ゴーストマリッジ

不味い…声をかけているうちに陽が沈んでしまった。
0時まであと4時間程しか時間がない。

ルーク「心配しないでくれたまえ。私達がいるよ」

どうしようか悩んでいた時、ルークさんとエペル君がオルト君の前に出た。

オルト「ルーク・ハントさん!エペル・フェルミエさん!
兄さんを助けに行ってくれるの!?」

ルーク「もちろん。助け合いは美しいものだ。それに、ヴィルの美貌がこれ以上辱められるのは耐えられないからね。エペルくんも、とってもやる気なんだ!」

エペル「はい! 絶対に寮長を助け出して僕の力を認めさせてみせる!
…そうすればもしかしたら」

2人の申し出はありがたい…けど、今度こそ失敗が許されない佳境に入った。

これで失敗すれば、イデアさんはゴースト、他の皆は500年固まったまま…。

最悪な状況である事に変わりはないのだから。

エース「第3陣は2人だけか。ま、フツーはこんな面倒事に巻き込まれたくな..」

リドル「僕も行きましょう」

エース「えぇ!!?なんで!?」

「トレイさんを…助ける為?」

リドル「当然それもある。ハーツラビュル寮生の失態は寮長であるボクの責任だ」

流石は厳格さを求めるハーツラビュル寮の寮長…。
自身の寮生の失態にも厳しい。

リドル「だが、それ以上に重要な事がある。エース。
君は大切な事をお忘れじゃないかい?」

エース「大切な事……?」

エース君が首をかしげている。
何かあったのかな?

リドル「ハートの女王の法律、第703条。
“クロッケー大会で2位だった者は、その翌日女王に紅茶を淹れなくてはならない”」

エース「それがどうし……ハッ!そ、そういえば!」

リドル「そう。昨日のクロッケー大会で2位だったのは……ケイトだ!」

監督生「優先順位そっち!!?」

リドル「女王……すなわち、寮長であるボクに紅茶を淹れなければならない!!」

エース「いやいやいやいや!今は緊急事態じゃん!?
なんならオレがケイト先輩の代わりに紅茶を……」

リドル「いいやダメだ。エースは昨日、10位以下だったじゃないか。
ハートの女王の法律を遵守するため、必ず0時までに僕はケイトを連れて帰る」

「ケイトさんだけではなく他の皆さんも救ってあげてください…」

最近、女王の我儘さ…というより、王様の様な厳格さが滲み出てきた。
まぁ、そもそも女王という表現は女性に使われているから、王という表現がリドル君にふさわしいのだろうけど。

でも自覚はなさそう。

エース「まっ、前よりはちょっとマシになったし、何よりオレには関係ないし、いっか!」

リドル「つまり次にプロポーズするのは僕とルーク先輩とエペル……そしてエースの4人ということだね」

エース「……ってオレェ!?なんでオレもなの!?」

監督生「え!?入らないの!?」

エース「何で驚いてんだよ!入る訳ねぇだろ!」

リドル「おや。キミは来ないつもりかい?」

エース「ったりまえっしょ!
なんでわざわざ苦労しに行かなきゃなんねーんっすか。絶対嫌だね」

リドル「いいだろう。なら、キミは寮に戻ってハリネズミの世話でもしているといい。
僕にはエペルさえいてくれれば十分だ」

エペル「えっ、ぼ、僕?」

リドル「そうだよ、エペル。キミはエースと違って勇気があるからね」

エース「……は?」

リドル「うちの寮の1年生は臆病で困る。残念ながら、君の髪の先ほども気概がないんだ」

エース「……は??」

リドル「まあ、弱虫に来られても邪魔なだけだからね。足手まといがいなくて、かえって幸運だった」

エース「はあ~!?」

さっきデュース君はエース君に乗せられていたけども、あなたも乗せられてしまうのね、エース君。

エース「エペルも、寮長も、俺が行ったら出る幕なんかないっつーの!」

リドル「おや?そうなのかい?」

エース「とーぜん。俺が、かっこいいプロポーズでバッチリ姫様の心を奪っちゃうし。
俺に夢中な花嫁を、寮長は指くわえて見ててください!」

リドル君のあの不敵な笑み‥確信犯だ。

ルーク「ふふふ。ムシュー・ハートはアマノジャクなところが可愛いね」

リドル「ふっ。ハーツラビュルの寮生たるもの、トランプ兵のように一致団結せねばなりません」

「…流石はリドルくん。まさに王様ね」

リドル「王?僕は女王だよ」

「女王は女性的な表現でもあるし、厳格さが強いのは王様かなって…。
でも、ハーツラビュルでは女王という表現が普通なのよね、気分を害したのなら謝るわ。ごめんなさい」

リドル「……いや、そう言う表現もあるんだろう。
ただ、うちで王様と聞くと怠惰なイメージが浮かんでしまうのでね」

それはレオナさんね、確実に。

エース「……つってもこのメンバー、不安しかないんだよな~。
ルーク先輩はともかく、寮長とエペルって花嫁より小柄だし……」
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