熱砂の策謀家

監督生SIDE

ジェイド「今日のフロイドも調子がいいですね。
気分がノらないと味も大変な有様になってしまうのですが……」

「味も気分で決まるんですね…」

それって、料理得意と言えるのだろうか…あ、そういえば、バイトでも気分が乗らない時、焦げカスみたいな料理が出てきていたな…。焦げカス料理は…ジェイド先輩が廃棄していたけど。

アズール「カリムさんも来たとことですし、朝食をいただきましょうか。
……太らない程度に」

念を押すアズール先輩の声から皆、朝食に手を付けた。いつもの優しいカリム先輩はグリムと共においしそうな食事に手をかけた。

朝食を食べ、行進‥ではなく、アズール先輩主体の授業が行われた。
内容は、古代呪文語だ。

アズール「まず、古代呪文語で一番大事なのは単語の暗記です」

カリム「オレ、暗記って苦手なんだよなぁ~。眠くなってきちまうし」

アズール「そんな貴方にピッタリな勉強法はコレ。音読しながらその辺を歩き回るものです」

ジェイド「集中力が長続きしないタイプの方にもオススメの勉強法ですね」

グリム「それならオレ様にも出来そうなんだゾ」

カリム「よし、お前らも一緒にやってみようぜ」

「「はい!」」

カリム先輩の声に寮生達も教科書を片手に音読をしてく。トコトコと歩くグリムを見守りつつ、私も教科書を手に持つ。エリーゼさんは私とグリムを見守ってくれるようだ。

ふと、隅っこの方で教科書を開きつつ、カリム先輩の方を見ていたジャミル先輩を見た。眉間の皺凄いな……

カリム「うぅ……んわっ!?」

エリーゼ「っ!?だ、大丈夫!?」

音読中のカリム先輩が柱にぶつかり、横転したので、エリーゼさんは慌てて近づく。

カリム「アハハ、柱に気付かなかった」

エリーゼ「顔の前より、少し下げて教科書を持った方がいいわよ」

カリム「そうだな。ありがとう」

私の手を借りて、カリム先輩は起き上がった。

「どんな感じですか?」

カリム「おう、いつもより覚えやすい!歩き回るだけでこんな違うんだな!アズールはやっぱ凄いぜ!」

エリーゼ「なら良かった」

カリム「監督生はやらないのか?グリムと」

監督生「古代呪文語はそこそこ自信があるので」

カリム「へぇ、凄いな!俺はてんで駄目だ」

頭を掻き、苦笑いをするカリム先輩。

カリム「商売とかそういうのは得意なんだけどなぁ」

「人には不向きな物だってあります。アズール先輩だって、成績いいですけど、飛行術は対外ヤバいらしいですから」

カリム「あー、そういえば、そうだな!」

エリーゼ「私も高い所や泳ぐとかは苦手よ」

カリム「…高い所、まだ駄目そうか?」

エリーゼ「カリム君のお蔭で、不安はなくなったわ。」

カリム「そうか、なら良かった!良かったら、また一緒に絨毯に乗ろうぜ!エリーゼなら大歓迎だ!」

エリーゼ「…そうね。またグリム君とかを誘って乗ってみたいわ」

カリム「…あ、あぁ、そうだな!グリムも一緒に!………?」

ふと、カリム先輩が胸の方に手をやり、首をかしげている。

「どうしたんですか?」

カリム「…いや、なんかチクッとした気が……前もそうだったんだよな」

エリーゼ「大丈夫?具合が悪いの?」

カリム「……痛いんだけど、凄ぇ心地いいというか…不快じゃないというか……。そう…前も、エリーゼや監督生、グリムと絨毯に乗ってて……エリーゼの笑顔を見た時も」

エリーゼ「…私の笑顔?」

「(カリム先輩・・まさか)」

カリム「……うーん、何でだろう?」

エリーゼ「どうしてかしら?」

うーんと悩んでいたカリム先輩だが、まぁいいか!と笑い出した。いいのか、それで。

カリム「そんじゃ続きするか…えっと…」

エリーゼ「か、カリム君!!また柱にぶつかっちゃう!」

カリム「あいて!?」

柱にぶつかるカリム先輩をまた救出する。心配になったのか、エリーゼさんはカリム先輩と一緒に行うことにしていた。

エリーゼ「ほら、こうやって少し目線より下げて…」

カリム「お、おう、こうか?」

ジャミル「………っ」

古代呪文語の授業が終わると、次は庭に出て、試合をする事に。

アズール「運動の効率を上げるには、適度な運動も大切です。ただし、疲れ果てる程は逆効果です」

ジェイド「模擬試合はストレスも発散出来ますし、いい運動ですよね」

フロイド「アハッ、オレも暴れたいからやる~!誰か相手してよぉ」

カリム「よし、では5人ずつに分かれて、試合始め」

カリム先輩の号令で寮生たちは5人ずつ別れて、試合を始める。
私は魔法が使えないので、木陰で魔法史の教科書を開き、1人自習する。

ジャミル「エリーゼ」

エリーゼ「!…ジャミル君」

エリーゼさんの前に、ジャミル先輩が立っていた。何を話すつもりなんだろう。

ジャミル「さっきはカリムがすまなかったな」

エリーゼ「…え?あ、カリム君が柱にぶつかったこと?大丈夫よ・・・しれより、試合はいいの?」

ジャミル「あぁ、俺のチームは終わった。今は15分の休憩だ」

エリーゼ「そうだったの・・・あ、座って」

エリーゼさんは少しずれて、場所を開ける。ジャミル先輩は少し迷った様子だが、そこに腰掛けた。私が聞いてもいい会話なのかわからないけれど、聞こえてくるものは仕方がない

エリーゼ「寮生達とカリム君、仲良くなったわね」

ジャミル「…あぁ、そうだな」

エリーゼさんの目線の先には、カリム先輩と寮生達が親しく話している姿。以前まで、カリム先輩が近付いたら、皆逃げていたが…今じゃそんな事はない。

ジャミル「………‥………君は、カリムが好きなのか」

エリーゼ「え?」

ジャミル先輩から出た言葉にエリーゼさんは目を丸くした。彼自身も目を丸くしている…自分で聞いたのに。

ジャミル「…い、いや、カリムをやけに‥気にかけているから…その」

エリーゼ「…好きよ」

ジャミル「!!……っ」

ジャミル先輩は目を見開き、何かを耐えるように拳を握っている。ま、まさか・・・

ジャミル「……だとしても、カリムは諦めてくれ」

エリーゼ「え?」

ジャミル「アイツはアジーム家の長男だ。学生同士の戯れで…アイツの未来を壊すわけには」

エリーゼ「ごめんなさい、何の話?」

ジャミル「は?カリムが好きなんだろう?だから、諦めてくれと」

エリーゼ「……あ、好きって男女の話?私、てっきり生徒としてかと‥」

そこまでいうと、ジャミル先輩がポカーンとした顔になる。相変わらずエリーゼさん鈍感だな。何人の人がエリーゼさんのこと好きだと思ってるんですか?

ジャミル「‥‥‥…………君、鈍感って言われないか」

エリーゼ「え・・・よく知ってるわね」

ジャミル「…………」

ジャミル先輩は頭を抱えた。そりゃそうだよね

ジャミル「……じゃあ、もし‥……もし仮にカリムが……」

__「ウミヘビくん~エリーゼ~。何サボってるの~」

ジャミル先輩の言葉は乱入してきたフロイド先輩によって掻き消された。フロイド先輩、エリーゼさんのこと大好きだもんな。邪魔したかったんだろう。
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