭を撫でる。

そして、差し出されたカリム君の手をとろうとした_____その時。

_____パキッン!!

破裂音と共に、胸元にあるクリスタルが割れ、木っ端微塵に消し飛んだ。

「……え」

_____ズキッン!

その瞬間襲いかかってくる、胸の痛み。

そして…咳込むと…喉の奥の熱い“感覚”

カリム「…っ!?」

グリム「!?…エリーゼ…?」

監督生「エリーゼさん!?」

3人が驚いて、グリム君は震えた声で私を呼んでいる。

どうして、そんな___と思ったけど、自身の掌を見てすぐ理解した。

「…ッ、ゴッ…ゲホッ・・・!!」

私は___大量の血を、吐き出していた。
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